ハイスクールD×D 雷帝への道程   作:ユキアン

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初期プロットから一番変化した話です。


これがオレの雷だ!!

 

 

黒歌と白音を家族として受け入れてからの生活は実に充実した生活だと言えた。一緒に暮らしている中でのちょっとした触れ合いや会話だけで、オレの心は満たされた。黒歌もあの日以降は白音の前でもオレに甘えてくる様になった。無理な笑顔もしないようになった。銀術士には感謝しないとな。

 

そんな楽しい生活に水を差す様な事件が起こった。まあ、冥界の方でだが。簡単に説明するとレーティングゲームを行う事になった。本来なら行えないはずの物をだ。

 

人間界に居るオレは式髪を学園に潜り込ませて重要な行事にのみ参加している。そんな中、学園に魔王サーゼクス・ルシファー様がやってきたのだ。気になったので学園長室に覗かせに行ったのだ。そしてサーゼクス・ルシファー様が学園を訪れた理由はオレに会う為だった。授業免除を言い渡していて行方が分からないオレを連れて来いと言われても無理だろうな。仕方ない、式髪で失礼かもしれないだろうが名乗り出るしかないな。

 

「本来の姿を見せずに礼を失する事ではありますがご容赦を願います」

 

髪の状態から原作でゼオンがガッシュ達に送りつけた式の姿を模した形態に変化させ、会話が出来る状態にする。

 

「君がゼオン・ベル君かい?」

 

「今話しているのはゼオン・ベルで間違いありません。今、そちらに居るのは人間から借金のカタとして伝授された式髪と呼ばれるものです。術者の髪を媒体に使い魔の様な物を作り出す術です」

 

「中々便利な術のようだね。それにしても君は何故学園に居ないんだい?」

 

「1年の時の模擬レーティングゲーム後に授業免除を言い渡されましたので、人間界にて眷属候補を捜す旅を行っています」

 

「ほう、それは都合が良いね」

 

「都合が?」

 

「君にレーティングゲームを行ってもらいたくてね。もちろん非公式だがね」

 

オレがレーティングゲーム?

 

「不思議だと思うだろうけど、君の模擬レーティングゲームでの一件が噂になって来ていてね。私もその力に興味があってね、それにその莫大な力を使う君自身もね」

 

莫大な力ね。あの程度で莫大と言われてもね。所詮はザケル一発なんだけどな。まあいい、魔王様の前でそんな事言えないからな。

 

「光栄です。ですが、私は未だ学園すら卒業していない若造です。そのような者とレーティングゲームを行う者など居るのでしょうか?」

 

「その点は問題無いよ」

 

「もしかして、ここ数日こちらを伺っている視線はその相手の使い魔か眷属ですか?正直言って不愉快なのですが、私の眷属候補の娘達にはまだ早い光景を見せたくないので手は出していないのですが、あまりに酷いのでそろそろ排除したいのですが」

 

「分かった。こちらから伝えておこう」

 

「ありがとうございます。それでレーティングゲームの事なのですが、私はまだ正式に悪魔の駒を授与されておりません。これでレーティングゲームに参加する事は可能なのでしょうか?」

 

「その辺りは大丈夫さ。これが何か分かるかい?」

 

そう言ってサーゼクス・ルシファー様が懐からある物を取り出す。

 

「悪魔の駒のケースですか?」

 

「そうさ。まだ誰の物でもない悪魔の駒さ。これを君に与えよう。それが模擬レーティングゲームに参加してもらう為の代価だよ」

 

「……本気なのですか?」

 

悪魔の駒を与えられると言う事は上級悪魔として、成人として扱われると言う事だ。オレは、悪魔としてやっていける自信なんて物は無い。一人で居る事が多かった上に、生きてきた半分以上を人間界で暮らしているのだ。悪魔として生きていく自信を、オレは築き上げていないのだ。

 

「君は君自身が思っているよりも遥かに大人だよ。これを受け取る資格は十分にある」

 

