強個性であり、万能的で無敵でもある。ただし、ストレス耐性と胃薬が必要である『完結』   作:サルスベリ

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 最近、他の方の作品をよく読む。色々な設定を楽しませてもらう、様々な世界観に憧れる。

 というより、文字に魅せられるって久しぶりです。

 字書きとか活字好きってわけじゃないけど、マンガとかイラストとかで燃えるよりは、文字で魅せられ憧れるって多いなぁ、と。

 後、山の翁、かっこいい。

 だからがんばろう風味です。








矜持と信念にかけて・2

 

 

 

 人は、本当の恐怖を前にした時、体が竦んで動けなくなる。

 

 本能でこれ以上は自分の存在が消えると知ったとき、生物として自己保存に走るのは当たり前のことだ。

 

 悪くない、君は間違っていない。正しいことだと言われると、それでいいと思ってしまう。

 

 けれど、『ヒーローはその中に含まれない』。

 

 なぜなら、彼らは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飯田・天哉にとって、爆豪・勝己と緑谷・出久は礼儀正しい同級生だった。

 

 最初は爆豪の言葉遣いに苦言したこともあったが、見ていれば礼儀を弁え困っている人を放っておけない性格だと知った。

 

 緑谷の方は、真面目で何時も思考している、見習うべきことの多い人物だ。

 

 しかし、だ。

 

 今となっては彼にとって二人は、『微笑ましい凄い能力を持った、場違いなことで笑いをとる人たち』になっていた。

 

 能力値は高いのだろう、知識や技術は素晴らしい、質問すればどんなことでも答えてくれる、あるいは解釈とか事例まで出してくれるほどに、様々なことに造詣が深い。

 

「爆豪君、いくらなんでもそれは」

 

 深いのだが、発想は柔軟性に富んでいて、飛んでいる。

 

「おまえの個性は『エンジン』だろうが。ならやれんだろ」

 

「いいや、その発想はおかしい。確かの俺の個性は『エンジン』だが、俺自身を加速させるので精一杯だ」

 

「誰が決めた?」

 

 間髪入れずに質問され、『自分が』という言葉を飲み込んだ。彼の、爆豪のあまりに鋭い目線と、その中に宿る『何か』に。

 

「誰が決めた、誰がそうだと言った、誰が絶対だと言った。違うだろ、てめぇでそうだって決めつけて、上を見てないだけだろうが」

 

「しかし」

 

「しかしも案山子もねぇんだよ、いいからやれよ。四の五と言っている間に、言い訳を口にしている間に、護れるもんが零れ落ちるんだ。いずれ出来る(ヒーローになったら)、そんなふざけんたこと考えんな」

 

 真っ直ぐに見詰めてくる爆豪に、反論が口の中で砕け散る。まるで爆破されたように粉々になった。

 

 そうか、彼の個性は『爆破』だったな、と不意に思い出す。

 

「今やれ、いいからやれ。できるできないじゃない、やるんだよ」

 

「・・・・・君はどうしてそこまで俺に拘る?」

 

 思わず口にしてしまった言葉に、爆豪は首を傾げた。

 

「こだわったわけじゃねぇ、勿体無いと思っただけだ。おまえの個性、そいつは使い方次第じゃ、誰よりも速く誰よりも最短で、『助けて』と嘆く奴らに届く。だから、やれって思っただけだ」

 

 真っ直ぐに曲げることなく、裏側なんてない言葉は不思議なほど心の中に落ちた。それはまさに、彼からの最大の『エール』のように、飯田・天哉の中に落ちて『何か』を押し上げる。

 

「解った、やってみよう」

 

「おう」

 

 そう告げて背中を見せる彼に、小さく一礼する。粗野に見えて、乱暴な言葉遣いをしていても、彼は自分にはない何かを持っている。

 

 『それ』が何かをまだ自分は解らないが、必ずそこに追いつくと決めた。 

 

 絶対に。

 

「爆豪! 俺の電気なんだけどさぁ」

 

「うっせぇな! おまえのは帯電率が悪いんだよ! 伝導率上げろ! なんで体内で作った電気が阻害されてんだよ!」

 

「ええ~~だってさぁ」

 

