ハジメ「終わった...。」
肉の焦げた匂いが辺りに撒き散らされ、鼻腔を擽る。戦闘が始まり15秒。今回のハジメ達の戦いは終わった。
別にハジメが
白野「何か問題がありましたか?」
白野だ。
彼女が持っている雷系統魔法を付与した
そして戦闘が始まると共に、白野が戦斧を天に突き上げ、自らの膨大な魔力に物を言わせ、地面が揺れる程の轟音を響かせながら巨大な落雷を引き起こした。
雷に呑まれた6万にも及ぶ魔物の軍勢は、自分が攻撃を受けた事にも気付かぬまま、一瞬で己の肉体を炭へと変えた。
ハジメ「いや、問題は無ぇけどよ、秒で終わっちまったぞ。時間かけて準備してた清水が可哀想になって来るな...。というか生きてるのかアイツ?」
白野「存命ですよ。彼の乗っている魔物と本人には当てていませんから。」
ユエ「......何処からそんな規模の魔力が出るの?」
シア「うわー、やる事無くなっちゃいましたねぇ。これ、私達が用意していた意味あったんですか?」
敵が殲滅された以上、ハジメの仕事は終わりだ。精々残っている作業は、清水の回収位だろう。しかし、白野の言葉に全員が構え直す事になる。
白野「彼がいる以上、これで終わりとは思えません。」
シア「え? 誰の事で────!?」
言葉が続かなかった。目の前の光景に再び目を奪われる。
既に事切れた筈の、全ての魔物の死体が蠢いている。否、死体が元の形に戻って行き、骨が組み直され、炭から肉体へと再生し、瞬く間に魔物達は蘇生する。
蘇った魔物は生前より更に屈強な肉体へと変わり、全ての個体から尋常では無い密度の魔力が迸っている。
苦境を乗り越えたと喜びに浸っていた住民が、終わりの無い絶望に顔を歪める。この現象を引き起こせる者は彼しかいない。
ハジメ「まぁ、案の定例の魔人族も居るよな、そりゃ。神代魔法には蘇生させる様な物もあるのか?」
白野「はい、恐らく魂魄魔法かと思われます。以前相対した時もこの様な事がありました。」
ハジメ「知ってたなら先に言え!」
報、連、相のほの字も無い白野にツッコミを入れるが、そんな事をしている場合では無い。不死の軍勢が、町に向かって進軍を再開した。基礎能力を引き上げられたからか、先程よりも速度が上がっている。既にその強さは奈落の上層に生息する魔物と大差無い。今直ぐに迎撃しなければ、あっという間に大量の魔物が町を蹂躙し尽くすだろう。
白野「私が本命を叩きます。恐縮ですが、ハジメさん達は防衛をお願い致します。」
ハジメ「言われなくともそれ位はしてやる。それと、コイツを使え。」
ハジメは指輪から武器を取り出し、白野に投げ渡す。
それは、先日ハジメが改造を施していたクロスボウだった。弓の後ろにボルトの詰まった車輪が取り付けられており、引金を弾くだけで連射が出来る様、各所を強化している。
白野「ありがとうございます。ハジメさん。」
礼を言った後、白野は戦斧を背負い、クレイモアを引き抜き大軍に向き直る。剣の柄を逆手に持ち、槍投げの様に構え重力魔法を込めると、全力で剣を投げた。
投げられた剣は身体強化と重力魔法が合わさり、音速の如き速さで魔物の群れを突き抜け、強引に大軍を縦に掻き分けて行った。白野は空いた道筋を強化した脚力で駆け抜けながら、クロスボウを両脇の魔物に向けて放つ。
ガガガガガガガガガガガガガ!!
