感謝感激です!運営様、本当にありがとうございます!!
極端に言えば、不具合かもしれんけどデータが無くなったから探せと言っているような内容にも真摯に対応してくださり、その対応もめちゃくちゃ早かったです!
皆様もお気づきだとは思いますが、このサイトは素晴らしいサイトです。運営様がこんなに優秀で優しい方なので納得ですし、ますますこのサイトが好きになりますね。
では、本編どうぞ。
──司波家
いつものように朝の鍛錬を九重の寺で行い、家に帰ってきた兄妹が朝食を取り終えようとした頃、一本の電話が入る。
四葉の秘匿回線だった為、2人は姿勢を正し、電話に出る。
ディスプレイに映った可憐で、幼さを残しながらも妖艶な雰囲気持った女性は2人を確認すると不敵な笑みを浮かべる。
「叔母上、お久しぶりでございます」
「叔母様、お久しぶりです」
「深雪さん、達也さん、お久しぶりですね。それと、入学おめでとう」
「「ありがとうございます」」
「叔母上、今日はどのような用件で?」
「達也さん、慌てないでくださいな。尽夜さんに関してです」
真夜が尽夜の名前を口にすると、2人はそれぞれがそれぞれの反応を示す。
「今年あなたたちと同時に尽夜さんが入学しました。もう会いましたか?」
「俺は会いました」
「………私は会えておりません」
達也は淡々と伝えるが深雪は元気がなくなり、しぼんだ声で答える。
「昨日、尽夜の方から学内で声をかけられました。初対面を装う声かけでしたので、自分もそれに応じ、周りにも恐らく初対面の認識を持たれていると思います」
「そうですか。あの子はちゃんと先まで考えていたのね。あの子に最後にあった時には伝え忘れてしまったのよ」
てへっ。とでも言いそうな幼さを感じさせる顔をするが、一瞬の後に真夜の表情は真剣なものに変わる。
「深雪さん」
「はい」
「尽夜さんとは初対面を装いなさい。あなた達の関係がバレるようなことはしてはなりません」
「承知しました」
「伝えるのが遅れてしまって、ごめんなさいね。こちらもいろいろあったのよ」
「いえ、大丈夫です」
「では、切るわね」
「はい」
真夜との電話が終わると、部屋には沈黙がやってきた。それも束の間、また電話が入る。今度も四葉の秘匿回線であった。
掛け主の番号を見ると深雪は途端に慌ただしくなり、鏡で自身の姿を入念に、かつ迅速に確認する。
深雪が準備が整ったのを確認した達也が回線に出るとディスプレイには先程の真夜の息子である尽夜がいた。
「尽夜さん!」
深雪は嬉しそうに、彼の名前を呼んだ。
「深雪、達也、おはよう」
「おはようございます!」
「おはよう、尽夜」
「急で悪いが、伝えておく事がある。達也は昨日会ったから分かっているだろうが俺たちは初対面を装う」
「分かっている。先程叔母上から同じく連絡があった」
「ならいい。深雪も分かったかい?」
「………はい」
深雪は先程とは違い、覇気のない返事をした。それを疑問に持つ尽夜は、
「深雪?どうした?」
「いえ、尽夜さんと初対面を装うのはなぜか他人の様な感じがして、とても苦しいのです」
尽夜は笑みを浮かべて、
「深雪、初対面を装うとしても仲良くなってしまえば、いつも通りの感じに戻れるから大丈夫だ。ちょっとの辛抱だよ」
すると深雪は満面の笑顔になった。
「そうですね!尽夜さんと仲良くなれるように手を尽くします!」
深雪の物言いが可笑しくて、尽夜は笑った。
「じゃあ、よろしく。また学校でね」
「はい!」
「ああ」
────A組
尽夜が教室に入ると、教室の殆どの席が埋まっており、皆がそれぞれ近くの生徒と喋っていた。
一角には一際大きな人だかり、深雪を取り囲むようにして、形成されている。
尽夜が自分の席に腰をかけると、目の前に影が入る。
見上げてみると、そこには人形のように左右対称で高貴さを感じさせるが、同時に愛らしさも持ち合わせている深雪が立っていた。
尽夜に深雪が近寄ったことで、教室の皆の視線が集中する。
彼女が誰もが綺麗だと思う所作のお辞儀をする。
誰もがその光景に見惚れる中で、
「司波深雪と申します。深雪とお呼びください。四葉尽夜さん」
彼女は教室に特大の爆弾を落とした。
教室中の彼への視線が一斉に恐怖に染まる。
「御丁寧にどうも。四葉尽夜です。尽夜、で構いませんよ。深雪」
「クス。敬語もよろしいですよ」
「わかった」
「では」
