終末ガラルで、ソーナンスと   作:すとらっぷ

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男主人公を選んでしまったがばかりにマリィの衣装が着れないんですが…女装機能の実装はいつですか、待ってます任天堂さん。


修理工と二人

トンネルをくぐると、そこはシャッターだった。ここはスパイクタウン、多くの店が雑然と並ぶどこかパンクな雰囲気の町、とのことだが…

 

「そもそも街が開いてもいないや」

 

「ソーナンス!」

 

街の入り口はシャッターで固く閉ざされている。そんな固いシャッターの前に停まっているのは一台のトゥクトゥク(屋根付き三輪バイク)。そしてその持ち主の青年とソーナンスだ。

 

「外からじゃ開けられそうにないな。裏口でも探すか…」

 

街の周りを軽く走ると、別の入り口は案外すぐに見つかった。その奥にはポケモンセンターが見える。

 

「お邪魔しまーす…」

 

例のごとくポケモンセンターの治療機械は壊れていた。他の街と比べても壊れっぷりが凄い。大爆発したような吹き飛びっぷりだ。パンクである。

 

「ソウさんーなんか見つけたー?」

 

フレンドリィショップを漁りながらソウさんに話しかける。

 

「ソォォォォナンスッ!!」

 

かなり興奮しているようだ。何か発見したのだろう。急いでソウさんに駆け寄るとソウさんの頭にモヒカンが生えていた。肩なんてないのに肩パットも付いている。全体的にトゲトゲしている。

 

「ソォーーッナンッスー!」

 

テンションが上がっているのは伝わる。伝わるが役立つものを見つけてほしい。と思ったら妙にトゲトゲした革ジャンを見つけた。重いし手入れも大変そうなので旅には向かないだろう。元の場所に戻そうとするとソウさんに裾を引っ張られる。

 

「…ソーナンス?」 

 

「…そんな、えっ着ないんですか?みたいな顔されても」

 

「……」

 

「……」

 

「………ソーナンス?」

 

「わかったよ着るよ!」

 

根負けし、袖の無いトゲトゲした革ジャンを身につける。鏡を見るまでもない、絶対似合っていない。

 

「ソーナンスゥ…」

 

ソウさんは満足げ。絶対旅には持っていかないぞ。

 

 

 

トゥクトゥクを徐行させながら街を見渡す。街の殆どはシャッター街となっていた。この街には屋根があり光を通さない。代わりに街を照らしていたであろうネオンも死んでいる。昼でも暗い街だ。ヘッドライトをつけて散策する。

 

この街は一本道のような街だ。中央の通りと、それに隣接する建物。縦長の大きいアーケードのような形をしている。迷いようがないのはいいかもしれない。

 

道中の店で見つけたのはラム酒が数本。度数が高いので消毒にもなるだろう。それとマメ缶が2つだけ。これから実りの少ない冬を迎えようとしているため食糧は蓄えておきたいところだが、そう上手くはいかない。

 

「ソーナンス…?」

 

ソウさんが不思議そうな声をあげる。その視線の先にはバイクがあった。

 

「大きいバイクだな。クラシックな感じでカッコイイ。錆びてて動きそうにはないけど」

 

少し進むと寂れた屋台が多く残っていた。食糧は期待できないが、道具などは残っているかも。

 

「おお、ソウさん。車があるぞ」

 

白いバンのようだ。運搬能力は高そうである。そこに並ぶようにバイクに惹かれた台車、屋台のようだ。隣はトラックに牽かれた巨大な釜だ。

 

「凄いな、ここには乗り物がいっぱいだ。しかも旅に役立ちそうなものばかり」

 

更に車輌と屋台が増えてくる。奥の行き止まりが見えてきた。

 

「ここも、車輌ばかり。機械の街だな、これ」

 

街の奥のフェンスに囲まれたバトルフィールドにも、ところ狭しとバイクが並べられている。そして、ふと気づく。

 

「…不自然に状態が良い。動きそうだぞ…このバイク」

 

周りにあるものもそうだ。この広場にあるバイクはどれも状態が良い。まるで、

 

「…誰か、バイクを整備している人がいる?」

 

「…そりゃその通りですが、どちらさんですかい?」

 

「えっ…」

 

声のする方を向くと黒いバイクの上に座るジグザグマがこちらを見ていた。

 

