ランポス達に襲撃からなんとか抜け出したメルとリレンは沈んていく太陽を見て一度ベースキャンプに戻っていた。
ブルファンゴを狩猟する筈がランポス達に阻まれ目的地にたどり着く事すら出来ない。そんな現実にメルは違和感をリレンは焦りをそれぞれ感じていた。
「ニャ……これで大丈夫ニャ。 どうかニャ?」
メラルーは防具を脱ぎインナー姿のメルの脇腹に丁寧に包帯を巻く。ランポスから受けた傷の手当てをしてもらっていたのだ。
「うん! ありがとう!」
メルは笑みを浮かべメラルーに礼を言う。薬草を挟んで巻かれた包帯は丁寧に、尚かつ動きを損ねぬ程の絶妙な固さで巻かれており、メルはメラルーの器用さに感心する。
メルが脇腹の傷の具合を確かめていると心配のそうな顔を浮べたリレンがゆっくりと近づいて来た。
「大丈夫ですか……メルさん。 ……そ、その、私のせいで……」
リレンは小刻みに体を震わせうつむく。申し訳なさでメルの顔を直視する事が出来なかった。
メルはそんなリレンの肩を優しく叩き、大丈夫だよと笑顔を浮かべ颯爽と脱いだ防具を着込み始めた。
「ニャ? メル、今日は一旦休んだ方がいいニャよ」
「え……?」
メルは慌ただしく動かしていた体を止めメラルーを見て何故?と問う様に首を傾げる。
「もうすぐ日が沈むニャ……ランポスも居るし危険ニャ」
「……そっかぁ」
メルはメラルーの言葉を聞き気を落ち着かせる様に息を吐く。
「……あした行くか!」
「その方がいいニャ」
「………」
メルもリレンも、分かっていた。今のままランポスに挑んでも勝ち目があるか……それどころかブルファンゴにすら勝つ自身すら無かった。そう思わせる程、先程の戦いは酷い物だったのだ。
二人と一匹はベースキャンプで夜を過ごす為それぞれ準備を始めていた。大体の準備を終えたメルとリレンは焚き火の用意をするメラルーの横に並ぶ様に座り込む。
「んニャ……でもどうしてランポスなんかに……今までは普通に倒せてたのにニャ、それに今度はリレンも居たニャ」
メラルーは手に持った火打石を慣れた手付きで擦り合わせ用意していた焚き火に火をつける。ぼうぼうと燃え上がる火は、いつの間にか薄暗い闇に包まれていた辺りを橙色で照らす。例外はあるが、生き物は本能的に火を恐れるという。ベースキャンプの位置は基本的に肉食生物の居ない安全な場所に建てられるのだが、それでも念には念を押す必要がある。この焚き火は、冷える夜に温もりを与えるだけでは無くモンスターを寄せ付けない、獣避けの意味もあるのだ。
メルとリレンはメラルーを挟む様に並び、焚き火の温もりを掌で感じとる。
「ん〜〜なんかね、動きづらかったんだよ、なんて言ったら良いのかな〜〜とにかく忙しかったんだ!」
メルは頭を掻きむしりながら答える。自分の思う事がうまく言葉に表せず苦労している様子だ。
要領を得ない大雑把な言いようだがリレンはそれに心当たりがあるとか何かを思い出した様に顔を上げる。しかしこの思いを言葉にして出す勇気が今の彼女には無かった。
メラルーは「んニャ〜〜」と唸り声を上げて何かを考えている様子だ。しばらくするとメラルーは唸り声を止めメルとリレンの二人を交互に見る。
「もしかしたら二人とも立ち回りに問題があるかもしれないニャ」
「ん〜〜立ち回り?」
何処かで聞いた事のあるような単語にメルは思わず聞き返す。対してリレンはその言葉の意味を理解したのか顔を上げメラルーの声を聞き漏らすまいと耳を集中させる。
「んニャ、まずランポスとの戦った時の事を教えて欲しいのニャ」
二人はメラルーにランポス達と戦った頃の出来事を説明する。メルはどうも要領を得ない曖昧な説明で話す。リレンは恥ずかしながらその時の様子をパニックのあまり覚えておらず大した説明も出来なかった。
