クラーラに続き、ノンナまでもがカチューシャを逃すためにパーシングに突撃して相打ちとなった。
「ノ・・・・、ノン・・・・」
『カチューシャ!何をしている!?』
『カチューシャ様!』
『さっさと行けじゃ!』
「くっ、うう・・・・回頭・・・・・もう後ろを見る必要はないわ。撤退・・・・・・するわよっ!」
カチューシャは、まほ、アリーナ、ニーナに諭されて、自分を逃す為に犠牲になったノンナとクラーラの為にも撤退を決意するのだった。カチューシャのT-34/85が去って行くと、KV-2も撃破され白旗があがる。
「・・・・・・・やられた」
『ちょっとメグミ早く進んでよ、後ろがつかえてるわよ!』
「ダメ、隘路を塞がれた」
目標である、プラウダの隊長車が逃げられたのを確認して悪態をつくメグミに最後尾にいるアザミから無線で後ろがつかえていると連絡が来たが、メグミは撃破したIS-2とKV-2が道を塞いで通らなくなった事を伝える。
『じゃあ脇から抜けなさいよ!』
「滑るわよ、麓へ落ちたければどうぞ」
アズミは塞がれたのなら、脇道を通らないと言うがそっちもダメだ。そっちはもう崖でそこを通ろうものなら麓まで滑り落ちるのがオチだった。
『ああ、もう!・・・・・・隊長を生かすために身を挺して命令を遵守したってワケ?高校生のくせに生意気なチームね』
「違うんじゃない?」
『は?』
「動きに一貫性がなかった。たぶん各自が独断で行動したのよ」
『やっぱり生意気じゃない』
「ルミ、大洗の5輌がそちらへ合流するばすだ。戦線の維持できなければその場を放棄しろ」
『了解!』
『こちらは迂回して追撃しますか?』
「いや、残りの部隊は再編成をおこなう。故障車を確認しろ」
『すみません、隊長』
「いや、いい。あちらの隊長は部下を動かして戦果を上げるタイプだ。丸裸にできただけでよしとしよう。プラウダは潰した」
と目的のプラウダの隊長車は逃したが他プラウダの戦車を撃破した事でカチューシャを守る車輌は居なくなったので結果往来と言う。
「みんな・・・・・・シベリア送りになっちゃいましたね」
「まだよ、やられて負けたらシベリア送りなんだから。見てごらんなさい、力の違いを見せつけてやるんだから」
とカチューシャは、キューポラから顔を出して後ろを向き、この借りは必ず返すんだからと言う思いだった。
『大洗KV-2、行動不能、九七式中戦車1両、同新砲塔1両、パンター2両、T-341輌、IS-21輌、 行動不能』
とKV-2、九七式中戦車新旧それぞれ1輌、パンター2輌、T-34/851輌、IS-2 1輌がそれぞれ撃破の放送が流れる。
一方、その頃、先行してあさがおの偵察向かっていた西は、九七式中戦車を枝などでカモフラージュして、垢の反対側から双眼鏡で様子を見て、無線で伝えていた。
『こちら西、あさがおを突破した部隊は、ひまわりへと追撃を中止して中央集団と合流中』
「了解、引き続き偵察よろしく!それにしてもあの頭上からの砲撃は・・・・・・」
「おそらく・・・・・アレです」
「アレ!?まさか?」
ケイとアリサが爆撃の正体に気が付いたている、一方で秋人も正体に気がついていた。
「敵の砲撃の正体は恐らく『カール自走臼砲』だ!」
すると秋人が、双眼鏡で辺りを見渡しながらそう言った。
『カール自走臼砲』
ナチス・ドイツが、フランスのマジノ要塞線への攻撃手段として開発した自走砲である。
自走砲と名付けられているものの、最高速は10キロ程度しかなく、自走能力は主に砲の旋回サポートとしての面が強い。
また、臼砲の名の通りに射程は短く、運用には多くの人員を必要とする扱い辛い兵器であった。
だが、60センチ或いは54センチの砲門から放たれる2トン、1トン以上の砲弾の威力は絶大である。
