【完結】がっこうぐらし!モールスタートめぐねえエンドSランク縛り【MGNEND】   作:月日星夜(木端妖精)

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1000%……初投稿です。



12トゥルーエンディング

 

 正真正銘の最終回、イクゾー(カーン)

 

 由紀ちゃんが動けるようになるくらいまで回復すると、探索が開始されます。

 「彼ら」が燃え尽きて校舎内に動くものはいなくなっているのでシャッターを開けても問題なし。閉塞感を打ち破るために開け放ちましょう。わっしょい! ……地味にダメージが入りました。めぐねえ~火傷がいたいよ~!

 

 めぐねえもめっちゃ痛そうにしてますね。幸いここには「はちみつ」があるので取得して腕に塗りたくりましょう。太郎丸と子供達に要注意! めっちゃ腕を舐められます。…るーちゃんもせーちゃんも怖がって近づいてこないので太郎丸だけが敵ですね。

 

 ここで小ネタ。めぐねえの視界内で民間療法をすると「よく知ってるわね」と褒められます。

 めぐねえに医療系の心得があるのは、保健の先生を目指していた名残らしいですね。説明書の人物紹介に載ってました。

 

 さて、ここでヘリに向かい拳銃と地図を回収すると特定のイベント──たとえばくるみちゃんとみーくんの会話シーン、進学か就学かイベ等を見る事ができますが、取りに行かなくてもエンディングムービー中に勝手に地図を回収してくれますので行きません。

 

 というわけで誰かが鍵を見つけてくれるまで待機……するのは時間の無駄なので、廊下で突っ立ってる子供連中を追いかけて奥の部屋へ追い詰め手伝いをさせます。さりげなく、さりげなくね。るーちゃんイジメてるのバレたらりーさんに刺されるので(1敗)。雑な操作は100倍になって返ってくるからね……。

 

「ゆい先輩っ、二人とも怖がってるから!」

 

 けーちゃんにぐいっと腕を引かれて止められましたが、すでに任務完了したので問題ないですね。なにももんだいはない。

 そうそう、お水を飲んで空腹値を補っておきましょう。よっぽどゆきちゃんが美味しかったのか半分以上回復してましたが念のため。

 

 精神値は太郎丸をとっ捕まえて全力でもふる事で補います。今日はお前がわふわふされる日だぞ。

 わふわふわふ……。完了! おっと、腕は舐めさせないぞ。

 

「信じてると言った手前、どうすれば……」

 

 離れたところでぶつぶつ言ってるみーくんは……放置でいいね。

 というか動こうとするたびけーちゃんに腕を引かれて止められるようになりました。るーちゃんとせーちゃんを追う姿がよっぽどホラーだったんやろなあ……。なに? お腹空いてないかって? とくには。

 

「車の鍵があったわ。といっても、無事じゃないでしょうけど……」

 

 お、りーさんが見つけてくれたようですね。これだけ人がいると早いなあ。

 さっそくりーさんから鍵を貰い、外へ向かいます。するとみんなついて来て囲まれるのでぶつかったりしないよう動きましょう。

 校舎から離れた来客用の駐車場に向かい、ドアを開けて中へ入ればフィニッシュ!

 

 全員が車に乗ってわちゃわちゃするムービーをスキップし、街の中へ走っていくワンボックスカーの一枚絵が表示されれば……。

 

 

【おわり】

 

 

 お、お、お、終わったぁ~~~~~~!!

 

 何勘違いしているんだ? まだ私のRTAは終了してないぜ!

 街へ出ると自由に探索できるフリーシナリオモードが解放されるので、教会へ直行します。

 

 この場所でめぐねえエンドを迎えれば真のエンディングとなります。

 そのムービーもスキップし……スチルが表示されれば……。

 

 終 了 !

 

 グランドS! 今までのリザルトに労われ、この感動を噛みしめるのだ……!!

