【完結】がっこうぐらし!モールスタートめぐねえエンドSランク縛り【MGNEND】   作:月日星夜(木端妖精)

4 / 13
私達はこれからも挑戦を続ける。
作品の壁を越え、チャートを作る。
その走りはやがて、世界(WR)を変える!!

通りすがりなので初投稿です。



4太郎丸と合流~そして伝説へ

 

 おはよーございまーす! 朝でーす!

 

 前回かなり上手くいったのでるんるん気分で起きようと思ったのですが、瑠璃と星夜に両脇をがっちり固められて起きれませんね……。こうなると優衣ちゃんは身を捩ったって抜け出せません。小学二年生に負ける高校三年生とは……。

 

 仕方がないのでぼーっと天井でも見上げてましょう。視聴者さんのために倍速です。あ、噛み噛みされとる。せーちゃんは噛み癖でもあるんですかね? 感染……してません?

 苦悶の表情を浮かべながらも振り払う素振りすらみせない優衣ちゃんは優しいのかなんなのか。寝息の中に痛みをこらえる吐息が混じってああ^~たまらねぇぜ。

 

 ようやく全員起き出しました。パジャマはないのでみんな肌着姿。眼福です。はっ、ノンケになってる……!? 元からノンケでした。当たり前だよなぁ?

 せーちゃんも髪を梳いたりなどして普通に身嗜みを整えてます。変な筋は走ってないし、目も濁ってない。咳もしてない。うん、OK!

 

「っ」

 

 なんとなく指を差し出してみたら噛まれました。怪獣!!

 ところで今さら気付いたんですけど、一晩寝たのに精神値回復するどころか削れてますね。なんで?

 ……接触恐怖症のせいですね! 忘れてたね!

 

 

 

LEVEL UP

 

LEVEL UP

 

 

 4日目の朝を無事に迎えたのでレベルアップしました。学校で多数「彼ら」を始末したのと、鬼ごっこの経験値報酬ですね。評価はS。SSSS.ダリオマン。

 ステータス割り振りましょう。精神……んー、精神は……不安だし欲しいけど、きららチャンスで上がる事もあるし、そっちに頼って……俊敏に4振り、「物持ち名人」と「カウンター」を取ります。

 

 「物持ち名人」は筋力に関わらず両手で物を持った時にバランスが崩れにくくなり、さらに使用する武器や道具の耐久値が減りにくくなる良スキル。両手持ちの武器等にも適用されるのでそうしたプレイ方針ならば重宝するでしょう。

 緊急回避用のボールペンも対象に含まれます。発動すると壊れるのは確定に思えますが、「カウンター」に限りほんの僅かに耐久値が残るらしく、2回使用できる仕様(激うまギャグ)になっているのです。

 

 基本的に緊急回避を2回発動してしまうと評価Sに届かなくなってしまうので、危なくなったら「カウンター」で積極的に狩ってしまおうという魂胆です。ガバに反応できるかといえば……ナオキです……。

 

 

 さて、朝ご飯の時間ですが、ここで冷凍庫から魚を取り出した圭が電源が落ちている事に気付きます。コンセントを確認してみてもしっかり挿さっていて、元が駄目になっていると理解します。ドゥーン(精神値の削れる音)

 

「どうしよう……」

 

 どうもこうもないので自家発電できるランプや懐中電灯、ろうそく等を搔き集めてきましょう。その魚は捨てちゃいなさい。「ちょっと常温に晒したくらいなら大丈夫」で食べて食中毒にでもなったら死ぬしかありません。本ゲーム史上もっともしょうもない死亡シーンになります。……トイレの扉を背景に「you die」とか言われた人間の気持ち、考えたことあるかよ?

 

「ゆい先輩……そうだよね、落ちこんでなんかいられない。この子達も来たんだし!」

 

 けーちゃんのポジティブさが眩しい。おでこも眩しい!

