【完結】がっこうぐらし!モールスタートめぐねえエンドSランク縛り【MGNEND】 作:月日星夜(木端妖精)
WR。後追い走者なので初投稿です。
──ありがとう。生きててくれて。
□
コントローラーを取り替えたのでなんの問題もないRTAの続き、さあはじまるザマスよ!
前回は「めぐねえ、母さん殺したろ」まで。今回はなんか寝てるところから。
えー、優衣ちゃんが暴走し、おチャートの崩壊を確信しましたが……ベッドの上で寝てますね???
傍らには椅子に座ってかっくんかっくん頭を揺らし今にも寝落ちしそうなめぐねえがいます。
んー……とりあえずまずは、起きる前に現状の確認しましょう。さすがにこの状況で前回付与されたはずのバッドステータスを確認しないのは論外ですね。
メニュー画面を開き、マップを確認! 巡ヶ丘学院1階、保健室。はぇー。無事(?)に学校ルートに合流できたみたいですねぇ。正直暗転前の終わり方では何もかもおしまいかと思ったのですが……何が起こったんでしょうか。
とりあえずステータス欄へ移ります。そういえば今まで一回も見てなかったし本作では初公開の画面になるのかな。
知らない人のために一応説明しますと、ステータス欄にはステータスが載ってます。以上。なんて的確な説明なんだ……やはりうちはマダラか?
既存の精神異常は想像通りのものでした。違ってたら怖い。でも一回あったんですよね、優衣ちゃんがやたらみんなにひっつくから「極度の寂しがり」……生存者がすぐ傍にいないと精神値が削れていく精神異常やろなと思ってたら「食人衝動」だったりとか。めぐねえ、美味しい!
優衣ちゃんが新たに獲得したのは……「味覚障害」……ふむ。
これは見ようによってはリカバリーになるんじゃないでしょうかね。
「味覚障害」は、食べ物の味がわからなくなり、食事を摂るのを嫌がるようになるバッドステータス。
空腹値の回復が難しくなりますが、食べるのを嫌がるということは、逆を言えば「食人衝動」の抑制にもなり得ます。
……検証してないのでわかんないんですけどね。
それでもってですね、はい……。
今日紹介する"気付いてなかったバッドステータス"はこちら! じゃん!
「????(中度)」
……なんでしょうね~こわいですね~。
空気感染だよ。
それも初期段階を過ぎて発症間近なやつです。
どうりでな~やけに空腹値の減りが速いと思ったんだよ私もな~。
あーあ、あーあ。こんなのつけてRTAなんてやってらんないよ。リセですねこれは。
……いや、待て……今日は何日だ……? 日付、日付……いったん画面を閉じて優衣ちゃんをベッドから下ろしましょう。多分そこら辺にカレンダーとかあると思うので探して……優衣ちゃん! めぐねえから視線逸らしなさい!!
「……おかあさん」
ベッドを囲うカーテンを開けて外に出ても、じーっと後ろを見ている優衣ちゃんはかなり不気味です。空腹値も空っぽで点滅してますね……もう一回暴走しそう。今はまだ操作受け付けてますが、時間の問題かもしれませんね。
早急にガムでも食べて空腹値を回復しましょう。
「……っ!!」
あ、吐いた。あっ、そうだった! 味覚障害患ってるんだった!(痴呆)
口を押さえてげほごほやる優衣ちゃんは、これでもう積極的に食事をしてくれなくなりました。
代わりと言いますか、一度めぐねえに目を向けてもすぐ逸らしてくれました。食欲わかなくなってます。んー、これを見越してのプレイだった!! ナイスゥ!!