彼女が去ると彼女の周りにはまたも人だかりができる。しかし、彼の元へと向かう勇者は彼女以外現れることはなかった。
初日ということで授業はなかったが、学校やCAD、部活、生徒会などのさまざまなことに関する説明をクラス担任から受けていた。
「午後からは上級生の実技授業の見学や学校内の散策時間が設けられています。授業見学や部活動見学は所定の時間までに所定の所に行ってください」
説明を終えると、担任の先生は教室を出ていく。
同時に昼食となり、声の掛けてくるものがいないと判断した尽夜は1人食堂へ向かった。
────食堂
一人で飯を食べていると、視界の端に1科生と2科生が言い争っている光景が見えた。
が、尽夜は我関せずを貫いた。
────放課後
授業見学も終わり、七草の『エルフィンスナイパー』や十文字の『ファランクス』を見ることができ、心の中は満足して帰路に就こうとしていた尽夜は、食堂で言い争っていた集団にまたもや出くわした。
「何の権利があって、お二人の関係を切り裂こうと言うのですか!」
眼鏡をかけた少女が声を張っている。
「僕たちは彼女に相談する事があるんだ!」
「そうよ!しばらく司波さんに時間を貰うだけなんだから!」
そう言う1科生たちに2科生たちは、
「ハンッ!そういうのは自活中にやれよ。ちゃんと時間が取られてるだろが」
「相談だったら予め本人の同意をとってからにしたら?深雪の意思を無視して相談も何もあったもんじゃないの。それがルール。高校生になって、そんなのも分からないの?」
と反論する。
「うるさいっ!他のクラス、ましてやウィードごときが僕たちブルームに口出しするなっ!」
[ウィード]というのは第一高校において禁止用語である。が、しかし、有名無実化されているものでもある。
「同じ新入生じゃないですかっ!現時点であなた達がどれ程優れていると言うのですか!?」
「……どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやるぞ」
「ハッ!おもしれぇ!だったら教えてもらおうじゃないの!」
ヒートアップして来た口論が1科生に魔法を使わせようと、CADを取り出す。魔法を発動させようとすると、横から警棒のような物で叩かれCADを落とす。
「これくらいの距離なら身体を動かしたほうが速いのよ」
この光景に唖然とした両陣営だが、やがて意識を取り戻した1科生たち(CADを叩き落とされた者じゃない奴)が再び魔法を発動させようと、想子を纏わせる。
………が、それが発動することは無かった。
達也は1科生達の後ろからやって来た禍々しい威圧を感じ取った。
達也の見る先には、銃型で漆黒でところどころ紺色の線をあしらったCADを右手に持ち、こちらを見ている四葉尽夜が立っていた。彼の目の光は消え、表情もない。すなわち、達也は彼の今の感情を怒気以外感じ得なかった。
次いで、彼らの視線はすべてこの集団の方へ銃口を向けている尽夜に注がれた。
彼らの目が尽夜の目と合うと彼らは一斉に震えだした。彼らは、この男の名を思い出した。そして理解した。自分たちは『
逃亡すらできないほどに足がすくみ、彼らは立つことに集中するしかなかった。女子の数名は床にへたり込むことしかできていない。
やがて彼はゆっくりとその集団に近づく。
周囲の雑音が全くなくなる。いや、聞こえなくなるという方が正しい。その場にいる者は、尽夜の足音のみが聞こえる。まるで、自分以外の存在が矮小な物であると、暗に告げているようだった。
彼らに近づくと、ゆっくりと口を開く。それは誰もが予想してないものだった。
「……生徒会長。出て来てください」
物陰から見ていた真由美は、声が自分にかけられたのだと認識するのに時間を要した。急な要請に慌てながらも1人女子生徒を伴って出てくる。
「四葉君。なんでしょうか?」
真由美は疑問をまず口にした。
尽夜は彼女に目を向ける事なく、喋る。
「何がしたいんですか?」
「えっ?どういうこと?」
彼女は驚きの顔を見せる。
「あなたは先程の事を見ていたはずだ。ならもっと早く、俺が鎮静化する前に何かできたはずでは?」
真由美は顔を曇らせる。確かに尽夜の言う事は当たっていたからだ。それを踏まえて、見ていたのだ。
「この件はあなたに任せます」
真由美を最後一瞥し、彼はこの場を静かに立ち去った。
四葉家次期当主について
-
尽夜
-
深雪