「……それがサーゼクス様のお考えであるなら、謹んでお受けいたします」

 

最敬礼を持ってサーゼクス様から悪魔の駒のケースを受け取る。

 

「レーティングゲームの詳細は追ってグレイフィアに伝えさせる。今の拠点の場所を聞いても良いかい?」

 

「今は新潟の山中に居を借りています。少し分かり難い場所にありますので魔力を発して頂ければこちらからお迎えに上がります」

 

「そうかい?ならそうしてくれ。話は以上だよ」

 

「失礼します」

 

式髪に莫大な魔力を送り込み、強引に転移させて悪魔の駒のケースを手にする。これにオレの魔力を流す事でオレだけの軍を作る為の駒となる。呼吸を整えてから純粋な魔力をケースに流し込む。悪魔の駒のケースから魔力を感じられる様になった所で魔力を流し込むのを止める。

 

「これがオレの駒か」

 

ケースを開いた先には黒い駒に混ざって赤い駒が含まれている。変異の駒と呼ばれる上位互換の駒だ。兵士の内の2個と僧侶の内の1個が変異の駒となっている。力ある者なら所持していてもおかしくない変異の駒が3個なら平均よりは良い方だろうとこの時は思っていたのだが、後にそれが間違いである事が判明する。

 

悪魔の駒の準備ができたオレは黒歌と白音を呼ぶ。自分の魔力を身体に慣れさせる瞑想をやっていた二人に悪魔の駒の説明をする。

 

「それじゃあ、これでお兄ちゃんの家族に成れるんですね」

 

「家族の様な物だがな。だが、これで対外的にもそう見える様にはなる。詳しい駒の説明はもう少し大きくなってから教えよう。黒歌には僧侶、白音には戦車の駒だ」

 

それを受け取ろうとする直前に手の届かない所まで持ち上げる。

 

「最終確認だ。これを受け取ると言う事は眷属悪魔に転生すると言う事だ。神に祈ったりする事は出来なくなるし、レーティングゲームという模擬戦にも出なくてはならなくなる。そして、戦争が起こった際にも兵士として参加しなければならない。それでも構わないな?」

 

「「それでお兄ちゃんの傍に居られるなら」」

 

即答で答えてくれる二人に嬉しくなり、頬が緩む。

 

「ありがとう、二人とも。なら、オレからの祝福を受け取れ」

 

改めて二人に駒を渡す。少しずつ二人の体内へと沈んでいき、背中から悪魔の翼が生える。

 

「「うにゃ~~」」

 

それと同時にオレの方に寄りかかってきた。

 

「どうした?」

 

「なんか力が入らないにゃ」

 

「しんどいです」

 

「何?ああ、そうか、忘れていた。悪魔は日光に弱いのだったな。問題無い、すぐに慣れるはずだ。まあ数日はかかるだろうがな。慣れるまでは無茶をしない様に」

 

二人をそれぞれの腕で抱きかかえてソファーまで運ぶ。

 

「それから何だが、近いうちにレーティングゲームを行うことになった。眷属である以上二人も連れて行かなければならないが、オレが絶対に守るから安心してくれ」

 

死なないとは言え、痛い事に変わらない。死にそうな目には既に会っているのだから、もうそんな目に会わせたくない。いや待てよ、アレが使えるか?

 

 

 

 

 

 

 

レーティングゲーム当日、グレイフィア様に案内された部屋でオレ達はゲーム開始までリラックスしている。オレはソファーに身を沈め、黒歌と白音はオレにじゃれついている。

 

「そろそろ開始時刻ですが、準備の方はよろしいでしょうか?」

 

ゲーム開始5分前にグレイフィア様が再び部屋にやってきた。

 

「ええ、大丈夫です」

 

「では、こちらの魔法陣の上へ」

 

二人を抱きかかえたまま魔法陣の上に移動する。

 

「それでは良いゲームを」

 

グレイフィア様に見送られて転移した先はファウードのコントロールルームに似た様な空間だった。円形のフィールドの外周部に行く程、柱の密度が上がり、中央には直径20m程の広場がある。