RTA万事塞翁ガバ馬になったわね……。と勢いで押し流したところでカレンダーを視認。いやわからん。特に線とか引かれてる訳でもない。
もう少し探してみれば、棚の上にデジタル時計が置かれてました。まだ正常に動いているのでこれで日付がわかります。あー。毎回この流れやっちゃう。
……。
……どうやら優衣ちゃん、3日も眠っていたようですね。
はぇー……チャート崩壊!! 3日分のきららチャンスが消し飛び、学園生活部の面々と構築するはずだった友情やらもどっか行き、りーさんの調整もままならず残り4日。なにもかもおしまいだあ。
しかしこのピンチをチャンスに変えるのが走者ってもんです。良い方向に考えましょう。めっちゃ短縮できた! 快挙です。これって……勲章ですよぉ?(ねっとり)
もちろん先程言った通り生活部との関係がなにも進んでないので、ここからは最適な行動を最速で行っていかなければなりません。でなければ2回目の雨の日……学校でのエンディングを迎えられる「14日後...」にあっさり全滅してしまいます。なぜか? 主人公が足を引っ張るからです。
友好度が高くないと警戒度が上がりやすくなり、そんな奴がうろちょろしている中で「彼ら」と対峙するのは負担が大きすぎるのかみんなの消耗は早まり、崩壊へ繋がり、一人でも倒れれば連鎖的に精神値を削られて動けなくなり……といった悪循環による全滅。これを避けるには、みんなとコミュニケーションを取るほかありません。
そしてそれはもっとも基本的なことであり、本来注意すべき点は他にもたくさんあるのです。
たとえば、削れやすいりーさんの精神値の調整。現状低いようだったら「あめのひ」を迎える前に削り切ってすっきりさせておく、生活部ができてないなら結成してみんなの精神の安定に繋げる、食料がないなら遠征を促す、バリケードを補強する、ハンカチ等口元を防御できる布類の確保、十分な水の確保。
そうして万全に迎えた「あめのひ」でも、プレイングミスで噛まれればハッピーエンドには辿り着けません。
私にとっての大目標である「めぐねえエンド」……できればみんな笑顔で迎えたい……。
でもま、たとえ噛まれても精神値振り切ってても生きていればそれでいいので、全員生存めぐねえエンドさえできれば大勝利です。
しかし空気感染が中度まで進んでいる優衣ちゃんは、もういつ重度まで進行し「彼ら」化してもおかしくありません。
身体欠損があったり著しい精神疾患を患ったりしてもプレイ続行できる本ゲームですが、さすがに死んだり「彼ら」化したりすれば終了します。その場合コンテニューはできずエンディングに入るのでリセットになりますね。
なので薬を取りに行きます。原作・アニメ共にくるみちゃんが打った抑制剤……鎮痛剤……抗オメガ薬……ま、なんでもええわ。それが欲しいのですが、未だ誰とも顔合わせの済んでない優衣ちゃんに単独行動をさせると警戒度急上昇&軟禁待ったなしです。
まずはみんなと挨拶しましょう。挨拶大事。それから誰かてきとうな子……くるみちゃん以外を誘き出して彼らに噛まれてもらいましょう。その方法なら優衣ちゃんへの警戒を抑えつつ自然な流れで薬を取りにいけます。
地下の避難区域には確定で薬が二本あるので、優衣ちゃんと噛まれた子に使えばエンディングまでは持つでしょう。その後は……知ーらない!(HDS)
2020年現在ではオメガ──「彼ら」化するウイルスの名称ですね、この対処法は本編で描かれ判明していますが、このゲームは2016年時点で作られたものなので(対処法なんて)ないです。
一応、おそらくはその時にすでに原作の結末は考えられていたのでしょうが、漫画の刊行もまだまだのところで最後の種明かしなんてするわけないですもんね。
外に出ると、チャプターが終了しレベルアップしました。ランクは!?
ランクは……S!! あー、今人生で一番安堵しました……必死に「彼ら」の頭を蹴飛ばした甲斐がありましたね……。
レベラッで得たポインツは精神に振りたいところですが、感染を遅らせるために体力のステータスを上げておきます。体力に2、スタミナゲージの消費を抑えるスキルに1。ニュースキル「我慢」を取ります。
「我慢」は副次効果として体力の減少量も抑えられるので、これでなんとかエンディングまで持たせましょう。……持つといいなあ。持ってくれよな~頼むよ~。
チャプター7が開始されました。番号飛んでるね。通常プレイでもわりとこんなものです。
やたら膝を擦り合わせてもじもじして、歩こうにも蛇行して壁に寄りかかる優衣ちゃんが汗を流して辛そうにしているのを眺めつつみんなの下へ向かいます。おっ、バリケードちゃんと築いてますね~。慎重に乗り越えて3階へ上がって行きましょう。1階までバリケード作ってるとか覚醒めぐねえはやっぱり有能だぜ~! 大好き!