「だってもくそもねぇ!! 電気なんて撃ってよし溜めてよし走らせてよしの万能能力だろうが! 百万ボルトなんて甘いこと言ってんな! 一億まで上げろ!」

 

「え?」

 

「ゼウスの雷は物体を原子レベルまで崩壊させるんだよ、そこを目指せ」

 

 調子に乗ったような上鳴・電気が固まった。

 

 いやいくらなんでも、同じ電気というか雷で目標に出すのが、大神なんて。上鳴も出てくるとは思わなかったのか、苦笑いしつつ首を振った。

 

「やれ」

 

 爆豪はゆっくりと首をかっ切る仕草を向けたのでした。

 

 人を煽てる、あるいはやる気にさせることが多い爆豪だが、どん底に落とすこともやるのだとこの時、飯田・天哉は知ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 轟・焦凍は彼を見つめる。

 

 入学式の時、まるで空を舞うように突き進んだ彼、どんな障害も一撃で叩き潰し、ヴィラン役のロボットさえ助けて見せた彼。

 

 似ている、と思う。面影はない、『あのヒーロー』とは姿が似ているわけではないが、動き方や行動が何処となく似ている。

 

 絶対に退かない鋼の城、鉄壁の防御を誇る無登録ヒーロー。嫌いな父親に質問するほどに、あの背中は憧れだった。

 

 『グリーン・シップ』。正体不明、所属不明、助けを求める声があれば世界中のどこにでも出現するヒーローの姿を、何度も何度も繰り返して見ていた。

 

 自分の能力とは似ても似つかないのに、あんな風に人を助けたいと思ってしまった。誰かのために何かしたいと、心の中からではない『やってみなよ』と背中を押されたような気がした。

 

 追いかけて、追い求めても、届かない。それがいま、目の前にいるような錯覚に、轟・焦凍は自嘲してしまう。

 

「切島君の個性って硬化だよね?」

 

「ああ、そうだぜ。でもな、あんまり硬くならないんだよ」

 

「そうかな?」

 

 緑谷・出久、『グリーン・シップ』に似た動きをする新人。無個性らしいが、どう考えても個性があるように見える。

 

「ああ、もっと硬く。なあ、緑谷はさ、『グリーン・シップ』って知ってるか?」

 

「え?!」

 

「あのヒーローが活躍しているところ、見たことあるんだよ。テレビ越しだったけど、ヴィランの攻撃を受けてもさ、一歩も退かなかったんだよな」

 

 切島が言っているのはニュースの映像だろう。自分も見たことがある、一般人を護るために砲弾のような攻撃を受けながら、一歩も下がらなかった。攻撃すべてを受けても、『大丈夫、僕がいる』と言っていた。 

 

 後で助けられた人達が、笑顔でそう励ましてくれたと言ってた。顔は思い出せなくても、彼が笑顔で砲弾の嵐の中で励ましてくれた、と。 

 

「俺も、ああいうヒーローになりてぇ。どんな攻撃も弾き返して、護っている人を不安にさせないヒーローに」 

 

「そ、そうなんだ」

 

 明らかに戸惑っている緑谷に、思わず言葉を口にしてしまう。

 

「俺も」

 

 不意に、二人がこちらを見た。片方は嬉しそうに、もう片方は戸惑ったままで。

 

「俺もあいつみたいになりてぇ。あいつみたいな大勢を護れるヒーローに」

 

 ギュッと拳を握る。

 

 母親のことで父親を嫌悪していた。あいつみたいにならないと決めていたのに、『グリーン・シップ』を見てから『このままでいいのか』と疑問が膨れてくる。

 

 父親と母親の個性を継いだ自分が、母親のトラウマになってしまった自分が、遠い昔に母に言われたことが、次々に蘇っては疑問を残していく。

 

 自分はこのままで、ヒーローになれるのか、と。

 

「そっか、二人とも珍しい人を目標に選んだんだね」 

 

 ちょっと照れたような緑谷に、思わず反論していた。

 

「すげぇかっこいいヒーローだろうが!」

 

「俺もそう思う」

 

 切島に先を越され、言葉を思わず飲み込んでしまう。次に出てきたのは無難な言葉だったが、込められた思いは負けていない。

 

「そっか、そうなんだ」

 