「ソーナンス!?」

 

「違う違う、その下でさぁ」

 

ジグザグマが座っていたバイク、その陰から現れたのは油で顔を汚した女だった。ピンク髪のパンクな服装である。片手には重そうな道具箱を持っていた。

 

「アー、お客さん?」

 

「客?ここは店なんですか?」

 

「アー、自己紹介すると、アタシはエール団のコンポっていうんでさ。今はここで修理工やってる」

 

コンポと名乗った女性はジグザグマを抱きかかえながら軽く会釈する。

 

「僕はハロンタウンから来たカイといいます。こっちはソウさん」

 

「ソーナンス!!」

 

トゥクトゥクから降りて挨拶を返す。

 

「修理工ということは、ここにあるバイクは…コンポさんが?」

 

「アー、アタシが直しやした。この広場にあるモノは、燃料さえ入れれば大抵動きやす」

 

人間が消えて、技術というものはかなり消えた。そんな時代にこれだけ動くバイクがあるというのは凄いことである。僕も騙し騙し自分で整備しているが、それでも及ばないところがある。

 

「僕のトゥクトゥクの点検って出来ますか?」

 

プロがいるならば是非一度、しっかり点検して欲しい。

 

「アー、はい、食糧か何か分けてくだされば、喜んで」

 

お代は重要だ。干したきのみがいくつかあるため、それで手を打ってもらう。

 

 

 

 

「…そういえば、コンポさんはエール団って言ってましたけど、他にも貴方みたいな人がいるんですか?」

 

積まれたタイヤに腰掛け、エンジンを分解しているコンポさんに話しかけてみる。

 

「アー、はい。今この街にいるのはアタシ一人ですが、ちょっと前はアタシ以外にも何人かいました」

 

「…」

 

デリケートなことを聞いてしまったかもしれない。

 

「アー、消えた奴もいますけど、そうじゃないんでさ。旅に出たんです、お客さんみたいに」

 

コンポさんはこの街について話してくれた。

 

「消滅が起こった当時、このスパイクタウンも混乱したんですが、当時のジムリーダーがいい人でして、上手くまとめてくれました。それほど大きい混乱にはならなかったと思いまさ」

 

ソウさんは別のバイクに腰掛けているようだ、頭にはジグザグマを乗せている。

 

「元々シャッター街の廃れた田舎街だったんで何にもありませんでしたが、この街には気合の入った人間がいたんでさ。そんで街の若い子の一人が街を飛び出して旅に出た。そこから後を追うように色々理由をつけて旅に出始めた」

 

「このバイク達を使って?」

 

「そうでさ。みんな旅のアシにここのバイクやクルマを持っていった。だから何年走らせてもいいようにバッチリ整備して送り出してやるんでさ」

 

機械油に濡れるその手は、その腕の良さを雄弁に語る。

 

「お客さんが乗ってるのも、アタシが組んだ物だね。間違いない」

 

「このトゥクトゥクが?」

 

ハロンタウンのガレージで見つけたこのトゥクトゥク、出処はここだったのか。

 

「アー、アタシは自分の組んだエンジンには必ず魔法を掛けるからね、企業秘密でさ。それで一目瞭然。それに、こんな形のバイクはこれ以外見たことないからね」

 

懐かしむようにトゥクトゥクの車体を見る。

 

「ア、別にお客さんが前の持ち主から盗んだなんて思っちゃいないでさ。それはお客さんの顔を見てればわかりやす」

 

「…はい」

 

「元の持ち主は…珍しい男だった。人のいないこの世界で商売するんだって、色んなもの詰め込んで旅に出ましたわ」

 

「ソーナンス…」

 

珍しく、ソウさんが人の話を聞いている。ソウさんもまた、懐かしんでいるように見えた。そういえば、出会った当時のソウさんはこのトゥクトゥクを守るかのようにガレージで暮らしていた。

 

「前の…持ち主か…」

 

やはりソウさんは前の持ち主を知っているんだろうか。

 

「アタシは、飛び出していった奴らの帰りを待ってるんでさぁ…。帰って来ないやつも多い。だから嬉しいんでさ。バイクだけでも帰ってきてくれて」

 

顔は見えない。ただトゥクトゥクと向き合っている。

 

「コンポさんは、旅しないんですか?誰かと一緒に、とか」

 

