強個性であり、万能的で無敵でもある。ただし、ストレス耐性と胃薬が必要である『完結』   作:サルスベリ

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 デク君は今日も訓練しています。艤装を扱えるように頑張っています。妖精達も彼についていって嬉しそうです。

 爆豪君もギター片手に頑張っています。歌に爆発に、熱唱にと頑張っています。

 ところで、デク君ですが、無個性でも人助けに突撃していくのだから、艤装があるからもっと突撃していくって思いません?

 なんてことを考えた風味になっています。






理性は大切なものですが、条件反射は止めてくれません

 

 

 今更ですが、緑谷出久の艤装は『土佐型』となっているが、完全に同じものを使っているわけではない。

 

 通常の土佐型艤装の主砲は二十四基。艦娘が身に纏う分の主砲は八基ほど。残りは浮遊しながら艦娘と装甲の周囲を漂っている、自由機動兵装となっているのだが、出久の艤装にはついていない。 

 

 これはエルやソープが手を抜いたのではなく、緑谷出久自身に問題があったため艤装を削るしかなかった。

 

 彼が無個性だから、そこは関係ない。艤装の適合に必要なのは、その者の魂の中にあるもの。何故に彼が艤装に適合できたのかは、さすがのエルとソープも解らなかった。

 

 戦艦から駆逐艦まで、潜水艦や補給艦も含めたすべての艤装を確認したところ、緑谷出久に適合する艤装は『土佐型』ともう一つ。

 

 羅豪型潜水戦艦。回転衝撃角、つまりドリルを装備した海底軍艦だった。

 

 さすがにこれは無理じゃないか、とコナンの意見が挟まれ、出久には土佐型の艤装が与えられたが、彼の艤装知識の少なさ、艦載機などの知識の低さにより土佐型の艤装は三分の一にとどめた。

 

 その中でも、飛行甲板といった航空機はすべて搭載したのは、これから先のことを考えてから。

 

 ゼロから始めた子に、いきなり完全装備は難しい。彼が少しずつ学んでいき、艤装になれたら完全な形の土佐型を与えよう。

 

 コナンの判断に、エルとソープは特に反論なく、出久の艤装は土佐型の三分の一となった。

 

 しかし、だ。彼らは忘れていることがあった。

 

 一つ、妖精への親和性。艤装に適合できるのだから、出久の妖精への親和性はかなり高い。艦娘と変わりない数値を叩きだすくらいに。

 

 もう一つは我らの愉悦王が、その話を黙って聞いていたことだ。

 

 彼は話し合いが終わり、艤装が完成した後に、その倉庫へと入った。

 

「そうか、やはり貴様らもそう考えるか」

 

 ギルガメッシュが見下ろす先、資材と設計図を持った妖精たちが、わらわらと艤装に群がっていた。

 

「よかろう、この我が許す。存分にやるがいい」

 

 妖精達はピシッと敬礼して、出久の艤装に『裏設定』を施していく。

 

「後は、爆豪のものか。フフフ、あやつの歌は心地よい。王の感情を慰めた褒美だ。受け取るがいい」

 

 『爆豪君の』と書かれたコスチュームに、ギルガメッシュは『ある宝具』を取り付けて行った。

 

「さて、一郎、おまえは此度はどのような顔をするであろうな?」

 

 微笑する彼は、悪意などなく、善意も全くない。あるのはただ、『愉悦のため』のみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうしても止められない時って、人間にはある。

 

 ダメだって解っていても。いやダメだと言われると、余計にやりたいって考えてしまうのが人間だ。

 

 でも、今回の話はまったく関係ないけどね!

 

『次のニュースです、最近、未登録の個性による事件が多発しています』

 

 物騒な世の中だな。

 

 どうも、田中・一郎です。最近さ、こういったニュースって多いんだよね。一日、三件くらいは確実に聞くんだけど。

 

 まさか、オール・フォー・ワンがまた何かやり出したのか。転生者を狩っているって話も聞くし、転生特典の個性を奪われたら厄介だな。

 

『先日、ヴィランを撃退したのは、この・・・・』

 

「あれぇ~~~」

 

 おかしいな、俺の目がおかしくなったのかな? いやいやまさか、そんなはずないよな。

 

「どうしたんだ、一郎?」

 

『噂話でしかなかった、『ザ・ハンズマン』と呼ばれているヒーローです』

 