それでもメラルーは二人の声に耳をピクピクと動かす。
「メルはガンナーとパーティーを組んだことがあるかニャ?」
メルは目を上に配らして訓練所での頃を思い浮かべる。
「いや、無かったね」
メルの答えにメラルーは納得したように頷き今度はリレンに同じ質問をかける。
リレンはその問いに答え辛いのか、そわそわした様子で重い口をひらく。
「わ、私は、師匠と二人っきりでパーティーを組んだことは……」
リレンは額に少し冷や汗を浮かべる。隠す気は無かったのだが、彼女はメルのような訓練所の出ではなく、師匠を持ち、その元で修行を積みハンターになった身だ。だがこの話は、彼女の口から人に話すのは少し気が引けた。
リレンは横目でチラリとメルに一瞬視線を向ける。メルはリレンに師匠が居たという初耳情報に好奇心に目を輝かせていた。リレンは冷や汗を浮べる。
「へぇ、リレンって師匠がいたんだ! ねぇねぇ――」
「ちょっと待つニャ……」
メルは興奮した様子でリレンに色々と聞こうとしたがメラルーに、話の本題が違うと遮られてしまう。
リレンは安心した様子で息を吐く。
「なる程ニャ……もしかしたら二人ともガンナーと剣士で狩りをするのが初めてだから上手く連携が取れなかったかも知れないニャ」
「おぉ! そうか!」
メルは自分の感じていた違和感に気づきスッキリした様子で笑顔を浮かべるが、一つに気になる事があった。
「ん……でも連携ってどうするの?」
「簡単な事ニャ。 二人ともお互いの距離を意識すればいいのニャ。 特にリレンはガンナーだからモンスターとの距離を中距離で維持する必要があるのニャ。 逆にメルはリレンにモンスターを近づけさせない様にとにかく近づいてモンスターの気を引く事が重要ニャ」
メラルーは頷き納得する二人を尻目に更にと話を続ける。初めに――狩りに絶対など無い、一番重要なのは状況に応じて臨機応変に動ける柔軟さだ、と伝える。二人に今から話す、ハンターでも、オトモアイルーでもないただのメラルーの知識だけに囚われぬよう。
それでもメラルーの話は二人を上の空にさせる程、説得力あるものだった。初めは雲のようなふわふわとしたイメージが頭の中に浮かぶだけだったが、メラルーのその丁寧な説明に加えた補足、次第にメラルーの話す、一言、一言が迷う間も無く頭の中にゆるやかに流れてきた。
――――
「――で以上ニャ」
ようやく二人に話し終え、一息つくメラルー。ふと空を見上げるとすっかり暗闇に染まっていた。メラルーは未だ消える様子の無い焚き火に木の枝を薪代わりに投げ込む。
「おぉ! なんか行けそうな気がしてきた!」
メルはメラルーの話を聞き、頭の中には説明通り狩りを成功させ満足する自分の姿が浮かんでいた。無駄に根拠の無い自信がメルを奮い立たせる。
「ニャ……危ないニャ……リレンは大丈夫かニャ?」
そんなメルの様子を呆れた目で眺めるメラルー。
「あっ!? はい、大丈夫です」
何処か遠い目をしていたリレンはメラルーの言葉にビクッと驚いてから、先程の暗さを感じさせない微笑みを浮かべる。それから拳を強く握り口を固く閉じる。
何故か妙に覇気が感じられるリレンを見て、メルと同じく危険かも知れないとメラルーは冷や汗を浮べる。
「そろそろ夕食にするかニャ」
メラルーはそう言うと、立ち上がり竜車の方へと歩き出す。メルとリレンもお腹が空いてきた頃合いの様で表情を柔らかくし喜ぶ。
しばらくするとメラルーが竜車の中から出てきた。手には骨の芯が通った生肉ともう片方の手には小さな籠を持っていた。
メラルーは「肉はオイラが焼くニャ」と何処か熱の籠もった言葉を放ち、メルに籠を渡す。籠を受け取ったメルは嬉しそうな笑顔を浮べる籠の中身を眺める。リレンはその籠の中身が何なのか気になり、その些細な好奇心の目で籠の中身を覗く。