 

 

 

 

 

 地獄と化したこの世界にも、希望はある。

 私は、それを学園生活部で知った。

 ……たとえ学校が壊れようとも、部室が無くなろうとも、希望は潰えないということも。

 

「おわかれなんだよ、学校と」

 

 警報も消え、雨も上がり、「彼ら」の姿もない来賓用玄関前。

 白杖で体を支える……腕を包帯で覆った痛々しい姿の由紀先輩が校舎を仰ぎ見ながら、変わらない笑顔でそう言った。

 ゆっくりとして落ち着いた声音とは裏腹に輝かんばかりの笑顔なのは、その怪我を、その原因を私達に気にさせないためなのだろうか。

 

 その気遣いがわかっていても……由紀先輩は、優衣先輩が怖くないのかと聞いてしまいたくなる。

 だって……彼女は、喰われたのだ。その身を……異質な怪物である「彼ら」ではなく、同じ人間である千翼優衣に。

 それなのに由紀先輩は、まるで十年来の友人であるかのように優衣先輩に話しかけていた。どちらかといえば優衣先輩の方が怖がっているようだった。

 

「つまりは、卒業だね!」

 

 ぱっとこちらを振り返った由紀先輩のそれは……あんまりピンとこない言葉だった。私達にとって1年先の行事であることもあるし、それ以前にこんな世界じゃ卒業式など行われることはないだろうから。

 ただ、私が何も言わないでいると困ったようにはにかむ由紀先輩を見たら、なんとなくその意味が胸に染み込んでくるような気がした。

 

 卒業、か。

 ……地下室の奥の部屋の、天井から垂れるロープが作る輪を思い出すと、あまりポジティブな意味で捉えられなくなってしまう。

 世界が完全に死んでしまう前に耐え切れなくなって"卒業"を選ぶ人もいる。それだけの話だと、割り切るほかない。

 そして、私達は決してそうはならないと言い切ろう。

 

 ……生活の場である学校は壊れてしまったが、未来が暗い訳ではない。

 「彼ら」に噛まれてしまったくるみ先輩は案外元気にしているし、墜落したヘリとは離れた場所にとめてあった車は傷一つなく、全員と一匹を乗せてまだ余裕があるくらい。食料や医薬品はあの避難区域にたくさんあって、車に積み込むのも一苦労なほどだ。

 私も最初はダンボールを運ぶのを手伝っていたのだけど、交代して休憩がてら由紀先輩の傍にいるよう言われた。

 

 その由紀先輩だってすこぶる元気で、腕まくりをして作業を手伝おうとするから止めなければならなかった。腕の傷も足の捻挫も治っていないのに元気すぎる。車の中に備えてあった折り畳み式の杖が無ければ、支えていないと一人で歩けもしないのに。

 

 ……その究極の前向きさが、優衣先輩を救ったのだろう。

 

 ひどい異常を抱えている優衣先輩も、危惧していたような排除の動きは誰にもなく……先程由紀先輩に問いかけようと思っていてなんだが、不思議と私には……きっと、圭にも、みんなにも……恐怖心というものはなかった。

 ……それはやはり、由紀先輩がけろりとしているから、なのだろう。

 

 口元を赤く汚した優衣先輩の姿には肝が冷えたが……やっぱり、なぜだか受け入れられてしまう。

 

 

 怯えを見せていた子供達も、優衣先輩がおどおどしているといつの間にか傍に寄っていて、蹴りを入れたり腕を引っ張ったりして果敢に挑んでいた。ちょっとスキンシップが過剰な気がするが……そういう時は主にりーさんが止めているから、心配はいらないだろう。優衣先輩も、戸惑いながらも嬉しそうに──複雑な表情ではあれど──していた。

 

 ……あんなにわかりやすい表情をするようになったのはいつからなのだろう。人形のように変わらない顔が、子供達と同じ年代のようにころころと変わっている。

 ……3階ではぐれるまではそうじゃなかった。常に感情の無い顔が正面を向いているか、困ったような顔をするのみだったのに、地下で合流した時には強い悲哀の表情を持っていた。

 

 何が要因かとするならば、それはやはり由紀先輩か。

 

 どういったやりとりがあったのかは聞いていないけれど、憶測はできる。

 由紀先輩が受け入れたから、優衣先輩は変わった。

 

 ……私達が数日かけてもできなかったことを、顔を合わせてほんの数時間ばかりの由紀先輩が成し遂げた事に、嫉妬に似た何かを抱いてしまう。

 ……変えようとしなかったのは私なのに。触れる事を恐れていたのは、私なのに。

 だから私の言葉は響かなかった。

 