 

オレは近くにある柱の一本に触れてオリジナルで作った物質検査の魔法を使って材質を調べる。その結果からこのフィールドを用意した者は、おそらく対戦相手であり、そいつはオレの事を良く知っていることが分かる。この柱は電気を通さない鉱石で作られている。床も同じだ。明らかにオレ対策で作られている。

 

「まあ、これ位なら問題無いんだがな」

 

見せた事があるのがザケルとシン・サイフォジオだけだからな。ザケル対策に柱を用意したのだろうが、ザケルや効果範囲が大きい術の対策にしかなっていない。

 

『皆様、ようこそおいでくださいました。私はこのたびのレーティングゲームの審判(アービター)を仰せつかりましたグレモリー家使用人、グレイフィアと申します。我が主、サーゼクス・ルシファー様の名の下に今宵のゲームを見守らせて頂きます。早速ですが、ゲームのルールを説明いたします。今宵のゲームの舞台は参加者であるアウル・ダンタリオン様が用意された特設会場となっております。本陣ですが、転移先が本陣となっております。範囲の方は柱の上部に宝石が設置されておりますので、それを繋げた園内が本陣となります。それではゲームスタート』

 

とりあえずは挨拶と下準備からやるか。魔力を感知して対戦相手であるアウル・ダンタリオンが居る方向に右手を向ける。ザケルだと柱に邪魔されるから、こいつだな。二人を抱えたまま柱の上に飛び乗り魔法を放つ。

 

「ジャウロ・ザケルガ!!」

 

目の前に雷で出来たリングが現れ、そこから触手の様に12本のザケルガが伸びていく。姿が見えないので狙いがかなり適当になったが、それでも何人かに命中したのが分かる。

 

『アウル・ダンタリオン様の兵士3名、僧侶1名リタイア』

 

4人か。何人居るか分からないが、上級1発と割が合わないな。要訓練と言った所か。まあ、これで出だしは止めれた。下準備は終わっている。此所からが本番だ。準備を終えたオレ達はアウル・ダンタリオンの本陣に向かって前進する。柱から柱に飛び移っていき、たまに落ちそうになる白音をマントで受け止めながら三人で固まって外周部を移動する。

 

「あれがアウル・ダンタリオン達か。数が多いな。眷属以外に使い魔もフルで投入しているのか」

 

4名リタイアしたにも拘らず20名が固まって怪我の治療を行っていた。成る程、リタイアはしないまでもダメージは与えられていたのか。こちらに気付いていないようだし黒歌達にやらせてみよう。

 

「黒歌、白音、魔力弾を叩き込んでやれ。防御はオレがするから全力を叩き込んでやれ」

 

「「うにゃ!!」」

 

二人揃って全力の魔力弾を集団に向かって放つが、それは張ってあった結界に防がれる。

 

「ほう、中々強固な結界だな。ならばこんな物はどうだ?レード・ディラス・ザケルガ!!」

 

雷で構成された刃がついた巨大なヨーヨーを結界に叩き付け、表面を走らせる。

 

「ソルド・ザケルガ!!」

 

結界全体に罅が入った所でレード・ディラス・ザケルガを操っている右手に加えて左手に雷で構成された大剣を握り、結界に叩き付ける。粉々に砕け散る結界を見ながらレード・ディラス・ザケルガとソルド・ザケルガを解除して右腕を差し向ける。

 

「さあ、これ位耐えてみせろ。ラージア・ザケル!!」

 

威力はほぼザケルと変わらず、その効果範囲だけが大きくなったラージア・ザケルを放つと、アウル・ダンタリオン達は踏ん張る事はせずに障壁を張りながら流されて距離を取る。

 

「うにゃ~、ゼオンお兄ちゃんってこんなに強かったんだ」

 

「すごいです、ゼオンおにいちゃん」

 

