【旧約】狂気の産物   作:ピト

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 修正しましたが、尽夜のCADは漆黒にところどころ紺色の線をあしらったものです。
 由来は真夜の紺色のドレスです。
 遅れて申し訳ありませんでした。

 今回少し原作改変があります。
 ご注意ください。


第4話

-----放課後

 

 3人は昼休みと同様に生徒会室へと向かう。IDカードは認証システムに既に登録済みの為、そのまま中へと入る。

 まず達也が入ると、明確な敵意を孕んだ鋭い眼差しに迎えられた。

 彼は深雪と一緒の時間を昔からよく過ごしてきている為、こういう視線には慣れている。しかし、いくら彼とてずっとこのままなのは居心地が悪い。

 

 ポーカーフェイスを保ったまま黙礼すると敵意は嘘のように霧散した。とはいっても、それは達也のあとに入ってきた深雪と尽夜に関心が移ったからであり、決して達也への敵意が解消された訳ではなかった。

 

 視線の主は三人へ近づく。その男子生徒は、昼にはこの部屋に不在であった生徒会副会長、その人であった。

 身長はほぼ達也や尽夜と変わらず、やや細身の体型をしている。彼の身の回りの空気を侵食するサイオンの輝きは、彼が1科生であることを納得し得るものがあった。

 

 「生徒会副会長、服部刑部です。司波深雪さん、四葉尽夜君、ようこそ生徒会へ」

 

 達也のことを無視した挨拶に、深雪の背中からはムッとした気配が伝わってくる。

 服部はそれに気づくことなく、自分の席へと戻っていく。

 

 「三人ともいらっしゃい。早速だけど、あーちゃん、お願いね」

 「………ハイ」

 

 あーちゃん呼びの抵抗が諦めの境地に達したあずさは、哀しそうに目を伏せ、ぎこちない笑顔で頷くと深雪と尽夜を壁際の端末へと案内した。

 

 摩利は同時に達也を連れ、風紀委員会本部に向かおうとしていた。

 

 「渡辺先輩、待ってください」

 

 呼び止めたのは、服部副会長。

 

 「なんだ服部刑部小丞範蔵(しょうじょうはんぞう)副会長」

 「フルネームで呼ばないでください」

 

 新入生三人は真由美の方に一斉に向く。

 その視線に気づいた真由美は首を傾げる。

 まさか『はんぞー』が本名だったとは3人は思いもしなかったのである。

 

 「お話したいのは風紀委員補充に関してです」

 「なんだ?」

 「その2科生を風紀委員に任命するのは反対です」

 

 摩利は眉をひそめる。

 

 「おかしな事を言う。司波達也君を風紀委員に生徒会推薦枠に任命したのは七草生徒会長だ」

 「過去に2科生(ウィード)を指名した例はありません」

 「風紀委員長の前で禁止用語を発言するとはいい度胸だな」

 「取り繕っても仕方がないでしょう。それとも全校生徒3分の1以上を摘発しますか?

 それに2科生(ウィード)1科生(ブルーム)の間には区別を根拠付ける明確な実力差があります。風紀委員は違反を犯した生徒を取り締まる組織です。実力で劣る2科生(ウィード)には務まりません」

 「確かに風紀委員は実力主義だ。だが実力にも様々なものがある。君の理屈ならもし私が暴れたらどうなる。止められるのは部活連の十文字か会長の七草だけだぞ。それとも私と戦ってみるかい?」

 「私の話をしているのではなく、彼の適性の話です」

 「実力にも色々あると言っただろう。達也君には展開中の起動式を読み取り発動される魔法を予測する目と頭脳を持っている。つまり彼は魔法が発動されなくてもどんな魔法を使おうとしたかが分かる。彼は今まで罪状が確定せずに結果的に軽罪となっていた未遂犯に対する抑止力になる」

 「………しかし、実際の現場では魔法の阻止はできないのではないですか?」

 「それは1科生も2科生も同じだろう。いったい何人が真由美のように発動中の起動式を壊すことができる?」

 

 副会長が押し黙るが、今度は矛を会長へと向ける。

 

 「会長…………私は副会長として、司波達也の風紀委員就任に反対です。渡辺委員長の主張が一理あるのは認めますが、風紀委員の本来の目的はやはり校則違反者の鎮圧と摘発です」

