強個性であり、万能的で無敵でもある。ただし、ストレス耐性と胃薬が必要である『完結』 作:サルスベリ
日常的なことを考えて、毎日の生活をじっくりと思い出しながら。
考えていった末の話です風味です。
ある日、俺こと田中・一郎は考えた。
可愛い奥さんもできた、可愛い長男のタケルも生まれた。ちょっと奥さんの宣言通りで怖いけど。
長女のカグヤも生まれた。ちょっと奥さんの宣言通りで、めちゃくちゃ怖いけど。
次女のイヨも生まれた。なんで宣言通り三連発って奇跡が起きたのか、それとも奥さんの個性が『未来予知』なのかと疑ったりもしたけれど、可愛い子供が三人もいて、毎日が充実している。
「代表、書類を」
うんうん、充実しているよ。
「私がやっておこう」
「助かります、廻さん。代表どうしたんですか?」
「フ、我が師は今、未来を見据えている。邪魔するな」
「解りました」
後ろの方で、なんだかすごい尊敬の目線を感じるけど、気にしたら負けだ。気にしたら駄目だって俺の第六感が叫んでいる。
とにかくだ、俺は家族に恵まれた。だからこそ、考えるべきことがあるんじゃないかって思うわけだ。
「予算案はこれでいいのか?」
「すまない、弔、料理部門は少し削ることになる」
「前回が貰い過ぎだったからな。建設部門が今回は大忙しじゃないか?」
「ああ、テーマパークの建設許可が下りたからな」
「そうか、ついにか」
弔がなんだか嬉しそうだし、廻も微笑んでいるけど、俺には関係ない話だろう。きっとそうだ。
「鎮守府遊園地か」
なんって言った廻?
「一郎キングダムが却下されたからな」
おい、弔、あれはおまえか?
「仕方ない。一般人にも馴染み深い名前でないと不味い、とのことだから。今回は我が師の名は控えよう」
「ああ、それで次のテーマパークは?」
「無論」
廻、なんでおまえはそこで『キラリ』なんて瞳が輝くんだよ、あれかどっかで別の誰かが個性で光らせてるのか。
「我が師の威光を次こそ示すため、最強田中王国とする」
「流石だ」
「ちょっと待てこら! お前ら何を画策している!? そもそも俺達がなんでテーマパークを造ることになってだよ?!」
突っ込むしかなかった! もう見て見ぬふりなんて無理だったから!
「何を言ってるんだ、一郎?」
「我が師よ、どうなさいました?」
「なんで二人して疑問を向けてくるんですかね?! 俺がおかしいの? 俺が間違っているの!?」
「そうだ、今や俺達『鎮守府連合』は、小さいものはG細胞から、大きいものはコロニーまで。そういった企業じゃないか」
「え? え、待って。小さいものは何からだって?」
「我が師よ、最近はご多忙でお疲れだったのでしょう。ここは、治崎・廻にお任せを」
「いや、任せていたら何が怖いような」
「まだ私は我が師の信頼を勝ち得ていないとは。十年、貴方に仕えていたつもりでいましたが」
「え、待って、十年ってどっから出てきたの? え、そんなに」
「おまえは急ぎ過ぎるからだ、廻。俺を見習え。一郎のことから、一挙手一投足、すべて把握している」
「いやそれはそれで怖いから」
「さすが、死柄木・弔。我が師の最愛の息子だ」
「よせ、照れるじゃないか」
「息子にした覚えはないんだけど」
ダメだ、この二人の前だと会話が、会話が変な方向へ行ってしまう。それでいて業務に関しては、完璧だから。
いや弔はこっちが副業で、コックが本業みたいになっているから、書類ってやってないような。
「・・・・・・・おい、マスター」
俺は見ない。見てはいけない。あっちで、死にそうな顔をしているコナンとか。
「・・・・」
無言で書類を進めているギルとか。天下無敵の傲慢不遜、慢心王があんな真面目な顔で書類しているって、誰かに言ったら信じてくれるかな。
「ところで、一郎、何を考えていたんだ?」
「そうです、我が師よ」
なんでいきなり話を振ってくるかな。まあ、いいやいい機会だし俺が考えていたことを実行しよう。
「いや俺も家族が増えたからさ」
「はい」
廻、なんで立ち上がって通信端末を持ったの?