……にしてもなんか、廊下汚れてますね……「小物」がかなり落っこちてます。
転んだりしたら決壊待ったなし。もったいないので気を付けていきましょうね~。
3階につきました。学園生活部が既に結成されている事を祈りつつ生徒会室に向かい…………、……。
やめました。お手洗いに行きます。みんなの前で漏らして泣き乱せば警戒度0になるからそうしようかなと思ったんですけど、諸々の関係が終わりますからね。うーん、焦っておる(他人事)。
どうにも私はリカバリーが苦手なようで、ガバに対する動揺が大きく上手く立ち回れません。
今ちょっと立ち止まってるのは気持ちを落ち着かせるために深呼吸してるからですね。ちょっとのタイムロスを犠牲に気を取り直し、やはりお手洗いに向かいます。
女子トイレにつきました。水音が聞こえるので誰かいるみたいですね。
ふらふらな足取りでエントリーしましょ。お、開いてんじゃーん!
「~♪」
洗面台で手を洗ってるのはチョーカーさんこと貴依ちゃんみたいですね。ちゃんと救出されてたみたいで安心しました。彼女がいなかったらコントローラー砕いてました。
「……?」
ふと顔を上げた貴依ちゃんと鏡越しに目が合いました。咥えていたハンカチがぽとりと落ちて──
「うわあああああっ!!?」
おおああわああ!!?!?!?!?
ななな、なに!? なぜいきなり叫ぶ!? ワイファッ〇ンガール!!
ガッと優衣ちゃんへ向き直って、逃れるように洗面台へ体を寄せる貴依ちゃん、錯乱しているようでこっちを視認してもあわあわ言って震えてます。んーまあ初対面ですし、優衣ちゃん今顔青いですから幽霊にでも見えちゃったんですかね?
「……」
話しかけてみようとしましたが、優衣ちゃんだって限界ギリギリなのでかすかな吐息しか出ませんでした。
なんでとっとと個室へ駆け込みましょう。……なんかドタドタ聞こえますね?
「無事か! っ!」
うおっと、くるみちゃんが扉を蹴破る勢いで入り込んできました。それでもってそのままの勢いで飛び掛かってきて──わー、優衣ちゃんが押し倒されちゃいました。喉元にスコップの先端を突きつけられてます。なにこれ?
「ふーっ、ふーっ」
「……あっ、ちょ、ちょっと待って恵飛須沢……その子って……」
ちょっと暴れる素振りを見せた優衣ちゃんを強く押さえ込むくるみちゃんに、チョーカーさんが待ったをかけてくれました。一度そっちを見上げたくるみちゃんは、優衣ちゃんの顔色を窺うと、のっそり退いて「……すまん」と一言。
ガリガリ頭を掻いてるところをみるに、かなり心に余裕がないみたいです。しょうがない、許してあげるとしましょう。こっちも切羽詰まってますしね。
手をついて立ち上がり──あっぶぇ! えっ、今くるみちゃんにスニークキルのマーク出てなかった!? 優衣ちゃん怒り心頭事件? 反射でボタンを押さなくて良かった……。
「てっきりまたここまで「奴ら」が来たんじゃないかと思ったんだ」
「ごめん、あたしの勘違いだ……えーと、千翼さん? にびっくりして思わず……っと」
未だ水が流れていた蛇口を閉めたチョーカーさんは、くるみちゃんと並ぶと優衣ちゃんに向き直り、自己紹介をしてきました。無難にお返事しときましょ。くるみちゃんもちゃすちゃす!