機関銃並の連射速度でボルトが魔物に打ち込まれて行く。魂魄魔法を応用した、魔力を強制的に爆破させる魔法が付与された必殺の矢が次々に敵を撃ち殺し、死体が周りの魔物を巻き込みながら爆発して行く。
ハジメ「...魔力量の底が知れねぇな。」
ユエ「......魔力お化け。」
群れを殲滅しつつ、白野は目標に向けて走り抜ける。途中、投げ飛ばした剣を重力魔法て手元に戻しながら対象に近付いた頃、重力魔法を使い飛び上がり、我が者顔で空に佇む男に向かって飛んで行った。
途中、鳥型の魔物が咆哮を上げながら彼女に襲い掛かる。白野は飛んで来る魔物を踏み台にしつつ“禍天”で左右に落ちながら回避し、時折スティレットを投擲し敵の頭を穿つ。そして、目標の男、清水に接近し、彼に向けて鎧通しを投げた。
清水「うゎ!?な、何だ!?」
放たれた鎧通しが清水に刺さる。突然の攻撃に動揺するが、直ぐに痛みが無い事に疑問が湧く。突如、刺さったスティレットが消え、代わりに彼の前に何も無い所から白野が現れる。
清水「ひっ!? な、何なんだよお前!?」
白野「継ぎ接ぎだらけの魔人族は何処ですか?」
清水「ふ、ふざ、ふざけんな! 俺の質問に答えろよ! 何様のつもり────!?」
白野「質問に答えて下さい。」
吃りながらも反論する清水の首に剣を添え尋問する。しかし、清水はその行動に憤り、白野に罵声を掛ける。
清水「邪魔してんじゃねぇよ、モブ風情が! テメェみたいな奴は大人しく俺に殺されてりゃ良いんだよ!」
白野「そうですか。」
白野は剣に炎系統の魔法を一時的に付与し、竜に跨る清水の足に突き刺した。裂かれた部分から肉の焼ける匂いが漂い、流れる筈の血が蒸発する。
清水「ギャァァァァァア!?」
白野「答えて下さい。魔人族の男は、何処にいますか?」
再度清水に質問するが、プライド故か恨めしい視線を向けるだけで、質問に答えない。情報を引き出す為に剣を足から引き抜きつつ再生させ、今度は腕に刺そうとするが――
キンドル「ここにいるともぉ。」
突如白野の背後から、背筋が凍りつく様な殺気と共に声を掛けられる。それは、白野が知っている声だった。
声の出所に向けて躊躇いなく剣を横に振る。しかし、予想されていたかの様に上体を逸らす事で容易くかわされ、逆に回し蹴りを叩き込まれ竜から蹴落とされる。
慌てる事無く重力魔法で落下速度を落とし、下にいる魔物に向けてクロスボウを放ち、近くにいる魔物を爆発させ殲滅する。
そして白野が地面に降り立つと、突如彼女の前に現れた光の膜の中からキンドルが、王様気取りの様に仰々しく、ゆっくりと出て来る。
白野「生きていたんですね。焼き殺したと思っていましたが。」
キンドル「あぁ、お陰様でゴミの仲間入りをする所だったよぉ。その前に素材に紛れて逃げ出したから何ともなかったがねぇ。落とし前はきっちり付けさせて貰おうかぁ。」
片目に怒りを宿しながら、キンドルは腰に挿したバトルアックス(斧)を引き抜く。有難い事に、今回は手下を使わずに直接白野を手に掛けるつもりの様だ。周りの魔物も彼等を無視して町に進軍を続けている。
白野「戦う前に、少し話をしませんか? 私としては聞きたい事もありますし、貴方にとっても悪く無い情報もあるのですが...。」
自分から斬りかかった事を棚に上げ、交渉が可能かどうか対話に出る。案の定、キンドルはそれを詰まらそうに鼻で笑い――
キンドル「”黒天穿”」
嘗て己を圧殺した魔法を白野の背後に放った。やられた事の報復のつもりなのだろうか、現れた黒い球は白野を殺すべく引き摺り込もうとする。
白野「“界穿”」
白野は黒天穿と自身の間に空間魔法を出す事で、重力に引かれるまま光の膜に飛び込み、逆にキンドルの背後に現れ袈裟斬りに斬りかかる。
突如、何の前触れも無くキンドルの体が消え、白野が振り下ろした剣が空を斬った。
キンドル「甘いんだよぉ!」