そこには、二種類の野菜が籠一杯に詰められていた。サツマイモにナナハクサイ、どちらも低価で手に入る野菜だ。
「メルさんって野菜が好きなんですか?」
リレンの問いにメルは「うん! 大好き!」と満面の笑みで答える。リレンは野菜が好きでも嫌いでも無い訳なのだが彼のように野菜を大好きと豪語するのが珍しい様で感心した様子で「へぇ〜」と頷く。
「でも、肉は食べれないみたいニャ。」
割り込む様にメラルーは言う。メラルーはそのまま生肉に刺さった太い骨を持ち焚き火の火に当てていく。パリパリと音をたて焼かれていく肉は香ばしい香りを漂わらさる。
「そ、それじゃ匂いが……」
リレンは焦った様子でメラルーに話し掛ける。対してメラルーは特に焦った様子も無く落ち着き払った態度で肉を焼いていく。
「……匂いは大丈夫らしいニャ」
メラルーは決して視線を焼かれる肉から逸らさず言う。
「うん! 匂いは大丈夫!」
彼らの言葉にリレンはほっと息を吐き一安心する。もう一度メルの方へ視線を移すと彼はその香ばしい香りに不快感を示す様子も無く平然としていた。だが妙に鼻をピクピク動かしているメルに、本当に大丈夫なのかと怪しげに思うリレン。
それからしばらく後、肉を焼くメラルーの目がキラリと輝く。
「んニャ! 上手に焼けたのニャー!」
メラルーはこんがりと焼けた肉を天高く持ち上げる。持ち上げられたこんがり肉は、匂いの煙をまとい二人の嗅覚を刺激する。肉嫌いの筈のメルまでもが本能でこれは美味いと感じてしまう程。
「んニャ」
「あ、ありがとうございます」
リレンはメラルーからこんがり肉を受け取る。自分で焼いた物より遥かに美味しそうだった。
「よし! んじゃいただきまーす!」
二人とも食事の準備ができた事を確認したメルは野菜の入った籠を抱きしめながら落ち着きのない声を上げる。メルの掛け声を聞いたリレンとメラルーも手を合わせ感謝の気持ちを込めいただきますと呟く。
それから食事を終えた彼らは明日の為にと早めに眠る事にした。
こうして狩場で過ごす初めての夜が明けた。
――――
二人と一匹は朝早くから起き上がり、既に狩りの準備を終えていた。
「よし! リレンも大丈夫?」
メルは相変わらずの笑顔を浮べ、リレンの方を見る。
「は、はい。 大丈夫です」
リレンは緊張した様子で返事をする。メラルーの話しを聞き少しは安心し、自信もついてきたが昨日の様な事を繰り返してはいけないと思う度に緊張してしまう。
「大丈夫、大丈夫! リレン、楽しく行こうよ!」
メルはリレンの背中を強く叩き、笑顔を浮べる。驚いたリレンは少し前のめりになる。
「んニャ、メルももっと慎重に行くニャよ」
メラルーの呆れ混じりの声にメルは笑い声を上げながら、大丈夫と返事する。
「んニャ……あんな様子だから……リレン頼むニャよ」
メラルーは呆れた顔でメルに聞こえないよう、リレンに耳打ちする。メラルーの言葉にリレンは反応に困り苦笑いを浮べて返事するしか出来なかった。
「よし! んじゃ行くか!」
「は、はい!」
いよいよ狩りをする為ベースキャンプを後にしようとするメルとリレン。二人は頭防具を深く被る。
「頑張るニャよ〜〜」
メラルーの声援を背に二人は昨日と同じ様にベースキャンプを後にする。
ベースキャンプを後にしたメルとリレンはブルファンゴの居るとされる目的地に着くまでなるべくランポス達と遭遇しない様に昨日より一層慎重に歩を進める。
そのお陰か、二人はランポスと遭遇すること無く目的地にたどり着く事ができた。
「見て、リレン! 居たよ!」
