強個性であり、万能的で無敵でもある。ただし、ストレス耐性と胃薬が必要である『完結』 作:サルスベリ
ギルガメッシュ、静かに怒る話が前回!
もういっそ、開幕に『エア』抜いちゃう英雄王を見てみたい。
一郎も気づかずに激怒する英雄王。その隣で心労が重なる名探偵。
でもでも、最後には必ず一郎に心労が向かう風味の話でございます。
その日、俺は信じられない話を聞いた。
「ギル、激怒しているぜ」
「へ?」
どうも、田中・一郎でございます。
いやいやいやいやいやいや、なんだってコナン?
まさかそんなことあるわけないじゃないか、だって今だってソファーに座ってワインを飲んでいるんだぜ。
どこも変化、あ。
「うわぁ~~」
気づかなかった。本当にマジで解らなかった、うわぁ俺って馬鹿じゃないか。ヒミコちゃんと結婚して浮かれていたのか。
「ギルが『カギ』を握っている姿って、久し振りに見るな」
「だろ? どうするんだよ、マスター?」
どうするって。あんな状態のギルがもし、オール・フォー・ワンと出会ったら開幕に『エア』だろうが。やだぜ、俺、『星』が降ってくる世界で平然と生活なんてできないし。
うん、そうなったらオールマイトから凄い勢いで怒られる、いや待ったそんなことになったらヴィラン指定になって、全ヒーローから狙われるんじゃないか。
「とにかく、沈めるか」
「鎮めるじゃないのかよ?」
「いや沈めるだ。いざ!」
仕方ない。ギル、おまえは悪くない。悪くないけど、今回ばかりは状況が悪い。申し訳ないな、ギル、おまえは俺のために色々としてくれたのに。
裏切らせてもらうぜ。
「ユニコーン、ゴー」
「は~~~い」
トテトテと可愛く歩いていくユニコーンは、やがてギルの近くまで行って、一言。
「ギルは笑っているほうがかっこいいよ」
「・・・・・フ、マスターよ、コナンよ。俺の弱点をついてくるか、良かろう」
あ、不味ったかな。
不意に立ち上がり、ギルは『エア』を抜いた。
「ならば見るがいい! これが英雄王の生き様よ!!」
そういってあいつは金色の鎧を纏って、『エア』を掲げた。不敵に笑う姿は何処までも素晴らしくかっこよくて。
「これでよいか、ユニコーン?」
「うん、じゃあ私も!」
その瞬間、俺は思った。ギル、すまない、と。
「退避!!!」
「貴様らぁぁぁ!!」
遠くからギルの叫びが聞こえ、そして彼の前でユニコーンは禁断の艤装を使った。
「我が人生に、一片の悔いなし」
遠くからギルの声が聞こえ、続いて何かが崩れ落ちる音がした。
「猫耳ロリっ子メイド、上目遣いアタック、成功」
「マスター、そのうちギルに殺されないか?」
「はっはっは! 昔のギルなら確実に殺されていただろうけど、今のギルなら笑って殴って許してくれるさ」
たぶん、な。でも、激怒状態のギルをそのままにするくらいなら、俺に怒りが向いた方が。
「一郎君!」
「あれ、ヒミコちゃん・・・・・え?」
そして俺の視界にミニスカ和服の猫耳つけた嫁さんが映ったのでした。
くっそぉ、やっぱりこの手のことに関しては、ギルのほうが上手かぁ。
「痛み分けとしよう、マスターよ。貴様はやはり、我のマスターに相応しい」
「褒めるなよ、ギル。いいぜ、痛み分けにしよう。俺のサーヴァントがおまえで本当に良かった」
「褒めるでないぞ、マスター。貴様は我が最後に引導を渡してやろう」
「よせよギル、そんな強がりをするなよ。おまえが弱く見えるぜ」
そんなことを俺とギルは言い合いながら、床に転がっていた。
血が足りないんだよ、血が。店の床一面を血に染めた俺達の戦いは、両者ダウンで終わったのでした。
うん、血とかって中々に綺麗にならないって話だけど、なんかアインズが『ルーン文字で綺麗綺麗』とかやったら、一瞬で綺麗に消えたよな。
すげぇな、うちのオーバーロード。
一家に一人いれば、大掃除が十分で終わるぞ。
「で、なんでそこまで怒るかな、ギル?」
「我のプライドの問題だ。マスターにはあまり関係ない」
「へぇ、そっか、そっか。それってどの?」
正直、ギルのプライドってかなり広いっていうか、深いって言うか。どれがどんな怒りに繋がるか解らないんだよな。
