強個性であり、万能的で無敵でもある。ただし、ストレス耐性と胃薬が必要である『完結』 作:サルスベリ
誤字報告を頂きまして、こんな作品でも誤字報告貰えることに感謝しております。
日本語、勉強しようと教科書を開いて。
閃いた話ではありますが、どうぞ風味です。
治崎・廻は考える。
ヴィラン連合に、オール・フォー・ワンに襲われたとき、護りきれなかったのは自分達の未熟さ故に。
奴らがまた来た時にエリを護れるように、いや他の誰が襲って来ても護れるようにどうにかしないと。
「よう、治崎、何を考えてやがる?」
「オヤジ。俺は考えに考えました。エリを護るために今の死穢八斎會の屋敷は『温すぎる』と」
「で? てめぇは何か名案があるのか?」
問われて言葉に詰まる。名案があるわけじゃない、打開策など思い浮かばないのだが、どうにかしないととは思う気持ちがある。
焦ってもいるかもしれないが、だからといって手段を考えるだけの知識はない。
「何もねぇのかよ」
「オヤジは何もないんですか?」
「俺たちが鍛えるしかねぇな」
「それは当り前の話でしょうが。俺達はエリを護るために」
言い掛けて、ハッとした。
ここは日本、日本で護るべきといえば姫、姫といえば何処に住んでいるかを。
「オヤジ、思いつきました」
「なんだ?」
「城を作ればいい」
決め顔でそう告げると、オヤジはポカンとした顔をした後に、両手を組んで顔をうずめた。
「治崎、てめぇは」
呆れているのか、怒っているのか。しかしここは退けない、どうやって説得しようかと考えている彼の前で、オヤジが立ち上がる。
「名案があるじゃねぇか!!!」
「そうでしょうオヤジ!!」
「ああ! 作ってやろうぜ!」
「無論です!」
そこで二人はがっしりと握手し、同時に叫んだ。
「姫路城を!」
「名古屋城を!!」
スーと冷たい空気が握り締めた手の間を通り抜けた。
「おい、治崎、聞き間違えか? てめぇ、名古屋城ってのはどういう了見だ?」
「オヤジこそ姫路城なんてものは、何を考えているんです?」
「は、言うようになったな、餓鬼が」
「耄碌したのかよ、ジジイが」
二人の間に火花が散る、握り締めた両手は離され、やがて二人は拳を握りしめ相対した。
緊張感が高まり、やがてどちらともなく動き出しかけた時。
「たわけどもが!!」
「は?!」
「え、英雄王?!」
金色の光を纏い、我らが愉悦王推参。その片手には何かのプラモデルが握られている。
「エリのための城など一つしかなかろう!」
「それは!?」
「あんた正気か?!」
驚く廻とオヤジの二人を見下ろし、ギルガメッシュは大きく頷く。
「正気だとも。エリのために我自らが助力してやろう。この地に築くは『江戸城』一択のみよ!!」
その声は、再建中の死穢八斎會の屋敷すべてを満たしたのだった。
どうも、田中・一郎です。
「きゅわきゅわ綺麗にしゅわしゅわお見事」
今日もうちの妻は絶好調です。何が嬉しいのか、楽しそうに掃除をしている姿に、俺の心はもう舞い踊ってしまって。
「あれはな、マスター」
「コナン、言わないでくれ、俺はもうお腹一杯だ」
誰が作詞したとか作曲したかなんて、俺は聞きたくない。もう毎日のように家事ソングを聞いていて、耳に残っているんだからな。
「作詞、デク。作曲、爆豪だ」
「なんて言った、お前?」
「最近、推理してないな、と思うんだ。俺は探偵なのに、推理してないなぁってさ」
あれ、不味い。なんでそんな哀愁を背負っているのさ。え、コナンが追い詰められて禁断症状って、そんなこと今までは一度も。
あ、あったな、うん。いつもの通りだ、この後に店の経営戦略とかやらせておけば、そっちにのめり込んで忘れるだろう。
きっと、そうだ。ダメなら令呪使えばいいし。
「一郎さん!!」
「なんだよ、エル?」
なんでそう滑り込んでセーフみたいな恰好で、いきなり家の中に入ってくるのさ。え、なに、おまえらって一々ポーズ決めないと登場できない病気にでも、かかっているのかな。
だとしたら医者を用意してやろう、腕のいい外科医だ。おまえらの頭の中をえぐってやる。
「一郎さん酷いです、僕で遊ぶだなんて。昔の素直で優しい貴方は何処に行ってしまったんですか?」
「はい?」
え、何それ。エルで遊ぶってどういう状況?
