強個性であり、万能的で無敵でもある。ただし、ストレス耐性と胃薬が必要である『完結』   作:サルスベリ

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 皆さま、すっかり寒くなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?

 なんて挨拶から始まるのも、たまにはいいかな、と。

 ランチキ騒ぎが今回も始まります。

 個性の効果について、独自的な解釈が入りますのでご了承ください。

 といった感じでございます。







朱に交わったら赤くなる前に真赤だった件

 

 

 俺は今、信じられないものを見ていた。

 

 どうしてだと叫びたくても、上手く言葉が出てこない。

 

 なんで、どうして、何故だ。言葉が俺の頭の中をぐるぐると回っている。こんなことあるわけがない。

 

 だって、そうだろ?

 

「弔、お前」

 

 俺の目の前で、弔が『何か』を崩壊させていた。飛び散った何かと、真っ赤になったあいつの両手が、俺には震えているように見えた。

 

「一郎、俺は。俺には無理だった」

 

「何言ってんだよ、しっかりしろよ」

 

「やはり俺には無理だったんだ。出来なかった」

 

 嘆くように両手を見つめる弔は、そのまま床に膝をついた。

 

「できるさ! おまえには出来る!」

 

 こいつ、やっぱり先生の影響が残っていたのか。今まで普通に過ごしていたのに、今になって衝動が抑えきれなかったのか?

 

 違う、まだ間に合う! 俺が抑えてやれば間に合うはずだ! 何があったか知らないけど、間に合わせる!! 

 

 俺には頼りになる仲間がいるから!

 

「コナン! 弔が!」

 

「ああ、やっぱり無理だったんだな」

 

 え、なんだよそれ、おまえまで諦めた目で見るなよ。

 

「ギル!!」

 

「道化はしょせん、道化か。おまえの努力、我が見届けたぞ。安心して逝くがよい」

 

 な、なんだって?! 最初は傲慢だったけど、今は賢王みたいに穏やかな性格になったギルが! 愉悦に走って俺を虐めるけど! 絶対に俺以外を見捨てないギルが!

 

 あ、ヤバい。俺が泣きたくなってきた。

 

「一郎、俺は・・・・・俺は!!」

 

 違う! 今は俺のことより弔だ! あいつを止めないと!

 

 あれ?

 

「俺はできないのか?」

 

 あれぇ~~~? 変だな、なんかおかしいことになってないかな?

 

 うん、弔の両手は赤い。赤いけど、あれって血じゃないのかな?

 

「俺は諦めるしかないのか?」

 

 え、でも弔の能力って人間を崩壊させたら、血だけが残る、とかないよな。全部、消えるはずじゃなかったか?

 

「でも俺はまだ」

 

「よせ弔! おまえは頑張った! 頑張ったんだ!!!」

 

 あ、コナンが叫んで弔を止めている。あれ、弔が何かダンボールから出したけど、あれって。

 

「よせ! 弔よ、おまえは十分に努力した。再び身を染めることはあるまい。その努力、この英雄王が認めてやろう」

 

 はい? なんだかギルが優しく語っているけど、弔の手は止まってない。なんかよく見たことある赤い物体を取り出して。

 

 あれれぇ~~俺がおかしいのかな?

 

「ダメなんだ、コナン、ギル。俺は諦めたくない。だから」

 

「よせぇぇぇぇ!!」

 

「このたわけがぁぁぁ!!!」

 

 そして、俺の目の前でグシャって音もせずに、トマトが崩れた、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?」

 

「俺の能力は『崩壊』だ」

 

 うん、それは知ってる。床一面に散乱したトマトの残骸とか、トマトケチャップになりかけた物体とかを掃除しながら、俺は半眼で弔を見つめていた。

 

「知っている。それで、何してどうしてそうなった?」

 

「物体を崩したり壊したりできるなら」

 

 モップをかけていた弔は、そこで顔を上げて汗をぬぐった。本当に清々しいほどの笑顔が、やけに頭に来るんだけど、俺は悪くないよね。

 

「崩壊を途中で止めたら、みじん切りになるんじゃないかって」

 

「・・・・・・・」

 

 はい、何だって? え、なに、そんな理由でこんな惨状になったわけ?

 

「それだけじゃない、自家製のトマトケチャップとか、あるいは生搾りのジュースができたりしないかって」

 

「あ、うん、解った。弔、おまえは疲れてるんだよ。最近、冬の新作料理ができなくて悩んでたんだよな」

 

「一郎、俺はまだやれる気がする。努力はいずれ報われる、必死にやれば人間はなんだってできるはずなんだ」

 

 うぉ?! なんでこいつはそんな言葉を真顔で言えるんだよ。なんだよ、どっかの熱血漫画の主人公みたいじゃないか。

 

 え、こいつってこんな性格だったっけ?

 

 違う、弔はもっと違う性格だったはずだけど、何があったのさ。

 

「俺はエルの魔法に負けない」

 

「あいつが原因か?!」

 

 あの女顔の馬鹿は何したのさ?!