「カール………!?」
「何だ、それは?」
そういえば良達は知らないな、まだ秋人とミーナとは違う部隊に所属していたからカール自走臼砲は初めてか。
「カール自走臼砲。俺とミーナが独ソ戦でのクリミア半島のセヴァストポリ要塞の攻略で一時期第11軍に応援のために引き抜かれた際に要塞陣地を破壊する際に用いられた自走式の臼砲だ。だが、あれは本来ならオープントップで戦車道じゃ使えないはずがないんだが?」
「密閉式の戦闘室にでもしたんじゃ無いですか?それに砲弾に関しては自動装填装置と付けたりして」
と秋人とミーナは、第6軍として独ソ戦でのクリミア半島の攻略戦の際に、一時期マンシュタイン元帥指揮下の第11軍に引き抜かれた事があるのだ。その際の要塞攻略に用いられたのがカール自走臼砲だったので、二人はその砲撃を経験した事があるのだ。
「なんで分かるの?」
「また盗聴?」
「アリサさんって、彼氏の事も盗聴しそうだよね」
「束縛しすぎ?」
「それでタカシにフラれたんだー」
と一年生から言いたい放題のアリサはブチ切れる。彼女達に悪意や他意などは無いのだろうけど、こう言うのが人を傷つけるんだろうな。無自覚って怖い。
『告白もしてないのに、フラれるわけないじゃない!って・・・・・いうか何で知ってるのよ・・・・・』
「アリサさん、元気出してくださいね!」
「一人も楽しいですよ」
「ふぁいとっ!」
「ドンマイ!」
「戦車が恋人でいいじゃないですか!」
などと、一年生達から散々な言われようにアリサはヒステリックになり、一年に怒鳴り散らす。ほんと、言葉は刃物だな。
『うるさいわね!あなたたちに慰められたくないわ!』
「それより!あの車輌は認可されたの?」
「うちが導入しようとして問い合わせた時は、協議中だったんですが・・・・・・」
「…サンダースは、カール自走臼砲を投入するつもりだったのか?」
「そ、そうよ!何か文句ある!!」
「いや、悪いとは言わないが…だがこれで確定だな」
協議していたという事は、戦車道にカール自走臼砲の導入の検討は元々あった話なのだろう。それを文科省がこの試合の為にゴリ押した。とくれば辻褄は合う。
「それを事前にこちらに伝えてない時点で悪意しか感じられないな」
おそらく戦車道連盟もまとめて、文科省にしてやられたか。
「今は俺たちの出来る事を考えよう」
『その事なんですが日向さん!』
「西さん?」
話を聞いていた西が無線で話しかけて来る。
『私なりに皆様のお話を聞きながら考えてました、どうすればこの戦局を打破出来るのかを』
「…それってもしかして」
まぁ…分かりきっているが体裁で聞いといてやるか。
『そして閃きました!やはりここは敵本陣への突撃しかないと!!』
「結局突撃なんだ…」
「だと思った…」
さすがにウサギチームもこのやり取りには慣れてきたのか、少し呆れた声も聞こえてくる。
「…まぁ一つの戦術なのかもな」
『え?日向さんが!?』
『日向さんも突撃が感染った!!』
別に染まった訳ではないが、知波単学園は一人突撃しだすと連鎖して突撃かましていくのか。逆にを言えばカール自走臼砲封じしか出来ないが、現状の戦力で突っ込んでって勝てるとは思えんし。
「なんせ相手は安全地帯から一方的に攻撃できるんだからな。こちらから近づかなければ、虎穴に入らずんば虎子を得ず。・・・・・とにかく、ここからはカール自走臼砲の攻略戦だな」
『うん、そうですね。その為にもまずはカール自走臼砲を見つけないと』
「砲撃から着弾までの距離からおおよそ検討はつくけど、正確な場所まではさすがにわからないわね」
一方、その頃………
湿原地帯で戦闘中のたんぽぽチームは………