 ……そういう風に考える一方で、ただ単純に由紀先輩と優衣先輩の相性が良かったからなんじゃないかとも感じた。

 

「みーくんは、……けほっ。次の行き先はどこだと思う?」

「私ですか? そうですね……」

 

 そっと横へ来た由紀先輩の問いかけに、先程まで車でしていた会話を思い返す。

 鎮火したヘリからみつけた、この街の地図。

 思わせぶりにつけられた印が二つ。一つは「ランダルコーポレーション」に。一つは「聖イシドロス大学」に。

 

「大学じゃないでしょうか」

「やっぱりそうだよね! わたしもそう思う! じゃあさ、じゃあまた……こほっ、んんっ……学校暮らしになるのかな?」

「かも、しれませんね」

 

 ……「そうなるといい」と思いつつも、不安はある。そこに生きている人々がいたら。私達と……相容れなかったら。

 いや、確実に受け入れられることはないだろう。普通はそうだ。それが当たり前だ。

 頭を振る。今考えるべきことではあるけど、これは今考えるべきことじゃない。

 今は……そう、由紀先輩だ。先程から咳が出ている。一言かけてから、車から水を取ってきた。

 

「先輩、大丈夫ですか? これを」

「みーくんありがとー」

 

 喉を擦る由紀先輩にペットボトルを差し出すと、ふにゃっとした笑顔で受け取ってすぐ、口をつけて背を反らしてまで飲み始めた。かなり喉が渇いていたようだ。

 

 ……燃える校舎の中を歩いて来たのだから当然か。シェルターでも飲んでいたようにみえたけど、足りなかったのだろう。あるいは、煙に喉がやられてしまったのかもしれない。私達もハンカチである程度防いでいたとはいえ、喉に違和感があるくらいだし……その余裕がなかった由紀先輩や優衣先輩はよっぽどだろう。……その割には優衣先輩はけろっとしているけど。代わりのように、めぐねえがけほこほと咳込んでいた。

 

「由紀先輩、無理はしないでくださいね。体調を崩したりしたら、困るのは先輩だけじゃないんですから」

「へへ、ごみん」

 

 あえて厳しめの言葉で伝えると、けほ、と誤魔化すように咳をして、由紀先輩はもう一度校舎を見上げた。

 

「どんなところかなー、大学!」

 

 横顔を窺う。

 近い未来に思いを馳せる言葉は、誤魔化しやなんかじゃなく、その目は希望に輝いていた。

 自分の中で膨れ上がる違和感を我慢できなくなる。

 

「由紀先輩は、優衣先輩が怖くないんですか?」

「え?」

 

 結局聞いてしまった……。虚をつかれたような顔を向けられて後悔が過ぎるも、一度出してしまった言葉は戻せない。もう一度同じ言葉で問いかける。

 

「みーくんは、こわい?」

「っ」

 

 問い返されて、心臓が跳ねる。

 それは……そんなはずは……。

 

 否と答えたくても声が出ない。

 だって、五感の全てが警鐘を鳴らしている。体中が、優衣先輩を怖いと、気味が悪いと、近づきたくないと訴えている。無いと断じていたはずの感情が際限なく湧き出てきてしまう。

 人を食べるだなんて「彼ら」と同じだ。下手に受け入れられている分なおさらたちが悪い。

 そんなものを抱えていては他のコミュニティと出会った時、拒絶される可能性が高まる。私達が生きるためには、優衣先輩を──。

 

「わたしは全然。だってゆいちゃん、わたしのこと助けてくれたし」

「……」

 

 一度始まると止まらない思考の流れが断ち切られる。

 なんでもないことのように言う由紀先輩が信じられない。

 

「助けられたから、助けた。それだけだよ、みーくん。人間支え合いだよ!」

 

 えへん、と腰に手を当てて無意味に威張る由紀先輩は、そのままバランスを崩して倒れそうになったので支えた。

 ──……。

 

「ね?」

 

 どこまでも悪意の欠片もないだらしなくてヘンな笑顔に、悩んでいるのが馬鹿らしくなってきてしまった。

 優衣先輩を信じる。その異常性は怖いけど、それはそれとして……信じたいから、信じる。

 それでいいじゃないか、なんて……。

 