「だからさ」
「なんだ?」
弔、どうしておまえまで立ち上がるのさ。
「二人とも、何かするつもりじゃないから」
「何処かへカチコミかと」
「襲撃じゃないのか?」
「お前らの中で俺がどういう存在か、良く解ったよ」
最近は静かにしているだろうが。というより、俺から襲撃かけたことなんてないのに、どうしてこいつらは。
ク、後でしっかりと教育しておかないと。
「俺はな、家族が増えて家族と出かけることもあるからさ」
「確かにそうですね」
「家族サービスは重要だ」
うわぁ、弔がそんなことを言うなんて、おまえも立派になったな。
百ちゃん、君は弔を立派に教育してくれているんだね、俺は君にとても感謝しているよ。
できればもっと一般常識を教えてと言いたいけど。
「だからな、俺は免許を取ろうと思って。車の運転とかさ」
瞬間、室内の空気が凍りついたのを俺は感じた。
え、あれ、俺って何か不味いこと、言ったかな?
普通のことだよな、単純に車を運転して家族と旅行とかお出かけしたいから、免許が欲しいって言っただけなのに。
「一郎」
「なんだよ、弔。なんでそんな地の底から出たような声してんだよ?」
「おまえ正気か?」
なんでそこで正気かどうか疑われるかな。え、あれ、俺って運動音痴じゃないよな。
「マスター」
「ギル?」
「・・・・・・貴様、我の運転が信用できないというのか?!」
「はい?」
待って待って、どうしてそういうことになるのさ。俺はただ、運転免許証が欲しいって。
「鎮守府連合が出来てから、いやその前より貴様を運んだのは我だぞ!」
「ちょギル! 首は止めて!」
「それをなんだ?! 貴様は運転免許が欲しいだと?! 我の運転技術を疑うなどと、貴様はそれでも英雄王のマスターか?!」
「苦しいから!」
「ええい! 貴様がそこまで我を信用しないというならば!」
あれ、ギル、なんだよ、その小箱。え、待って、なんで小箱の中に赤いボタンがあるのかな。
「貴様に改めて教えてやろう、英雄王のドライビング・テクニックを!!」
「・・・・・はい?」
あれぇ~~ギルがボタンを押したら、壁が開いて金色のワゴン車が出てきたんだけど。
あれ、ここって鎮守府連合の執務室だよね? なんで隣がガレージ?
ビルなんて嫌って地上に広がるオフィスを作ったけど、ガレージが隣にあるなんて俺は知らないんだけど。
「これこそが!」
「僕らが頑張った結果!」
「出たなこの変態鬼畜機械コンビ!」
凄い見事なポーズだよ、エルとソープ。本当に決めっ決めだけど、そのノリの良さが凄い怖いんだけど。
「まず動力炉は縮退炉を搭載しました!!」
「最初から突っ込みどころが満載なんですけど!!」
「駆動系はマグネット・コーティング済み! 亜光速にも対応可能だよ!」
「おまえらは飛ばし過ぎだろ?!」
「さらにフレームは超合金Zにて構築!」
「内部装甲はフェイズ・シフトを採用!」
「ライトはアインズ協力の圧縮レーザー使用!」
「十秒の照射でガンダリウムを溶かすからね!」
「ウィンカーは小型ミサイル搭載!」
「左右から迫られても一撃で撃破可能さ!」
「続いて外装は純金を使用!」
「百年経っても輝きを放つことは保障するよ!」
「内部にはAIを組み込んだゲーム機を各種搭載!」
「一日、乗っていても飽きないね!」
「エアコンは魔法にて制御! さらに空間事独立させてみました!」
「外部の温度変化はもちろん、核の直撃にもビクともしない!」
「そしてハンドルを握るのは!」
「もちろんこの人!!」
「フ、天下無敵の運転王! ライダーとしても一流であることを証明してみせよう! この我、ギルガメッシュがな!!」