 

 今日から節目である7日目、それ以降の学園生活部が来るまでにやることはさほどありません。

 通常プレイならば探索してイベントを起こして、とモールを存分に楽しむことができますが、このチャートでは必要な物資が集まったらすぐに寝て日数を進めてしまいます。

 

 ここまで好タイムなのでさらに安定を求めたいですが、学園生活部が来るタイミングでホールに出ておくのもいいかもしれませんね……走者の熱き魂がそうした方が良いと囁いてますし、偉大なるbiim兄貴も本走中に思い付きで行動するのもありだぜとおっしゃっております。

 

 というわけでさっさと外に行ってパパッとやって終わり! としたいところですが、「ちょっといいですか」とみーくん。

 

「一晩経ってるので安全とは思いますが、この子達の身体検査をした方が良いんじゃないかと思うんです」

 

 そうね。本来は昨日のうちにやるべきだったんだろうけど、きっとみーくんも言い出せなかったんやろなあ……。

 よろしい。私も見たいので──いえ、こんなことでみーくんの好感度を半減させたくないので、気は引けますがるーちゃんとせーちゃんにはマッパになってもらいます。

 

 オラ脱げぇ!! 見ててやるから……チラッ、チラッチラッ。

 嘘です。優衣ちゃんは大体あらぬ方向を向かせておいて、四人を視界にいれないようにしておきます。

 

 というのも、人数が増えたせいでまともに顔を合わせていると精神値はともかく空腹値が凄い勢いで削れていくようになりました。あんまり空腹値を底につかせるのを繰り返していると、優衣ちゃんが「彼ら」よろしく人を襲い始めるので注意が必要です。操作不能状態とかやってらんないよ。

 

 しかし優衣ちゃんはその性格から人と目を合わせるのが苦手で、勝手に生存者を視界の外に追いやってくれます。偶然の産物ですがいいシナジーを生んでますねぇ!

 

「……良かった。二人とも大丈夫みたいですね」

 

 身体検査が終わり、みーくんが安堵してます。よかったね。

 でも怪我してなくても空気感染するんですよね、初見さん。

 

 人数と確率のマジックでだいたい一人は空気感染で乙るゲーム、それががっこうぐらし。誰もやられてないのに抗生物質が必要になるなんて私聞いてない!

 

 もちろん生存人数が少なければ空気感染している確率も下がるので薬が必要な事態にはならなかった兄貴姉貴も多いんじゃないでしょうか。プレイヤーの数だけドラマが生まれるのもこのゲームの面白さだと思います。

 

 さて、今日も今日とて朝食はシリアルと水! 水かければふやけるしちょっとは甘くなるんじゃないですかね? みーくんとけーちゃんはそのままサクサク食べてますけど。

 

 けーちゃんが明るく話題を振ってくれるので「食料の不足」で精神値が削れるような事はありません。助かるなぁ。

 ただ、ここなら普通の、あるいは豪華な食事ができると考えていたのかせーちゃんは露骨に期待外れだって顔をしてますし、るーちゃんだって手の進みが遅いですね。昨日の夕食が豪勢だっただけに余計に貧相なのが堪えてるのかも。

 

 探索に出発できるようになったら、まず個室でサバイバルナイフを洗い、拭きます。汚したままだと耐久値があっという間に溶けていくので手入れは肝要。水洗いするだけなので焼け石に水ですけども。

 それからるーちゃんとせーちゃんに待機をお願いします。勝手に出歩かないでね、危ないから。

 

「……」

 

 ぷい、とそっぽを向かれてしまいました。あれっ? 好感度足りてない?

 るーちゃんがせーちゃんの服の裾をつまみながらこくこく頷いてくれたので、一応楔は打ち込めたと思っておきましょうか。

 

 さて、みーくんディフェンスのお時間です。

 

「千翼先輩、気を付けてくださいね!」

 

 あっさり引いてくれました。あっ、ふーん……(察し)。

 この子勝手についてくる気満々ですね。

 それがわかっていても今何を言っても証拠がないのでやめさせられないという仕様……悲しいなあ。

 何が楽しくて「彼ら」が徘徊する外へ出ようとするんですかね?

 

「行ってきます」

「行ってらっしゃい、ゆい先輩! お土産期待してます!」

「……」

 

 いつもは心配そうにしているけーちゃんも満面の笑み。数え役満ですね(意味はわかってない)。

 けーちゃんまでついてくるとかこの世の地獄か? 二人いっぺんに死にたいのか?