メルは草むらに隠れ、指を指す。その場所は視界の悪い密林の割に太い木が数本生えているだけで草丈もそれ程高くなく、視界は良好な場所だ。リレンはメルの指差す先へと視線を向けると五頭のブルファンゴ達がうごめいていた。丁度目的の数と同じ数だ。
「……よし」
リレンは背中に担いだハンターボウを手に取りそのハンターボウの柄をギュっと握る。メルも腰からハンターナイフを抜き取り戦闘態勢に入る。
「リレン、背中は任せたよ!」
「は、はい」
メルの声にリレンは力強く頷く。
「よし! 行くか!」
メルの声を合図に二人は一斉に草むらから飛び出てブルファンゴ達に向かっていく。リレンは自分の交戦距離を考え、途中で立ち止まり矢の入った矢筒に手を伸ばす。
「うおおぉぉぉ!!」
叫び声を上げながら近づいてくるメルにブルファンゴ達は反応し「フギィィ」と唸り声を上げながら力を溜めるように地面を踏み鳴らす。
ある程度ブルファンゴ達に近づいたメルはそのままブルファンゴに攻撃を仕掛けること無く今度は方向を変え横に全速力で駆け抜ける。自分に気を引かせブルファンゴの突進攻撃がリレンに向かないようにする為だ「」。
ブルファンゴ達はメルの思惑通り、一斉にメルに向かって突進する。
「うぉ!?」
予想よりも遥かに凄まじいブルファンゴの勢いにメルは驚きながらも思っきり前に飛び、突進は避ける。そのままのブルファンゴ達は止まりきることができずメルの横を走り過ぎてしまう。
すると、一頭のブルファンゴが悲鳴を上げその場に転げてしまう。そのブルファンゴの胴体にはリレンの放った矢が突き刺さっていた。
「ナイス! リレン!」
「は、はい!」
自分の攻撃が当たった事にリレンは確かな手応えを感じる。一方的にやられた昨日とは違い、自分でも役に立てると。
メルはリレンが転ばせたブルファンゴに向かってハンターナイフを構え接近する。転んだブルファンゴは立ち上がるのに苦戦している様子で足を暴れさせている。
「うおぉぉぉ!」
メルはブルファンゴの胴体に全力で斬りかかる。しかしハンターナイフの切れ味では厚い皮と毛皮に守られたブルファンゴに深い傷を与える事は出来なかった。だがそれでもメルは馴れぬ感触に苦戦しながらもブルファンゴにニ撃、三撃と次々へと攻撃を加える。立ち上が事すらままならない上に猛烈な連撃が加わればもはやブルファンゴに抵抗する手段など無かった。メルに斬り刻まれたブルファンゴはそのまま絶命した。
「よし!」
ブルファンゴが絶命した事にメルは喜び笑顔を浮べる。
「メルさん! ブルファンゴが!」
喜びもつかの間、リレンの荒い声にメルは驚いて振り返る。そこにはメルにもう一度狙いを定めたブルファンゴ四頭が土煙を上げ突進してきていた。
それをリレンの注意のお陰で余裕をもって回避するメル。リレンはメルの横を走り過ぎる一頭のブルファンゴに狙いを定め矢を放つ。矢はブルファンゴの厚い皮と毛皮を貫通し見事、胴体に突き刺さる。先程の様に転ばせるまでには至らなかったがブルファンゴは「フコー……フコー」と鼻息を痛みで荒くさせる。ブルファンゴは怒りの眼光でリレンに狙いを定め、地面を強く鳴らす。
「……! 行かせるか!」
メルはリレンを狙うブルファンゴを止める為、ハンターナイフを振り上げ、斬りかかる。だがメルの刃が届く前にブルファンゴは力強く地面を蹴り出し、リレン目掛けて突進してしまう。
ブルファンゴは突進は単調で方向転換も聞かない。ましてやリレンとの距離を考えると避ける事など容易な筈……しかし目の前にして分かる、ブルファンゴのこの力強さ。リレンは体を動かす前に頭の中がパニックで真っ白になる。リレンとブルファンゴの距離が近づいていく。
「リレン!!」
メルは全力の大声でリレンの名を叫ぶ。リレンはその声に我を取り戻す。
「……うわぁ!」