「おい弔」

 

 俺が無言で親指でニュースを指差すと、朝食の味噌汁の入ったお鍋を持った弔は、笑顔のままゆっくりと後ろへ下がって行った。

 

「ちょっと待てコラぁ!」

 

「なんの話だ、一郎。世界は広い、同じ顔の人が三人はいるらしい。だから、同じ名前のヒーローも三人はいるだろう」

 

「おまえそれでいいわけしているつもり!? ねぇ、なんで、どうして? 何してんのおまえ」

 

「何と言われても」

 

 よぉぉぉし、何を言ってくるのかな。言い訳か、それとも誤魔化せる手段でも考えているのかな。

 

「助けてと言われたから、助けただけだ」

 

 う?! く、クソ、なんで弔はこんな真っ直ぐな顔で見てくるんだよ。俺は悪くないって心の底から思っている顔じゃないか。

 

 しかし! ここで俺が引き下がったら、弔はまたヒーロー活動をやる。本人はヒーローって思ってないかもしれないけど、こんなに頻繁に助けてに答えていたら、立派なヒーローだからな。 

 

 危ないこと禁止って言ってやろうか。

 

『それと、この『ザ・ハンズマン』の隣に必ずいるのが、こちら『ゼットン・ザ・ブラック』と名乗っている人物です』

 

「黒霧ぃぃぃぃ?!」

 

 おかしいと思ったんだよ、絶対に無理があるって。なんで弔の目撃情報が全国各地に散らばっているんだよって。

 

 おまえか! おまえが弔の考えに乗っかったのか?!

 

「一郎さん、私が何かしましたか?」

 

「何かっておまえもな! ヒーロー活動には資格がいるの!」

 

「はい、知っています。ですが、私達はヒーロー活動をしていません」

 

「なんだって?」

 

「私達は人助けをしています」

 

 胸を張って答える黒霧に、俺は思わず拳を握って天井へと突き上げた。

 

「それを世間じゃヒーロー活動って言うんだよ!」

 

 何を馬鹿なこと言ってんだよ。言い訳をするなら、もっと考えてからやれよ。おまえら馬鹿なの? 馬鹿にしてんの?

 

「なるほど。これは認識の違いというものです。いいですか、一郎さん、私達は善意で困っている人を助けている。確かに助けられたものからすれば私達はヒーローかもしれない。しかしですが、私達は完全に人助けのつもりで行っており、さらに助けた後に賃金が発生したこともない。現在の法律上、個性を使って人を助けた後、賃金の受け渡しがあればそれは『ヒーロー活動』になりますが、私達は相手にお礼も言われていなければ、素性を明かしてもいない。ただ通りすがりに人を助けた、これがヒーロー活動として問題があるならば、道に困っていた人に道を教えるのも、ヒーロー活動になりますね。これも違法となると、次に困るのは道に迷った人だ。困っている人を助けることがヒーロー活動というのならば、私たちは誰の力も借りずに、また誰かに力を貸すこともできない。そうなると、世間といったものがとても冷たい関係の身になります。すべてが賃金で成り立つ。いいえ、この場合、賃金が発生してのヒーロー活動といった考えを当てはめれば、あらゆる業務や仕事がヒーロー活動になってしまう。これを違法と考えるならば、現在社会が立ち行かなくなる。それでは人間が生きていくことはほぼ不可能になってしまう。世界人口の八割が個性を持った世界とはいえ、すべてを個人でどうにかできるほど世界は甘くはありません。そうすると、私達は誰かに賃金を払っての援助も許されない世界において、どのように生きていけばいいのか。まったく見通しのない世界を生きるしかなくなる私たちが、賃金と信頼と善意の助力を抜かれてしまった私たちが、どういった社会を形成していくのか、是非とも一郎さんの見解をお聞きしたい」

 

「すみません、俺が悪かったです」

 

「解っていただけましたか。では、これからも私と弔の善意を許して頂けますね?」 

 

 ク、今まで一番に重い善意だぜ。悪気があったとか、騙そうって気配が一欠片もない。あれは完全に黒霧にとっての、善意の人助けだ。

 

「わ、解ったよ」

 

 仕方ない。俺はそう思いたくなった。

 

『次ですが、中学生か高校生くらいの少年も、この活動をしているようなんですが』 

 

『これですね。船を纏っていることと緑色をしていることから、『グリーン・シップ』と呼ばれているヒーローですね』

 