「気を抜くな、二人とも。最初の奇襲以外は殆ど防いでいるぞ。奴らはオレの事を研究してきている」

 

近づいて分かったのだが、何人かの服装が絶縁体の物で作られていたり、ゴムらしき盾も見受けられた。これは小細工も必要になるかもしれないな。それから気になるのだが、相手は似たような魔力反応ばかりだ。気配もほとんど感じられない。注意する必要があるだろう。

 

だが、そんなことよりもオレは心の中で喜んでいる。そう、対策さえ取ればオレの魔法に耐えれる相手が居る事にオレは喜んでいる。もっとだ、もっとオレを楽しまさせて欲しい。オレに全力を出させる位に。

 

少し時間を置いてアウル・ダンタリオン達が体勢を立て直した所で攻撃を再開する。

 

「ガンレイズ・ザケル!!」

 

オレが使う術の中では最も威力の低い代わりに雷の弾丸で弾幕を張れるガンレイズ・ザケルを使いながら接近する。もちろん二人をマントで抱え上げながらだけどな。

 

アウル・ダンタリオン達は用意していたゴム製の盾に隠れたり、柱の影に隠れたりしながらも魔力弾を放って反撃してくる。隠れながらなのでそれほど命中率が高い訳では無いが、それでも威力の方はかなり高い。ガンレイズ・ザケルを2、3発当てなければ迎撃出来ない位には威力がある。

 

それでも接近するのに苦労はない。ある程度近づいた所で警告を出す。まだまだオレは楽しみたいからな。

 

「ほらほら、少し強いの行くぞ。テオザケル!!」

 

ラージア・ザケルの強化系とも言えるテオザケルを真上から放つ。こうすれば柱に隠れるといったことは出来ない。

 

『アウル・ダンタリオン様の兵士2名、リタイア』

 

テオザケルを放つ前の人数から7名減ったにも関わらず2名しか眷属を削れなかった。残りは13名。絶縁体の服が多少融けている所を見ると更に強力な術を叩き込めば突破出来る。

 

「エクセレス・ザケルガ!!」

 

単純に雷を照射する術の中で最大の物をテオザケル同じように上空から撃ち込む。

 

『アウル・ダンタリオン様の騎士2名、リタイア』

 

残っているのはアウル・ダンタリオンとフードをかぶった二人だけになったのだが、まさかほとんどが使い魔とはな。さらに気になるのだが、わざわざあの二人とアウル・ダンタリオンをかばうように全滅していったのだ。あのフードの二人が切り札なのか?

とりあえず様子を見るために柱の上に立ち、挨拶をする。

 

「お初にお目にかかる。私がゼオン・ベルだ。本日はお招き頂き大変恐縮している。こんなに楽しめたのは生まれてから初めてだ」

 

「それは結構。ならここからが本番だ!!」

 

嫌な予感がするのと同時に会場を作っている結界とは別の種類の結界を感じ取る。この感じからするとレーティングゲームの結界は完全に機能していないな。転移も封じられている。

 

「貴様、何のつもりだ」

 

今までの遊び心を捨てて、意識を甘さを切り捨てたものに切り替える。

 

「今考えている通りで大体あっているさ。お前を殺すように頼まれ、私自身のメリットがあり、それを為すための手札もある。ならば悪魔として手を出さないでどうする」

 

「そうか。ならばこちらも本気で相手をさせてもらおう」

 

「出来るのか?先ほどまででかなりの魔力を消費したと言うのに。そして、これが私の切り札だ!!」

 

アウル・ダンタリオンがそう叫ぶと同時に二人がフードを脱ぐ。フードの下から現れたのは白い髪の男性と黒い髪の女性だった。だが、注目する部分はそこではない。頭から生えているネコ科の耳と尻尾、そして女性の方の顔が黒歌たちに似ているということだ。

 

「「お父さん、お母さん!!」」

 

その顔を見て二人が飛び出す。だが、黒歌たちの両親は表情一つ変えずにその爪で黒歌たちを裂こうとする。

 