「へぷしょん!」
「大丈夫ですか?」
「なんだろう、急にくしゃみが・・・・・・えっとみぽりん。ひまわり、脱出したけどあと5輌だって」
「戦闘を中止してひまわりと合流しますか?」
「でも、先に頭上からの砲撃を何とかしないと………」
沙織からの報告を聞き、考え込むみほ。上空からの砲撃をどうにかしなきゃと考えて
「発射の時と着弾の音から推察すると、砲弾はおそらく1トン以上の艦砲クラス。でも、ロケット推進音はなかったからシュトゥルムティーガーじゃないとすると・・・・・」
「うん。会長、磯辺さん、アンチョビさん、ミカさん。お願いしたい事があります」
みほは、無線でヘッツァー(角谷)、八九式(磯部)、CV-33(アンチョビ)、BT-42(ミカ)達に無線で連絡を取る。
謎の上空からの砲撃を受け、高地から撤退したひまわりチーム。激しい追撃を受け、ひまわりチームはあわや壊滅の危機に瀕しプラウダはクラーラ、ノンナ、ニーナ達を失う結果となった。そしてみほは、謎の砲撃の正体を探るべく、杏達に強行偵察を依頼する。
『どんぐり小隊ぃ〜~全速前進ッ!!』
どんぐり小隊(アンチョビ命名)の小隊内訳はこうだ。アンツィオ高校、CV33カルロ・ベローチェ。継続高校、BT-42突撃砲。そして大洗からはカメチームのヘッツァーとアヒルチームの八九式中戦車の計4両の構成となった。
「お待たせ、チョビ〜」
「チョビって呼ぶなー!」
「4輌前進してきます。おそらく隊長車、狙いかと。こちらの指揮系統を混乱させるつもりか、破れかぶれなのか・・・・・・」
「各車発砲!隊長に近寄らすな!」
戦車部隊の一斉砲撃がどんぐり小隊に向けて放たれた。どんぐり小隊4両は相手の一斉砲撃をかわすと同時に進路を森へ、相手の砲撃による土煙が都合良く姿を眩ませてくれた。
「消えた!?」
「陽動だ、させておけ」
どんぐり小隊が消えたが愛里寿は気にするなと、放っておかせる。
「うわっ!?何だ!?あれは?」
「カールっすよ!」
「ん?カールヴォルフ?」
「違います」
「じゃあ、カールって何だ?」
あまりの衝撃にアンチョビ思わず人名の方が出てしまう。また、カール・ヴォルフはナチス親衛隊の最高幹部の一人で、第二次世界大戦中のイタリアにおける「最高親衛隊および警察指導者」を務めた人物で、カール自走臼砲とは全く関係ない。カール自走臼砲のカールは、開発計画の推進者であったドイツ陸軍のカール・ベッカー砲兵大将(弾道学者・兵器研究者)の名前に由来している。
「カール自走臼砲っす!あれは600mm砲っすよ」
「ろっびゃくう?カルロ・ベローチェが8mm機銃だから…えぇと…何倍だ!?』
『わり算も出来ないんスか!7.5倍ッスよ!!』
『75倍ですっ!』
『パーシングが3両、カールを守ってるよ!』
ペパロニもわり算出来ない子だった。、この二人これでアンツィオの売り上げとか計算出来るのだろうか。カメさんチーム柚子の報告は想定内だ。カール自走臼砲は相手方にとっても戦力の要、警護に戦力を当てて当然か。警護にはパーシング。しかも3両。アンチョビやペパロニ達がそうしたい最中にもカール自走臼砲は600mm砲弾を発射した。
『ダージリン様!先ほどより頭上からばっかばかと!マジムカつきますわ!』
「そうね、マジムカつくわね。でも今は偵察の報告を待ちましょう」
頭上から降って来たカールの砲弾に至近弾を喰らい掛けたローズヒップのクルセイダー。ローズヒップが悪態を突き、ダージリンも同意はするがアンチョビ達からの報告を待つ様促す。
一方、大会運営委員会の席では、戦車道連盟の児玉と文科省の役員の辻がカールの砲撃に晒される大洗チームをモニターから眺めていた。
「ああ〜〜、惜しい」