「デク!! ちょっと来い! この馬鹿に説明してやれ!」

 

 遠くからの声に、緑谷は小さく頭を下げていってしまう。

 

「やっぱ、似てるな」

 

「緑谷だろ? 轟もそう思うか?」

 

「ああ」

 

 切島と二人で、彼の背中を見つめながら、もしかしてと思ってしまう。

 

 彼が『そうではないか』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 緑谷が呼ばれて来てみれば、爆豪が激昂していた。振りとか呆れじゃない、マジギレだ。

 

 どうしたのと顔を向ければ、爆豪の前にいたのは『峰田・実』。個性はもぎもぎで、頭のボール状の物体をちぎって、投げたりくっ付けたりできる。

 

「俺の個性はそんな万能じゃないんだよ!!」 

 

「ふっざけんな! てめぇの個性はやり方さえしっかりやれば誰よりも強ぇんだよ!」

 

「はぁ?! そんなわけあるか!」 

 

「解ってねぇんだよ! デク!」

 

「あ、うん、何となく解った」

 

 なるほど、と頷く。確かに怒るはずだ、彼は自分の能力の高さに気づいていない。あのボール状の物体の粘着力は、素晴らしいの一言に限る。

 

 手に持ってよし、投げてよし、コントロール通りに投げられたなら、後は詰将棋のように相手を完封させられるのに。

 

「峰田君、じゃあ説明するよ」

 

「なんだよ、緑谷まで。俺の個性はな」 

 

「うん、強い個性だよ。だって、あの粘着力は、ヴィラン拘束に『最重要な役割』を果たすからね」

 

「へ?」

 

 デクは語る。

 

 例えば、攻撃時。相手の攻撃が物理であるならば、もぎもぎを相手の攻撃の着弾点につけて衝撃を逃がす、あるいは攻撃そのものを停止させてしまえる。

 

「いや、待てよ、緑谷」

 

 例えば防御時。周囲に張り巡らせたりできれば、その粘着のためにほとんどの攻撃を反らすことができる。相手の足元にでも着けたら、あるいは動きの先を読んで地面や壁に吸着して固定してしまば、相手は何もできずに無力化される。

 

「おい、おい」

 

 索敵も警戒も自由自在だ。ルート上に配置し、後は待つだけ。相手がくっついて物音をたてたら、そこに敵がいると一発で解る。

 

「そ、そんな煽てに」

 

 炎も氷も雷も、砲弾も、発生地点さえ抑えてしまえば、狙いを定める個性の発現者に対して、もぎもぎで相手の行動を阻害出来る。

 

「つまり、峰田君の個性はね、攻撃に使って良し、防御に使って良し、索敵もできるし移動補佐もできる。まさに万能個性なんだよ」

 

「ほへぇ~~~~」

 

「そりゃかっちゃんが怒るのも無理ないよ。峰田君の能力の万能性は、A組の中でも群を抜いているんだからさ」

 

 後に多くの生徒達は語る、この時の爆豪と緑谷の説明と煽てが、峰田という強者を生み出した。

 

 つまり、『もぎもぎ最強説』の誕生だった。

 

「そんなに褒めても何も出ないからなぁ~~~」

 

 照れて笑顔でクネクネと動く峰田に、緑谷は微妙な顔で笑っていたのでした。

 

 後に多くの人は語る、『峰田は真面目ならば最強、調子に乗ったら最低』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人一人の個性の限界を見据える、個性のその先を考え、実行させる。

 

「あいつら、教師に向いているな」

 

「いやいやまさかここまでとは」

 

 相澤とオールマイトは、二人が次々にクラスメートたちを強化していくのを見て、軽く引いてしまう。

 

 強化、といえば聞こえばいいが、常識を取り払ったり、話術で煽てたり、あるいはやれと突き放したりと。

 

「洗脳されてないよな、あいつら?」

 

「はっはっはっはっはっは・・・・・後で田中少年に聞いてみますか」

 

「ですね」

 

 溜息を二人で着く。

 

 まったくあの無自覚な少年は、爆豪や緑谷だけじゃなく雄英のA組さえ改革してしまうらしい。

 

 もしかしたら、この時を見据えて二人を最大限に鍛えたのか。

 

「まさか、な」

 