それじゃ私はダム系の仕事があるのでこれで……。
「あ、一ついい?」
くるみちゃんに呼び止められました。うがー! もじもじしてる優衣ちゃんが目に入らんのか!
もしかして……いじめでしょうか……? 無視はできないので対応しますけども。
「めぐねえは……」
保健室ですやすや寝てますよ。今頃椅子から転げ落ちてるんじゃないですかね。
「そっか……なら、いいんだけど」
そ? じゃあトイレ入りますけど……あの、じーっと見られてると優衣ちゃん恥ずかしいと思うんですけどね。
ほらほら散った散った!
ふぅ。
全てを解放し清々しい気分で女子トイレを後にした優衣ちゃんは、それを感じさせない薄暗い顔でとろとろと歩き始めました。待っててくれたらしいくるみちゃんとチョーカーさんと一緒にみんなの所へ向かいます。
生徒会室の札を確認! 「学園生活部」の張り紙、ヨシ!
賑やかで明るい声が聞こえてくる室内へおらっと入り込みましょ!
「それでね、たかえちゃんがばっこーん! ってして!」
「うわ、由紀またその話してんの?」
「あ、たかえちゃん!」
おっと。ゆきちゃんホーミング弾がびゅーんと飛んできてチョーカーさんに直撃しました。
直前まで子供連中と話してたみたいですね。さすが由紀、仲良くなるのが早い! るーちゃんのすぐ傍にはりーさんが座っており、穏やかに微笑んでます。聖母かな。
「じゃ、あたしめぐねえ呼んでくるから、その間仲良くやっててくれ」
「あ、うん」
「はぁーい!」
すぐに外へ出て行くくるみちゃんを見送っていると、「ねぇねぇ!」と由紀ちゃんが元気良く話しかけてきました。興味深々みたいですね。目がしいたけになってます。
「あなたが千翼優衣さん? えっと、三年生なんだよね? わたしと一緒! あ、わたし丈槍由紀! こっちはたかえちゃん! あそこに座ってるのがりーさん!」
「こら由紀、雑に紹介するんじゃない」
最初からニックネームで紹介する由紀ちゃん、チョーカーさんにチョップを食らって撃沈しました。今のでも自己紹介を終えた判定にはなりますが、警戒度を下げるのと好感度を上げるために一人一人に話しかけて回りましょう。みなさんもうおわかりでしょうが……そう、挨拶大事!
まずはチョーカーさんね。
ちゃす! チョーカーさん! ちゃす!
「お、おう。ああ、貴依……柚村貴依ね。あんたのことは……千翼でいっか。病み上がりなんだし椅子に座って休んでた方が良いんじゃない?」
ご忠告ありがとう。どうでもいいね♂
チョーカーさんの反応は可もなく不可もなく。次行きましょう。
ちゃす! りーさん! ちゃす!
「久し振りね、千翼さん。……いえ、久し振りって程ではないわね。でも、もうずいぶんと顔を合わせてなかった気がするわ」
立ち上がったりーさんは、寄ってきたるーちゃんの肩を抱きながら目を細めて笑いました。で、でかーい! 見上げてるのもあってなおさら!
るーちゃんの頭を撫でたりーさんは、慄く優衣ちゃんに一歩近づくと、腰を折って目の高さを合わせてきました。保母さん?
「お礼がしたいの。千翼優衣さん……妹を助けてくれて、ありがとうございました」
「……」
姉妹揃ってお辞儀をするのに、優衣ちゃんは困り顔。私はにっこり。妹を助けていた事で警戒度は低く友好度が高い状態でりーさんとの関係が開始されましたね。
「本当にありがとう。私にできることならなんでもするわ。なんでも言ってね」
「……」
ん? 今なんでもするって言ったよね(古典)。
じゃありーさんにはみんなとの仲をとりなしてもらいたいですね。優衣ちゃんコミュ障なので助けがないと集団生活なんてできません。それと……いや、こっちはいいですね。りーさんかなり顔色がいいし、必要ないかな。
「それから、これ」
りーさんがアイテムをくれました。「がば飲みクリームソーダ」ですね! こいつはいいもんだ……!