は?!
「ま、まさか一郎君に、そんな趣味があったなんて。確かにエル君は見た目は完全に美少女、服装をそれなりに整えたら丸っきりの美形だけど、でも性別は男なのに。いえいえ、旦那様の趣味を悪く言うなんて妻としては失格。でもでも、男色が趣味なんてどうすればいいの。もしかして、私との結婚はカモフラージュだったの。昨日、あんなに激しかったのに、もうヒミコは一郎君のテクニックにメロメロなのに、同性愛者だったなんて。迂闊よ、ヒミコ、もしかして私との後に、エル君とソープさんと一夜を共に。はうぅぅぅ! 美形二人に囲まれた旦那様、なんて魅惑的なの。いえ、待ってヒミコ、ひょっとしてまさかとは思うけど、弔君とも? ダメよヒミコ! その想像は私の体に悪いわ! 私のレベルが足りないの!! いえいえでもよ、でもなのよ。もしかしてそういう趣味と共に、妻も一緒になんて。はう!? 私の旦那様はなんて鬼畜なの! そこにしびれる憧れるぅぅ!!」
おう、なんだろう、ヒミコちゃんが悶えているんだけど、何故か彼女の言葉が聞こえないぞ。不思議だなぁ、はははははは。
「現実逃避するなよ、マスター。で、エルはなんだって?」
「はい! 鎮守府の資材がありません!」
「え?」
「おい、ウソだろ」
マジですか、嘘でしょう。だってあんなにあった資材が消えるなんて、そんなバカなことする奴なんて、エル以外にいないじゃない。
「僕じゃありません。僕ならすでに使い切っていますから」
「誇るなよおまえ! なんで毎回毎回! 報告を後に持ってくるんだよ!」
「ロマンの実現には犠牲が付きものなんですよ!」
「犠牲を他にも出すなよ! その前に犠牲なんて出すなよ!」
「いいじゃないですか! 貴方のものは俺のもの、俺のものは俺のものです!」
「何処のガキ大将だてめぇ!!」
こいつ、一度、本気で締めておかないとダメか?!
「あ、間違えました。ロボットのためにすべてをください、お願いします」
「ブレないなぁ、本当におまえは」
はぁ、まったくもう。
「二人とも落ち着けって! エル、本当にないのか?」
「はい、ありません。もう倉庫が空っぽです」
「あれだけの資材がなくなるなんて、誰が使ったんだ?」
そうだった、今の問題はエルじゃない。資材が空っぽなんて、そんなことありえないのに。
エルじゃないとなると、誰だ。ソープは、資材を使う前に報告するし、アインズは使わないし。
ギルは、自分の宝物庫を使うだろうからな。
「誰なんだろう?」
「ただいま、一郎」
「お、御帰り、弔」
買い物、お疲れ様。
「そういえば、ギルが死穢八斎會のところにいたが、何か聞いているか?」
「ギルが? いや、俺は聞いてないけど」
あれ、何か嫌な予感がする。
あれぇ~~まさかのギルが犯人説が浮かんできたぞ。
「それとだな」
「まだあるのか?」
「死穢八斎會の屋敷が『江戸城』になっていたが」
弔の言葉に、俺とコナンとエルは一斉に頭を抱えたのでした。
「おまえかギルガメッシュぅぅぅぅ!?」
まさかまさかの真犯人だったよ!
