ダンジョンに平和の象徴がいるのは間違っているだろうか   作:黒納豆

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今回はかなりのご都合主義です。


第三話

ダンジョン27階層。『水の迷都』と呼ばれているその階層を【アストレア・ファミリア】は歩いていた。

 

「みんな〜。怪我ない〜?怪我が無ければこのまま『アンフィス・バエナ』に挑むわよ!」

 

先頭を歩いていたアリーゼが団員達に尋ねる。

 

「HAHAHA、大丈夫だとも!私がいるのに怪我人など出させると思うかい?」

 

それに対して、俊典は自信満々に答えた。

 

「いやいや、トシノリだってずっと周りを見てるわけじゃないんだから、もしかしたら怪我人がいるかもしれないでしょ?その確認よ。」

 

アリーゼは俊典の返答に呆れたように返すが、実際怪我人はおらず消耗も大してしていないようだ。まあ、そもそもLv4が10人、Lv3が2人というパーティーがそう易々と怪我をする筈もない。 

 

「よし、怪我がないなら行こっか!じゃ、皆気を引き締めて行くよ!」

 

アリーゼが号令をかけ、『アンフィス・バエナ』のいる広間へと一斉に入り、すぐに戦闘態勢に入る。だが、滝壺に『アンフィス・バエナ』の姿は見えない。『アンフィス・バエナ』は20Mの巨体。本来なら広間に入ってすぐに見える筈であるのだが、今はその巨体の影すら見えない。

 

「おかしいな。もうインターバルは過ぎている筈だが、何処か別のファミリアが倒したのか?」

 

 

輝夜が訝しげにそう言う。だが、少なくとも『アンフィス・バエナ』の討伐はギルドに報告されていなかった。さらに言えば、【アンフィス・バエナ】を倒せるとすれば、かなりの大派閥でなければならないがそういった大派閥が遠征に行くという情報はない。

 

「いいえ、たぶん冒険者じゃないわ。だってあそこにドロップアイテムがあるもの」

 

アリーゼが輝夜の疑問を否定する。そして彼女が指差す方向を見てみると、そこには『アンフィス・バエナの竜肝』が落ちていた。当然ながら階層主である『アンフィス・バエナ』のドロップアイテムはとても高額な値がつく。そんなものを冒険者が置いて行く筈がない。広間には不穏な空気が流れた。直後、バリッ、ボリッと何かを噛み砕くような音が響いた。

 

「……うそ……でしょ……」

 

「なんで…こんな上層にブラックライノスが……」

 

そこにいたのは2M近くの巨体に黒光りする分厚く硬い皮膚をもっているサイ型のモンスター、『ブラックライノス』だった。だが、本来なら50階層以降のモンスター。その半分であるこの階層にいる筈がない。だが、依然として湖の中の小さな陸地にブラックライノスは立っており、アンフィス・バエナのものと思われる魔石を貪っていた。その事に気づいた【アストレア・ファミリア】はブラックライノスに気づかれる前に逃げようと慌てて踵をかえす。だが慌ててしまったせいか、物音がなりブラックライノスがこちらに気づく。

 

『オオオオオオオオオオオオーーー』

 

雄叫びを上げるブラックライノスは200kgはゆうに越えるであろうその巨体で陸地から陸地へ飛び移り、此方に向かってきた。

 

「まずい、皆、逃げるわよ!?」

 

【アストレア・ファミリア】の面々はすぐに逃走を選択する。本来のブラックライノスであれば深層のモンスターであろうとも一体であれば問題なく倒せただろう。だが、相手は『アンフィス・バエナ』の魔石を貪っていた。それが意味することは強化種であり、Lv5の階層主を倒せるだけの強さがあるということ。故に戦わず逃げることが最適解である。だがーー

 

「団長、このままでは追いつかれるぞ」

 

ブラックライノスはその巨体に似合わず恐ろしい速度で【アストレア・ファミリア】を追ってきていた。

 

「皆、戦闘態勢!セルティ、リャーナ、詠唱を始めて!アスタ、トシノリ、輝夜が前衛!相手は格上よ、3人で連携しながら防いで!後は皆で遊撃して、少しずつ相手を傷付けましょう!」

 

「「「「「了解」」」」」

 

逃げきれないと判断したアリーゼが素早く指示を出し、【アストレア・ファミリア】の面々も戦闘態勢に入る。ブラックライノスは前衛のアスタの元に真っ先に向かっていき、右手に持っていた冒険者のものだったと思われる大剣で攻撃した。それをアスタと輝夜が2人がかりで抑えようとする。だがーーー

