ダンジョンに平和の象徴がいるのは間違っているだろうか   作:黒納豆

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今回、再びの日常会と過去の回想です。


第五話

多くの酒場や宿屋のある西のメインストリート。その西のメインストリートの中でも最も大きな酒場『豊穣の女主人』では、多くの種族の人間達が飲み騒いでいた。そんな中、祝杯をあげるファミリアがいた。

 

「今回の遠征で全員無事に帰ってこれたことと、トシノリの【ランクアップ】を祝って、乾杯〜!」

 

立ち上がったアリーゼが音頭を取り、次には一斉にジョッキがぶつけられる。団員達が盛り上がる中、俊典も近くにいたリューや輝夜と乾杯した。【アストレア・ファミリア】の団員達が談笑し、とても賑やかな雰囲気が流れていた。だがーー

 

「暑いな」

 

当然ながら何かやらかそうとする奴が出てくる。というか輝夜である。彼女は暑いと言うと、突如、自分の着物に手をかけた。

 

「ストォップ!!輝夜少女!やめたまえ、ここは酒場だぞ!」

 

それを見た俊典が慌てて、輝夜の手首を掴んで彼女が着物を脱ぐのを阻止する。

 

「いいだろう〜別に〜。私は気にしないぞ〜」

 

「いや、私が気にするんだ!!と言うか、輝夜少女、君、だいぶ酔ってるよね!?」

 

俊典が説得しようとするが酔っ払った輝夜には響かない。なおも説得しようと俊典だが、突然彼の背中にムニュッと柔らかい物が当たった。

 

「トシノリ〜、輝夜ばっかりじゃなくて私にも構ってよ〜」

 

アリーゼだった。俊典の頭の中に、ブルータス、お前もか!、という謎の言葉が浮かんだ。

 

「わ、わかった。わかったから離してくれ!君のむ、胸が当たっているんだ!!」

 

「なぁに〜、トシノリったら、そんな事気にしてるの〜?おマセさんね〜」

 

俊典は動揺しつつそう言うが酔っ払ったアリーゼには意味がないようだ。普段ならば彼女らもここまで酔ったりはしないのだが、今日はどうやらだいぶ羽目を外したらしい。

 

「いや、気にするよ!?と言うか、おマセさんってなんだよ!私は君達と歳はほとんど同じだろ!!」

 

俊典は悲鳴を上げ、周りに助けを求めるが、皆、ニヤニヤしているか目線を逸らすかの二択である。そうしているとアリーゼが更なる爆弾を追加する。

 

「そういえば〜、リオンはトシノリに抱きつかなくていいの〜」

 

抱き付くということにこの場で1番ふさわしくない少女の名前が上がったことに皆の脳内にハテナが浮かぶ。

 

「だってさ〜、リオンったら昨日トシノリがブラックライノスを殺して、倒れこんだときに、しっかり抱きとめて『お疲れ様です。トシノリ。』なんて私が見たこともないくらい優しい顔で言ったんだよ〜。うら若き乙女としては〜、恋を疑うしかないよね〜」

 

アリーゼのまさかの暴露に、リューの顔が真っ赤に染まる。

 

「ちっ、違います!!あの時は私達を助けてくれた俊典を労ろうと思っていただけでーー」

 

必死に言い訳をするリューだが、直後ドンっと後ろから背中を押され、俊典の胸板に突っ込んだ。俊典がそちらを見るとライラがとてもニヤニヤとしながら、こちらを見ていた。だが、俊典にぶつかったリューはすぐ離れると思われたが、なんとそのまま脱力し、あろうことか俊典の胸板に頬をすり合わせていた。

 

「どっ、どうしたんだい!?リオン少女!?いつもならすぐ離れるか、私をぶん殴っているだろう!?」

 

「なんだか、俊典のどっしりとした体を見ていると、故郷にあった森の大樹を思い出して、とても落ち着きます。」

 

更に動揺する俊典にリューはそうのたまった。どうやら彼女もだいぶ酔っているようだ。なお、俊典は「えっ、私って木と同じ扱い!?」と少し落ち込んでいた。だが、現在俊典は後ろにアリーゼ、前にリュー、そして右腕にリューに対抗意識を燃やした輝夜が抱きついていた。とんだハーレム状態である。ここにとある女好きの都市最大派閥の主神がいたら血涙を流していただろう。

 

「ジブンッ、なにそんなに美少女侍らしとんのや!?ウチと場所変われや!?」

 

……訂正。どうやらもう流していたようだ。どうやら【ロキ・ファミリア】もここで宴を開いていたようだ。

 

「神ロキッ!そう思うなら助けてくれ!」

 

俊典は彼女にも助けを求める。だがーー

 

「トシノリ!ジブン、なにそんな贅沢なこと言いよんのや!ウチへのあてつけか?そうなんか?ああん?」

 

ロキは俊典に対して文句をいい、更に睨みつけるように俊典を見た。だが、ドガンッとおおよそ人の頭から出るとは思えない音が彼女の頭から鳴る。俊典がそちらを見ると、ロキに手刀を叩き込んだ姿勢のリヴェリアがいた。