リレンは間一髪でブルファンゴの突進を体ごと横に飛び込む事で避け、直ぐに立ち上がる。昨日の様には絶対になりたくない。リレンは気合を入れる為、自分の頬を強く叩く。
メルは安心した様子で息を吐くが、先程の三頭のブルファンゴがメル目掛けて突進を仕掛けていた。
メルはブルファンゴ達の突進を横にステップを踏み軽々と避ける。
「よっと! リレン! そっち奴は任せたよ!」
「……はい!」
メルはリレンにそう言い残すと、三頭のブルファンゴを叫びながら追いかける。リレンも力強く返事を返し、自分の目の前で突進の準備をするブルファンゴと向き合う。
「フゴォォ!」
ブルファンゴは鳴き声を上げリレンに突進する。いくらもう臆する事が無いとはいえ、ブルファンゴの速い突進に対し今のリレンではそれに咄嗟に反応する事ができない。リレンは紙一重でブルファンゴの突進を避ける。
「……うっ!」
リレンは横を走り過ぎるブルファンゴを尻目に冷や汗を浮べる。そう何度も避けられない、早く決着をつけなきゃとリレンは心の中で思う。焦りが生じる中、ふとメラルーの言葉が頭をよぎる。
『ブルファンゴは突進するしか脳のない奴らニャ。 それを利用するして壁かなんかにぶつければ奴らはきっと空きを見せるはずニャ』
メラルーの言葉を思い出し、辺りに何か使えそうな物は無いかと見回す。
「……あれだ」
リレンはブルファンゴを背に走り出す。その先には幹の大きな木が一本生えていた。木の幹に手を当て硬さを確認する。
「……よし!」
これなら行ける、と確信したリレンは木を背に再びブルファンゴと向き合う。対してブルファンゴも今度こそとばかりに力強く地面を踏み鳴らし力を溜める。
リレンは矢筒から矢を一本抜き取り、いつでも動ける様身構える。
「フゴォォ!!」
ブルファンゴは今までよりも更に大きな土煙を上げながら突進してくる。リレンは物凄い勢いで近づいてくるブルファンゴを目でしっかりと追う。
今!リレンはそう確信し体を横に動かす。ブルファンゴはいきなり現れた大きな木に驚くが今更止まる事も出来ず、そのまま木の幹に重音を鳴らし激突する。
「フゴォォ〜〜!」
頭を思っきりぶつけたブルファンゴは頭を回し悲鳴を上げ、動けなくなる。
それを見たリレンはすぐさま弓に矢を掛け、力強く弦を引き、そのまま至近距離から矢を放つ。鋭い音と共に放たれた矢はブルファンゴの脳天を貫き、一撃で仕留める事に成功する。
「ハァ、ハァ、……や、やった」
動かなくなったブルファンゴを前にリレンは確かな達成感を感じる。
「あ! そうだ、メルさん!」
リレンはまだ狩りの途中だという事を思い出し、メルの方へ視線を移すと、そこにあった光景はリレンを驚愕させる物だった。丁度、メルが最後のブルファンゴにトドメを刺していた所だったのだ。メルの近くには他にも二頭のブルファンゴが息絶えていた。メルはブルファンゴに突き刺したハンターナイフを引き抜くと笑顔を浮べ、リレンに手を振る。
「メルさんってやっぱり凄いな……」
リレンは震えた声でそう呟くと、ハンターボウを背中にしまい、駆け足でメルに駆け寄る。
「へへっ、上手くいったね!」
メルはハンターナイフを腰に戻しリレンに向けて笑顔を浮べる。
「は、はい……」
リレンはから返事で返す。驚きでまともな返事を返す、暇も無かった。
「あっ! そうだ……」
突然、何かを思い出したのかメルは顔色を青白くさせる。
「ねぇ、リレン……剥ぎ取りやってちょうだい……」
「え……あっ! 確か剥ぎ取りが……」
リレンもメルの言葉に狩りに行く前、確かメルが剥ぎ取りが苦手とか呟いていた事を思い出す。
「わ、わかりました」
リレンは、以外とデリケートな人なんだなと思いながら苦笑いを浮べた。