強個性であり、万能的で無敵でもある。ただし、ストレス耐性と胃薬が必要である『完結』 作:サルスベリ
気の向くまま、その時のノリで進み続ける暴走特急。
ネタに詰まったのではなく、ネタが多すぎて進まない。
これが本当の赤信号! ドクターストップ?
風味な話です。
皆さま、年末年始、いかがお過ごしでしょうか?
どうも田中・一郎です。
こちらはね、休みなんてないんですよ、解ります?
労働基準法ってなんだろうね、ないんだろうね。いやぁ~~ヒーローって職業がある世界で、労働基準法ってないんだよね。
毎日毎日、ヴィランとヒーローは労働基準法などない日々を過ごしているのは、きっと世界平和が憎らしいからだ。
そうに違いない!
「一郎、お疲れ様。明日も頑張ろうな」
「・・・・・・・」
きっと世界平和なんてできないんだ。不可能だ。ギルもよく言っていた『フェイカー』の親父さんが求めた、恒久平和なんてないんだ。
でも! ないと諦めて生きるより! あると信じて前のめりに倒れる! それこそが男! いや漢だ!!
「一郎、そうか、そうだな。俺も頑張らないとな。まだまだ子供たちの笑顔のためにクリスマスケーキを作らないとな」
クリスマス! そんな単語は俺の辞書にはない! 俺達には休みなんてない、休みなんて惰弱な精神を持って社畜なんてできない!
軍人に休みはないんだ!
「今年はクリスマスが終わってしまったから、次は御節だな。正月も子供たちが笑顔で過ごすように頑張ろうな」
くくくくく、俺を本気にさせたな、世界よ。いいだろう、我が鎮守府の総戦力がどれほどのものか、見せてやろう。
神よ! 呪うなら呪うがいい! 俺を世界に落としたのは貴様なのだからなぁ!!
「やる気十分だな、一郎。俺も頑張らないと」
ふふふふふふ!!
「なぁ、ギル」
「なんだ、コナン」
「あいつらって通じ合っていると思うか?」
「ふん、名探偵ともあろう者が、馬鹿なことを言うな。何時もの名推理はどうした?」
「だよなぁ。一郎の馬鹿は何時ものことだが、弔はなんであんなに晴れやかな顔で子供の笑顔なんて言ってるんだ?」
「至宝と我が教え込んだ」
「元凶はやっぱりてめぇかよ」
ふはははははははは!!
世界よ、俺を恐れるがいい!
「さあ来年も頑張ろう」
「平和だなぁ」
「そうだな。我の愉悦は、今年も絶好調だ」
改めまして、すみません、田中・一郎です。
飲食店やってるから、年末年始は休みなし。クリスマス一週間前から働きっぱなしだったんだよ。
理解して、休みなしでハイテンションだったんだから。ね、ほら誰だってナチュラル・ハイになったら、色々とやらかすじゃん。
みんなも忘年会でやらかした経験くらいあるでしょう?
そう、そんな感じ。
「なるほど。忘年会で酔い潰れたり、絡んだりしたのと同じってことだね」
「そうだよ、ソープ。頼むからそれ以上は止めてくれ」
「解ったから、正直に話してごらん? なんでボクとエルの二人が全力で情報操作しなくちゃいけないことになったのか?」
「ごめんなさい」
俺は素直に土下座した。
なんか知らないうちに鎮守府最大稼働したらしい。警報が鳴って艦娘達がフル装備で出撃して、さらにエイリアン部隊とプレデター部隊まで展開したから、もう世界が凄いことになりかけたとか。
「はい! 土下座はいいから教えてください!」
あ、うん、エルもお疲れ様。いや、本当にごめんなさい。なんでやったか覚えてないんです。本当に。
「せっかく、新しいギミックを組みんだ『変形可能な移動基地型鎮守府』だったのに、試せなかったじゃないですか!」
「うん、エルは黙ろうか」
「イエッサー!」
怖!? うわぁ、久し振りに見たよ、冷笑するソープ。さすが神様、その迫力が凄い頼もしくもあり、悲しくもあり。
「で?」
「はい、すみません」
辛くあるんですよね、本当に。
「今回だけだからね。君がやらかして、『地球崩壊』なんて見たくないからさ」
「ごめん、本当に助かったよ、ソープ。でもさ、なんで俺ってそんなことしたのか、記憶にないんだよ」
何でだったかな。あれ、かなり理不尽なことがあって、それに怒って拳を振り上げたのは覚えているんだけど、何だっけ?