 

「うちの主神が迷惑をかけたな、トシノリ」

 

リヴェリアは薄く微笑み俊典に謝る。しかし、何故他派閥なのに彼女らと面識があるかというと、今俊典の左手を自分の頭に乗せて「んっ」と言っている金髪金眼の少女が原因である。

 

 

〜約1年前〜

久々の休日。ギルドにLv4になったことを報告した後、いつものように孤児院に寄付をしてホームまで戻っていた俊典は、突如自分の服の袖が引かれたことに気付く。俊典がそちらを見ると、10歳くらいの金髪金眼の少女がいた。

 

「どうしたんだい?何か私に用事かな?」

 

俊典はなるべく少女は怖がらせないように、しゃがみこんで目線を合わせて優しく問いかけた。

 

「……ねえ、貴方は…どうして、そんなに……早く、強くなれたの?」

 

少女は俊典にたどたどしい口調で問いかけた。まさかそんな事を聞かれると思わなかった俊典は面食らう。子供がどうやったら強くなれるか聞くならわかる。だが彼女は何故早く強くなれるかを聞いた。まして、その目は明らかに普通の子供と違い、獰猛な光を放っていた。

 

「どうしてそんな事を聞くんだい?」

 

「……少しでも…早く、強くなりたいから……」

 

そう答えた少女の瞳はとても濁っていた。 

 

「どうしてだい?君くらいの子供なら普通は遊びのことを考えたりするものだが」

 

「遊んでる暇なんてない!私は悲願(ねがい)の為に、強くならなきゃいけないの!!」

 

まるで血を吐くような声だった。俊典は少女の金眼の奥に黒い炎を幻視した。恐らくこの少女には何か、とても悲しい事情があるだろうと察した。事実、少女はとても苦しげな顔をしていた。当然、そんな事を見過ごしておける俊典ではない。

 

「君、名前はなんというんだい?」

 

「……アイズ・ヴァレンシュタイン」

 

俊典は少女に名を尋ねた。そして、名を聞いた時にわかった。この少女は自分の前の世界記録保持者(レコードホルダー)であると。だが、俊典にはそんな事は関係ない。彼にとってレベル高かろうが、世界記録保持者(レコードホルダー)だろうが関係なく、少女は普通の少女でしかない。

 

「では、ヴァレンシュタイン少女。私と鍛錬をしないか?何か強くなるヒントがあるかもしれないぞ?」

 

「………わかった」

 

俊典の誘いに対して少女の答えは了承だった。俊典は「では、ついてきてくれ」と言い、少女がついて来やすいようにゆっくりと歩き出した。

 

 

 

ダイダロス通りの端。あまり人が住んでいないそこに俊典とアイズが立っていた。

 

「では、今から『鬼ごっこ』をしよう。」

 

「鬼ごっこ?」

 

俊典の言葉に少女は疑問の声を上げる。

 

「ああ、片方が鬼となり相手を追いかけ、もう片方はそれから逃げる。鬼が人に触れたら勝ちで、触れることが出来なかったら人の勝ちだ。」

 

「……それが…どうして…鍛錬になるの?」

 

アイズが訝しげな声を上げる。

 

「わからないかい?逃げる相手に触れるということは、相手の動きを予測し、どのように回避しようとするかを読まなければならない。逆に逃げる方は相手の出方を見て、より効率よく相手の手を避けないといけない。前者はモンスターに攻撃を当てるのに、後者はモンスターの攻撃を避けるのに活かせる。よし、それでは最初は君が鬼だ。行くぞ、スタート!!」

 

未だ半信半疑なアイズだったが、俊典が逃げたので急いで追いかける。そして、勢いよく俊典に触れようとするが直前で俊典が回避する。アイズはそのまま何度も俊典に触れようとするが俊典がそれら全てを回避していく。元より負けず嫌いだったアイズは全力で俊典を追いかけ回した。

 

やがて、日が沈み空が赤く染まる頃、アイズは息を切らし、俊典は優しげな笑みでアイズを見ていた。

 

「はぁ、はぁ、一度も、触れられ、無かった……」

 

「HAHAHA、ならまた今度すれば良いさ。知っているかもしれないが、私は【アストレア・ファミリア】のヤギ・俊典だ。もし負けたままが悔しいなら、私のホームに来るといい。いつでも歓迎するよ。」

 

俊典はアイズにそう言った。そして、俊典はアイズをホームまで送り届けた。

 

 

 

その後もアイズは度々、【アストレア・ファミリア】を訪れた。俊典は宣言どおり何度もあs……鍛錬に連れ出した。ーーなお、その際ファミリアで俊典のロリコン疑惑が生まれたことは割愛しておくーー。そうして、隠れる練習や索敵の練習として、隠れんぼや投擲や回避の練習としてドッジボールなど様々なことを教え込んだ。(なお、他派閥であるにも関わらずここまで2人が交流できているのは俊典の主神が正義と秩序の神(アストレア)であることと、俊典自身が初日にロキと【ロキ・ファミリア】首脳陣にアイズの黒い炎を少しでも小さくしてあげたいと直談判したためである)最初はただ負けっぱなしが嫌で俊典の所に来ていたアイズだが、いつも優しく自分を見守り、鍛錬に付き合ってくれる俊典に次第に心を開くようになり、俊典との鍛錬を楽しむようになった。だが、アイズは一つの疑問を浮かべてしまった。こんな楽しいことをしていて自分は強くなれるだろうか?と。不安になったアイズはその疑問をそのまま俊典にぶつけた。すると、俊典はとても嬉しそうな笑顔を浮かべて、アイズに言った。