 たらりと、全員に冷や汗が流れたのを、俺は感じた。

 

 さっきまで平然としていた黒霧は、ゆっくりと腰を折って机に突っ伏した。

 

 弔はにこやかな笑顔のまま、顔の向きを変えてあさっての方を見ている。 

 

『それにです。この覆面をつけたヒーローは歌で人々を元気にしたうえに、災害などには真っ先に飛び込んで爆発させて救助しているんです』

 

『ええ、彼はその両方のことから『シンガー・ボマー』と呼ばれているようですね』 

 

 あ、爆豪君のヒーローネームって、それでいいんじゃないかな、なんて場違いなことを俺は思いつつ、現実逃避していた。

 

「とりあえず、朝飯にしようぜ」

 

「そうだな」

 

「ええ、そうしましょう」

 

 今日は三人でのんびりとお食事。ギルもコナンも、エルもソープも、アインズもちょっと用事があるんだって。

 

 なんか、『ちょっと最強最善最高の魔王倒してくるから』って、いい顔して出かけて行ったな。

 

 なんか、艦娘全員にプレデター部隊とエイリアン部隊まで連れて。

 

 あれ、でもソープが『赤い十字架みたいな紋章』をつけた連中と一緒にいたけど、あんな奴らいたかな。

 

 後、アインズもいろんな魔物連れていたけど。

 

 あれぇ、まさか本当に総戦力を持って行ったの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時計の針は進む、ゆっくり少しずつ。忌々しいことに、それを止められる手段がない。 

 

 ただ進み、やがて時計の針は『十二』を示す。

 

 そして一面が白い砂に覆われた。 

 

「ふむ、見事だ。これを受けて立っていたのは、お前くらいなものだな。それが『オーマジオウ』の能力か」 

 

「クククク、君こそいい個性じゃないか。今のはすべてを強制的に死滅させる魔法かい?」

 

 男の問いに、アインズは答えずに杖を向ける。『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』と呼ばれるそれは、怪しく輝き複数の魔法を実行していく。

 

「なるほど。さすがに平成のすべてを司ると言われるライダーの力だ。しかしだ、それは本来の持ち主が扱ってこそ真価を発揮する。貴様程度では無理だな」

 

「言ってくれるね。まだ僕を倒せていないじゃないか?」

 

「倒せていないか・・・・」

 

 小さくアインズは苦笑した。まるで、それが『見当違いなこと』のように。

 

「脳無か。あれらもかなりの数を作ったものだ」

 

「気になるかい? 君らの仲間は今頃、その脳無に倒されているんじゃないかな?」

 

 あざ笑うように、囁くように、オール・フォー・ワンは語る。

 

 この場にいる脳無は、転生者から奪った個性を入れてある。どれも面白く二度と手に入らないような個性ばかりだった。

 

 仮面ライダー、ウルトラマン、あるいは戦隊のもの。SAO、アラガミ、ガンダム、マクロス、Fate、様々な世界がある、色々な創作物の世界の能力を持った脳無だ。

 

 恐らくこの世界のヒーロー達では、一撃で倒されることだろう。

 

 誰にも止められない。世界はこうして混乱の中、やがて。

 

「つまらん玩具だ」

 

 天井から脳無、だったものが降ってくる。

 

「結構、強かったと思うけどな」

 

「いうな、天照。『次元回廊』で残らずそぎ落としたのは、誰であったか?」

 

「そういう英雄王だって、最初の時に『天地開闢乖離の星』じゃないですか」

 

「よく言うぜ、エルだって原始分解やったじゃないか」

 

「名探偵が自分のことを棚に上げてるよ。自分だって『サッカーボール』の一撃で、脳無の能力無効化したくせに」

 

 何があった、何が起きた。

 

 オール・フォー・ワンの前で、個性を与えられた脳無が、残らず灰になって消えて行った。

 

「チェックメイトだ、オール・フォー・ワン。おまえはな、『やり過ぎた』んだよ」

 

 小学生くらいの少年が歩いてくる。いや、見た目に騙されてはいけない。彼こそが、この集団の『統括者』だ。

 

 まとまりのない、考え方や行動理念が違う存在達を束ねて、一つの勢力にまで拡大させた張本人。

 

 推察と洞察、状況分析に瞬時な判断。危機さえ自らの一手にして、逆転の一撃を見舞う者。

 

