終末ガラルで、ソーナンスと   作:すとらっぷ

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ワイルドエリアにて、サバイバル回


体臭と二人

「臭い…」

 

「…ナンス」

 

ワイルドエリア、キバ湖西周辺を一輌のトゥクトゥク(屋根付き三輪バイク)が通りかかる。ジメジメとする霧が立ち込めている。不快指数が高い。ワイルドエリアに突入して5日目、初日にイワークに追いかけ回され土まみれ、その後汗だくになったり、泥まみれになったり、返り血浴びたり、汗だくになったり、汗だくになったりした。そして汗だくになった。

 

いい加減不潔で臭いのだ。ある程度の不快は我慢する、元より本来綺麗な旅人というものは創作上にしか存在しない。道中にはシャワーも風呂もないのだ。そして季節は秋、いくら天気が不安定で時々日照りが起こるワイルドエリアであろうとも基本的には肌寒い。湖の水は冷たい。水に飛び込むのはなかなか勇気がいる行為である。

 

だがしかし、それが理由で不潔であるのは避けなければならない。不潔であればあるほど感染症リスクがあがるのだ。それにシラミやダニは恐ろしい。病院のないこの時代、自身の衛生管理は匂いだけの問題ではない。

 

「と言うわけで、水浴びは必須だ」

 

「ソーナンス!」

 

ついでに洗濯もしておこう。体表の清潔さもそうだが衣服の洗濯も大事だ。ノミ、シラミ、ダニは基本的に体毛だけでなく衣服にも住み着く。痒い、かぶれる、感染する、出血する。汚れた服を着続けることには悪いことしかない。

 

仲間に水ポケモンがいればこの辺かなり楽なのだが、仕方ない。ここはキバ湖周辺、水ならばあるじゃないか。それに寒中水泳という言葉もある。そう思うとこのキレイな湖に飛び込みたくなってきた。

 

「よしソウさんいくぞ」

 

「ソーナンスッ!!」

 

 

 

 

 

 

「…さぶい………さぶい…」

 

「ナナナ…ソーナンス…ス…」

 

当然といえば当然だが、この時期の水温は非常に低い。体温を奪うこの行為はサバイバル的には不正解と言わねばならないだろう。実際寒くてろくに身体を洗えていない。

 

「…ソウさん、やり方を変えよう…これは無理だ」

 

「ソソソソーナンス…」

 

二人は焚き火を焚き、デボン製の合成肉スープを温めて飲む。これで少しは体温が回復した。

 

ちなみに衣服だけは気合で洗った。最近泥砂汗血と不潔の塊みたいなものだ。雑菌の温床だろう。こんなものずっと着ていたら感染症で死ぬ。

 

現在は着れる服が無いので取り敢えず毛布にくるまって焚き火に当たっておく。

 

「…これはマズイ…凍える…凍えて死ぬ…」

 

「ソォナンス…」

 

秋の水温を舐めていた。もちろん普段ならばこんな判断はしなかっただろう。しかしなんだかんだ水源豊富で体は常に清潔だったハロンタウン出身の僕にはこの不潔さは耐え難かった。そりゃ緊急事態なら文句も何も言わないだろうが…。

 

 

 

ふと見ると、北のほうがこの場所より明るく感じた。これは…他のエリアでは天気が変わっている。恐らく快晴なのだろう。しめた。

 

「ソウさんいくぞ!」

 

「ソーナンス!」

 

手早く焚き火の後始末を終えてトゥクトゥクを走らせる。恐らく快晴のエリアは見張り塔跡地周辺、ここからだとかなり近い。

 

日が強ければ洗濯物を乾かすにも、体温を戻すにも都合が良いのだ。

 

毛布に包まりながらトゥクトゥクを走らせる。そのまま一気にキバ湖西を突破し、見張り塔跡地に入る。事前情報ではゴーストタイプのポケモンが多く生息すると言われていたが、この快晴具合では彼らの動きも鈍いようだ。ゴースが日陰で寄り添って寝ている。ゴーストタイプに弱いソウさん的にも好都合だ。

 

 

 

さて、突然だが体の部位で一番感染症リスクがあるのはどこだろうか。答えは身体の湿ったところ、陰部だ。菌の繁殖に一番適している。常に身体を動かしている旅において、どうしても陰部を包むパンツは汚れるのである。今着ているコートなどは直接肌に触れるものでは無いので清潔さはそこまで求められないが、肌に触れる物はやはり清潔でなければならない。

 

が、ちなみにパンツを履かないという選択肢も無いわけではない。上の服を身体からの汚れから守り、体の保温、快適さ、加えて衛生を維持する目的でパンツは履かれる。しかし、パンツそのものが既に汚ければ履く必要はない。そもそもパンツを履かなくても死にはしない。

 

ならば旅における陰部の清潔さを保つ最適解はなんだろうか。

 

 

 

そう、全裸である。

 

 

 

「あー温まる…」

 

見張り塔跡地周辺、先程水で流しておいたロトム避けのアルミシートを裏返しにしてレジャーシート代わりにし、寝そべって日光浴を楽しむ。

 

全裸と聞くとまるでふざけているように聞こえるが、至って真面目だ。紫外線の力を侮ってはならない。乾燥と紫外線は雑菌に対して効果抜群、その恩恵を最大限受けるためには全裸しかないのだ。

 

「ソーナンス…」

 

ソウさんも全裸…というか常に全裸だが日光浴をしている。本来の生態では日光浴をするようなポケモンではないが、環境に適応する能力が高いのかもしれない。

 

 

 

こんな行動はおそらく平時では出来ないだろう。即刻通報だ。しかし誰も文句言う人もいない。ここはワイルドエリア、広がるのは大自然。文句を言う人間はいない。

 

 

 

「…いい加減風呂、入りたいな」

 

「…ナンス」

 

とはいえ、温かいお湯に浸かって温まりたいのも人情というもの。

 

「…早くここを突破して、お風呂でも探したいな」

 

「ソーナンス…」

 

特に意識せず、うわ言のように呟いた台詞。

 

 

 

 

「ソーナンス…」

 

そんな何気ない一言も、他の誰かは案外覚えていたりするものだった。

 

 

 

一話に続く




本来はパンツとか全裸とか低レベルな下ネタが大好きなんですが、最近は我慢してました。それがほんのちょっと出たお話。

サバイバル回は中々話が思い浮かばないときでもパッと書けるのが素晴らしい

そういえばちょっと前にDLCの情報出ましたね。サバイバル適正の塊トロピウス先生は登場するんでしょうか。あと服装に女装を開放して下さい。男主人公選んだせいでマリィごっこが出来ない…

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