 

「もちろんだとも。いいかい?ヴァレンシュタイン少女。強くなる為にはね、休憩が絶対必要なんだよ。肉体的だけではなくて精神的にもね。例えば、勉強するにしてもずっと続けてやるのと、少しずつ休憩してやるのでは、後者の方がよく覚えられるだろう?」

 

俊典の疑問に対して、アイズは黙って頷いた。

 

「それと同じさ。強くなる為に鍛錬していても、何かに囚われて、狂信的なまでに鍛錬しているよりは、少しずつ息抜きをして鍛錬をする方がいいんだ。だからさ、ヴァレンシュタイン少女。辛くなったり、苦しいと感じることがあったらいつでも私のところに来るといい。私が全て受け止めよう。君に頼れる柱がないなら、私がそれになろう。君を救う英雄(ヒーロー)がいないのなら、私が君の英雄(ヒーロー)になろう。だからね、ヴァレンシュタイン少女。いつでも私を頼ってくれ。そうすればきっと君は肉体的だけではなく精神的にも強くなれるさ」

 

そうアイズに言った俊典の顔はとても暖かなものだった。実のところアイズは「私が君の英雄(ヒーロー)」になろう」というあたりから聞いていなかった。アイズの目に映る俊典の姿が歪む。

 

ーーーいつか、お前の英雄に巡り逢えるといいな

 

アイズの脳内に父の言葉が蘇った。

 

「うんっっ!」

 

(お父さん、お母さん。見つけたよ、私の英雄(ヒーロー))

 

元気よく頷いたアイズの顔には、年相応の眩しい笑顔が浮かんでいた。

 

約1年前side end

 

 

 

こういったことがあり、アイズはよく俊典に甘えるようになった。今も俊典に頭を撫でるようにねだっている。アイズが俊典に心を開いたことで俊典と【ロキ・ファミリア】の間に交流ができた。

 

「うん、両手に花どころか、さらに前後に侍らすなんて、トシノリもやるね。英雄色を好むというが君もその例にもれないのかな?」

 

だからこそ、こうやってからかってくる輩が出てくるのである。

 

「いや、君にだけは言われたくないよ、フィン!そもそも私は侍らせてなどいない!それに君がその気になれば都市の若い女性の大半を侍らせられるだろう!!」

 

俊典は即座に反論するが

 

「おお、怖い。こんな幼気な少年を睨むなんて【救済者(ヒーロー)】のすることじゃないだろう?」

 

「黙ってくれ、腹黒勇者!だいたい、何が幼気だ!君は私の倍くらい歳があるだろう!!」

 

ニヤニヤと笑うフィンは更に俊典をからかっていく。

 

「ちょっと、トシノリ〜!貴方、ロリコンだけじゃなくて、ショタコンもあったの〜」

 

「いや、誤解だ!私は断じてロリコンでもショタコンでもない。アイズ少女にも、フィンにもそういった意味での好きという感情は持ち合わせていない!!」

 

さらに、酔っ払ったアリーゼが俊典に抱きついたまま意図せずして追い討ちをかける。俊典はそれを慌てて否定するが

 

「トシノリ……じゃあ、私のこと……嫌いなの?」

 

俊典が言った「そういった意味」がわからなかったアイズはもしかしたら、自分が嫌われているのではないかと涙目になって俊典に問いかける。

 

「いや、君のことを嫌ってなどいないよ、アイズ少女!むしろ、大好きさ!」

 

俊典が自分を大好きと言ったことに安心したアイズはぱっと顔を輝かせる。だが、その代償として

 

「ほら、やっぱり、トシノリってばロリコンなんじゃない!?皆聞いた〜。トシノリ、アイズちゃんの事が大好きなんだって!」

 

「いや、だからそういう意味じゃないって!?……あーもう、どう説明すればいいんだ!!」

 

どうやら、俊典のロリコン疑惑は深まったようだ。無論皆、本気にしているわけではなく、俊典の反応が面白いので疑っているフリをしている訳だが、そんな事を知らない俊典は頭を抱える。……実際には両腕を塞がれているのでそんなことできないのだが。そんな俊典の周りは、賑やかな喧騒に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




回想の終わりのところってどうすればいいのでしょうか?今回は〇〇side endとしましたが、回想endの方がいいのでしょうか?あと、今回フィンが若干キャラ崩壊してます(笑)。あといつもの如くご都合主義です。

なお、鬼ごっこでオールマイトが鬼になった時に、必死に逃げる少女とそれを追いかけるガチムチの青年という絵面が出来たため、オールマイトは何度か警察(ガネーシャ・ファミリア)のお世話になったようである。
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