モンスターハンター 〜狩人の物語〜   作:やべー奴

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第4話 道を阻む青い影ランポス

メルとリレンはメラルーが操る竜車に送られ、いつもの密林に来ていた。今回の目的はブルファンゴを五頭狩猟するというものだ。ブルファンゴとは茶色の毛皮に覆われた猪型の小型モンスターで牙獣種に分類される。一対の大きな牙が特徴的だ。彼等にはランポスと同様に群れを作る習性があり、その中で最も強い雄の個体が中型モンスターのドスファンゴとして君臨するのだ。

 勿論、現在この密林ではドスファンゴの存在は確認されていない。あくまで群れから逸れたブルファンゴ達を狩猟するという形だ。

 そして今回がメルとリレン、二人で行う初めての狩りだ。息合わせという意味でも今回のクエストはピッタリであろう。

 

「よし! 準備完了っと!」

 

 準備を終えたメルはテントを後にし、アイテムポーチの栓がきっちり締まっているか確認する。

 

「リレンは大丈夫〜?」

 

 栓がきっちり締まっている事を確認したメルは笑顔を浮かべリレンの方に視線を移す。

 リレンは切り株に腰掛け弓矢のハンターボウに不備が無いか確認していた。緊張した様子のリレンはメルの声にビクッと肩を震わせ急いで立ち上がる。

 

「は、はい! 大丈夫です」

 

 リレンは背中にハンターボウを掛け頭防具をハンターキャップを深く被る。それを見たメルも笑みを浮べハンターヘルムを被る。

 

「よし、じゃあ行くか!」

 

「は、はい!」

 

 両者、準備を終えた事を確認しベースキャンプを後にしようとする。

 これからの狩りに、何よりリレンとする初めての狩りに胸を膨らませ何処か浮足立つメルに対し緊張とメルに迷惑を掛けないかというプレッシャーにリレンは肩をこわばらせていた。

 そんな二人の様子を眺めていたメラルー。メルはいつもの調子だし置いとくとして、それよりもリレンの様子が気になった。

 

「リレン、もっと肩の力を抜いた方がいいニャよ。 いざという時に力が出せないニャ」

 

「は、はい」

 

 メラルーの言葉を聞きリレンは気を落ち着かせる為ゆっくりと大きく深呼吸をした。体に溜め込んだ空気をゆっくりと吐き出していくとそれにつられ心に溜まっていた固い気持ちも一緒に吹き出ていく感じがして少し気が楽になった。

 

「……うん!」

 

 緊張をほぐし後は気合を入れるだけだとリレンは自分の頬を強く叩いて活を入れる。

 リレンは気力を込めた顔でメルの方を見て頷く。メルもそれに笑顔で返し、改めて二人で密林の緑に足を勧めていく。

 

「頑張るニャよ〜」

 

 メラルーは二人が無事に帰って来る事を祈りながら手を降って見送る。メルとリレンは振り向きながら手を振り緑の中に消えていった。

 

 

 密林を歩く事、数十分。二人は腐植土が目立つ幅の広い獣道を進んでいた。この道は地図にも記されており同じ景色が続くこの密林でも数少ない自分の現在位置を知る事のできる座標にもなる。勿論メルも過去の狩りで何度かこの道を通っているので自分が今何処に居るのかも理解できた。対してリレンは初めて訪れるこの密林の地に不安を抱き緊張の糸張り巡らせながら進んでいた。

 

「んーと、ブルファンゴが居るのはもっと先かな」

 

 メルは片手で地図を広げながら歩く。リレンも時々、地図に目を運ぶが大雑把に書かれた地図からは彼女の視点から見れば対した情報も得られる筈も無くただの気休めにしかならなかった。

 

「まだ先ですかね?」

 

「いや、もうちょいだと思うよ。」

 

 メルは地図を指差す。指の置かれた所には目印が書かれておりそこにブルファンゴが居るという事を意味する。ちなみにこの印はメラルーが書いたもので、この場所にはキノコが沢山自生しており、キノコが好物のブルファンゴを探すならまずここがいいという事らしい。

 

「でもキノコかぁ〜〜美味しそうなのあればいいなぁ〜」

 

 ベジタリアンのメルはキノコ、沢山、自生、の言葉でワクワクしていた。緊張するリレンを他所目に沢山のキノコを想像し顔が綻ぶメル。

 だが木影から聞こえる音にメルは直ぐに頭を切り替え反応する。

 

「リレン、何か居る」

 

 メルは立ち止まり手でリレンを制す。リレンも慌てて立ち止まり辺りに見回し耳を澄ます。微かに見えた青い影に草木を掻き分ける音、それも複数だ。リレンは心臓の鼓動がどんどん速くなっていくのを感じた。