江戸城はすでに失われている。現在が何になっているか、俺は知らないけど、確か現存してないはず。
はずなんだけどなぁ。
「立派な江戸城だね」
あ、うん、立派だな。凄い立派なんだけど、江戸城っぽい建物に見えなくもない。
「げ?!」
「こ、コナン、何だよ。どうしたんだ?」
「いや、ちょっとな。ハハハ、マスター、凄い悪い話と、ちょっと悪い話があるんだが、何から聞きたい?」
「え~~~何その最悪の二択?」
コナンもこんな時にジョークを交えるユーモアを身につけたらしいいな。いいよ、いいよ、平穏な世界においてジョークは世界を回す潤滑油らしいから、存分にやってくれよ。
ただし、俺にダメージが来ない方向で。
「マスター、現実逃避は止めてくれ」
「フ、いいじゃないか。俺は逃げたいんだ」
「じゃあ、僕から言っていいかな?」
ソープ、なんで俺を追い詰めたいんだ。珍しく、一緒に行くよってついてきたと思ったら、俺に対して愉悦かぁ、おまえも随分と俗世に染まったなぁ、この『天照』がぁ。
「いや、この場合さ、さっさと聞いておかないと後になって、一郎が困ることになるからさ」
「そうか、優しいなソープは」
「いいよ。で?」
促され俺は深呼吸を何度かして、コナンに顔を向けた。
「いいぞ」
「じゃちょいと悪いから。あの江戸城の外壁とか、城の基部とか、鎮守府の資材だ」
「ギルガメッシュぅ!! おまえの罪は重いぞ!」
あいつ本当に何してんの! この城を築くために資材を持っていたの! なんでおまえの宝物庫を使わないんだよ!
あれ、でもこれがちょい悪い話って、もっと悪い話があるんだよな。
あ、解った。そっか、そうだよな、ギルが関わっている時点で察するべきだよな。俺も何を忘れていたんだろう。
「気づいたようだな、マスター。じゃ答え合わせと行くか」
「いいや、コナン、俺はもう帰る。帰ってヒミコちゃんに膝枕してもらって、癒されたい」
「は! 馬鹿いうなよ、マスター。舞台は揃った、役者も待っている。ならさ、後は主人公が踊る番だろ?」
「俺は主人公じゃない、一般人Aだ」
「いいや、おまえは主人公だ。周りをひっかきまわす喜劇役者の中で、右往左往する主人公だよ」
「コナン、冷たいな」
「仕方ないだろ、俺達はもう『演劇の中にいる』だからさ」
肩をすくめる仕草、本当に様になっているよ、コナン。
「解った、いいぜ」
「助かるよ、マスター。なら言うぞ」
「ああ、もう俺もここまでか」
「悲観しなくていいぜ、もう悲劇は始まっているんだからな。あれ、全部、宝具だ」
「もう嫌、どうしたのうちの英雄王」
本当に何で。あの門のところに飾ってある楯って、マシュって子が使っていた楯でギャラハッドのじゃなかったっけ?
原典しかないって話じゃないの、なんであの子の宝具が入っているの。え、あそこの柱に隠してあるのって、『アヴァロン』じゃないの。なにこの魔界、あっちにある槍って誰の?
「カルナのじゃないか?」
「施しの英雄の槍かぁ、ここら一帯が吹き飛びそうだな」
「・・・・・江戸城の屋根の中とか堀の各所に『ディンギル』が配置されているな」
「ウルクじゃないんだからさぁ」
本当、何してんのあいつ、なんでここまで死穢八斎會に力を貸しているの、え、そっちに鞍替えしたのか?
あ、不味い、ラッキーとか思った自分がいた。
「おおおお!! ようこそ我が師よ!」
「廻、あの馬鹿王は何処だ?」
門を開き出てきた廻に問い詰めると、彼は速やかに片膝をついた。
「我が死穢八斎會、以後、貴方様の組織の一員となります」
「はい?」
え、待って、何それ。どういうこと?