 相澤はそう呟き、授業の終わりを告げようと足を踏み出した。

 

 そして、見えてしまう。

 

「おまえら!!」

 

 怒声に近い声に誰もがこちらを見た。生徒全員がこっちを見てしまった、それはある意味で正しく、ある意味で間違っていた。

 

 今は違う、そうじゃない。焦る相澤の視界の中で、こっちを見ていない生徒が二人だけ。

 

 爆豪と緑谷は、全身に力を巡らせて『天井を突き破って落ちてきた』何かを迎撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 忘れもしない、絶対に忘れない、あれからヒーローとして活動している中で、爆豪と緑谷は忘れたことなど一日もない。

 

「ぶっ殺す!」

 

 爆豪が飛び込む。あの時は周りに人がいた、周辺の被害が気になって全力では出来なかった。だが、今はできる。ここは雄英の訓練場だから、被害が出たとしても学校内の施設のみだ。

 

「かっちゃん!」

 

 爆豪が飛び出したから、緑谷は止まった。怒りはふつふつと燃えているが、同時に脳は冷たく冴えわたる。

 

 相手の出方がおかしい、あれだけの能力を持っているヴィランが一点突破して入ってきて、そのまま向かってくるだろうか。

 

「デク! 後ろ任せた!」

 

 言われて止めていた足を蹴とばす。艤装の出力を『一パーセント』から『五パーセント』へ引き上げ。速度が劇的に上がる、周りの景色が流れるように過ぎ去っていく中、クラスメートたちが立ちつくす中を通り抜け、手を伸ばす。

 

「先生!」

 

 叫びに、相澤先生とオールマイトが気づいた。

 

 ふっと振り返る二人の背後、壁を『すり抜ける』ように『脳無』が姿を見せる。前に見た時より大きい、全体的な存在感も増している。

 

 あれは強い。

 

「こっちに来るな!」

 

「でも!」

 

「大丈夫だ!」

 

 心配はしてない。二人なら大丈夫だと思いたいが、相手の数が多い。いったい、敵は何体の脳無を送り出したのか。

 

 索敵を、と視界を横に振ると妖精が『了解』と指を立てる。

 

 瞬間、ポーチの一つから光が飛び出し上空を旋回する。

 

 索敵機の発艦確認、続いて周辺状況の把握開始、敵の現在位置、出現位置、増援の可能性を捜索。

 

 今のところ、施設内の脳無は『八体』。施設の外から侵入を企てているのは、『十八体』。

 

「そんな?!」

 

「デク! 情報よこせ!」

 

 遠くからの声に顔を向けた緑谷の視界に、爆豪の周りを埋め尽くそうとする脳無が映る。

 

「かっちゃん!」

 

 咄嗟に呼ぶと同時に、爆豪が跳ねる。攻撃じゃない、周囲を囲まれるのを回避するために弾け飛んだ。

 

「チ! やっぱ、強ぇ!」

 

 爆豪の攻撃が相手に通じていない。爆破を確実に当てているのに、ひるんだ様子もなければ傷ついた様子もない。

 

「デク!」

 

「うん!!」

 

 爆豪が左手を上げる。同時に、緑谷も胸元のペンダントを握る。出し惜しみしてる場合ではない。相手は脳無で、強敵だ。今の状況でクラスメートたちは逃げきれていない。周囲から続々とくる脳無を無効化しないと、けが人が出る。

 

 だから、使う。

 

「変・・・・・」

 

「止めろ二人とも!!」

 

 瞬間、相澤から鋭く声が飛ぶ。

 

 えっと振り返る先、相澤が五体の脳無を操縛布で拘束していた。その間にオールマイトが二人の間をかけぬけ、前方から来た脳無を叩き伏せる。

 

「大丈夫だ、緑谷少年、爆豪少年、私が来た!」

 

「で、でもオールマイト」

 

 脳無の数は増えている。今も壁を破り、天井を破り来ている。

 

「大丈夫さ、私達はヒーローだからね」

 

「ここは任せろ。おまえたちは『まだ学生』なんだ」

 

 相澤の言葉に、グッと唇をかみしめる。

 

 ヒーロー協会内部でも、『シンガー・ボマー』と『グリーン・シップ』の扱いに揉めているのは知っている。

 