 

「来た! ランポスだ!」

 

 突如、森の暗闇からランポスの青い影が飛び出る。それを合図に次から次へとランポス達が姿を現す。

 気付けば四匹、あっという間に周りを囲まれていた。

 

「そ、そんな!」

 

 思わず後ずさりしてしまうリレン。突然の強襲にすっかり頭が回らなくなっていた。メルは腰に掛けたハンターナイフの柄に手を掛け口角を上げる。

 

「よし! 行こうリレン!」

 

「……ッ! はい!」

 

 メルはハンターナイフを勢いよく引き抜き目の前に立ち塞がるランポスに突っ込んでいく。メルの声に今の状況を理解しリレンも一歩遅れてハンターボウを構え腰に掛けた矢筒に震える手を伸ばす。

 

『ギャァァ! ギャァァ!』

 

 ランポス達も掛け声を合図に一斉に動き出す。だが出だしの速さならメルが勝っていた。ランポス達が動き出す前より行動を起こしていたメルは既に一頭目のランポス目掛けてハンターナイフを振り上げていた。

 

「うおぉぉぉ!」

 

 ランポスの首に斜め一線、力強くハンターナイフを振り下げる。刃を受けたランポスを鮮血を流し痛みに悲鳴を上げ、バックステップしメルから距離を取る。だがその闘争心は傷を受けてなお失せる事なく、眼光を殺意に染まらせている。

 

「まだだぁ!」

 

 だがメルも、ランポスに反撃の暇を与えんばかりに直ぐに距離を縮める。

 一方リレンは、迫り来るランポスに狙いを定め高鳴る心臓の鼓動を抑えながら弦を引き絞る。だが一頭に狙いを定めていた為他のランポス達はリレンの視野に入らなかった。

 

「ギャァァ!」

 

「!?」

 

 リレンのすぐ横からもう一頭のランポスが飛び付いてきた。ランポスの鳴き声に反応し咄嗟に膝を降り姿勢を低くする。なんとか紙一重で避ける事に成功したが先程のランポスがすぐ目の前まで迫って来ていた。

 

「ギャァァァ!」

 

「うわっぁぁ!」

 

 リレンはランポスに押し倒され仰向けに倒れ込んでしまう。直ぐに立ち上がろうとするがランポスに胸元を踏まれ動けなくなってしまう。

 

「うぅぅっ……」

 

 リレンを押さえつけたままランポスは口を広げ牙を顕にしリレンの頭を噛み砕こうとする。顕になるランポスの牙を見てリレンは何も考える事ができず頭が真っ白になった。

 

「ッ!? リレン!」

 

 メルはリレンの悲鳴が耳に入りランポスを前に咄嗟に後ろに振り向く。メルの意識が離れた事をいい事に目の前にいたランポスは容赦なくメルの腹に噛み付く。

 ハンター防具に穴を空け、牙がメルの脇腹に刺さり込む。

 

「ぐっ!? ……うぉぉらぁ!」

 

 脇腹に鋭い痛みを感じ顔を歪めるが、自分の脇腹に噛み付き離そうとしないランポスの頭目掛けて思いっきりハンターナイフを突き刺す。

 

「ギィャァァァァ!!」

 

 メルの脇腹から牙を解き激しい痛みに悲鳴を上げるランポス。メルは直ぐさまハンターナイフをランポスから引き抜き左脚を軸に半回転し悲鳴を上げるランポスの胴体を横一文字に斬りつける。斬りつけられたランポスはそのまま声も上げずに事切れた。

 

「うおぉぉぉ!」

 

 それでもメルは止まらず、更に半回転し勢いをつけリレンを押さえつけ噛み付こうとしているランポス目掛けてハンターナイフを全力で投げつける。

 メルの手から投げられたハンターナイフは不規則な回転を加えながらリレンを押さえつけるランポス目掛けて飛んでいく。

 

「ギャァァ!?」

 

 メルの投げたハンターナイフはランポスの胴体にえぐり込む様に突き刺さる。意表をつかれたランポスはリレンを押さえる力を弱め悲鳴を上げる。

 ランポスの力が弱まる事を体で反射的に感じたリレンは体を暴れさせランポスの拘束を解き地面に落ちたハンターボウを拾い上げて逃げるようにランポスから距離を取る。だが別のランポスがリレンを逃さんと後を追う。リレンの額からは大粒の汗が流れ出ていた。

 

「リレン! 後ろから別の奴が来てる! 急いで逃げるんだ! ――うわぁ!?」

 