否、完全に消えた訳では無い。白野の目には、確かに剣が彼の体を斬り裂いた様に見えていた。しかし、手応えがまるで無い。
剣を
白野「これは一体...?」
キンドル「どうだい、私の研究成果はぁ? 最早誰も、私に触れる事すら出来ない! まるで神の御神体そのものだとは思わないかね? 」
キンドルは自惚れる様に恍惚な表情を浮かべ、余裕な態度でゆっくり白野に歩み寄る。白野はバルディッシュを抜き魔力を貯め、小規模の雷を放つが、それすらも容易くすり抜けられる。対象を貫き損ねた落雷が地面を焦がす。
戦斧を仕舞い、近付いてきたキンドルが振り下ろす斧を剣で防ごうとするが、斧が剣を何も無いかの様に通り抜け、白野の右腕を肘の辺りで切り落とした。
キンドル「!?」
しかし、白野は剣を握ったまま切り落とされた腕を左手で掴み取り、その場で回転しキンドルの首を狙って腕ごと剣を振る。
剣は例の如くキンドルを通り抜けるが、予想外の攻撃だったのか、動揺した様子で動きが止まる。
白野は素早く右腕を結合させると、スティレットを生成し腹に突き刺す。
キンドル「っ!! このっ!」
やはりと言うべきか、肉を刺す手応えは無かったが、鎧通しの効能は発揮されている様だ。白野は無力化するべく更に鎧通しを生成し、キンドルの腕、足、頭と、立て続けに突き刺し動きを封じて行く。
キンドル「調子に乗るなぁ!! 人形風情がぁ!!」
しかし、反撃もそこまでだった。キンドルの体から膨大な魔力が放出され、体に刺さった鎧通しと白野を吹き飛ばす。
そして、体勢を崩されたまま飛ばされている白野に、キンドルは身体強化ではあり得ない速度で近付き彼女の横に現れる。白野の両足を斧で斬り落とし、空いた左手で彼女の頭を殴り地面に叩き付けた。金属が撓む音が響きヘルムの鼻っ柱が凹む。地面に崩れ落ちた白野の胴を更に蹴り付け、町とは反対方向に蹴り飛ばす。
白野「――っ。」
重力魔法で速度を落とし停止するが、両足が無くなった為立ち上がれない。再生するにしても元が無くなった分時間がかかる。そして足が生える前に、怒り心頭のキンドルが白野の前に現れる。
キンドル「いい加減にしてもらおうかぁ。お前は、大人しく私の実験材料になっていれば良いんだよぉ。」
とどめを刺す様に、右手に持った斧を振り上げる。魔法、物理、全ての攻撃が避けられる以上、彼女に対抗策は無い。白野はキンドルに見えない様にボルトを取り出し、右手に隠し持つ。彼が斧を振り下ろした瞬間、これを指に刺し自身を爆発させられれば、最低でもこの男は巻き添えに出来る筈だ。魔力を持っている以上、この身も充分起爆剤になる筈だ。
――直ぐに治るからと言って、自身を使い捨てる様な事をしてはいけません...。自分の身はもっと大切にして下さい。
ふと、愛子と交わした約束が思い出される。しかし、ここでキンドルを止めなければ今も尚殲滅戦を繰り広げているハジメ達にもいずれ限界が訪れる。そうなればウルは地図から消える事になる。逃げる方法もあるが、攻撃が通じない以上ここで逃げ延びた所で結果は変わらない。
キンドルに抵抗出来ないフリをしながら、起爆のタイミングを見計らう。その様子に気付いていないキンドルは、勝利を確信した表情を浮かべ、斧を振り下ろした。
突如、彼の左手から、指輪が抜け落ちた。
キンドル「何!?」
白野「...?」
落ちてきた指輪が白野の手に収まる。すると、斬り落とされた足が瞬く間に再生し、進軍を続けていた魔物達の進行が止まる。動力が切れた様に崩れ落ち、僅かにも動かなくなる。
白野は急ぎ転がる事でキンドルの下から離れ、左手の籠手を外し指輪をつける。
まるで、今迄自分の中で足りなかった物が取り戻された様な感覚が、彼女の体を駆け巡る。それ共に、自分の知らない知識が頭に入り込んで来る。先程迄キンドルが使っていた不可解な現象も、指輪をつけた今なら分かる。