 ここまでなかなか良いプレイができていたのにここに来ての乱数敗北、頭にきますよ。

 

 手を振って見送ってくれるるーちゃんに癒されつつも、ややプレイが乱れて廊下に出てすぐ転んでしまいました。うーん……冷静を保たないとですね、反省反省!

 

 ちょっとダメージを受けてしまいましたが、コラテラルダメージ(?)というやつです。気にせず探索に出ましょう! 最良なのは彼女達が現れるまでに部屋に戻ってしまうことですが、出てくる時間はランダムなうえ、いつついて来ているのかもわからない隠密性を発揮してくれるのでタイミングが読めません。やめてくれよ……(懇願)。

 

 今回向かうのは本屋と電気系、食品売り場。前者は二つともこの5階にあるのでちゃちゃっと向かいます。

 前回訪れた小学校ほどではないですが薄暗くなっていて、気のせいでもなく「彼ら」の数が増えているので不意打ちに気を付けていきましょう。曲がり角や商品棚の影などでぼうっとしているようないやらしい配置が多いんですよね。

 

 まずは自分用の懐中電灯、拠点用の「ランプ」と「接続式手回し充電器」を入手。小物よりも「彼ら」を誘導しやすい「サイリウム」を5本入手。お代は結構!

 るーちゃん、せーちゃん用に防犯ブザーを入手。けーちゃんを部屋に封じ込める「CD」を入手。

 

 む、「彼ら」の唸り声が近いですね……棚に張り付いて、コンコンと傍をノックしてこちらに反応させ、サイリウムを投げて誘導。今のうちに電気店を出ましょう。

 

 続いて本屋へやってきました。

 ここで入手するのはバッドエンド鑑賞用SAN値直葬アイテム「がっこうぐらし!」。りーさん調整用です。

 「スタジオぐらし!」ではなく「がっこうぐらし!」。その意味が分かりますね?

 

 主人公含め誰もが読むことができ、ページを捲るごとに精神値が10ずつ削られていきます。

 『わたしたちって、本当はいないの……?』『なんですか、これ。なんなんですか……なんなんですか……』『なんだよこれっ!! 悪い冗談だって言ってくれよ……なあ、頼むから!!』『……。…………。………………。』

 

 読ませた時の反応はみんな違ってみんないい。めぐねえに読ませると何ページ読んだかに関わらず本と一緒に焼身自殺するので絶対に見せないでおきましょう。

 

 他人に押し付けて精神値を調整する用のアイテムですが、自分が読んでなきゃ内容の説明もできないので優衣ちゃんにも読ませます。自分は登場してないから安心ですね! なお減少値は他と変わらない模様。

 読むとしばらく前後不覚に陥るので、その前にみーくんを部屋に封印するための「教科書」を入手。安全な場所で「がっこうぐらし!」を使用します。

 

「……? ……!?」

 

 とりあえず1ページ捲りました。これだけでなぜか数十ページ分の情報を得た優衣ちゃんの顔色が見てわかるくらい真っ青になります。はいここまで! 終了!

 

「な、なに、これ……」

 

 アーハキソ。吐きました。汚い。

 精神値のグラフィックが流動し点滅するものになり、視界から得られる情報が絵画じみたものに変わります。狂気の世界。レイヤーズオブフィアーみたいだぁ。そんなに似てないね。

 本来なら正常になるまで休むところですが、時間も押してるので急いで1階に移動します。ぐにゃぐにゃ。

 

「先輩!」

「大丈夫!?」

 

 うっそだろお前w

 

 あ! 圭と美紀が飛び出してきた! このタイミングで来るとかある???

 あっダメダメダメその棚の影に放置してたアンブッシュ系「彼ら」がアッアッアッ……。

 

「っ!」

「美紀!?」

 

 アンブッシュゾンビ君迫真のみーくん踊り食いです。何してくれちゃってんの!?

 馬鹿野郎お前そんなことしたらあっという間にみーくん感染しちゃうでしょうよ!?

 主人公ならいくら噛まれようが引っかかれようがダメージとバステで済むんだよおらぁ! こっち来いやぁあたいが相手さ!!(スケバン)

 

 そしてここからが私の腕の見せ所です。見せ所さん!?

