終末ガラルで、ソーナンスと   作:すとらっぷ

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最近順風満帆なせいで筆が進まないけど投稿です。適度に心が追い詰められないとノスタルジックに書けない…


魔境帰還と二人

ワイルドエリア後半、ストーンズ原野にて。

 

「ソウさん…これどうする…」

 

「…ソーナンス」

 

諦めろと言わんばかりに肩を叩かれる。

 

おかしい、もう二度とワイルドエリアには踏み入れないと決めていたのに…。何故か僕たちはまたワイルドエリアにいる。しかも北側、後半、今までいた場所が可愛く見える程の、本当の魔境。

 

周囲には砕かれた岩石と土砂。そして土砂降りの雨。

 

「…さよなら…文明」

 

「…ソーナンス」

 

文明なんか元からさよならしてるだろと言わんばかりにソウさんに尻を叩かれる。

 

「はぁ…」

 

ため息は砂と共に消えていった。

 

 

 

 

話は数時間前に遡る。

 

僕たちはバウタウン駅のフレンドリィショップで物資を漁り、線路を通ってナックルシティを目指していた。

 

「あー、やっぱりこの沿線は景色が綺麗だね」

 

「ソーナンス!」

 

ガラル鉄道は観光列車としての側面もあったのだろう。線路を横は崖になっていて、ワイルドエリアの大自然が一望でき、いい景色だ。

 

ブラッシータウン駅で食べた駅弁を思い出す。駅弁と言っても今食べている食料と内容に変わりはないのだが。

 

ソウさんはエナジーバーを齧りながら景色を眺めている。懐かしむような目だ。

 

バウタウンのロトム達の協力があり、現在の僕達は絶好調。バウタウンに残っていた食料は以外にも多くお腹もいっぱい、蓄えもある。大きな街だったので燃料補給もバッチリだ。ウォッシュロトムがトゥクトゥクの車体もバッチリ洗ってくれた。ついでに僕らの身体も洗った。

 

清潔、健康、バッチリ尽くしで最高だ。

 

「そして天気もいい!」

 

「ソーナンス!」

 

絶好の旅日和である。

 

「…ソーナンス!」

 

そんなとき、景色を眺めていたソウさんが声を上げた。

 

「どうした、ソウさん?」

 

チラリとソウさんの様子を見ると、その視線の先には紫色の光柱が見えた。ワイルドエリア内だが、かなり近い。

 

「…ダイマックスだな」

 

「ソーナンス!」

 

ワイルドエリアにおいてダイマックスポケモンは驚異だ。とはいえ、光の発生源と今走っているガラル鉄道の線路はかなり高さの差がある。そう簡単にダイマックスの影響を受けていたのならば鉄道の運行に支障だらけ、まさかダイマックスしたポケモンが線路まで手を伸ばすことはないだろう。

 

「でも消滅起こる前からウールーに線路邪魔されたりすることよくあったよな…」

 

思い返せばガラル鉄道の経営は適当だった気がする。ポケモン第一で電車を止めまくっていた。電車が止まってもそらをとぶタクシーが発達しているため大した影響が出ないと思っていたフシがある。

 

いつかの鉄道職員が書いていた架空路線図に地下鉄が多かったのもそのあたりが理由だろうか。地下ならディグダなど一部ポケモンを除いて邪魔は少ない。

 

「…早いところこの場を離れよう、嫌な予感がする」

 

流石にどんなにポケモン第一の運営をしていても、人命に関わることまでは無いように対策しているだろう。例えばダイマックスしたポケモンが線路に侵入して破壊するような事態には対応していただろう。ガラル鉄道だって馬鹿ではない、ワイルドエリア内でダイマックスしても線路に接触出来ないくらいの場所に線路を敷設している…だろう。だろう尽くしで心配が絶えない。

 

 

 

その瞬間、視界の端に巨大な鼻が見えた。

 

 

 

「おわぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

ブルドーザーのような頑丈な鼻が先ほどまで走っていた橋に叩きつけられ、線路ごと破壊、土砂崩れを起こす!

 

「ソォナンス!!?」

 

「キョダイマックスダイオウドウだ!大きすぎるだろ!?」

 

通常のダイマックスなんかよりも遥かに大きいキョダイマックスダイオウドウだ。ガラル鉄道の想定の範囲を遥かに超える大きさである。

 

「捕まってろソウさん!!」

 

「ソーナンス!!」

 

スロットルを開ききり、全速力で逃げる!

 

ダイオウドウと目があった、完全にこちらを狙っている。野生のキョダイマックスポケモンはエネルギーを持て余し破壊衝動に駆られることが稀にあるが、ちょうど目の前にいた僕達を対象にするとは…。最近調子が良かったツケにしては大きすぎではないだろうか。

 

「ソウさん、あの攻撃カウンターで返せる?」

 

「ソォォォ!!!?」

 

無理なようだ。昔読んだ図鑑によるとダイオウドウが本気を出せば山一つ吹き飛ばせるエネルギーがあるらしい。流石のソウさんもそれは跳ね返せないだろう。

 

線路を地面ごと破壊した鼻が、

再び持ち上がり、鋼色のエネルギーがそこに集まる。

 

「噂をすれば…!」

 

例の山一つ吹き飛ばすキョダイマックスしたダイオウドウの技、『キョダイコウジン』だ。

 

「…ソーナンス」

 

穏やかな顔で手を合わせるソウさん。諦めの境地だろうか。

 

「死ぬべき場所はここじゃないと思うぞソウさん!」

 

振り上げられた鼻が、一気に振り落とされる!