「はぁ」

「あ、みーくん溜め息ついた!」

 

 何か勘違いして膨れ始める先輩をしっかり立たせて、車の方へ視線を向ける。

 白く大きな車体の傍にちょこんと立つ、小さな黒い影。

 くるみ先輩と何事か話しているようで妙な緊張に身を固くしてしまったが、どうにも談笑といった様子だった。

 

「そろそろ準備も終わるみたいですし、行きましょうか」

「そうだね」

 

 積み込み作業も一段落して、今は休憩しているみたいだった。圭がこちらに駆けてきている。

 

 校舎を見上げる。

 

 半壊した建物は、それでもどっしりとこの地に根付いて、私達の日常の象徴としてあった。

 

 

 

 

「るーちゃんはもう死んでるの」

 

 

 私達の予想に反して、次に辿り着いた場所は教会だった。

 夜がきて、休憩できる場所を探していて、たまたま目に入った場所がここだった。

 

 警戒しつつ侵入すると、中は案外綺麗に保たれていて、されど人の気配はなく、「彼ら」の姿もなかった。

 並ぶ長椅子に乱れはなく、仰いだステンドグラス……二羽の鳥の絵も罅一つ入ってない。

 それだけに人の痕跡がないのが不気味だった。

 

 探索を終え、本当にここが安全だとわかって緩んだ空気が広がると、ここを拠点とすることをめぐねえが宣言し、夕食の準備にあたる人間以外は各々好きな時間を過ごし始めた。

 

 古びたにおいのする教会は厳かでありながらもどこか恐怖心をあおるつくりになっているような気がして、神父の化け物でも現れやしないかとホラー的な思考に流れながらも、端の方でかけっこをする子供達をぼんやりと眺めていると、近くの椅子の背から不穏な言葉が聞こえてきた。

 

 長椅子に腰かけるりーさんが、今の声の主で間違いないようだ。

 彼女は薄く開いた目を膝に乗せた本……カバーが外された漫画らしきものに向けていた。

 

「この本によるとね」

 

 それを閉じたりーさんが横を見る。……あ、優衣先輩。小さくて気付かなかったが、隣に座る優衣先輩に話しかけていたらしい。

 盗み聞きのような形になってしまった。なんとなく気まずくなってその場を離れようと思ったが、なんの話をしているのかという興味が勝って留まる。

 るーちゃん……りーさんの妹なら、そこで元気に駆けまわっているように見えるのだが……死んでいるとはどういうことだろう。

 

「でも現実はそうじゃない。この私は手を離してしまったようだけど、私は離さなかった。その違いがある」

 

 話の内容は理解できずとも、二人の間で通じていることだけはわかる。

 

「ねぇ。この世界も、私も、あなたたちも。全てが偽りのものだったのよ」

「ぅ……」

「……なんてね。ふふ、ごめんね。おどかすつもりじゃなかったんだけど……つまりはね、関係ないの。どうだっていいのよ、そんなことは」

「?」

「大事なのは、自分がどう感じるか……でしょ? 優衣ちゃんは……みんなが受け入れてくれること、受け入れられない?」

 

 間をおいてふるふると頭を振る優衣先輩に、ああ、そういう話をしているのかと理解した。

 学校を出る前もそうだったけど、優衣先輩は一人一人に話を聞いて回っているみたいだった。どうしてみんな平気に自分と接しているのか、と。

 その中の一つ、なのだろう。だったらなおさら盗み聞きするような真似はするべきじゃなかった。

 

「決して悲観的にならないで。諦めないで。自分達の力で未来を切り開きましょう? ……ね」

「……うん。……ありがとう、りーさん」

「どういたしまして。さ、配膳くらいは手伝わないとね」

 

 立ち上がるりーさん達に、慌てて近くの椅子に腰を下ろして息を潜めてしまった。

 こちらには気付かないまま料理をしているめぐねえ達のもとに向かうのを見送って、ほっと溜息を吐く。

 それから、なんとなく彼女達の座っていた場所を覗いてみて──本が置かれているのを見つけた。

 

 ブルーが主体の、2人の人物が描かれた表紙。

 気のせいでなければ、それは私と由紀先輩──

 

「みき」

「っ!」

 