 しかしメルの方へも一頭のランポスが迫ってきた。ランポスはその鋭利な爪でメルを斬り裂こうとする。メルはとっさに盾でガードするが反撃するためのハンターナイフはあちらでのたうち回るランポスに突き刺さったままだ。

 

「あぁぁ! 忙しいよ!」

 

 メルは足でランポスを押し退け盾を使って思いっきりランポスの頭をぶん殴る。ランポスは悲鳴を上げ、スキを見せるが武器を持たないメルはそれ以上の追撃を仕掛ける事はせずハンターナイフが刺さったランポスに向かって走り出す。

 一方ランポスに追われるリレンは反撃しようにも弦引く暇さえ無くただ逃げる事しか出来ず、それ以前にリレンは恐怖に駆られ闘争心はもはや無に等しい状態だった。

 武器を取り戻すためランポスに近づくメル。メルの接近に気付いたランポスはハンターナイフが胴体に刺さったままにも関わらずメル目掛けて爪を振り上げる。

 

「当たんないよ!」

 

 メルはランポスの爪を横にステップを踏む事で楽々と避けそのままランポスの横に回り込む。さらにランポスの首に右手を回し首を締めるように固定させる。

 

「うおおぉぉ!!」 

 

 そしてランポスの体を支えに自分の体を浮かせる。メルの体重が乗り掛かる事により重心をずらしバランスを崩して転んでしまうランポス。メルはランポスを締め付けたまま左手で胴体に刺さったハンターナイフを引き抜きようやく武器を手にし、ランポスの喉元を深く掻っ切る。

 

「ギャァ……」

 

 喉に致命の一撃を受けたランポスはそのまま力尽きる。メルはランポスの首に回していた右手を解き立ち上がる。急いでリレンの方に視線を移すと彼女はまだランポスに追われていた。段々と距離が縮まり今にも捕まりそうだ。さらにメルの背後からも先程盾で殴ったランポスが殺意を剥き出しに迫って来ていた。

 頭が足りない、手が足りない……とにかく忙しかった。

 

「…………リレン!」

 

 メルは背後から迫るランポスに見向きもせずリレンを追い走り出す。

 またたく間にリレンに追いつくメル。リレンはメルの存在に気付かず、逃げるのに精一杯の様子だ。リレンを追うランポスもリレンに血眼の様で横にいるメルに気付かなかった。好機と見たメルは走りながら姿勢を低くしハンターナイフは構える。

 

「うおぉらぁ!」

 

 メルはできるだけ力が抜けない程度に手を伸ばしリレンを追うランポスの細い足首を斬り裂く。

 

「ギャァァ!?」

 

 足を斬られたランポスは驚きの声をあげ、力が入らなくなった足を起点に体勢を崩し派手に転げる。

 

「ハァ……ハァ……メルさん!」

 

 ようやくメルの存在に気付くリレン。息を切らしており疲れ切っていた。メルは視線を後ろに移し、自分を追うランポスを確認する。片手剣ではランポスを一撃で仕留めきれないだろう、もしそうなれば先程転んだランポスも体勢を立て直しさらに不利な状況になる。メルの考えは一つにまとまった。

 

「リレン! 後ろの奴お願い!」

 

 メルの声を聞き驚くリレン。背後から迫るランポスに視線を移す。確かにこの距離ならば弦を引き矢を射る時間も十分にある。でも、もしも一撃で仕留められなかったら……その不安がリレンの決断を鈍らせる。

 

「ハァ……ハァ…………ッ!」

 

 だがそれでいいのかとリレンは自問自答する。このままでは自分は何もせずただメルの足を引っ張っただけになる。それだけは嫌だった……メルと一緒に物語を楽しむと言ったのにこれでは彼の物語を邪魔している事になる……それだけは嫌だった。リレンは歯を噛み締める。

 

「ハァ……ハァ…や、やります!」

 

「お願い!」

 

 メルは笑顔で答える。リレンは彼の笑顔を見てこんな彼の笑顔を崩したくないと心から思う。

 リレンは振り向きハンターボウを構え迫り来るランポスと向き合う。ランポスとの距離はまだ十分ある、行ける!と確信したリレンは矢筒から大きな矢を一本抜き取る。そのまま矢を弓に掛け力強く弦を引く。 

 

「……いけぇぇ!」

 

 リレンは一瞬で狙いを定め、弦を引く手を離す。弦の振動音と共に放たれた矢は真っ直ぐブレること無くまるでランポスに吸い寄せられるかの様に飛んでいく。

 

「ギャァ!?」

 

 放たれた矢はそのままランポスの眉間を貫きランポスの体を吹き飛ばす。

 

「ギャァ……」

 

 ランポスはそのまま地面に倒れ力尽きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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