学園生活部では、こういう風に部員がアイテムをくれる事があります。好感度が高ければ高いほど良いものをくれるので、最高難易度では重宝しますね。
しかし「がば飲みクリームソーダ」は校内の自販機にはラインアップされてないはずなんですけど……どこから持って来たんでしょうかね~不思議ですね~。
ちょこちょこ寄ってきて手を握り揺さぶってくるるーちゃんへの対処に困りつつ、星夜ちゃんにも挨拶しておきましょう。
ちゃす! せーちゃん! ちゃす!
「………………」
うお、高速手話! シュパパパパパと印でも組むように手を動かすせーちゃん、何やら怒っているみたいですね。なに? なんでそんな怒ってるの? 牛乳飲んでないから?
よくわかんないのでガムあげときましょう。
「…………」
サッと受け取って両手で口を押さえるように含んだ彼女は、ごそごそと虚空を漁ると何かを手渡して来ました。武器ですね。これは……私のサバイバルナイフじゃ~~ん!
そういえばせーちゃんに盗られてたんでしたね。それを咎めないから不思議に思ってたのかな? でもいいよ(おおらか)。結果的に何日も速く学校に来れましたし。
話が終わると、じーっとこちらを見ながら離れて行ったせーちゃんは、りーさんの腕に引っ付いてるるーちゃんと遊ぶのかと思いきやその反対側からりーさんに引っ付きました。両手にロリかぁ……。正面から由紀ちゃん、背後から優衣ちゃんが挟めば包囲網ができますね。
「それでね、それでね、りーさんもどわーって!」
大きな身振り手振りの由紀ちゃんの下へ向かい、会話相手のみーくんとけーちゃんにおはようの挨拶をします。
ちゃす! みーくん! ちゃす!
ちゃす! けーちゃん! ちゃす!
「先輩……その、結構元気そうですね」
「もー美紀、そうじゃないでしょ? 素直に心配してましたって言おうよ」
「う……。その、先輩。無事で何よりです」
うんうん。二人も元気そうで良かった良かった。
ところで三人はなんの話をしてたんですかね?
「うん! この間の雨の日にね、たかえちゃんとりーさんが大活躍で~」
「……」
「わたしもね! ほうきとちりとりでえいやーって!」
「……」
「二人もすっごかったんだけど、くるみちゃんもね、ズバババーッてね!」
「……」
アッ長い! 話が長いよ由紀ちゃん~!
ガンガン時間が過ぎていくのを感じます。こくこく頷く優衣ちゃんは相性が良いのか由紀ちゃんから離れる素振りを見せず……話が終わったのは、くるみちゃんとめぐねえが戻ってきた頃でした。
さっそく二人にも挨拶しておきましょう。ちゃすちゃす~!
「っ、っ、ああ、良かった……! 優衣ちゃん、ここにいたのね」
「……。ほら、言った通りだろ? わりと元気そうだって」
まあ、そうですね。一回眠ればたいていの状態異常は治りますし。
睡眠を疎かにしているとそうでもないですが、さすがに3日も寝れば大抵のことはどうにかなります。
今優衣ちゃんに付与されてるのは寝てどうにかなるものじゃないんですけどね。
「「先生」達は、これからもう一度あのモールに行ってきます」
ん? なんで?
「物資の調達ができなかったからよ。このままじゃ、今日食べるものもないの」
お、そんなことか~。それなら地下シェルターにたんまり食料があるから大丈夫!
「そういう事だから……「先生」は行くわね。……そうね、柚村さん、手伝ってもらえる?」
「ん……。……わかったよ、佐倉先生」
あれ? あれあれあれ? あの、地下……。
いや、優衣ちゃんは地下の事知らないので伝えられないのはわかってますけど、でもめぐねえ、あなた緊急避難マニュアル読んだでしょ?