 表紙を捲ろうと摘まんだところで声がかかって、肩が跳ねた。優衣先輩だ。

 金色の瞳をまっすぐ私に突き刺して、「……ちゃん」だいぶん遅れて敬称をつけるのに、距離感をはかっているのだと察した。

 

「美紀でいいです。……みーくんでも構いませんけど」

「みーくん。あのね」

 

 あ、やっぱりだ。

 ちょこちょこと寄ってきた先輩は、やっぱり由紀先輩に雰囲気が似ていた。

 姿はめぐねえに似ているのに、どうしてそう感じるのだろう。

 無機質にも思えた丸い瞳が、顔の傾きに合わせて揺れたり、細められたりしている。そこにはやはり感情があった。

 

「みーくんの、こと、食べたいっ……て、いったら、こわい?」

「え、怖くは……いえ、怖いですよ。それは」

「……だよね」

 

 突拍子もない……訳ではない問いかけに咄嗟に否定しないよう答えかけてしまったが、それでは何も変わらないと思い、言い直す。

 今優衣先輩に必要なのは、理由のない受容ではなく、私達の気持ちそのものだろうから。

 

「わたしも、こわい。……また傷つけちゃわないか、こわい」

「それは」

 

 そうでしょうね。なんてわかったような答え方をしてしまいそうになって、なんとか言葉を飲み込む。

 私にはその気持ちはわからない。想像はできるけど……我慢できないほどの人への食欲や、本当に食べてしまったことへの後悔も、彼女にとっては細い針の上に立っているかのような現状への不安も……。

 

「その時は、その時です。きっとなんとかなります」

「……」

 

 無責任な励ましと思われただろうか。

 困ったような顔をする優衣先輩に、緩く首を振って見せる。

 

「それでも不安に思うなら、はっきり言わせてもらいますけど。もう優衣先輩にそんなことはさせません」

「……」

 

 カーディガンの裾を掴む先輩の手がにじにじと動くのを見下ろしながら、続ける。

 

「止めますから。私が……私達が」

 

 これは、信頼だ。

 優衣先輩を信用とするのと同じく、私はみんなを信じている。

 たとえまた優衣先輩が人を食べたくなっても、彼女が後悔しないように止めるし、代わりに欲を満たせる方法を考える。

 

「……あり、がと。みーくん」

「いえ」

 

 そっと近づいてきた優衣先輩が、非常にゆっくりとした動きで私へと手を伸ばし、手を包んできた。

 やわやわと握るその動作は……。

 あんまりにも気恥ずかしくて顔に熱が生まれるのを感じる。

 

 お礼なんて必要ない。だってこれは、当然の話だから。

 部員はいついかなる時も互いに助けあい、支えあい、楽しい学園生活を送るべし。

 ……学園生活部第四条。私達の共同体の掲げる信条。

 

 トトトッと離れて行った優衣先輩の次の目的は、どうやら圭のようだった。

 どのような話をするのか気になるけど、私が聞くべきではないだろうから……私も配膳を手伝うとしようかな。

 

 椅子の方を見る。

 りーさんが持っていた本は変わらずそこに置いてあって……けれど、もう興味はなかった。

 なぜなら──

 

「ゆい先輩は死んだんだよ!」

 

 ぎょっとして圭の方を見る。子供達も足を止めて、不穏な言葉を大声で口にした圭に注目していた。

 視線を集めているのを知ってか知らずか、圭は優衣先輩の腕を取ると天井の端を指さし見上げて、「そして生まれ変わったんだよ! 新しいゆい先輩に!」というよくわからない……いや、本当にわからない、おそらくは励ましだろう言葉を贈っていた。

 

 

 

 

「ええ。ずっと一緒よ、優衣ちゃん」

「めぐねえ……」

 

 ちょうど、ステンドグラスを通して月の光が差し込む教会の中で、向かい合い誓う二人。

 食事を終え、交代で見張りをしながら一息入れていると、いつの間にかめぐねえと優衣先輩はただならぬ雰囲気になっていた。

 

「これ。受け取ってもらえる?」

「……。……うん」

 

 どのようなやり取りがあったかはわからない。

 でも、クロスにかけていた指輪を──四色の宝石がきらめくそれに紐を通して優衣先輩の首にかける姿からは、侵しがたいものを感じた。

 