「これを直前になって認可させたのは、この試合のためだったんですな・・・・・・・」
「言いがかりは、よしていただきたい。運用テストのタイミングとたまたま重なっただけですよ」
「しかし、オープントップなのに戦車と認めていいんですか?」
「ご覧ください、車体前部従来の操縦手質に加えて、後方には新たに砲手室と装填手室。さらに内部には砲弾の自動装填装置が増設されております。戦車です」
とオープントップのカール自走臼砲を戦車と認めるのは、如何なものかと難色を示すが、辻はカール自走臼砲の改良ポイントを説明して戦車と屁理屈をこねる。
「そんな無茶な・・・・・・・」
「考え方しだいですよ。これぐらいの事をしなければ日本の戦車道は世界と渡り合えないのです。理事長や家元がたの無理押しとも言える働きかけもあり、こうして試合を行う事になりましたが、ご覧ください。あの聳え立つカールの威容、美しくすらある。どうやらこのまま波乱もなく幕切れとなりそうですね。まあ、当然の事ですが今回の件、全てにおいて性急なのはこちらも理解しておりますよ。ですが、素人目にも今の日本戦車道が2年後の世界大会に通用するとは思えません。プロリーグも見据えての選手の育成、そして戦力の補強は急務なのです。もちろん、大洗の生徒たちには災難な事だと思いますよ。それでも国を挙げてのプロジェクト、断行が必要なのです。世界で勝てる強さを手にするため、誰かがこれをやらねばならない」
辻にとって今の日本戦車道は世界と渡り合えない、国家プロジェクトとしてこれは、必要悪なのだ。と言う様な考えだ。
どんぐり小隊では、カール自走臼砲に敵わないとしてギャン泣きする河嶋をはじめ、他にも
「撤退しましょう、会長!」
「ん~~4両で突っ込むか」
「無理です!」
『それはパスタを生で食べるくらい無茶だ!!』
会長も冗談で言ったんだろうが、この戦力でパーシング3両を相手にしながらのカール撃墜は無理で無茶だ。どれくらい無茶かというと鼻でパスタを食べるくらい無理だろう。パスタで無茶といえばこれである。
「撤退しがありません!」
『待ってください!良い考えがあります!!』
と、そこでアヒルチームが声をあげる。はて、私に良い考えがある。と。
「まさか、また戦車の上に乗るのか!?」
桃が全国大会の決勝戦で、八九式がマウスの上に乗った事を思い出してそう言う。
「いいねぇ〜」
「違います」
「カールに上がれる方法ないですから!」
「私達が考えたのは・・・・・・」
「殺人レシーブ作戦です!作戦内容は・・・・・・」
杏が同意するが、あけび、妙子、忍は違うと言い、典子が秘策『殺人レシーブ作戦』を口にする。
「うぅおのれーーっ!」
とそこで、ローズヒップのクルセイダーが自慢の速度で敵陣へ斬り込もうとする。
しかし、その目の前に上空からの砲撃が次々に着弾!
2輌の車体が一瞬浮かび上がる。
「ローズヒップ、戻りなさい」
『おかんむりですわーっ!!』
ローズヒップをすぐに呼び戻すダージリン。
「それ良いね~」
「そうですかぁ〜?」
杏が改めて同意する中、桃は不安を抱きながらそう言う。
「継続ちゃ~ん、聞いてた?ちょっと手伝ってほしいんだけど」
「…………」
ミカ達にもそう呼び掛ける杏だが、ミカは無言でカンテレを鳴らす。
「CV33ではカールを撃ち抜けないだろうね。この作戦に意味があるとは思えない」
「じゃあ、従わないの?」
「しかし、彼女たちの判断を信じよう」
ミッコは操縦手用の窓を開け放ち、視界を確保するとエンジンを吹かす。
「………行くぞ」
そして、ミカがそう言い放つと、BT-42がロケットスタートし、先陣を切る様にカール自走臼砲に向かって突撃するのだった。