学校外スタートの場合、彼女は確定で読んでいるはずなのですが……。
というか、どうしてそこでチョーカーさんを連れて行こうとしてるんですか? こういう場合必ずくるみちゃんが選ばれるのに。……やや精神面が危ういからか? たしかに何か異常があるキャラは遠征や見回りには出ませんけども……くるみちゃんに限って異常なんてあるわけないしなー。
行かないでくれよなー頼むよー。いけっ優衣ちゃん! めぐねえに縋りつけ!
あーみるみる精神値が回復していく……。あっ剥がされた! うそー!?
「……。少しでも雨が降ってきたら戻ります。……優衣ちゃん」
屈んで優衣ちゃんの頭を撫でためぐねえは、少し白い顔ながらも優しい笑みを浮かべると──優衣ちゃんの前髪を上げて額に口づけをする動作を挟んで立ち上がりました。ん、めぐねえの好感度は良い感じですね。個別エンドに入れるレベルなのが確認できました。まだ最大ではないのでもう少し積極的になっていきましょう。
あ、そうだそうだ、めぐねえこれあげる!
「──あら、ありがとう、ちひ……優衣ちゃん。嬉しいわ」
さっそく「がば飲みクリームソーダ」が役に立ちました。屈託のない笑顔と光のエフェクトは好感度が最大に達した証! 信頼イベントでの贈り物はなんでしょ。……あー、別のイベントが挟まってるせいか起こりませんね。後のお楽しみだ。大抵胸のクロスをくれますが、優衣ちゃんはすでに同装備をしてるっぽいので、次点であれかな。
「……」
伏せがちな目で優衣ちゃんを見下ろすめぐねえが意味深ですねぇ。なんでそんなに見られているのか……なーんでほっぺた触るんですかねぇ。こんなにスキンシップ激しかったかな……まま、めぐねえなら接触恐怖症持ちの優衣ちゃんでも問題なんか何もないのでオッケーですが。必要な会話をしつつ精神値も回復しタイム短縮に努める……完璧なムーヴですねクォレハ……。
めぐねえのたおやかな指先が優衣ちゃんのくちびるをくすぐり、離れて行くのを見届けて……結局止める事叶わず二人は遠征に出てしまいました。
ですがこれは逆を言えば、せっかく上げためぐねえの好感度及び現状下げたくないチョーカーさんの好感度を保ちつつ薬を得るために地下シェルターへ行き、これ以上の遠征を阻止する食料の確保も行えますね。……こいついつも逆を言ってるな!
「ふーん……」
トン、トン。
スコップを担いで肩叩きしながら扉を眺めているくるみちゃんに注意しつつ、えー、そうだな……もうせーちゃんで火傷したくないし、るーちゃん噛ませたらりーさん死ぬし、りーさんに触れたら爆死するし……みーくんかけーちゃんかな。けーちゃんにしましょ。彼女も好感度最大で、下がりにくいですし最適ですね。
行動は迅速に。さっそく外へ連れ出しましょう。
「……」
「え、お手洗い? うん、いいよ」
連れ出す理由はなんでもいいです。今回は連れションを名目にしました。
問題は、1階まで制圧されてるので簡単に「彼ら」の群れに出会えないことですね。
といっても2・3体いればそれで十分なんですけども。あんまり数がいて殺されてしまっては元も子もありませんしね。
隣の校舎に繋がる渡り廊下か、ロッカー内に確率で潜んでいる「彼ら」を集めて回るか……。
ロッカー内の「彼ら」は制圧後には出現しないんじゃないかって? 学校スタートで順当にチャプターを進めて行けばそうですが、学校外の場合、勝手に1階まで進められる関係か残ってる事が多いんです。
それじゃあ出発しましょう!
部室の外へ出ました。あれ、けーちゃんいませんね……よくあるバグ、というか読み込みのあれですね。少し歩いてると駆け足で合流してくるので気にせず行きましょう。
2階の渡り廊下が狙い目です。ダッシュダッシュダッシュ!