「じゃあ、やくそく……してくれる?」

「そうね。約束……」

 

 小指どうしを絡ませた彼女達は、小さく歌いながら、なにか大事な……約束をしたようだった。

 

 

「ほら、そんなとこでぼーっとしてると風邪引くぞ」

 

 車に背を預けて空を見上げていると、両手にマグカップを持ったくるみ先輩がやって来てその片方を手渡された。

 

「あ、ありがとうございます」

「なんか悩んでるみたいだったけど、気のせい?」

「いえ、その……」

「優衣のことだったりする?」

 

 言いつつも、確信しているのだろう。というより、今その事で悩んでいない人はいないんじゃないか。

 ……と思ったが、かすかな笑みをたたえたくるみ先輩は、特に悩みや何かは持っていないみたいだった。

 

「いいんじゃない」

 

 空を見上げる先輩につられて、私も空を見る。

 地上の惨状なんて何も関係ないとばかりに輝く星たちは、変わらない光を保っていた。

 

「悩み続けるってのも、いいと思うよ」

「……」

 

 でも。

 答えを出してあげた方が楽になれるんじゃないでしょうか。

 

 だって。

 悩み続けたって、答えなんて出ないかもしれないじゃないですか。

 

 そんな。

 ……簡単な話じゃないんです。それじゃだめなんです。

 

 いくつか胸の中に浮かんだ言葉は、どれも表には出てこなかった。

 くるみ先輩の言う通りだとも思うし、そうじゃないとも思う。

 

 答えなんて場面場面で変わってくるものだから、私達はひたすら明日を目指して生き足掻けばいい。

 開き直りだけど……今この現実と向き合うのには、そういう考え方の方が良いのだと思う。

 

「あたしたち……ずっと友達だよな」

「きっと、そうですよ」

 

 反射で答えてしまったが、その言葉に嘘はない、けど、少し驚いた。今のはたぶん、先輩の弱音だったと思うから。

 

 今、たしかに私達は不安定で、いつ崩れるともしれない足場の上に立っているけど。

 それでも今が一番安定していて、みんな笑える余裕があって……だから、この状態がずっと続けばいい、と。

 その関係性を言い表すには、「友達」が一番近かったのかな。

 

「わり、友達は嫌だったか?」

「……どうでしょう? 先輩は先輩ですし」

「後輩は生意気、と」

 

 つんと額を突かれて、それから、なんとなく笑い合う。

 あまりにも濃い時間を過ごすと、お互いの関係性を表す言葉が見つからなくなる。

 それがなんだかおかしかった。

 

 

 

 先へ進む。

 今の関係性から、その先へと。

 先へ進みたいと、強く願う。

 その時間を作るために……生きるために、私達は互いに支え合う。

 たとえ世界が終わっていたとしても、誰かが挫けようとも決して見捨てないだろう。

 

 

 人類はこれまで幾度となく災禍に見舞われてきた。

 でもそのたびに再び歩み始めてきたんだ。力強く、希望を捨てず。

 

 身近にも、そうやって動き続けてきた人がいることを、私は知っている。

 

 だからきっと、心配することなんてないのだろう。

 未来は、暗くなんてないのだから。

 

 

 

 

【つづく】

 

 




TIPS
・単行本
ゲーム内アイテム、漫画「がっこうぐらし!」は細々としたアップデートに合わせて最終巻まで実装されている。
どの巻を読ませても人物の反応は変わらないので長らく単なる精神値調整用アイテムだと思われていたが、万が一人物が耐えきった時やそのような状況になった時、得てしまった知識に基づいた行動をし始めることが最近になってわかった。

ヘリが落ちる事はわかっていた。だからみんなに避難を促した。
「彼ら」の習性は知っていた。だから玄関付近のバリケードを強固なものにした。
解決法を知っていた。けれど浄化槽の水はなんの効果ももたらさず絶望に苛まれた。


・約束の指輪
母から妹へ、そして優衣へ受け継がれるはずだった指輪。
幸せになって欲しいという一つの願いがこめられている。


・感染
「彼ら」に噛まれる、空気感染するなどした場合、咳や体調不良によって
その予兆が現れ、警告する
病院等にある薬によって感染状態を解除できる



あとは完走した感想書いて、おわりっ!
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