 

「「ぐはっ」」

 

ブラックライノスの圧倒的な力によって2人はガードごと弾き飛ばされた。そこに、追撃をしようとするブラックライノスだが、接近していた俊典がそれを許さない。

 

TEXAS SMAAASH(テキサス スマァッーシュ)!!」

 

ブラックライノスに対し、俊典は全力のパンチを見舞う。だが、驚いた事にブラックライノスはそれに反応し自身の体と俊典の拳との間に大剣の腹を差し込み、俊典の拳を防いだ。その代償として大剣は折れ、今度こそブラックライノスに大きな隙が出来た。当然ながらそこを見逃す俊典ではない。

 

DETORIT SMASH(デトロイトォ スマァッシュ)!!!」

 

隙だらけのブラックライノスの腹に俊典の全力が叩きこまれる。だが、ブラックライノスはそれに耐えた。そして、俊典の頭を掴むとそのまま地面に全力で叩きつけた。さしもの俊典もLv6クラスの力で頭を叩きつけられて無事ではいられず、昏倒してしまう。そこに、アリーゼ、リュー、輝夜の武闘派3人が斬りかかる。しかし、ブラックライノスの皮は硬くどれ程切りかかってもダメージを与えることは愚か、傷一つつけられない。

 

「皆、引いて!リャーナ、砲撃行くよ!」

 

魔導士隊が詠唱を終え、切り札たる魔法を発動させ、ブラックライノスに対して一直線に飛んでいく。だが、それに対してブラックライノスがとった行動は()()。魔法を一切避ける事なく魔導士隊に突撃し、そのまま魔導士隊の2人を殴り飛そうとする。だが、間一髪アスタが間に入り盾でガードすることで2人とともに吹き飛ばされつつもなんとか守る事に成功する。そこに再び、アリーゼが攻撃する。

 

「皆、トシノリを回収して急いで逃げて!私と輝夜、リオンでアイツを抑え込む。だから、早く逃げて【ロキ・ファミリア】に救援を依頼して!それまで、なんとか持ち堪えるから!」

 

間違いなく勝てないと判断したアリーゼは数人を残して撤退させる手をとる。アリーゼの指示を受けた団員達は即座に俊典を回収し、少しでも早く救援を呼ぶために全速力で撤退する。それを見たアリーゼは残った2人に声をかける。

 

「ごめんね?付き合わせちゃって」

 

「なに、今に始まったことではないだろう?団長」

 

「そうですね。それに、長く持ち堪えるならこのメンバーが一番妥当でしょう」

 

アリーゼの言葉に対し、2人はそう答えた。

 

「よし、行くわよ!」

 

アリーゼの号令と共に、3人が同時に駆け出す。まずはアリーゼが接近し、連続の刺突を見舞う。しかし、それはブラックライノスの皮に阻まれる。そして、ブラックライノスが殴りかかってくるがアリーゼは危うげなく回避する。次にリューと輝夜が同時に斬撃を見舞い、そしてすぐに離脱する。3人でのヒットアンドアウェイを繰り返すことによりブラックライノスを撹乱していく。

 

「【アガリス・アルヴェシンス】」

 

付与魔法の効果により、アリーゼが爆発的に加速し、ブラックライノスに連続で攻撃を浴びせていく。だが、アリーゼは違和感を感じていた。

 

(おかしいわ、さっきはあれだけ派手に暴れられてたのに、今は全くダメージを負ってない。こんなに上手くいくものかしら?)

 

そう考えつつも、次々と隙を見つけては斬り込んでいく。しかし、直後。ブラックライノスがこれまでより断然速い速度で動き、アリーゼを殴り飛ばした。

 

「アリーゼ!?」

 

「団長!?」

 

ブラックライノスはアリーゼを弾き飛ばし、そこに向かって自身のツノを構え、全力で突撃をした。それをリューと輝夜が必死に止めようとするが間に合わない。アリーゼが覚悟を決めたその時、ブラックライノスとアリーゼの間に大量の雷を纏った俊典が割り込み、ブラックライノスを受け止めた。

 

「もう大丈夫だ!何故って?私が来た!!」

 

そう言った俊典の頭からは血が流れていたが、その笑みはいつもと変わらずとても頼りがいのあるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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