「まさに死角なしです!」
「誰が来ても大丈夫さ!」
「フハハハハハ!! だというのに、貴様は何が不満だマスターよ!!」
「そうだ! 何が不満なんですか、一郎さん!」
「答えてもらおうか、一郎!」
腕を組んで自信満々に言うこいつらに、俺は深くため息をついた後、真顔で言ってやった。
「色」
「・・・・・・・」
「はい、撤収しましょう。これは後で治します」
「そっかそっか、色かあ。色ねぇ、色・・・・いいじゃない」
ギル、固まったなぁ。
エルはこう言うとき、妙に冷静なんだよな。
ソープ、なんでおまえは黄金を否定すると、そうやった卑屈に笑うんだよ。
「何処の世界に金色なんて」
「ええい!! ならばこの我が財を見よ!」
「いやギル、なんでおまえは飛行系宝具を出しているのさ? そうじゃなくてな。俺が自分で運転したいんだよ」
家族を乗せた車の運転って、父親の役目だろ。
あれ、待った、なんでそこで皆がまた固まるんだよ。
あれぇ~~。
後に、治崎・廻はこの時のことを回想して私的な日記に残した。
「まさに最終戦争だった、と」
室内の空気が固まった後、解散としたのは死柄木・弔の英断だった。
とにかくだ。一郎を追いだした後、弔は自分のイスに座って深くため息をついた。
「恐れていた事態だ」
「ああ、まったくあのマスターは」
コナンは悪態をついて一郎が出て行ったドアを睨んだ。
まったく理解していないとは、自分のマスターながら恐れ入る。あれで三回は世界を救っているのだから、人の能力は見た目に左右されないらしい。
「一郎が自分で車の運転して、家族で出かける? 冗談じゃない」
弔は吐き捨てるように言った。彼は理解していないのか、それとも理解しようとしないのか。
危機感がないと昔から思っていたが、まさかここまでとは。
「世界は今、三極構造です。ヒーローとヴィラン。今まで二極化だった世界に、僕たち鎮守府連合が割り込みました」
エルは静かに思い出すように語る。
あの日、オール・フォー・ワンを倒した時から、徐々に勢力を広げてきた鎮守府連合の構成員は、今や世界中に広がっている。
正義ではなく、欲望ではなく、人々の自由のために。
理不尽に泣くことなく、未来に絶望することなく、人が人であるように生きられるために。
そんな壮大なことを考えていないが、鎮守府連合がやっていることは、世間からはそう見えていた。
無個性に光を、個性がなくても笑っていられるように。その一環で始めたアインズやエルによる魔法講座により、魔導師と呼ばれる人工が少しずつ世界に増えてきている。
「だからこそ、気に入らない人達は多い。だって言うのにさ」
ソープは深くため息をついて、最近の報告書を持ち上げた。
鎮守府連合所属のビル等にヴィランが襲撃した事件が、このところ増加してきている。
今までヴィラン達は無差別に選んで襲撃などをしていたのに、ここ最近は目的を絞ったように鎮守府連合に襲いかかっていた。
ヒーロー側もそれを知って防衛しているけれど。
「正直に言って、ヒーローも一枚岩じゃないからな」
コナンの言葉に誰ともなく頷いた。
ヴィランを妨害し逮捕するのはヒーローの役目。だが、目的が鎮守府連合ならば『見落としてもいい』のでは、なんて考えるヒーローもいる。
表に出してはいないが、内心でそう思っているヒーローもいるだろう。
「だというのに、我が師は」
廻は変わらない一郎に、少しだけ笑ってしまう。
彼は何処までも彼であって、他の何かになるようなことはない。その気になれば世界さえ支配できる力を持っていても、彼はそれを使って世界を支配するなんて考えていない。