 まずみーくんに対して組み付きを行います。アンブッシュ大統領に対してでないのは、クソザコナメクジである優衣ちゃんでは振り払われる確率×組み付いたまま強引に動かれる=800万失敗パワーでこの状況だと確実にみーくんが噛まれてしまうからです。

 

 なので、みーくんの方に組み付いて「彼ら」に背中を晒す必要があったんですね。

 

「ひっ!」

 

 はい、噛まれました。がっつり肩やられてますね。みーくんの青褪めた顔がそそるぜ~~。

 優衣ちゃんの形容しがたいトロ顔はみーくんには見えませんが、みーくんの肩越しに目撃したけーちゃんの精神値がゴリッと削られました。優衣ちゃんの体力もゴリッと削られますよ~。チッ、もやしが!

 でも大丈夫! 難易度ベリーハードなので、そういうトラップでもない限り一撃で死ぬことは……死に……死にましたね……。無慈悲な「you die」の表示と曇った画面の向こうで貪られている優衣ちゃんが見えます。あれぇ?

 

 おかしいですね、いくら貧乳クソまな板の優衣ちゃんでもこの難易度で即死はありえないはずなのですが……。

 

 ──ちょっとダメージを受けてしまいましたが、コラテラルダメージ(?)というやつです。気にせず探索に出ましょう!

 

 あっ、これかあ!

 

 体力が満タンの状態ならガードブーストが働き、ダメージを抑えられるんですね。

 反対に言えば、ちょっとでもHPが削られていると思った以上に削られてしまってよくよく計算が狂います。

 

 コンテニューしてクリアしたところで強制的にAランク以下にされてしまうのでリセットです。このチャプターの最初からやり直しましょう。QTE成功してればそんな必要もなかったんですけどね。あーガバガバガバガバ。なんのための「カウンター」? そのための「物持ち上手」?

 自動セーブ挟まる前でよかったね!

 

 とれじゃ、そろそろ気を取り直していくわよ~イクイク。

 ファッ!? アンブッシュ=「彼ら」しゃん場所変わってるぅ!?

 ウーン……"死"。

 

 ……はい。

 いや、違うんですよ。やり直しをすると一部の自由移動する敵の位置が初期位置から変わってしまうっていうのを視聴者さんにもわかりやすく見せてあげようというですね、私の心遣い……素敵でしょ?

 

 あまりにもあんまりなプレイで前チャプターで稼いだタイムがおじゃんになりました。頭おかちなるでほまーに。みんなも急な後輩襲来には気を付けよう!

 

 というわけで再び本屋までやってきまして、必要なアイテムは回収しました。「がっこうぐらし!」を読むタイミングは「彼ら」のいない籠城部屋前まで戻ってからでいいね。最初からそうすればよかったよ。

 

 やや場所が変わって通路ど真ん中にいるアンブッシュ「彼ら」を腹いせに札害してから1階に行きます。暴力暴力! 優衣ちゃんも世紀末に染まってますね……。2階からホールへ飛び降り「彼ら」を踏み潰してクッションにし短縮、物音に振り返る「彼ら」の視線から逃れるために柱の影に滑り込んでサイリウムを投擲し、視線を誘導してから歩いて食品売り場へ向かいます。これ普通に階段下りてきた方が速かった気がしますね。サイリウムも無駄に使ってしまいました。まあいいや。

 

 がば飲みクリームソーダ見つからないかなと期待しながらドリンクコーナーを見てみましたがありませんね。子供達用にジュースを持って行きましょう。あっ牛乳……いや、もうだめでしょうね……さっさと持って行ってあげるべきだったかな。そうでもないか。

 

 B1Fの方の食品売り場の方が「缶詰」等良いものが多いのですが、痕跡を発見したりぶっきらぼうな女性の遺体とかち合ったりしてしまうので行きません。用があるのは太郎丸だけですしね。

 食糧を手当たり次第に詰め込み、犬用のささみ等も集めてからシャッター前へ行き、鳴きます。

 わおーん(声だけ迫真)

 

「わぉー……ん」

 

 

 トタタタッと足音が聞こえ、シャッターをくぐって太郎丸が出てきました。最初から尻尾を振ってますね。

 屈んで呼び寄せ、手ずからササミを食べさせてあげましょう。

 

「ハッハッハッ……くぅ~ん」

「いいこ、いいこ」

 