 

 「待ってください!」

 

 副会長が意見具申しているところへ、待ったがかかる。

 

 「兄は実技試験での成績は芳しくありませんが、それは魔法師の評価方法が兄に合っていないからです。実戦なら兄は誰にも負けません!」

 

 ヒートアップする深雪は一気に弁を(まく)し立てる。

 

 「司波さん、身内に対する贔屓(ひいき)はある程度なら仕方ないが魔法師を目指す手前、身贔屓に目を曇らせないようにしなさい」

 「なっ!私は目を腐らせてなどおりません!お兄様の本来の力を持っ「深雪」…」

 

 達也は深雪の肩に手を置き、副会長の方へ向く。

 

 「副会長、俺と模擬戦をしませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----第三演習室

 

 「お兄様、申し訳ありません。またご迷惑をお掛けして」

 「深雪、入学式の日も言ったが代わりを怒ってくれるお前のおかげで俺は救われるんだよ。それに今聞きたいのは別の言葉だよ」

 「はい。………頑張ってください」

 

 達也はその言葉を聞くと、演習室へと入って行った。

 

 真由美は生徒会室に来てから一言も発していない尽夜に話し掛ける。

 

 「尽夜君はどちらが勝つと思う?」

 

 この質問に尽夜は少々考える振りを見せ、言い放った。

 

 「……………おそらく、達也ですね」

 「どうして?」

 「さて、どうしてでしょう。

 それよりも会長。俺は生徒会室に戻りますね」

 「えっ?ちょっと!尽夜くん!?」

 

 言い終わるや否や尽夜は第三演習室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-------模擬戦中の生徒会室

 

 「はぁ〜、服部君と司波君は大丈夫でしょうか?」

 

 生徒会室には事務処理を真由美に押し付けられたあずさが1人黙々と作業していた。

 

 すると生徒会室の扉がノックされ、人が入ってきた。

 

 「よ、よよよよ四葉君?」

 「中条先輩、事務処理手伝いますからご指導いただけますか?」

 

 あずさに話しかけながら、尽夜は彼女の隣に座る。

 

 「か、構いませんけど、見なくてよかったんですか?」

 「ん?ああ、勝負は見えてますし、それに中条先輩だけに仕事を押し付けるのは忍びないですから」

 

 努めて優しく、にこやかに喋る尽夜。

 

 「よ、四葉君は優しいんですね」

 「ええ、もしこれからもそう思っていただけるのなら怯えずに会話できるといいですね」

 

 今度は苦笑して、

 

 「す、すみません。私っていつもこんな感じなので」

 「いえ、構いません。徐々に慣れていってください」

 

 最初に出会った頃のような恐怖一択感じでは無くなったあずさに満足感を得た尽夜は、腰に挿した銃型で漆黒のところどころ紺色の線をあしらったCADが気になり、一度立ち上がり、取り出す。

 すると、横から今まで感じたことのないような熱烈な視線が突き刺さった。

 

 「な、中条先輩?」

 

 その正体はもちろん、あずさだった。

 

 「もしかして、四葉君のCADは『シルバー・ホーン』じゃありませんか?」

 

 遠慮気味に、しかし目は熱を帯びてギラギラさせたあずさは尽夜に喰いかかるように尋ねる。

 

 「そうですけど………」

 

 するとあずさは遠慮気味ではあったことを全く感じさせない程の表情になり、彼女とは思えないぐらいの饒舌さで喋りだした。

 

 「そうなんですか!

 シルバー様といえば、フォア・リーブス・テクノロジー、通称FLT専属、その本名、姿、プロフィールの全てが謎に包まれた奇跡のCADエンジニア!世界で初めてループ・キャスト・システムを実現させた天才プログラマ!あ、ループ・キャスト・システムというのはですね、通常の…………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………それに現行の市販モデルですらプレミア付きで販売されるぐらいなんです!それに四葉君のCADは通常のシルバー・ホーンより銃身が長い限定モデルですよね!?それに限定版は銀色以外発売されて無い筈です!いったいどこで手に入れたんですか!?」

 

 一気に止まる事なく、最後は尽夜の肩に掴みかかり、迫った。

 尽夜は驚きながらも、優しく頷きながら聞いていたが最後にあずさから掴みかかられて、彼には珍しく少し慌てた表情をした。

 