「ちぃ!!」

 

マントだけでは間に合わないと判断して四人の間に飛び込んで父親の爪をマントで防ぎ、母親の腕を掴んで止める。そしてマントで黒歌たちの両親を弾き飛ばす。それでも空中で体勢を整えてアウル・ダンタリオンの近くに着地する。オレはそれを見ながら二人を抱えてアウル・ダンタリオン達から距離をとる。

 

「「お父さん、お母さん、ゼオンお兄ちゃん!?」」

 

「アウル・ダンタリオン、貴様、ネクロマンサーか!!悪趣味にも程があるぞ!!」

 

母親の腕を掴んだとき、体温を感じれなかった。それに、黒歌の話では家があったところには何も残ってなかったと言っていたことから死霊術で死体を操っているのだと判断する。

 

「残念。さすがに私も忌み嫌われる死霊術を覚えようとは思わないさ。私は人形使い、ドールマスターさ。まあ、見ての通り特別な人形を使っているけどね」

 

「ちっ、先ほどまで居たメンバーのほとんどもその特別製の人形を使っていたのか」

 

「ご名答」

 

「その特別製の人形を使って何も感じないのか」

 

「普通の人形よりも便利だ。プログラムを組めば生前の技も簡単に使えるようになるからね。それにエコだろう」

 

「そうか」

 

オレたちの会話で両親がどうなったのかを理解した黒歌は涙を流し、白音は両親に切り裂かれそうになったことに怯えて震えている。オレは二人を降ろして、その頭を撫でてやる。

 

「待っていろ。お兄ちゃんがお父さん達を解放してやる」

 

「ゼオン、ひっく、お兄ちゃん、お父さん達はもう」

 

黒歌が最後の確認に尋ねてきた。

 

「死んでいる。その上であいつのおもちゃにされている。だから、これ以上おもちゃにはさせん。オレに出来るのはそれだけだ」

 

死んでから長い時間が経ってしまっている以上、悪魔の駒でももう転生は出来ない。オレに出来ることは弔ってやるだけだ。

 

「ゼオンお兄ちゃん、お父さん達を、楽にしてあげて」

 

「任せておけ」

 

髪を数本引き抜き、式髪にして二人の護衛に付ける。

 

「覚悟しろアウル・ダンタリオン!!貴様はこのオレを怒らせた!!」

 

「出来るものならやってみろ。貴様の魔力は既に3割を切っているのだろう。雷撃対策は完璧に施し、手を出しづらい人形も偶々ではあるが確保していた私を殺せるものなら殺してみろ」

 

「一つだけ聞いておく。貴様がこのレーティングゲームにおけるメリットはなんだったんだ?」

 

「簡単さ。コレクションはコンプリートしてこそだろう?今や絶滅危惧種である猫魈の一家、それも白と黒の番いの家族なんて珍しいだろう」

 

「そうか。これでためらう必要はなくなったな」

 

こいつはここで殺そう。

 

「ラウザルク!!」

 

オレ自身に雷が落ちたことにアウル・ダンタリオンが一瞬の隙を見せる。その隙を付くようにラウザルクで強化された肉体を駆使して黒歌達の両親の近くにまで移動し両手を押し付けて次の術を発動させる。

 

「ジケルド!!マーズ・ジケルドン!!」

 

父親の方には+の、母親の方には−のジケルドを撃ち込み両者を磁力で拘束した後にマーズ・ジケルドンで更に拘束して黒歌達の傍まで送っておく。

 

「ば、ばかな!?ここまで強いとは!?」

 

「言ったはずだ。お前はオレを怒らせたと。貴様相手に力を押さえる理由は一つもない!!」

 

残存魔力は残り2割を切ったが問題など一切無い。残った内、1%だけを残して最後の一撃に注ぎ込めばいい。

 

「さあ、この世に別れを告げる時間だ。遺言程度なら聞いてやろう」

 

魔力を練り上げていき、あとはキーワードである呪文名を告げるだけだ。

 