最近じゃ、そんなものあったのかってくらいに、とても懐が深くて優しいことが多いけど。
「無論、紳士としてだ」
そっか、そっか、エリちゃんが泣いていたからなぁ。まあ、俺も人のこと言えないから今回の話は、忘れようか。
「頼むから、ギル、あいつは『俺達の獲物じゃない』からさ」
「・・・・・よかろう、ここはマスターの顔を立てよう。しかし、次に奴が愚かにも手を出してきたら」
「その時は俺が命令するさ」
二度目はないからなぁ。
まあ、そうなる前にオールマイトが何とかしてくれることを祈ろう。
「で、だ。ギル、俺はおまえに言わなくちゃいけないことがある」
「我にマスターが苦言を呈すると? 中々に面白いジョークだ」
「いや、おまえね、資材を使った言い訳をして来い」
「フ、我がどう動こうと貴様以外の誰の許可が必要だというのだ?」
大笑いするギル、そうだよな、おまえの行動を制限するとか縛るなんて、今まで誰もやっていなかったよな。
でも今回ばかりはな、色々なところが怒っているんだよ。
「いいんだね?」
「ソープか。貴様程度が」
「いいんだな?」
「エンタープライズもか。貴様らがいくら束になろうとも」
「いいんですね?」
「吹雪だとぉ?! 待て貴様!」
「いいってことですか?」
「大和?! 貴様、その聖剣を抜くというのか?! かの騎士王が許すはずがなかろう!?」
「いいってことですよね?」
「エルもか?! 貴様は普段からやっていることだろう?!」
「いいの?」
「イオナ?! 貴様らこの英雄王を前にして何を企んでいる?!」
うわぁ~~珍しくギルがフル装備でございますよ。鎧だけじゃなく『王の財宝』まで展開して下がっているギルなんて、凄く珍しい光景ですなぁ。
あ、大和が抜いた。なんであの子は、騎士王の聖剣が艤装に入っているのかな、まったく繋がりないはずなのに。
吹雪って『エア』を壊せるって言っていたけど、本当かな。エンタープライズの光子魚雷って、中身に反物質が入れられるって話もあるけど、何処まで本気なんだろ。
「ギル~~~頑張れぇ~~~」
「謀ったな?! マスター貴様ぁ!!」
「フ、君が悪いのだよ。私たちに内緒で、皆が集めた資材を使いきるから」
「普段からエルがやっていることだろう?!」
確かに、普段からエルは資材を勝手に使っているけど。今回のギルとエルは決定的に違う部分があるんだよ。
「エルが作った装備、すべて鎮守府関係」
「そうか、我としたことが見落としてたのか。ふ、やはり怒りは王の目であっても曇らせるのか」
「ああ、他人に使ったおまえの罪は深い」
残念だよ、ギル。今回ばかりはおまえに勝ち目はない。
「ふ・・・・ふははははは! マスターよ、貴様は失念しているようだな?」
「な、何を?」
「この我が『誰であるか』を!! 貴様は忘れていたようだな!!」
「何を言っている!? この状況で逆転できる手段などない!」
そうだ! 今のギルに逆転の一手はない、ないはずだ!
「開け、宝物庫よ。さあ、我が使った資材はどれほどだ? よもや、この宝物庫の『資材』よりは多いとは言うまいな?」
「く、くっそぉぉぉぉ!!!」
ニヤリと笑うギルが叩きつけた資材に、俺達は膝をついたのでした。
「フハハハハハ!!! 甘い! 甘いぞマスター! まさか我がその程度、見抜かなかったと?! 我が怒りを感じていたと?! 名探偵も衰えたものよな?!」
「き、貴様! まさか最初から?!」
「当然であろう! 我こそは王の中の王! 英雄王ギルガメッシュ! 我に見通せぬものなどないのだからな! 最初からこのための話よ! 今この瞬間! 貴様らが顔を歪ませ敗北し! 我の資材の前に崩れ落ちる瞬間のための布石よ!」
「ギルガメッシュぅぅぅぅ!!!」
「抗うかマスター?! よかろう存分に抗うがいい! この我の資材を前にして足掻けるものならばな!!」
ちっくしょう! そんなわけあるか! あの資材があれば、もっと艤装を強化して色々と作れて。
「鎮守府の強化ができますね?!」
「待て、エル、何を言っている?」
あ、ギルが素に戻った。
うん、俺も疑問がある。え、何を言ったの、エル?