 それが喋り終えたあずさは自分の冷静さを取り戻すきっかけとなった。

 すぐにパッ!と離れ、顔は赤の絵の具を塗りたくったように真っ赤に染め上がった。

 

 「す、すすすすすみません!私、デバイスに目がなくてですね………………ご迷惑でしたよね………」

 

 小動物の様に縮こまるあずさに、

 

 「いえ、とても興味深い話でしたよ」

 

 と、気にしていない対応をする。

 

 「中条先輩、触りますか?」

 

 そう言って彼はあずさに漆黒のCADを差し出す。

 

 「い、いいんですか?」

 

 そう言って嬉しそうに受け取り、全体を舐め回すように観察し、それが終わると今度は細部をくまなく視る。

 それを見ていた尽夜にある考えが浮かんだ。

 

 「それはですね、俺にツテがありまして。だから他の人より比較的簡単に手に入るんですよ」

 

 尽夜のぶっちゃけにあずさは愕然とする。

 

 「う、羨ましい!」

 「で、ですね。一般タイプなら家に何個か余って使わないものがあるんですけど………」

 

 チラリとあずさの方を見ると、キラキラとした幼児のような眼差しで尽夜を見ていた。

 

 「誰か1つか2つ大切に使ってくれる方はいないですかね〜?」

 

 わざとらしく声を出しながら今度は体ごとあずさの方に向く。

 彼女は幼児から犬の待てのような状態にまで堕ちていた。

 まじまじとあずさを見つめると今度は正気に戻ったようで、顔を勢いよく逸らせた。

 

 ちょっと時間がたったとき、あずさが口を開いた。

 

 「よ、四葉君?私達は先輩後輩ですよね?そうですよね?」

 「そうですね」

 

 恥ずかしそうに、しかし、欲求が抑えられないあずさは両手の人指し指をくっつけ、もじもじしながら、

 

 「ここに、デバイスが大好きな先輩がいるわけですよ」

 「そうですか」

 

 尽夜は何を考えているのかも分からないような無表情で応答する。

 

 「その先輩はですね、CADをとても大切に扱うらしいのですよ」

 「そうですか」

 「なので、その〜、私が貰うっていうのは、だ、駄目でしょうか?」

 「いいですよ」

 

 尽夜は即答した。もともと、あずさに貰ってもらう予定だったのだが、反応があまりにも面白く、少し長引かせてしまった。

 

 「えっ、いいんですか!やっぱりダメとかはなしですからね!絶対ですよ!」

 「はい」

 

 返答を聞き、あずさは満面の笑みを浮かべ、天に飛び上がるがごとくジャンプした。

 

 

 

 

 

 ガラッ!

 

 

 

 

 

 

 ちょうどその時、生徒会室の扉が開き、あずさは深雪、真由美、鈴音、服部と目が合う。

 

 時が止まる。

 

 あずさの顔は人生のなかで体験したことのないほど羞恥の色になった。

 おずおずと椅子に座わる。

 

 そこへ、尽夜の悪戯心(いたずらごころ)(くすぐ)られ、羞恥に耐えるあずさの耳に口を近づけ、

 

 「じゃあ、また持ってきますね。あーちゃん」

 

 今度は別の意味で顔が、ボンッと音を立てたかのように急激に赤みが深まる。

 

 喋り終わると呆然としている扉の前の4人に尽夜は声をかける。

 

 すると、はっ!と全員が戻ってきた。

 

 それと同時に急速に部屋の温度が下がり始めた。

 発症元はご存知、深雪。

 顔は誰もが見惚れる笑顔だというのに、目には光がない。

 

 「み、深雪?」

 

 今度は尽夜が戸惑った声を出す。

 深雪はひたひたと尽夜に歩み寄り、尽夜があずさにしたように、口を耳に近づける。深雪の長く艶のある黒髪が肩に掛かりいい匂いが鼻腔を擽る。しかし、他の男子なら御褒美物だが今の尽夜の感情には喜としたものはなく、恐怖のみだった。

 

 「あとで、お話しましょうね」

 

 尽夜は頷くことしか出来なかった。

 それを間近で見たあずさは冷静さを取り戻し、目の前の書類を見て思い出す。

 

 (あ…………全然終わってない)

四葉家次期当主について

  • 尽夜
  • 深雪
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