 

 エルネスティってのは、俺の『手のひら鎮守府』のおまけその四かなって奴で、技術チートの片割れにして、魔法の天才。機械関係もお手の物なんで、ハッカーっぽいこともしている。

 

 エルともう一人の技術チート二人がいれば、地球中のコンピュータにハッキングして内部データを見放題、書き返し放題なんだけど。

 

「呼びまして?」

 

「出たな元凶!!」

 

 ピョコって音がしそうな勢いで、ドアから顔を出した馬鹿にモップを突き付ける。

 

「酷いですよ、僕が何をしたって言うんですか?」

 

「何をしたって・・・・・何してんの?」

 

 怒ろうと思った俺の視界に、エルの全身が入ってきた。

 

 猫耳メイド服を着た銀髪の少年。繰り返しますが、見た目は完全に美少女です、街を歩けば大抵の人が振り返る美少女ですが。

 

 性別、男。

 

「出来なかったんですか、弔クン?」

 

「ク」

 

 うわぁ、凄いいい笑顔でエルが笑ってる。

 

 弔、そんなに悔しがるなよ。こいつの魔法が繊細なコントロールできるの、皆が知っているんだから。

 

 威力と多様性重視のアインズに対して、エルの魔法って繊細かつ精密、一点突破型が多いからな。

 

 最大威力だとどっちもどっちだけど。

 

「フフフフ、出来なかったんですね? そうなんですね?!」

 

「あ、ああ、できなかったさ」

 

 悔しがるなよ、弔。この馬鹿エルは、ノリにノッてる時は、こう意地悪に見えるけど、基本はいい子だから。

 

 悪のりすると、ギルより性質が悪いけど。

 

「一郎、俺は賭けをした」

 

「・・・・はい?」

 

「ええ、賭けをしました」

 

「なんだって?」

 

 え、なに、何をしたの、この二人。俺の知らないところで、何をやろうとしているの? 

 

 待って、止めて。後になって『あの大事件が』とか言われる身にもなって、ねえまた警察に呼ばれて事情を説明されて『何とかして』と泣きつかれるの、俺はもう嫌だよ。

 

 オールマイトにも土下座させる寸前とか、もう二度といやなんですけど。

 

「さて、弔クン、出来なかった君に罰ゲームです」

 

「解った」

 

「潔いですね。では・・・・・このボクとおそろいの猫耳メイド服を着て店の宣伝に行きましょう!!」

 

「ちょっと待とうかエル!! 弔に何を着せるって?!」

 

 待て待て待て! それはいろんな方面から怒られる。ただでさえ、色々とやらかしているんだから!  

 

 そんなことしたら俺はまた呼び出しくらって!

 

「ちなみに、ソープも道連れにしました」

 

「やっほー」

 

「待てやこらぁぁぁ!!!」

 

 何普通に猫耳メイド服を着てるんだ、おまえ! 

 

 あ、こいつはレディオス・ソープって言って、エルと同じおまけで技術チートのもう一人。栗色の髪を三つ編みにしている、男性。

 

 もう一度だけ言うぞ、男性だ。見た目、完全に美少女。男物を着ていても、『男装ですか』って言われるけど、正真正銘の男。

 

 そんでもって、ギルが嫌わない『神様』。本当の名前は『天照』なんだけど、ソープって名乗っている変わり者。

 

 はい、紹介は終わり!

 

「おまえら三人で何してんだよ!?」

 

「店の宣伝に!」

 

 凄いいい笑顔のエルと。

 

「久しぶりにハッチャケたくて」

 

 微笑するソープと。

 

「行ってくる」

 

 何かを振り切った弔の三人は、こうして街を歩いてきたのでした。

 

 後日、俺は警察とオールマイトのダブルに呼び出しを食らいました。

 

 俺が悪いわけじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 呼び出し、事情聴取、お説教の三連発を貰って、一郎は帰還しました!

 

 あいつらどっかに閉じ込めておくかな。いや、エルとソープは脱出するよな、アインズかギルに頼んで何か。あ、ダメだ。二人とも『楽しければそれでいい』とかいいそうだ。

 

 いっそのこと、俺の『手のひら鎮守府』に閉じ込めるか。いや、まった艦娘達が飛び出してきそうだ。

 

「お疲れのようですね」

 

「黒霧、頼むからおまえはそのままでいてくれ。おまえだけが俺の最後の良心だ」

 

「何があったか深くは聞かないことにしておきます」

 

 ああ、察してくれるのか。やっぱり、黒霧はいいやつだ。見た目、完全に宇宙怪獣だけど。

 

「ム、何やら不審な考えが」

 

「誰だ、そんな奴は」

 

 あっぶねぇぇぇぇ!! なんでこいつまで俺の心を読むのさ?! え、弔だけじゃないの、俺の考えって顔に出やすいの?