 騙されているわけではない。最初に会った時から最も警戒していたというのに、彼はその上を行く。

 

 名探偵とはよく言ったものだ。彼の『推理』は、常識の枠の中にはない。

 

「この世界の個性だけを奪っていたなら、俺達は動かなかった」

 

 恐怖を纏うガイコツの後ろに、異業種達が立ち並ぶ。

 

「この世界のことは、この世界のヒーローたちが決着をつけるはずだからな」

 

 銀髪に赤い瞳の女神のような人物の後ろ、赤い十字架を掲げた集団が剣を上げていた。

 

「けどな、他の世界から来た奴らの個性を奪うなら、それは『俺達の事件』だ」

 

 小さな銀髪の少年の後ろに、巨大な機械のロボットたちが整列していた。

 

「おまえはさ、天を望むあまりに、崩れ落ちるバベルの塔を築いちまったんだよ」

 

 少年と、金色の鎧を纏った青年の後ろ、不気味な集団が雄たけびをあげていた。生物のものもあれば、機械的な獣もいる。

 

「よく解っただろ? なら、おまえの『世界の中だけで暴れてろ』よ」

 

 気がつけば、周囲を船の武装を纏った少女たちが見下ろすように囲んでいた。

 

「警告はしたぜ、『ラスボス』」

 

「ということだ。貴様は巨悪であったが、『極悪』ではなかった」

 

 ガイコツが微笑む。その空洞のような瞳に、青白い炎を灯して。

 

 フワリとマントが翻り、そこには誰もいなかった。

 

「ふ、フフフ、私が恐怖を感じるとは。ますます、君が欲しくなったよ、田中・一郎君」

 

 彼は小さく呟き、空を見上げた。まるで届かない輝きに望むように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はい、田中・一郎です。コナン達、まだ戻ってこないんだよな。それに、妙な寒気もまだ感じるし。

 

 あれかな、誰かに狙われているとか。恨みを買うようなこと、した覚えはあるけど、そんなに殺意を貰うほどのことしてない気が。

 

 は?! これが世の中でいう、やったほうは覚えてないけど、やられたほうは覚えているってことか?!

 

「いいかね、田中少年?」

 

「はい、オールマイト。気合を入れました、どうぞ」

 

「解った」

 

 今はね、また呼び出されたのよ。もうね、なんか、警察だけじゃなくて雄英の校長先生までいる場所にね。

 

 根津さんって言うんだって。ネズミみたいに可愛い人。

 

「何かな?」

 

「すみません」

 

 可愛いの、外見だけ。もうさっきからすっごく睨んでくるのよ、俺が何したって言うのさ。何もしてないじゃないの。

 

 ごめんなさい、嘘つきました。してます、もうばっちり色々としていたりします。

 

 仲間が。俺って、あいつらの『提督』だからさ、あいつらがしたことは俺が責任取らないと。戦えない俺があいつらに命令して戦わせるから、そこはせめて俺がはっきりと責任取らないと、あいつらに顔向けできないじゃないか。

 

 って、言っておくと女の子にモテないかな?

 

「聞いているのかね?!」

 

「はいもちろんです!!」

 

「ではなぜ! 死柄木少年と黒霧青年だけじゃなく! 爆豪少年と緑谷少年までやっているのかね?! 君は二人にダメだと教えなかったと?!」

 

「いや無理でしょうそこ」

 

 素直に俺は答えることにした。

 

「あいつらのしたことは、俺が責任取りますけど、あいつらを止めるなんて無理ですよ」

 

「責任転嫁のつもりかい?」

 

 根津校長が、少し非難のこもった眼を向けてくるけど、俺は首を振った。

 

「いいえ、責任は俺にあります。そこだけは間違いなく」

 

「では何だというんだ?」

 

 オールマイトの凄味にある顔にも、今は一歩も怯まずに俺は真っ直ぐに見詰めた。

 

 ちょっと怖いけど、しょうがないよね、俺は提督なんだからさ。

 

「あいつらは、それが『条件反射』なんですよ」

 

 ピクッとオールマイトと根津校長が反応した。

 

「誰かの助けてを見過ごせないんです。誰かが困っていたら助ける、手を差し伸べて救い出す。それがあいつらなんですから」

 

「しかしだね!」

 

「それを取ったら、もうあいつらじゃない。オールマイトは、ナンバーワン・ヒーローは人の『性質』も否定するんですか?」

 