キンドル「そ、それをォ、か、かか、返せェ!」
声がした方向を見ると、そこには麻痺しているかの様に足を引き摺り、心なしか一回り老け込んだ様子のキンドルがいた。手はカタカタと震え続け、声はかなり嗄れている。
白野「それは出来ません。」
白野は要望を蹴り、剣を抜き魔力を込めると、キンドルに向けて、袈裟斬りに剣を振り下ろした。
キンドル「やめろオォォォ!!」
剣から伸びた魔力の斬撃が地を滑り、キンドルの体を縦に切り開く。枯れた老人の叫びが止まり、事切れた肉体が音を立てて地面に倒れる。
白野の周囲に、魂の抜けた死体だけが広がる。こうして、ウルの防衛戦は終わり、町は守られた。
••••••••••••••••••••••••••••••
白野「よお、無事みたいだな。」
泣き別れした具足を見つけ鎧を修復していると、魔力駆動二輪に乗ったハジメが死体を掻き分け声を掛けて来た。側面に付いている車には気絶した清水が雑に括り付けられている。
白野「ハジメさん、ご無事で何よりです。」
ハジメ「その後ろで縛られている奴が、例の神代魔法を使う魔人族か? 現代アートみたいな見た目してるな。いや、ブラ○ク・ジャックか?」
白野「はい。と言っても、指輪をしていない今は何も出来ない様です。」
ハジメ「指輪?」
あの後、キンドルの死体は何もしていないにも関わらず肉体の再生を始めた。どうやら不死の力は指輪による物では無い様だ。今は両手足を縛られ、口には詠唱出来無い様に猿轡をはめられている。
ハジメの質問に、白野は手に付けた指輪を外し、ハジメに渡す。それは、魔人族の魔法陣が刻まれた、仄かに青白く輝く指輪だった。ハジメは鉱石鑑定を掛けてみるが、何も判明しなかった。どうやら使われている物は鉱石では無く、何か別の物質の様だ。
好奇心を刺激されたのか、目を輝かせて構造を把握しようとするが、その前に指輪が独りでに手を離れ白野に飛んでいった。
ハジメ「何だそれ? 生物か? 随分気に入られているな。」
白野「分かりません。ただ、この人は指輪の力で神代魔法と無制限の魔力を持っていた様です。」
ハジメが視線を向けると、キンドルは恨めしそうな目で睨め付けてくるが、ハジメは興味を失った様に顔を背ける。
ハジメ「俺はコイツの始末を付けてくるが、お前はどうするんだ?」
白野「幾つか聞きたい事があるので、暫く残ります。」
ハジメは何をするか色々察したのか「そうか」と軽く返事をし、町に向かって魔力駆動二輪を走らせて行った。再び、この空間にいる人は白野とキンドルの二人だけとなる。
白野は指輪を嵌めた上で取られない様に籠手を付けた後、キンドルの口から猿轡を外す。
白野「聞いての通り、貴方に聞きたい事があります。貴方は以前から私の事をご存知の様ですが、知っている事を話してくれませんか?」
キンドル「バ、バカを、言うなァ。答えるとでも、思っているのかァ?」
嫌味ったらしい表情を浮かべながら、辿々しく口を動かす。
白野は口を軽くさせる為にキンドルが使っていた斧を振り上げ、背中に叩きつけた。
キンドル「がぁあああ!?」
白野「質問に答えて下さい。貴方は死に辛い様ですから、このままずっと殺し続けてもいいんですよ?」
脅しをかけるが、キンドルはこちらを睨むだけで、答えようとしない。仕方なく、話を変える事にする。
白野「貴方が死なない理由。魂の大半を魔人族領の辺りに置いて来ている事と関係があるんですか?」
キンドル「!? な、何故それをォ!?」
白野「貴方が寝ている間に、闇系統魔法で頭の中を探らせて頂きました。記憶は読めませんでしたが、別の事は判明しました。」
キンドルの持ち物を強奪し体を調べてみた所、彼の魂は人を動かすには不十分な量の、一部分しか体に残っていなかった。しかし、その魂からは、何やら魔人族領まで伸びる線の様な物がある事が判明した。