 

「そうですか。ちなみに、私は宇宙怪獣に例えると何ですかね?」

 

「え、そりゃ・・・・あ」

 

「ほう?」

 

「・・・・」

 

「そりゃ、なんですか、一郎さん?」

 

 ぐ、圧力が凄い。なんだか、すっごい睨まれているけど、ここで退いたら俺は確実に負ける。負けて何があるか解らないけど、負けたら逃げられない気がしてきた。

 

 気の迷いだろうけど!

 

「ぜ、ゼットン」

 

「・・・・・・・許しましょう。あの最強の怪獣ならば、本望です」

 

 それでいいのか黒霧!

 

「光栄です。私がゼットンに似ているなんて。そうですか、私はゼットンですか。ワープはできますが、火球はできません。ギルかアインズに相談すれば、私でも炎が出せるでしょうか」

 

 あれ、何時になく饒舌なんだけど、何があったの。え、黒霧って怪獣大好きだったっけ? 

 

「ええ、私はギル達に見せられた怪獣大戦争を、もう三百回は見ています」

 

「あ、そうですか」

 

「いい映画ですね」

 

 ははははは、そうね。そうだろうね。よし、俺は黙っていよう。俺は何も言わないし、言えない。

 

 あれが実際の出来事だったなんて、言いたくない。ゼットンにケンカを売ったエルが原因で、宇宙怪獣と激突することになったなんて。

 

 言えない、あの後にウルトラの方々に凄いお説教貰ったなんて、俺には口が裂けても言えない。

 

「ム、何やら楽しい気配が」

 

「気の所為だ、黒霧。頼むからそっち側に踏み込まないでくれ」

 

「しかし」

 

「しかし?」

 

「私は『愉悦部』に入ったので」

 

「おまえまでそっち側に行くなよ! 本当にやめてくれよ! 俺だけで突っ込み切れないんだよ!!」

 

 なんでおまえはそこに入ったのさ?! ギルか! ギルが暗躍したのか?! あの英雄王!! 普段は表側でやらかす癖に、裏側からジワジワを覚えやがって!

 

「いえ、私が入ったのはソープの勧めですが」

 

 瞬間、俺はゆっくりと崩れ落ちた。あいつだけは、どんなにふざけて馬鹿やっても、愉悦に塗れないって思ったのに。

 

 その日、最後の防壁が崩れ落ちたのを俺は知ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が今日も落ちた。夕日が沈んだ後の街は、ネオンの輝きが満ちてきたのだけれど、俺はもう背中に闇を背負っていた。

 

「やった」

 

「なんですと?!」

 

「素晴らしい!」

 

「やったじゃないか!!」

 

 なんだか後ろでエルとギルにコナンが騒いでいるけど、俺はもう振り返れない。最初に弔の小さい声がした気がするけど、もうどうでいいや。

 

「ごめんって、ちょっと悪のりしたくなっただけなんだから」

 

「ソープだけはソープだけはそっちに行かないって」

 

「だから、ごめんって。黒霧の愉悦は他の人に向いているから、大丈夫だよ」

 

「誰だよ?」

 

 は、そんな気休めなんて俺は信じないからな。

 

「『先生』に」

 

 え、あの人に。なんだかオールマイトを追い詰めて、けがさせようとしたから、横あいからアインズとギルの全力攻撃ぶつけて、その上に波動砲と超重力砲に侵食魚雷を雨のように降らせて。

 

 さらに追い打ちにコロニーレーザーとベクターキャノンをぶつけて、荷電粒子砲を打ち込んだのに、なんでか生きていたあの人に?

 

 光子魚雷と反応弾頭も使って、縮退砲とバスターランチャーも使ったのに、なんで生きているのかな? 

 

 後始末が凄い金額になったけど、オールマイトが無傷だったからって、目をつぶってもらったんだよな。

 

「うん、なんだかね、一郎に『何かした』からって、毎日のようにワープゲートを繋げて何かやっているよ」

 

「へぇ~~~」

 

 ご、ご愁傷様。今度、会ったら羊羹でも差し入れてあげようか。今じゃ会心しているって話だし。

 

「あいつが会心? ないよ、今だって一郎の個性を狙っているんだからさ」

 

「ん、ソープ、何か言ったか?」

 

「いやなんでもないよ」

 

 変な奴、なんでそんなに笑っているかな。

 

「一郎、俺はできたぞ」

 

「何が?」

 

「『崩壊』によるみじん切り」

 

 え? 

 

 俺の目の前で、弔が持っていた玉ねぎとニンジンがみじん切りになって、皿に載せられたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 





 巨悪は消えることはないのです。どんな攻撃も瀕死で生き延びるのが、ラスボスの宿命なのです。

 とある人曰く、『え、何度でも攻撃して殺せるってことだよね』。

 RPGだとラスボスをなぶって経験値を稼ぐって、当たり前にあるらしいね。

 現実だとかなり怖いけど、スパロボだと当たり前だよね。

 という風味な話でした。




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