 頭を撫でてあげると目を細めて嬉しそうにする太郎丸に優衣ちゃんも微笑んでおります。人は駄目でも犬は触れるみたいですね。

 このイベントを済ますと太郎丸がついて来てくれるようになるので、「彼ら」にやられないよう籠城部屋へ戻りましょう。万が一死ぬと太郎丸の状態が前チャプターまで戻ってしまうので一度呼び出してから籠城部屋に戻り、もう一度呼び出しに来なければなりなくなります。

 

 太郎丸は中々優秀なユニットです。小さいのでまず「彼ら」に捕まりませんし、戦闘状態になればこちらの指示で「彼ら」を攻撃してくれたり吠えて陽動してくれます。吠えるのは隠密状態でもさせられますね。

 さらに優衣ちゃんが「彼ら」に組み付かれ、QTEに失敗しても高確率で助けてくれます。有能!

 

 忘れず5階廊下で「がっこうぐらし!」を読んでおきます。読みました。

 太郎丸が心配そうに足に擦り寄ってきてますが、気にする余裕はないみたいですね。

 そういえばみーくん達現れませんでしたね。今度は追ってくる前に戻ってこれたようです。

 優衣ちゃんがやや落ち着いたのを見計らって部屋に入りましょう。異常はすぐに回復します。

 

「……ただいま」

「おかえりなさい、優衣先輩。あ、わんこ……」

「わぁ、かわいいっ! ゆい先輩、この子は?」

 

 それぞれ過ごしていたみーくんとけーちゃんは、優衣ちゃんが帰ってくると手を止めてまでお出迎えしてくれます。呼称をサイレント変更しているみーくん、聞き逃さねぇからなぁ?

 じー。

 

「う……な、なんですか?」

 

 じぃー。

 

「わ、わかりましたっ、わかりましたから見るのやめてください!」

 

 何をわかったと言うんですかね? ほらほら話してみなさいよ!

 

「んっん! ゆ、千翼先輩……その、私も名前で呼んでも構いませんか?」

「……うん」

 

 優衣ちゃんが控えめに頷くと、みーくんはあからさまにほっとした顔をしました。

 以降、彼女は優衣ちゃんを名前で呼ぶようになります。好感度と友好度が下がりにくくなるのは圭と同じ。空腹値を犠牲に見つめた甲斐がありました。

 

 ちなみに呼称の変化に気付かないと微妙に好感度と友好度が下がり、名前呼びを否定すると半減します。こんな状況で協調性を示さないならそうなるのも仕方ないね。

 

「へぇー、太郎丸って名前みたい。首輪に書いてあるよ!」

「……」

 

 頭を撫でながらさっと体を確認するけーちゃんは、もう太郎丸を手懐けているようです。

 おそるおそる寄ってきたるーちゃんが手を出せば、一声鳴いて頭を差し出す賢いわんこ。これは完全にわかったり犬。いいぞ。わほーち。ガムテープみたいにな。

 

 せーちゃんは……来ないですね。興味がないどころか部屋にいません。

 誰も気にしてないって事は外には出てないっぽいですし、お手洗いに行ってるんですかね。

 ……あ、出てきました。少し開いていた扉を足で開いてちょこちょこ近づいてくるせーちゃんは、胸元で重ね合わせた手に視線を落としています。

 

 見ていれば、顔を上げた彼女と視線があって、くいっと顎で「こっち来い」みたいな仕草をされました。

 なんぞなんぞ。

 

「ひゃっ……!?」

 

 話を聞こうと腰を屈めたところぴゅーっと水が出てきて顔に浴びせられました。

 呆然とする優衣ちゃんから逃げたせーちゃんがケラケラ声無く笑っております。

 

 ……すぞ。

 

 これが「悪戯」ですかね? こんなんで精神値上がったりすんの?

 リアルで私の精神値はだだ下がりしましたが……かわいいしいっか。

 

「こらっ星夜ちゃん、そんなことしちゃ駄目でしょう? ゆい先輩に謝りなさい!」

 

 何も言わない優衣ちゃんに代わって怒ってくれるけーちゃんですが、なんとせーちゃんこれを無視。ソファに飛び乗ると寝っ転がって音楽を聴き始めました。リアルクソガキムーブ……!