といったところで本日はここまで。ご視聴ありがとうございました。
□
その雨の日は、最悪だった。
「あたし! あたしだ!」
「……! い、今開けるわっ!」
生活部のドアを叩けば、りーさんの慌てた声が聞こえてくる。
躊躇うような動きで扉が開けば──強い眼差しとぶつかった。
◇
始まりは、由紀の何気ない一言だった。
間もなくして校舎が騒がしくなって、慌てて1階まで駆け下りてったんだ。そうしたら、玄関に打ち付けておいた板を突破したのか、「奴ら」がバリケードに取りついてて……テンパって仕方なかったけど、由紀が掃除用具入れから取り出した箒で果敢にも突き始めたのを見てあたしも続いた。りーさんもだ。
誰がどうとか、何をするとか、決めてる余裕も考える余裕もなかった。ただただ必死に「奴ら」を外へ追い出そうとして──無理だった。
バリケードが壊された。つい昨日、みんなで組み上げたばかりの椅子と机が降り注ぐのを呆然と見ていれば、由紀に手を引かれて駆け出す。
……ああ、なんだよ由紀。いつの間に、結構強引になったじゃん……。
自らの頬を張る。2階のバリケードの防衛だ。「奴ら」を通すな!
ここはあたし達の居場所だ。ここ以外に生きていける場所はない。
先生が……! めぐねえが必死になって作ったこの場所を、壊させる訳にはいかない。
そう奮起しても、現実はどうしようもない。
奮闘してはいるが非力な由紀と、ぎこちない動きのりーさん。
あたしだって別にこういうのが得意な訳じゃない。でもやらなくちゃ、やられんのはあたしらだ。
そう思って一心不乱に突いているうち、バリケードが軋み初めて、「奴ら」が雪崩れ込んでくんのも時間の問題になって。
だから、二人には先に3階に上がってもらうことにした。ここに残って死ぬまで戦おうってんじゃない。ただ殿を務めるって、そう言いたかった。恵飛須沢のように、気合い入れて薙ぎ払ってやるってそればっかり頭にあって──りーさんの表情を見てなかった。
バリケードの倒壊に合わせて全力ダッシュで3階に移って、ここを通られちゃやばい、気合い入れろと吼える。
正直体中張り詰めすぎて、筋肉が裂けてしまうんじゃないかと思うくらいガタガタだったけど……それよりも、追い詰められてる焦りが凄くて、ああ、そうか。だからあの時、死の恐怖なんてものは感じなかったんだ。
汗濡れになって箒の柄で突く。拾ったものを投げつける。
偶然「奴ら」の一匹が消火器に足を引っかけて転ぶと、ものすごい勢いで中身がぶちまけられて、その音に奴らが引き寄せられて。
不意に、それ以外の音が耳に入った。雨音。違う、雨に混じって聞こえる……車の音!
窓に寄って校庭を見れば、車が入ってくるのが見えた。間違いない、めぐねえ達だ!
声を出せば「奴ら」の注意をひいてしまうから、大きく箒を振り回してピンチを伝える。と、車は止まるどころか急加速して玄関の方へ飛び込んでいった。
足元に揺れを感じながらバリケードに向き直る。もうそろ消火器に飽きてる頃合いかと思ったけど、今ので体勢を崩してる奴も多かった。
……!