「何って、鎮守府の強化をするんですよ。もっと強力にして、銀河を貫く一撃を」
「いや、今のままでいいじゃない」
「何を言っているんですか?! 今のままじゃ星を砕く程度です! もっと強力にもっと強くならないと! 目指せ、『エア』ですよ!」
あ、うん、なんだろう、そっかそっか、えっと。
「ギル、頼む」
「いくら我でも暴走中のエルは不可能だ。マスター、我らはどうやら調子に乗ったようだな」
「そっか、そうだなぁ。ギル、今日は飲もうぜ」
「付き合うぞ、マスター」
そう言って俺とギルは肩を組んで黒霧の店へと向かった。
「いや一郎さん、貴方は未成年でしょう?」
「ガッデム!!」
畜生! 転生してもその言葉は付きまとうんだな?!
馬鹿騒ぎをした一郎が店の奥で泣いている。その横で笑顔でホクホクしながら看病するヒミコがいるが、誰もそこに突っ込まない。
『弱っている一郎君を看病する、私は奥様、ああ、素敵』とかうっとりした顔で呟いてたが、まったく気にしない。
弔はそんな父と母の姿を見つめた後、『息子として立派に働こう』と固く決意した。
店の準備を終えて看板を出す。今日のランチは少しだけ混雑しているようだが、捌ききれない数ではない。トッティとトルテもいるし、いざというときは艦娘から応援を貰えるようになっている。
ギルは相変わらずソファーで寝ているが、その横顔が少し蒼くなっているのは誰も気にしない。
彼も疲れることもあるのかと、一部の客からは不思議と安心感を得たと言われたが。
ランチタイムが終わり、そろそろ看板をしまおうかと考えていた時、店のドアが開いて爆豪とデクが入ってきた。
「弔さん、ちょっと連れがいます」
爆豪が真っ直ぐに見詰めてくるので、小さく頷いてカウンターの何時もの席を指差す。
二人の続いて入ってきたのは、黒髪の女性。見覚えがあるが、何処であったのか思い出せない。
「あ、あの、ご無沙汰しております」
「・・・・誰だ?」
思わず素で聞き返すと、彼女が固まってしまった。
会ったことはあるだろう。記憶の何処かで見かけた気がするが、それが何処でだかは具体的に思い出せない。
「弔さん、知りあいじゃないのか?」
「ええ?! 八百万さん、知っているって言ってなかった?」
「は、はい、前にお会いして挨拶を交わしております」
爆豪が聞いてきたが、覚えがない。デクは本人に確認して、その当人が告げた内容に弔は首を傾げた。
「会ったことはあるだろうが」
「助けていただいたので、お礼も言いましたわ」
「・・・・・・」
はっきり言って、弔には覚えがない。いや、『覚えがあり過ぎて』解らないと言った方がいいか。
日常的に人助けはしている。『ザ・ハンズマン』として、死柄木・弔としてでも。困っている人には出来るだけ手を伸ばしてきたから、彼女が言うような状況はいくらでもあった。
「すまない、覚えていない」
「そう、ですか。一言、二言としか交わしておりませんでしたから、無理もありませんわね」
ちょっとだけ落ち込んだような顔に、弔は興味を失いそうになって思い直す。前に一郎に『知らない人でももっと優しくした方が』といわれて、最近はそういったことを考えて人と接するようにしていた、と。
「覚えていないから、少し話さないか? 状況を教えてくれたら、思い出すかもしれない」
優しく、丁寧に。一郎にするようには無理でも、顔見知り程度の相手くらいには話ができるかもしれない。
「はい喜んで!」
落ち込んだ少女が一転、笑顔になって話をし出した。これでいいのだろう、と弔は思いつつも料理のために手を動かす。
「今日は俺が奢ろう。爆豪とデクも、よく連れてきてくれたな」
「ウッス! ゴチになります」
「ありがとうございます」
二人からの礼を受取、何時も二人が注文する料理に取りかかる。
「そっちは?」
「私ですか? その申し訳ないのですが」
「適当に言ってくれて構わない。材料さえあれば大抵のものは作れる」
「そうですか。では、オムライスを」