その話を聞き、観念したのか諦めたのか、渋々仕掛けを話し始めた。
キンドル「...お前が見たものの通りだァ。魂を別の器に入れ、現世に、己と言う存在を縫い止める。それが、私が死なない仕掛けだァ。」
つまり、その入れ物を壊し魂を抜いてからで無いとこの男は死なないという事になる。
肝心の器の場所を聞いた所で、彼の口が更に硬くなるだけと推測し、白野は別の質問を続ける。懐から鉱石とは違う、白く透明な水晶の様な物を取り出し見せる。
白野「貴方の持ち物から妙な石を見つけました。これは何ですか?」
キンドル「持ち主の前で、堂々と窃盗かァ? 異界の使徒サマも、いい趣味をしている。」
キンドルの皮肉を無視し、答えを待つ。
彼によれば、この水晶は「魂結晶」と呼ばれる物らしい。と言っても元来人工物の様だ。最初に作り出したのはキンドル自身の様で、便宜上この名前を使っているだけらしい。
名前の通り、この石は魂との親和性が高く、人や魔物の魂を入れられる。恐らくキンドルが言っていた器と言う物にも、この石が使われている可能性が高い。
白野「次、貴方は戦力を蓄えて、何をするつもりですか?」
神代魔法、無尽蔵の魔力、そして不死。どれか一つでもあれば、最早並みの軍勢では太刀打ち出来ない物だ。この指輪とて、量産が可能なら子供でもかなりの戦力になる。
そして、キンドルは個人的な軍隊を作り出そうとしている。明らかに個人が所有する戦力では無い。その質問を聞き、キンドルは嗜虐的な笑みを浮かべた。
キンドル「決まっている。私が、神になるんだよォ。」
白野「神に?」
キンドル「この力さえあれば、私は全てを凌駕する事が出来るゥ。我が物顔で、世界を牛耳るエヒトも、他人の体で、魔王を気取るアルブも、私の踏み台でしか無い。」
そう言い、キンドルは白野に視線を向けながら、提案をして来る。
キンドル「なァ、私と手を組まないかァ? 誘いに乗るなら、お前の事も、全部教えてやろう。悪い提案では、無いだろう?」
鬱屈した笑い声を上げながら、キンドルは白野の答えを待つ。
確かに、彼女にとっても悪い提案では無い。元々魔人族とは手を組むつもりでもあったし、何やら胡散臭い神の話を聞いた手前、唯魔人族に取り入るだけでは負けるだろう。記憶とて、事の張本人から直接聞けると言うのは良い近道にもなる。
――嘘つきの目がどういうものか、私はよく知っている。
白野「結構です。」
キンドル「あァ?」
断られると思っていなかったのか、キンドルは惚けた声を上げる。そして、慌てた様子で交渉を続けようとする。
キンドル「な、何を、言っているゥ? お前の事は、私しか知らないんだぞォ!? ここで手を拒めば、二度と手に入らなくなるぞォ!?」
白野「嘘ですね。」
白野の言葉に、息を詰まらせる。何故、分かったのだと。彼の背中に、嫌な汗が流れる。
白野「私は、平気な顔で味方に嘘を付く人とは手を組めません。貴方から聞きたい事も、もうありません。」
白野は右手でキンドルの頭を掴み、魔力を込める。
キンドル「や、やめろ。何をする気――
変性魔法と言う物がある。動物や植物、それに由来する食料や飼料等の、有機的な物に干渉出来る魔法だ。
そして、この世界には武器に炎や雷を宿す様な魔法もある。炎ならば当然、付与した武器は燃え盛る。つまり、肉体に同じ事をすれば――
キンドル「うあァ!! ァァアアア!? アアアアアァァァァァァァァァ────!!!」
対象は永遠に燃え上がる。骨肉が炭素に変わり、端から再生し、また燃え上がる。短期間で崩壊と再生を繰り返せば、彼はもう何も出来ない。
キンドルは全身から炎を吹き出し、勢いよく燃え盛る。周りの死体や物は避けたので、延焼する事も無いだろう。やがて心を壊したのか、程無くして絶叫も聞こえて来なくなる。
白野はそれを見届けた後、武器と強奪した品を背負い、キンドルを放置して町に引き返して行った。