「年末年始に休みがなかったからじゃないの?」
「いや、だってそれ軍人時代には当たり前だったから」
「え?」
「はい?」
「・・・・・・あれ?」
あれぇ? なんでソープとエルが固まるかな。いやだって、俺って休んだ記憶がないんだけど。何時も執務室にいて、コナンとギルに挟まれて執務していた気がするし。
「労働基準法って知っている?」
「え? 軍人って適応外じゃないの?」
「・・・・エル、コナンを呼んできた方がいいね」
「そうですね。一郎さん、一応、軍人も適応内ですよ」
「え?」
一郎ショック! 今になって知った驚愕の事実! え、休んでよかったの、だって深海棲艦が世界を脅かしているから、休んでいる時間なんてないって話じゃなかったの?
「というわけだよ、コナン」
「はぁ。マスターが怒ったのって、あれだろ? クリスマスのカップルへの嫉妬じゃなかったか?」
「ええ~~今更?」
いや、ソープさん、なんでそこで呆れているのかな?
思い出したよ、そうか、そうなんだ。彼女いない俺の前でよくも、あんなにいちゃいちゃと。
いや待った、そんなことじゃなかった気がする。もっとこう、なんだか心の底から叫びたい気持ちになった、何かが。
「で、その嫉妬が溜まりにたまった時に、弔に言われたんだよ」
「へぇ~~彼が、なんて言ったのさ?」
「『俺がいるいじゃないか、一郎』って」
あ、そっか、そうだったんだ。俺はその言葉で精神的な何かがブチっと逝ったんだ。俺は女の子が好きであって、同性が好きじゃないのを知っているのに、あんなこと言うんだもんな。
「で、本当にところは?」
「ああ、弔はな、『冗談だ。俺が結婚する時の笑い話にしてくれ』とか言ったんだよ」
「え? 結婚するの、彼?」
「本当ですか?!」
「いつか、な」
「あ~~~~」
あいつ! 絶対に俺をからかうことを覚えやがったな! 後であいつを女の子がいる場所に連れ出して置き去りにしてやる!
「一郎って、その時の記憶がないの?」
「飛んだんだろ。まったく、便利な脳細胞をしているよ、あいつはさ」
なんだろ、後ろでコナンが呆れた顔しているけど。ソープとエルがとても暖かい目をしているけど、何があったんだ?
冗談だって教えられて、ホッと安心した一郎です。
弔め、なんだかあいつは最近ギルに染まってないか? 俺を虐めて楽しんでいるような気がする。
イキイキ楽しんでいるあいつに、ちょっと『良かった』と思うこともあるけど、出来ればもうちょっと抑えてほしいかな。
「一郎、俺は考えたんだ」
「あ、はい」
そんなことを思いつつ、俺は今日も年末年始関係ない、弔の店の掃除をしている。今日のランチは問題なく終わり。
終わり・・・・と思おうか。最近、よく笑うようになった弔目当ての女性客が増えたな、とか。ヒーロー関係者がよく来るようになって、『ヒーローにならないか』ってスカウトしてくるけど、気にしない気にしない。
主に弔とギルとコナン目当てってのも、気にしない。俺に話を振る人はいないのは、気にしない。
あれ、変だな、目から水が。後で目薬でもさしておこう、目が乾いたら大変だ。はははは、はぁ。
で、そんなランチが終わってディナーの仕込みに入った弔が、また食材を持って考えていて。
「俺は思った。俺の能力『崩壊』はレベルアップして、今では食材の崩壊を途中で止められるから、千切りもみじん切りもできる。搾りたてのジュースも完ぺきだ」
あ、うん、そうだね。なんだか毎日の努力の結果、弔の能力は識別だけじゃなくて能力の伝達とか、作用も自在になったらしい。
まさに崩壊関係は万能。今では手に触れなくても目視で複数の目標を、別々の作用で効果発揮できる。
「だけど、これで満足しているのは、堕落じゃないか?」
「いや、弔、何を言っているのか解らないんだけど?」
「俺は能力を使いこなした。料理において、俺はこれ以上ないスキルを手に入れた」
「え、いや、待って。料理限定? え、料理だけにそれを使うつもりでいるの?」
「俺は時々、俺の両手には神が宿っているような気がする。料理の神が、俺の両手にいて、俺に囁いている」
「え、はい?」
なんだか、変な方向に話が行ってないですか、俺の気のせいですか、そうだと誰か言って。
「もっと料理を作れ、と。俺の料理で万人を救うべきだ、と」
「ヤバい宗教ですか、弔クン。止めて、それ以上は駄目だ」
「ああ、解っている、一郎。こんな考えは危険だ。そんな考えを持って料理などしたら、味が劣化する。俺自身の包丁のスキルも落ちてしまう」
いやそっちじゃなくて。神が宿るとか、そんな危ない考えを止めろって言うんだよ。神様なんて、宿ったら碌なことがない。
「ソープが、『まさに神だね!』と褒めてくれたが」
「リアル神様が何やってんだあいつは?!」
おいおいおいおい! 何してくれてんの、あいつ! おまえはリアルに『天照』で日本神話の最高神だろうが! 話を聞く限りはもっと上らしいけど、神様に違いないでしょうが!