「マスターよ、来たようだな」
「ギルガメッシュぅぅ!! 出たな元凶が!」
「フハハハハハ! そう褒めるな、懐くな」
「誰が褒めた! てめぇ今度は何した?!」
そこでギルが怪しく笑い、右手を握った。
「平民の暮らしに飽きたのでな。さらなる愉悦のために死穢八斎會を下部組織として見た」
もう本当、勘弁してくれ。
俺は胃を抑えながら、そんなことを呟いたのでした。
馬鹿をいうギルを引っ張って店に戻ってきました。
廻も一緒です、エリちゃんはお留守番です。
「で?」
「ふむ、そう難しい話ではない。考えてもみよ、オール・フォー・ワンは確実にエリを狙っている」
まあ、それは解る。なんでか執着しているっぽういからな。あれ、あいつってロリコンじゃないよな。個性に拘っているけど、そういうものに興味ないよな。
「前回の襲撃により死穢八斎會の家屋はすべてが倒壊、綺麗に消えている。故に、新しく建造するのは容易い」
「だからってなぁ」
「最後まで聞くのだ、マスター。現在の勢力図で考えれば、ヒーロー側、ヴィラン側共にそう差はない。この二つの勢力がぶつかれば、人民に少なくない被害でる」
いや、被害ってヒーロー側は人々を護るためにあるんだからさ。ヴィランはそういったこと考えてない。
「では、何故ぶつかると思う?」
「何故って相手が許せないから?」
「違うな、『第三勢力がない』からだ」
え、コナン、そこで口を挟むって何で。
「俺達の存在は関係者しか知らない。だから、ヒーローもヴィランも相手を叩きつぶせばいいと考える」
「そうだ、そこで我達が勢力を拡大させ、その姿を見せることで、ヴィランも迂闊に動きヒーローに攻撃を仕掛けても、その後に潰される危険性を感じさせると、どうなるか?」
「あ、迂闊に動けなくなる」
「ようやく解ったな、マスター」
なるほどなるほど、そうか。だから俺たちが勢力を増していき、二つの勢力へのけん制になればと?
「へぇ、ギルってそこまで考えていたんだな」
「フ、当然であろう、我がマスターの望みは平穏、それを手に入れるためならば我が宝物庫を使うのは当然のことだ」
「ぎ、ギル」
そこまで俺のことを考えていてくれたなんて。疑って悪かった、おまえはいい奴だよ。
「褒めるな、マスター。我は当然のことをしているまでだ」
「褒めさせてくれ、今回ばかりはおまえの優しさが身に染みる」
「よいのだ、マスター。おまえは家庭を持った。ならば、その家庭を守るために我も全力で手を貸そう」
「ギルガメッシュ王」
俺は涙を流して彼に手を差し出した。
いい奴だ、本当にいい奴になってくれた。
涙を流して喜んでいる一郎を見ながら、コナンは隣で穏やかに微笑む英雄王にそっと問いかける。
「で、本音は?」
「第三勢力のトップとなったマスターの右往左往する姿が見たい」
「おまえ、いつかマスターに殺されないか?」
「フ、我がマスターは敵に苛烈かもしれないが、身内には甘いからな。そう言ったことはなかろう。そもそも、語ったことは半ば本気であった」
「エリを護るためにか。死穢八斎會が俺達の傘下と知れたら、迂闊に手を出さないって思っているのか?」
「当然だ。次に何かしてくるならば、我は迷わずに『乖離剣を抜く』ぞ」
「はぁ、まったくお前は」
笑うことなく真顔で語るギルガメッシュに、コナンは盛大に溜息をついた。
「仕方あるまい、今の我は田中・一郎のサーヴァント。マスターの身の安全は最優先であろう?」
「まあ確かにそうだけどさ」
「それにだ。これは治崎達への救済でも有る。復讐に走りかけたあいつらにとって、見た目から完全にケンカを売っている城ならば、少しは慰めにもなろう」
「慰めねぇ」
胡散臭そうにつぶやくコナンは思う。
前に襲撃してきた時、簡単に倒せたから相手はなめている。もう一度やっても同じだろうと、考えるのだろうか。
否だ、そんな甘い考えでヴィランを率いれるわけがない。
だとすると、これは復讐は無意味と語りつつ、相手側に強烈な挑発を行っているということか。
『もし次に来たら、おまえらは全滅だ』と。
「ギル、おまえ、まさか」
辿り着いた答えに名探偵が冷や汗を流していると、隣に立つ英雄王は『笑っていない眼で』笑顔を向けてきた。
「フ、それ以上は語る必要はないな」
静かにそう告げて歩きだすギルガメッシュの背中に、コナンはポツリと呟いたのでした。
「結局、おまえが一番、頭に来てんじゃねぇか」
どっとかかる心労を感じながら。
はい、というわけで、『死穢八斎會』宝具と艦娘関連資材で作られた江戸城に住む、でした。
もう侵入者は抹殺、慈悲なんてない。
堅牢な城塞を作ってこそ、御姫様は守られるのです。
そんなロケット飛ばして話を飛ばしました風味でした。