「私は誰かを待ってるほうが性に合ってる。それに、家に帰ってきたのに誰もいなかったら、ちょっと寂しいじゃないですか」

 

そう言ってコンポさんはジグザグマを撫でる。ジグザグマも油まみれの手を気にせず撫でられている。

 

 

 

 

少し時間が経ち、

 

「…よし、取り敢えずおしまい!弱ってる部品は変えときやした。割れてるミラーも新しいものに変えておきやす!」

 

「ありがとうございます…あの…大事に乗ります、コレ」

 

コンポさんは朗らかに笑った。

 

「それがいい、それが一番、みんな喜ぶ」

 

コンポさんの笑顔は何処か寂しげだった。コンポさんは、一体どれだけの人を送り出してきたのだろうか。きっと両手では数えられない。そして彼女は修理することで人を送り出す準備をしている。

 

彼女はどんな気持ちで、この街で生きているのだろう。

 

それを寂しいと思うことは、彼女に失礼だろうか。

 

 

 

 

 

 

「お客さん、次はどこへ行くんですかい?」

 

一日、この街に泊まり、出発の準備をする。そんなとき、コンポさんが話しかけてきた。

 

「特に決めてないですが…」

 

「もし北に行くなら、このスパイクタイヤを持っていってください。雪道でも走れやす」

 

車体の後ろにタイヤをくっつけてくれた。付け替えは難しいものでは無いそうだ。

 

「このタイヤのお代はいりません、その代わりお客さん、一つだけお願いをしてもいいですかい?」

 

「はい、僕にできる事なら」

 

少し溜めて、彼女は言う。

 

「もし道中、エール団に会ったら、アタシのこと伝えといてもらえますか。まだ生きてるよって」

 

「はい、もちろん。必ず伝えます」

 

力強く頷く。

 

「それでは、僕は行きます。……お元気で」

 

「ご安全に、お客さん」

 

エンジンを掛ける。今までよりもずっと力強くて澄んだ音、絶好調だ。貰ったゴーグルを頭につける。これもオマケで貰った。好調だ。

 

 

 

ソウさんがギターを弾き出す。この曲は知っている。ターフで歌った歌、ソウさんのお気に入りの歌。この曲は僕も大好きだ。

 

 

 

 

 

 

アタシはこの曲を知っている。アイツの歌った歌、変わり者の商売人のお気に入りの歌。まだアイツがこの街にいた頃、よくギターを弾いていた。

 

ネズさんと一緒に演奏するんだって笑っていた。アタシはその曲じゃ優しすぎるって言ったけど。

 

アイツはまた、商売を続けているんだ。ソーナンスになって。

 

 

 

「馬鹿野郎、元気でな」

 

零れ落ちた涙を拭って、伸びをする。まだまだ直すバイクは残っている。今日は調子がいいのだ。まだまだ働ける。

 

 

 

 

 

そして、

 

場所は変わりエンジンシティ、中央通り。無人の道路に唸るエンジン音。

 

大きく黒いバイクに、フルフェイスヘルメットを被った小さな人影。

 

「うらら!」

 

「どげんしたと?モルペコ」

 

モルペコが見つけたのは一軒のカフェのようだ。

 

「…そげんやね、ちょっと休もうか」

 

ヘルメットを外し、バイクに引っ掛けておく。

 

「うら!」

 

スパイクタウンを飛び出してからどれだけ経っただろうか。数えていないため正確にはわからないが、かなり時間が経ったように思う。結局、消滅の原因や、それを探っている人には出会えなかった。

 

「もう少しガラルを巡ったら、帰ってみよかな…」

 

カランコロンと来客を告げるベルがなる。

 

「お邪魔します!」

 

久しぶりのお客様だ。




終末ガラルメモ
バイク
終末世界とバイクは切っても切り離せない関係にあります。静かな終末世界でもバイクで旅をしますし、ヒャッハーなお兄さんたちもバイクを愛用します。そんな終末世界にバイクを届ける修理工のお話でした。終末×バイクはロマンだからね、仕方ないね。

ソウさんカイさんコンビはまだ出会っていませんが、バイクに乗ったエール団はガラルの各地で旅をしています。理由は様々、消滅を止める方法を探すために旅する子、美味しいご飯を食べる奴、商売をするため旅する男、ワールドツアーで各地で歌う奴、様々理由を持って旅をしているらしいです。
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