 もうっと腰に手を当てるけーちゃんもなんのその。ちらっと優衣ちゃんを見たせーちゃんは、つーんとそっぽを向いてしまいます。完全に好感度足りてませんね。

 

 見かねたるーちゃんが向かっていってわちゃわちゃ手を動かし合うと、ヘッドホンを外したせーちゃんは渋々優衣ちゃんに謝りに来ました。

 ぺこり。いやに綺麗なお辞儀ですね。そこだけ見れば完璧なのですが……顔を上げた一瞬、ぺろっと舌を出した生意気な顔をしていました。それも見守っていたるーちゃんの方へ向き直る時には影もありませんでしたが……なに? プレイヤーにストレスを与えるキャラか何か……?

 

 やることなすこと可愛いんだか憎たらしいんだがわからない星夜ちゃんですが、きっと好感度上がるとデレ始めるタイプなんでしょうね。惜しくもこれはRTAなので能動的に上げられず見れそうにないですが、セーブ分けしておいて後でカンストさせてみます。なんかイベント起こったら動画で上げますね。

 

 

 

「ゆい先輩、髪留め……使ってくれてるんですね」

「先輩、あの本読んでくれたんですね。でも内容は難しくありませんでした? もしよければ翻訳して読み聞かせしますけど」

「……(りーねーげんきかな?)」

「……(無言でスカートを捲る)」

「わんっ!」

 

 まだ早い時間ですが、やる事も無いので雑談を繰り返して夕食に突入します。5人と一匹。学校勢とほぼ同じ人数なのでかなり賑やかというか、生活感に溢れて安心できる団らんの時間ですね。

 調味料が増えたので煮物を作ってくれました。手の込んだ料理ほど精神値を大きく回復させてくれます。……せーちゃんがひょいひょい嫌いな食べ物をるーちゃんのお皿に横流ししてるんですがそれは……。

 

「嫌いなものもちゃんと食べないと大きくなれないよ!」

「……」

 

 困り顔のるーちゃんを見かねて叱るけーちゃん。お母さんかな?

 しかしせーちゃん、聞く耳をもちません。

 ていうか優衣ちゃんも嫌いなものを箸で退けてますね。目ざとく気付いたけーちゃんにじとっと見られて焦ってます。

 

「貴重な栄養源なんですから、残すのは駄目です」

 

 せっかく圭が作ってくれたんですから、と正論を言うみーくんに、優衣ちゃんは泣く泣く根菜等を食べる羽目に。嫌いだろうがなんだろうが精神値と空腹値は回復するのできりきり食べて頂きたいですね。

 

 きららチャンスタイム!

 本日は……「居合」ですね。

 紙を丸めたものを持ち、1対1で向かい合い、審判のランダムなタイミングの合図に合わせてボタンを押す、カービィの刹那の見切りみたいなミニゲーム。

 

 1回戦はvsるーちゃん。

 

「……!」

 

 審判役のみーくんが合図した瞬間、紙を振り上げてぽてぽて走ってきたのでカウンターを叩き込みます。

 勝ち!

 

「……」

 

 2回戦はせーちゃんですね。

 るーちゃんの合図で即座に飛び出した優衣ちゃんが輪ゴムに額を撃ち抜かれました。

 ……輪ゴム銃と紙を持ったせーちゃんが鼻で笑ってますね。負け!

 

「よーし、がんばるぞー!」

 

 3回戦目はけーちゃんです。

 せーちゃんのフェイント合図に引っかかってしまい、カウンターでぽすりとやられました。

 負け!

 

「お手柔らかにお願いします」

 

 4回戦目はみーくん。けーちゃんの素直な合図に即斬。

 ストレート勝ち!

 

「わわんっ!」

 

 5回戦目はvsザシアン。丸めた紙をくわえた太郎丸。

 みーくんの合図と共に飛び掛かってくる太郎丸ですが、ここでスキル「カウンター」を使います!

 スローモーションになった世界では容易に反撃を成功させる事が出来ま……腕を踏み台にしたぁ!?