なにを弔を洗脳しているんだよ、あいつ!
「違うんだ、一郎。俺は、そんなことは気にしない。俺は傲慢になってはいない。俺はごく普通の一般人だ。世界を救うとか、万人を救うなんてことはできない。大丈夫、俺はまだまだ調子に乗ってはいない」
まだまだって、いつかはってツッコミ待ちですか、弔クン。いや、あの顔は本気でそう思っているだけだ。
え、本気でまだまだ調子に乗ってないって思っているだけ、本当に?
「俺が気にしているのは、俺は能力を完全に把握したつもりで、達成感に浸っていたのではないか、ということだ」
「なんだって?」
「俺の能力ならば、分子レベルまで崩壊させられるはずだ。そうだ、出来ないはずがない。俺の能力は『崩壊』なのだから」
「え、いや、まあ可能性はあるんだけど、それをしてどうするんだよ?」
俺はそこでこちらを向いた弔の、晴れやかだが何処か歪んだ笑顔を、死んでも忘れなかった。
「崩壊させられるなら、俺は『最高の生クリーム』を作れるはずじゃないか?」
「いや、なんでやねん」
誰か俺に教えてください。
うちの弔はいったい、何処へ向かおうとしているのでしょう?
「そうだろう!! 物質を分子レベルまで崩壊させられたら、すべての食材を完璧に混ぜ合わすことができる。そうだ、俺は完璧な黄金比率のクリームが作れるはずだ。クリスマスが終わった後に、この事実に気づいた俺は気が狂うくらいに嘆いた。だってそうだろう! 一郎! もうクリスマスは終わってしまった、終わってしまったんだ!! 完璧な生クリームが作れるはずだったのに、ケーキの時期を逃して能力を完璧に把握したと喜んでいた俺は! なんて愚かなんだ! どうしょうもないグズだ! 多くの人の笑顔を、もっと笑顔を増やせたはずなのに、どうしてその可能性ももっと速く辿り着かなかったのか。俺はもう悔やんでも悔やみきれない!」
「え、いや、あのさ、弔」
「なんだ?!」
感情が天元突破しているような彼に、俺は残酷なことを告げなければならない。それによって、弔が崩れ落ちることになっても。
「分子レベルで崩壊したら、それって『食べ物』じゃないんじゃないか?」
「?!」
「その前にさ、崩壊したものを混ぜるってできるのか?」
「・・・・・一郎、俺は間違えたようだ」
フッと寂しく笑った弔は、そのまま後ろ向きに倒れたのでした。
「なるほど、死柄木少年が寝込んだのは、そういった理由か」
夕方、久し振りにディナーを食べに来たオールマイトは、店が閉まっていたので心配になって俺に電話をくれた。
事情を話すと、彼は弔の見舞いを申し出ててくれたんだけど、弔からは『俺は調子に乗った自分を戒めているところだ、放っておいてくれ』と言われたので、店のほうで簡単な食事を出した。
作ったの、俺じゃないけど。
「任せてもらおうか!」
歌だけじゃなく、料理もできるナイスなガイコツ魔王。
「デザートはお任せを!」
で、ちっこい銀髪チートが甘いものを。
「今日は特別に、こちらをどうぞ」
飲み物はラスボス系黒い存在が。
「これはこれで、特別なディナーを味わえて、私としてはラッキーだが」
まあ、アインズとエルと黒霧の、たった一名様へのディナーですから。
「しかし、死柄木少年の努力は認めるが、今回の一件は少し張り切り過ぎた上に思いつめた結果の悪循環ではないかな?」
「俺もそう思うんですけどね。あいつは料理に関しては絶対に譲らないので」
「素晴らしい精神だ、と褒めるべきなのか。もっと自重せよ、と叱るべきなのか」
「まあ、弔は一度でも言い出すと止まりませんから」
「彼も難儀な性格をしているな」
ちょっと呆れたような、けれど褒めるようなオールマイトの言葉に、俺は大きく頷いた。
後日。
「一郎、俺は気づいた。食材を崩壊させた後」
「私のワープゲートを通せば混ざる、と」
「え?」
なんだか清々しい顔で笑う弔と、誇らしげな黒霧と。
めちゃくちゃ旨い生クリームの山がそこにあった。
クリスマスの話とか、正月の話とか考えていたら、時間が過ぎてしまって。
あれ、でもこいつらって飲食店をやっているから、どっちも稼ぎ時じゃないか。いいか、まとめて年始に出せば。
ということで、今回はこんな感じです。
的な風味の話になっています。