 ファンレターを貰ったのも、『あまりに多いから』であって許したわけじゃない。それに今はクラスメートの目もある。今まで非公式でヒーローやっていたことを知ったら、彼らは今まで通りに接してくれるだろうか。

 

 だから、使うな。無言に込められた相澤先生とオールマイトの願いに、二人は体が縛られたように動けなくなるのを感じた。

 

 これは、願いで出来ているから。絶望を知った人たちが、それでも前に進みたいと願って、そうであって欲しいと祈りを込めて作られたものだから、先生たちの願いで動けなくなる。

 

「大丈夫だ」

 

「任せなさい!」

 

 二人は笑顔で語る。けれど、劣勢は劣性だ。脳無の数は多くなっている、二人はなんでもない顔をしているが、状況は時間と共に不利になっていく。

 

 オールマイトが脳無の一体に飛ばされた。

 

 グッと緑谷は拳を握る、血が滴り落ちるほどに強く。 

 

 相澤先生の操縛布がちぎられ、先生が地面に叩きつけられた。

 

 ギュッと爆豪は唇を噛みしめた。血の味が苦々しい想いを伝えてくる。

 

「止めろ」

 

「ダメだ」

 

 二人はそれでも止めてくる。爆豪と緑谷のこれからのことを、ヒーローとしての活動のために命を削って敵を倒している。

 

 チラリとクラスメートを見た。誰もが蒼白な顔で見ていた。いきなりの実戦で動けるほど、誰もが強い心を持っているわけじゃない。

 

 味方の応援はまだ来ない。来たとしても、状況は不利なままではないか。

 

「デク、悪い」

 

「それは僕のほうだよ、かっちゃん」

 

 先生二人の願いよりも、クラスメートたちの瞳のほうが二人の背中を押す。 

 

「先生、先に謝っておくぜ」

 

 爆豪が左手を上げる。

 

「すみません、相澤先生、オールマイト」

 

 緑谷が胸のペンダントを握り締める。

 

「止めろ!!」

 

「君たちが動かなくても!」

 

「俺達はヒーローなんだよ。助けてって声に答えずに、ヒーローになれるかよ」

 

「困っている人を助けるのはヒーローですよね」 

 

 二人は決意を込めて顔を上げ、同時に叫ぶ。

 

ここで逃げたら、理想の(絶望を砕く)ヒーローになんてなれない!

 

 だから。

 

「変身!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶望の淵に立つ者よ、嘆きを叫ぶ人々よ、その悲しみに膝を折るな。

 

 鋼鉄の城が浮かぶ。三連装の主砲と、巨大な飛行甲板に雄々しきドリルを掲げた船が、絶望の海を割って立ち上がった。

 

 斜陽のような光がさす、靡くマントに広がるは爆破の光。あらゆる絶望を爆散させる眩き光が天より降りた。 

 

「人々の自由の海に、絶望の檻も悲劇の港もありはしない。嘆きも悲しみもこの装甲がすべて防ぐ! この主砲がすべてを砕く!」

 

 装甲が広がる、重厚な船の船体を分け、三連装の主砲を『二十五基』従えたヒーローが立ち上がった。

 

「『グリーン・シップ』、この航路は絶対に邪魔させないぞ!」

 

 朝焼けよりも眩しいマントが広がる。左手に持つのは何処にでも有るギター、それは次第に炎のような色合いを持ち、やがて弾けたような色彩を放つ。

 

 誰もが『爆破』とイメージできるギターを掲げる。

 

「歌は何処までも自由、ロックな魂に絶望なんてねぇ」

 

 右手に掲げるはオレンジ色の槍、二つになり、三つになり、やがて一つへと戻る不可思議な『爆』の宝具。

 

「悲劇も嘆きも俺の歌でかき消してやる! 涙なんて俺の爆破で吹き飛ばす! 『シンガー・ボマー』だ!! おまえら全員! 俺を信じろ!!」

 

 その日、雄英の訓練場に世間をにぎわせるヒーローが降り立つ。

 

 正義じゃない、悪でもない。

 

 ただ人々の自由のために(助けての声に答えるために)

 

 

 

 

 

 






 信念とは折れぬもの、揺らいでもいいけど、絶対に譲れないもの風味です。


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