 

 パスッと頭を叩かれて敗北。 

 

 はいっ☆

 やたら輝く不思議な世界を背景に大ジャンプ! 今回は太郎丸も一緒です。

 2回勝って3回負けたのであんまり結果は良くないです。俊敏に+1されました。精神ボーナスが欲しいなあ……。

 

 寝る時間です。当然のように優衣ちゃんの布団に潜り込んでくるるーちゃんとせーちゃん。精神値が死ぬぅ!(建前) ナイスゥ!(本音)

 ツンツンしているせーちゃんですが、抱き枕代わりにしてくるくらいなので嫌われてはいないんだと思います。

 あ、ソファに移ろうとしたみーくんがけーちゃんに布団に引きずり込まれました。やっぱりデキてるんじゃないか!

 

 といったところで本日はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 あの時。

 ……ゆい先輩の後をつけるのはやめておこうって思って、よかったんだと思う。

 

 

 

 

 どうして無傷で帰ってこれるのか。ひょっとして外に「彼ら」はいないのではないか。

 そんな馬鹿げた発言をしたのは私か、美紀か……たぶん、私だったんだと思う。

 いつもゆい先輩が平気な顔して帰ってくるから、実はもう事態は終息に向かっていて、安全に出歩けるんじゃないか、って。

 

 じゃあなんでゆい先輩は私達が部屋から出るのを嫌がるの? って聞かれたら……そんな理由、考えてもしょうがない。

 だから私達は、ゆい先輩の後をこっそりつけることにした。

 もし、世界がまだおかしいままでも、ゆい先輩の秘密が知れるかも、って……いつもと違ったゆい先輩の顔が見れるかも、なんて思ってて。

 

 静かな廊下の、なんにもないところで転ぶゆい先輩に、やっぱり世界は平和なのかもと思ったけど……安全だと思っていたこの5階にもたくさん「彼ら」が歩いているのを見て考えを改めた。

 それから、そんな「彼ら」の傍をするすると歩いていくゆい先輩に息を呑んだ。美紀と顔を見合わせて、おんなじように後をついていく。

 

 そのつもりだったんだけど、ゆい先輩みたいに歩いていると「彼ら」に気付かれてしまう。どうして? 同じ歩き方、同じ道筋なのに。

 観察していて気付いた。ゆい先輩は、歩く時に音がしないんだ。そういえば部屋の中でもそうだった。いつの間にかあっちにこっちに移動していて、全然気づけないのは……体が小さいからかなって思っていた。

 

 毎日外に出ているだけあって、ゆい先輩の足取りには迷いがないし、凄く慣れているみたいだった。気の弱い彼女のすぐ傍を「彼ら」が横切るのに、上手い事視界に入らないよう動いていて……とても違和感を抱いた。

 だって、ゆい先輩って本当に臆病というか、怖がりで……私が料理のアイデアが浮かんで手を叩いたってだけで肩を跳ねさせるし、星夜ちゃんが何か悪戯をするたびに驚いては顔をくしゃくしゃにして泣きそうになるのに。

 

 「彼ら」が怖くないの……?

 ううん。ひょっとしたら、ゆい先輩は……死ぬのが、怖くないのかも。

 どうしてそう思ったのかはわからないけど、なんとなくそう思った。それが正解だとも。

 

 一緒に過ごしているとわかるけど、ゆい先輩はどこかズレている。浮世離れしているというか、私達とは何かが違う。

 感覚的に捉えられるそういった違和感が、今、目の前にはあった。

 

 「彼ら」という存在に震えもしない。私達はこんなにも怯えて、心臓だって今に張り裂けてしまいそうだというのに。

 手を握り合っている美紀が小さくつばを飲み込む音にさえ過剰に反応して、動けなくなりそうになる。

 死そのものの空気に包まれている感覚が正常な思考を奪う。末路を想像してしまって身が竦む。

 

 ただ死ぬんじゃない。生きたまま貪り食われて、「彼ら」の仲間入りを果たしてしまう。

 そんなのは、状況だけでだって耐えられない! あの部屋がどれほど安全で、精神に安泰を齎していたかを嫌というほど噛みしめた。

 

 ……それでも。

 そんな状況の中でも、私は……私達は、この世界のことを正しく理解できていなかった。

 いつ死んだっておかしくない。次の瞬間には私が……あるいは美紀が、その瞳から光を無くしてしまうかもしれないってことを。

 

「美紀っ!?」

 

 「彼ら」が美紀に襲い掛かろうとしている。

 視界の外。棚と棚の間からぬるりと出てきた存在に、反応なんてできなかった。

 ゆい先輩の様子が尋常じゃなくて、それに気を取られていたせいだ……なんて言い訳したって、「彼ら」は待ってくれない。

 慌ててしまった私の足はもつれて、逃れようとした美紀は過剰に体を傾けて倒れそうになっていて。

 

 見たくない。

 こんなの、いや!!