 

「頼むッ!!!」

 

ブレーキを踏み切り、ハンドルを切る。祈りのスライドブレーキだ。

 

ガリガリと地面とタイヤを削り、土煙を吐きながら急停車。ダイオウドウは急減速に対応出来ず、先の線路を地面ごと破壊する!

 

「危ない…」

 

間一髪で攻撃を避けることが出来た。

 

その時、地面がメキメキと嫌な音を出す。まるで悲鳴のような音。その発生源は足元に大きく刻まれた亀裂が物語っている。

 

「ソーナンスッ!!?」

 

「マズい土砂崩れぇ!!!」

 

直撃こそしなかったものの地面には大きなダメージが蓄積していた。その亀裂は更に広がり、揺れが大きくなっていく。

 

「逃げッ…」

 

逃げる暇も無く景色が斜め上にスライドしていく。

 

「ソォォォォォォォ!!?」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!?」

 

崩れる地面、土砂の上に僕らはいる!

 

「舌噛まないでよソウさん!」

 

出来る出来ないじゃない、生きて旅を続けるならばやれることはやるしかない、スロットルを全開にし、流れる土砂の上でエンジンを吹かす!

 

遥か昔、ランセ地方辺りで崖を下ったポケモンとブショーがいたはずだ!ならバイクで崖を下れても不思議では無いはず!

 

「おおお、おおおおおおお!!」

 

土塊を踏み砕き、岩に乗り上げ、砂に巻かれる!奇跡的に体勢は崩れていない。ほぼ落下のような急斜面を勢いそのまま駆け落ちる!

 

いくら奇跡的に土砂を乗りこなしているとはいえこのままでは数秒後に地面に叩きつけられる!

 

「ソォォォォォォォナンスッ!!」

 

先程まで両手を合わせて来世の幸せを祈っていたソウさんが立ち上がる!

 

その瞬間、トゥクトゥクが一際大きい岩盤に乗り上げ、吹き飛ぶ! 

 

「おわわわわわわわ!!」

 

「ソォォォォォォォォ!!?」

 

投げ出されるトゥクトゥク、その方面にあるのは巨木、このままでは激突する!

 

「ソォォォォォォォナンス!!!」

 

ソウさんはトゥクトゥクから跳ね、全身をオレンジに輝かせる。カウンターの構えだ。

 

「ソウさん!?」

 

トゥクトゥクから半身を出し、激突する木に向かってカウンターを叩き込む!

 

その威力で勢いを殺す!木が粉々に砕け、ソウさんにも尋常でないダメージが返ってくる!

 

「ソォ…ナンス…」

 

投げ出された車体とソウさんはその場に落下!

 

 

 

 

『!!!???』

 

運悪く近くを通りがかったオニシズグモの脳天に直撃ッ!!

 

 

 

 

 

結果的には命は助かった。奇跡的な助かり方だ。

 

一定時間経ったおかげかダイオウドウの追撃はなく、どこかに消えていった。

 

最後の最後でクッションになってくれたオニシズグモには全力の治療を施す。相当高レベルの個体だったようで命に別状は無かった。こちらが殺されかけたがなんとか許してもらえた。

 

雷雨のストーンズ原野、ボロボロの旅人とボロボロのソーナンス、ボロボロのトゥクトゥクとボロボロの荷物。

 

奇跡的にボロボロになるだけで済んだ。

 

だが、全てがボロボロの状態で突然投げ出されたのはワイルドエリア後半、ストーンズ原野。これまでとは比べ物にならない化物がウヨウヨいる魔境。

 

そこらへんをほっつき歩いていたオニシズグモですら重量物の直撃を食らってピンピンしている魔獣じみたポケモン達、これまで以上に多様な天候、増えるキョダイマックスポケモン。

 

 

 

「ソウさん…これどうする…」

 

「…ソーナンス」

 

諦めろと言わんばかりに肩を叩かれる。生存率など考えたくもない。

 

おかしい、もう二度とワイルドエリアには踏み入れないと決めていたのに…。何故か僕たちはまたワイルドエリアにいる。しかも北側、後半、今までいた場所が可愛く見える程の、本当の魔境。

 

周囲には砕かれた岩石と土砂。そして土砂降りの雨

 

「…さよなら…文明」

 

「…ソーナンス」

 

ロトム文明の力で絶好調だったトゥクトゥクは砂にまみれボコボコになっている。綺麗だった僕らの身体もボロボロのボコボコだ。

 

フラリとソウさんが倒れた。すぐさま潰れたオボンの実を口に突っ込み、残り少ないきずぐすりを振りかける。

 

「……よし、生きるか!!」

 

「…ソォ…ナンス!」

 

ヤケクソ気味に天に向かって叫ぶ。

 

 

 

地獄のワイルドエリアサバイバルは、もう少し終わりそうにない。




前回ワイルドエリアから脱出しましたが結局後半もサバイバルします。

ちなみに次回は例のごとくワイルドエリア突破後の物語の予定です。

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