「私の勝ちだ、ゼオン・ベル」

 

その言葉と共に背後で、正確にいえば黒歌達の傍で変化を感じた。振り返ると、マーズ・ジケルドンが消失してジケルドの効力も失われたのか、自由となった黒歌達の両親がその爪で黒歌達を切り裂いていた。そして、オレも背中から熱い物を感じた。

 

「ごほっ」

 

口から血を吐きながら視線を降ろせば禍々しい魔力を纏った刀がラウザルクで強化されているオレを貫いていた。

 

「切り札という物は最後の最後まで見せないのが重要なのだよ」

 

「……違うな。間違っているな、切り札は見せないのが重要なんじゃない」

 

「まだ喋れるか。だが、それも後少しだ。この刀は本来、殺傷力をほとんど持たない代わりにあらゆる防御を無視する物だ。それにかなり強力な毒を仕込ませてもらった。もって20秒と言ったところか?」

 

「ああ、体が動きにくいと思ったら毒か。まあ、問題ないな」

 

「なに?」

 

「左を見てみな。そこにすべての答えがある」

 

オレの言葉に従い左を向いたアウル・ダンタリオンが息を飲むのを感じると共に役目を果たしたオレは散っていく。アウル・ダンタリオンの視線の先に居る本体(・・)の莫大な魔力を感じながら。

 

媒介である髪の毛に戻っていくオレと黒歌達の式髪を眺めながら、隠れて練り上げた魔力を解放する。

 

「これでトドメだ!!我らが怒りを喰らい高まれ!!ジガディラス・シン・ザケルガ!!」

 

本家のジガディラス・ウル・ザケルガよりも巨大で、魔力のチャージ量を示す雷のマークが入った宝玉の数も倍になった大砲を抱えた女神がオレ達の目の前に現れる。オレが普段は押さえている魔力と死体を弄んだ怒りを喰らい、急速にチャージが終わる。

 

「なぎ払え!!」

 

オレの一言でジガディラスが己の内に溜め込んだ魔力を雷に変え、雷はプラズマへと変化して打ち出される。ジガディラスから打ち出されたプラズマは電気を通さない鉱石を融解させて蒸発させる。そしてそのままアウル・ダンタリオンを飲み込み、アウル・ダンタリオンが張った結界と、その先にあるレーティングゲームのフィールドを形成する結界すらも貫く。

 

アウル・ダンタリオンが死んだことでまさしく糸の切れた人形のように動かなくなった黒歌達の両親を新たに生み出した式髪に抱えさせる。

 

「黒歌、白音、お父さん達をゆっくりと寝かせてあげような」

 

慌ててやってきたサーゼクスの眷属を無視して拠点へと転移する。それから知り合いに連絡を入れて葬儀に使う物をその日の内に集め、黒歌達の両親の体を清めて最後の別れを二人にさせる。

 

翌日、棺桶に二人をおさめてから、退魔師に教えてもらった陣を敷く。骨すら残さずに燃やし尽くして悪用されないようにする為の物だ。その陣の上に棺桶を降ろす。後は陣に魔力を通せばすべてが燃え尽きる。

 

「黒歌、白音。二人で逝かせてやれ」

 

喪服を着て、先ほどまで大泣きをしていた二人を陣の方に押してやる。

 

「……白音」

 

「……うん」

 

5分程立ち止まった後、二人は一緒に陣に魔力を送り込み、陣がその効力を発動させる。燃え尽きていく棺桶を見届け、すべてが終わった後、二人はまた泣き出した。オレは二人を抱きしめる。二人もオレに強く抱きついてくる。

 

なぜ、こんなに幼い子供達に酷い現実が突きつけられるんだろうな。こんな世界、オレは嫌いだ。探せば他にもオレ達の様な子供が居るんだろうな。そいつらとなら、この感情を共有できるんだろうな。

 

探そう。オレ達の同類を。そして、力を貸し合おう。少しでもまともな未来にたどり着く為に。そうしよう。

 

 


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