 

「そんな、先輩っ!」

 

 咄嗟に目をつぶってしまいそうになった私とは違い、ゆい先輩は動いていた。美紀にぶつかるという形で。

 でも、押し退けるように、でも力が足りずに美紀に受け止められてしまって、そのせいで「彼ら」に背中を晒してしまったゆい先輩は……肩を、噛まれて。

 美紀の脇から見えるゆい先輩は、苦しそうで、悔しそうで。

 

 あまりにも衝撃的な光景に、立ちすくむどころか頭がやられてしまった。

 四散していく精神が最後に捉えたのは、「みーくんが食べられちゃうくらいなら、いっそ私が……」などという、信じられないほどの献身の言葉だった……。

 

 

 

 

「っ!」

 

 布団を跳ね除けて起き上がる。ガアン、と光が散った。

 

「痛っ……!!」

 

 思わず頭を押さえてくらくらする意識を抑え込む。息を荒らげて、視線を落として……じっとりとした嫌な汗が体中に纏わりつく感覚に、だんだんと頭がはっきりとしてきた。

 

 ……夢?

 

「なんだ……」

 

 さっきまでの最悪の出来事は、全部悪夢の中のフィクションだったみたい。

 鈍痛を発する額を撫でながら安堵の息を吐いて……すぐ傍で丸まって震えているゆい先輩を見つけて、微かな疑問を持った。

 ゆい先輩、何、してるんだろ……こんな夜中に。

 

 どうにも頭を押さえて痛がっているみたいだ。あ、ひょっとしてさっきのガアン! ってやつ、ゆい先輩とぶつかった感じ?

 だとしたら悪いことをしてしまった。先輩、と声をかけると、彼女はゆっくり顔を上げて……涙をたたえた金の瞳が、妖しく揺らめいた。

 

「……」

「……」

 

 何かを言おうと思っていたのだけど、すっかり忘れて見つめ合う。

 ……やがてゆい先輩はのっそりのっそり布団に戻って、瑠璃ちゃんと星夜ちゃんの間にすっぽり収まった。

 少しもしないうちに寝息が聞こえてくる。

 ……大丈夫みたい?

 しばらく見ていてもなんともなさそうだったので、痛みより眠気が勝っている事だしと私も横になって布団をかぶった。

 

 ……美紀が顔をしかめてうなっている。横で大暴れしたのが効いてしまったのかも。

 髪に指を通して、指先で頬をくすぐってやると穏やかな表情になったので、安心して眠る事にする。

 まだまだ夜は長いみたい。毎日をしっかり生きるために、ちゃんと寝ないと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 待って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆい先輩……なに、してた、の……?

 

 




TIPS
・太郎丸
救出しようとすれば必ず救出できるわんこ
特定の境遇や性格の主人公以外には最初から友好度が高く、様々なお願いを聞いてくれる
彼が拾ってくる事もあるアイテムの中には有用な物も多い

命令できる内容は待機を命じる「待て」、攻撃を命じる「いけ」、陽動を命じる「吠えろ」、物品の回収を頼む「取ってこい」、可愛がる「お手」「お座り」「ちんちん」、その他「撫でる」「調べる」「労わる」


精神値

・千翼優衣
50/100

・祠堂圭
44/100

・直樹美紀
73/100

・若狭瑠璃
56/100

・月日星夜
53/100

このくらいの文量でもいい? これならそこそこ投稿頻度上がるかも。 今より少なくてもいい? コンスタントに更新できるよ。TNPも良くなるかも。 前回までの文量がいい? 時間はかかるけどボリュームたっぷりになるよ。

  • 少量でいい5000~10000文字前後
  • 今回くらい15000文字前後
  • 前回くらい26000文字前後
  • 53万文字書け

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。