 グッと言葉に詰まったね、オールマイト。そりゃ、これはどう答えても人でなしか冷たい人、あるいは冷静な戦略家だろうからね。

 

「なるほど。しかし、無免許でヒーローをやっていい理由にはならないよ」

 

 へぇ、根津さんって凄い知能指数高いだろうね。戦略も見事なものを組みそうだけど、俺とは合わないね。

 

 俺って戦術も戦略も平凡だからさ、冷静に状況を分析したことないんだ。

 

「ヒーロー活動は人を助けてお金を貰っている。でもあいつらは賃金をもらうことも物資を貰うこともしてない」

 

 よっし、前に黒霧に話を振っておいて良かった。

 

 確かに弔達は、個性を使っている。でも、それは日常的に個性を使っている人たちと比べたら、三十分の一でしかない。

 

「あいつらは人助けをしたくて、助けてを見逃せないから動いている、たったそれだけですよ」

 

「詭弁だ!!」

 

「詭弁だろうと、曲解だろうと、俺たちにとってはそれで充分なんですよ」

 

「だからと言って・・・・」

 

「いいだろう、今回の件は多めに見よう」

 

「根津校長!?」

 

 あれぇ、意外だね。もっと食いついてくると思ったのに、そこで折れるんだ。勝ち目がないって思ったかな?

 

「ただし、あまり無茶しないでくれよ。ヒーローが職業になった今、それで食べている人もいることを忘れないでほしい」

 

「解りました」

 

 それはもちろん、俺だって自営業でお金を稼ぐ難しさは知っているから。

 

「後、皆がまだ未成年だということも忘れないでくれ。いくら個性が強くても、まだまだ子供なんだから」

 

「肝に銘じておきます」

 

 特に爆豪君とデク君にはしっかりと教えておこう。 

 

「では、今後もよろしく」

 

 げ、食えない奴だな、この校長。つまり、今回の件は目をつぶるかわりに、手を貸してほしいってことか。

 

「ええ、よき隣人としてね」

 

 助力しないさ、協力もなし。でも、敵対もしないよと伝えてみるけど。

 

「それで十分さ」

 

 うわぁ、この人は解った上で頷いたよ。

 

 まったくさぁ。

 

 仕方ないか。あ~~ぁ、酔っぱらったオールマイトって、かなり楽しいのに今後は来ないかな。 

 

「あれ、今の考えって愉悦部の? そんな、俺まで染まるなんて」

 

 ちょっと俺は帰り道で項垂れたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が来たぁぁぁ!!」

 

「へ、オールマイト、あれ?」

 

 普通に来ましたよ、この人。

 

「いやいや、あの話し合い、かなり険悪だったじゃないですか」

 

「それはそれ、これはこれだよ、田中少年。それに、プロ・ヒーローとしては反対だが、一個人や一ヒーローとしてはよくやったと褒めてやりたいくらいさ」

 

 あ、そうですか。この人も大人なんだな、表と裏を使いこなしている。 

 

 俺には無理だな、何回も転生してもそこのところは解らないや。

 

「さて! 今日の死柄木少年のメニューは何だろうな。この前はサバの味噌煮だったから、今日は何かね?!」

 

「肉じゃがだ」 

 

「・・・・・・死柄木少年、嫁に行くつもりはないね?」

 

「ああ」

 

 真顔で答える弔は、次の瞬間に俺を見た。

 

「一郎の嫁には教え込むつもりだ」

 

「そうか。頑張りたまえ、田中少年!」

 

「え、あれ、待って、何それ?」

 

 その日、俺は何を言われたかまったく解らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、後日。

 

「なあ、コナン、あれって何? 金色ってギルの趣味じゃないか?」

 

「ああ、あれはな、魔王の首だ」

 

「え、首? ベルトじゃないか。あれって仮面ライダーのベルトじゃないのか?」

 

「首だよ、マスター。突っ走り過ぎて世界を超えかけた、間抜けな魔王の、な」

 

 そっか、コナンがそう言うなら、そうなんだろうな。

 

 何故か遠い目をするコナンに、俺はそう思ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 







 デク君と爆豪君が装備を持って人助けしないわけがない!

 絶対にやって、それに黒霧と弔も乗っかった結果!

 一郎君はオールマイトに呼び出され、根津校長にロックオンされました。

 そんな風味でお届けしました。





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