どうしてその料理を頼んだのか、弔はちょっと疑問を感じたが、注文されたなら後は作るだけだ。女性を悲しませた、墜ち込ませてしまった以上、料理人としてもヒーローみたいなものとしても、手を抜かず最高のオムライスを出してやろう。
「このお店の噂は前から聞いていました。まさか、『弔さん』がシェフのお店とは知らず」
彼女の言葉に、爆豪とデクは首を傾げる。
初対面に近い時に、彼女が苗字ではなく名前で呼ぶことがあるのか、と。
「助けたって話だけど、何処で?」
「恥ずかしながら道に迷ってしまった時に、男の人に声をかけられて。お断りしたのですが」
「ナンパか。そりゃ災難だったな」
爆豪がそう口にすると、彼女は小さく頷く。
「殿方があのように強く迫ることがあるのですわね」
困った顔をする彼女に、そりゃそうかもなと誰もが思ったのだったが、ここにいる男三人は『そっちの話』には敏感ではなく、また年相応に育ってはいない。
街中で八百万・百のような女性が歩いていたら、声くらいはかけるだろう。見た目よし、声もよし、丁寧な対応などされたら、普段からナンパなんてしている連中から見れば、『鴨がネギを背負っている』ように見えるだろうから、絶対に逃がさない。
「一人で歩いていたの?」
「ええ、探している店がありまして。その、このお店です。噂では、とても美味しい料理を出すとのことでしたから」
「確かに、弔さんの飯は上手い」
爆豪は手を組んで真っ直ぐに弔を見つめる。一種の憧れに近い感情が瞳に灯っているが、シェフは苦笑しながら首を振った。
「俺程度はいくらでもいる。あまり煽てるな」
「そんなことないですよ! 弔さんの料理、とても美味しいから」
「ありがとな」
デクからの称賛に、素直にお礼を述べた後、弔は二人の前に料理を置く。
スペシャルトッピング、カレーライス。ハンバーグとウィンナーが乗った、二人が訓練が終わった後に、家の夕食まで持たないとこぼしていた時に作った特別メニューだ。
「それでこれが」
八百万・百は、目の前に置かれたメニューにちょっと驚いた。オムライスを頼んだのに、目の前にあるのはチキンライスのみ。
「オムライスだ」
フワッとその上に卵が乗り、自然と広がって行った。まるで金色の衣が広がるように、ゆっくりとチキンライスを覆い隠した卵に、彼女の頬が緩む。
「さあ、暖かいうちに召し上がれ」
「いただきます!」
声を揃えて三人が食べ始める姿を弔は眺め、少しだけ微笑む。
美味しそうに食べてくれる人がいるから、料理人は止められない。嬉しそうに楽しんでくれるから、この瞬間はとても癖になる。
彼女はそれを真っ正面から見てしまった。真顔でそっけない態度でいる彼が、一見では冷たそうなシェフが、お客が食べる時に不意に見せる穏やかな笑顔。
とても暖かくて、柔らかく微笑む彼を見て、思わず頬が染まったのを彼女が自覚したかどうかは、誰にもわらからないことだった。
「なあ、一郎」
「なんだよ、弔」
「頬を染めた女性って、可愛いな」
「・・・・・・はい?」
その日の夜、弔が妙なことを言っていました。
「え、うん、何があったの?」
「弔君、何があったんですか?!」
思わずヒミコちゃんまで詰問する中、弔はノートを取り出してペンを走らせる。
「そうか、この感情でチョコレートを作ればバレンタインは売れるのか。そうか!!」
「よっし、何時も通りの弔だ」
「弔君、もっと異性に目を向けましょう。なんだか心配になってきました」
一心不乱にノートにメモを取り、料理を考える弔に、俺とヒミコちゃんは不安そうな顔を向けたのでした。
あれ、これって子供を心配する親のような、まさかねぇ。
何が地雷で、大地を割ったかは、皆さまの感じ方にお任せします。
サルスベリ的に盛大な地雷ではなく、大地を裂くって気持ちで書かせていただきました。
え、何処も割れてない?
割れなかったなら割れなかったということで、お後がよろしいようでって風味の話でした。