「とにかくだ。マスターが運転免許を得るなど、必要ないと教えよ。我がいるのだからな」
くだらんと最後にギルが告げた一言に、室内の空気が微妙に硬くなった。
「俺も持っている」
弔が懐から出した免許に、ギルが少しだけ眼を細めた。
「ほう、貴様が我よりも腕がいいと。そう語るつもりか、弔?」
「同じ奴が運転する車に乗るのが、嫌になったんじゃないか?」
「貴様」
バチリと二人の目線が火花を散らした。
「ということ、僕でもいいんじゃないかな?」
ここでソープ参戦。免許証を持ち上げて、二人に笑いかける。目が笑っていないが。
「僕だってできますけど」
「俺も新一モードならな」
エル、コナン強襲。室内に火花が散った。
「よかろう、誰がマスターの車のハンドルを握るにふさわしいか」
ギルガメッシュ、立ち上がり『エア』を抜いた。それに反応して全員がそれぞれの手に武器を取り出す。
「我の前で証明して見せるがいい!!」
その日、鎮守府連合執務室が吹き飛んだ、らしい。
「免許が欲しいんだけどさ」
「そうなんですか?」
「一郎さんが運転って危なくないか?」
「え、爆豪君、俺ってそんなに危険人物? あれ、ひょっとしてヴィランとヒーローから狙われているとか?」
「確かに鎮守府連合をよく思わないヒーローもヴィランもいますけど、襲撃ってないと思いますよ?」
「デクの言うとおりだ、一郎さん。ヴィランの襲撃傾向は『お金ありそう』だからな。鎮守府連合が襲われたのは、一年も前の話になるな」
「え、そうなの、じゃあのデータって何処からだろう?」
「鎮守府連合を襲った後、ヴィラン相手に吹雪さん達が突撃していったから、もうないですよ」
「ありゃ俺達でも『逃げ出した』からな。なんで吹雪さん、レベルアップしてんだよ」
「かっちゃん、思い出させないでよ。なんで吹雪さんってあんなに」
「艦娘ってあんなにレベルが上がるんだな」
ガクガクと震えるハンドルを握る爆豪と、その横で通信端末を操作しているデク。
丁度、帰ろうと思ったら二人に会った一郎は、そのまま同行することにしたのだった。
「ああ、あの時の。あれが通常だよ」
「・・・・・・え?」
デク、思いっきり振り返る。
「ウソだろ」
爆豪、ハンドルを握り締めて呻いた。
「まあ、いろいろとあったからね。ところで俺が免許を持とうって話名だけど」
「止めてください、一郎さん、死人が出ます」
「やめといた方がいいぜ」
デクと爆豪に即答され、一郎はなんでと疑問を浮かべたのでした。
「あんたの車を運転するって、ちょっとした憧れになっているからな」
ハンドルを握る爆豪は少し嬉しそうで。
「だから、誰もが狙ってるんですよ」
デク、ちょっとだけ隣を睨んでいたりして。
「ええ、何で?」
「さあなんでだろうな?」
「どうしてでしょうね?」
二人は答えず、楽しそうに笑っていた。
田中・一郎は知らない。彼の車を運転したら、願いが叶うなんて都市伝説になっているとか、なっていないとかって話を。
そして彼は運転免許を得るために教習所に通うことを奥さんに話したら。
「ダメです、一郎君はちょっと運動が苦手なところがあるので、ダメです」
「解ったよ、ヒミコちゃん」
奥さんの一言で止めることにしたのでした。
当初の予定だと、運転免許を取得するために一郎が四苦八苦する話だったのですが、書き始めて見たらこんな形になりました。
組織の代表って自分で車の運転しないってイメージがある、なんてわけじゃなくて。
何となく、一郎が『運転したい』っていうのに、まわりが『ダメ』っていうと面白いかなって思って。
そんな突発的な頭空っぽ風味でお届けいたしました。