逡巡する。
このまま恵飛須沢達が来るのを待ちつつここを守るか……それとも。
悩んだ時間は数秒もなくて、あたしはここを放棄して屋上へ向かう事に決めた。
由紀とりーさんがどこにいるのかわからなくて少しまごついたものの、倒れてる掃除用具入れとこんなところにある「奴ら」の死骸から判断し、どうにか部室にいた二人と合流して、屋上へ向かって……そこの階段を、最終防衛ラインとした。
バリケード越しでも恐ろしいのに、何も隔てないで「奴ら」とやり合うのはかなりの恐怖だったけど……心の底から湧き上がってくる、何かとてつもない力に助けられて、あたしたちはこの戦いを乗り越えた。
「たかえちゃんっ、ヒーローだよ!!」
最後は屋上に立て籠もって先生達の助けを待つのみになったけど……へたりこむあたしは、由紀から見ればそういうカンジだったらしい。
「いいえ、柚村さん。貴女は紛れもなくヒーローよ」
驚くことに、りーさんまであたしをそう称した。……いつの間にか髪を縛って凛々しい顔つきになってるあんたの方が、あたしからしたらスーパーヒロインって感じだけど。
「ふぅーっ……」
近づいてくる恵飛須沢の声を聞きながら、空を仰いで息を吐く。
口に入り込んだ雨粒は、とてもあまかった。
「……ごめんなさい。これは、私の落ち度です」
開口一番、めぐねえがそう言った。
青褪めた顔で、かわいそうなくらいに震えながら。
どういうことかと新しい仲間を見れば、申し訳なさそうな顔をして「校内は、絶対安全であると……先生に言わせてしまって……」と小声で教えてもらった。
あー、それは……。
「ね、その子がちひろさん?」
重苦しい空気を塗り替えるように明るく問いかける由紀が言っているのは、めぐねえが抱いている女の子のことだろう。
ともあれ、あたしたちはなんとかめぐねえを慰めて、決してこの事態は先生が原因ではないとなだめて……。
「……ありがとう。生きててくれて……この子を寝かせてきます」
「ああ。後片付けはあたしらでやっとくから」
無理に笑顔を浮かべるめぐねえは痛々しくて見てられない。誰も恨んじゃいないのに、先生っていうのも難儀なものだ。
だからこそ、あたし達生徒が支えていかなければならない。……なんて。
恵飛須沢と協力して校内の「掃除」をする。
工具箱を引っ張り出してきて、真っ先に、その……広くなった玄関を封鎖し、改めてバリケードを築いていく。
この作業には丸3日かかった。その間の食事はかなり質素なものだった。
「……私のせいね」
またまた落ち込むめぐねえを慰めはしたけど、こればっかりは何も言えない。ショッピングモールへ向かう前日に由紀の提案に乗っかって、めぐねえがあえて備蓄を使い切ろうとしていたのはみんなわかっていたからだ。そうして、必ず外へ出る理由を作ろうとしていたのを知っていた……。
でもま、満腹にはなれないけどさ、連日メシ抜きって訳でもないし、そもそもそんなの日頃からダイエットだなんだで慣れてるし、みんな生きてる訳だしさ。
やっぱりめぐねえを責める気にはならなかった。
問題は……千翼って子だ。あの小さい子。
めぐねえは、あの子のためにここまで頑張ってきた。
その子が目覚めない。それさえ自分のせいだと思ってるフシがある。
……いや、話を聞く限りでは、実際そうなのかもしれない。
めぐねえは、あたし達にモールでの話をしてくれた。何をしたのか、それでどうなったのか。
……仕方ないと思えるのは当事者じゃないからか。
そんな事よりも、千翼の事が気になってしまうのは薄情かな。
めぐねえが憔悴してるのは心配だけど……千翼についてはもっと心配というか……不安、なんだ。
何度もめぐねえを「おかあさん」と呼んで、そのたびに悲痛な表情をめぐねえはするのに、千翼は……。
……。
それと、だ。「学園生活部」に入部した直樹が、あたしと恵飛須沢だけに伝えたことがある。
「佐倉先生に会った時、たしかに言ったんです、優衣先輩…………」
──食べたかった、って。
……。
あたしは、険しい表情の恵飛須沢と顔を見合わせた。
もしかしたら。
もしかしたらだけど。
千翼は……生きてちゃいけない奴なのかもしれない……。
TIPS
・生存者に対してのスニークキルの発生条件
基本的にはマークは表示されないが、敵対状態になると表示されるようになる
自己紹介を済ませていない相手から攻撃された場合や、仲間であっても著しく傷つけられた場合に発生するようになる
ほとんどの生存者は「彼ら」より耐久力が低く、ほぼ確実に息の根を止められるだろう
恵飛須沢胡桃は「スニークキル」に3回耐える
・トイレでのスニークキルに成功していたら
警戒を解こうとした胡桃の不意をつき、胸倉を掴んで引き込んだ優衣の頭突きが炸裂し
怯んだ胡桃の腹に膝を叩き込み、その手からスコップを絡めとって振り回し、横っ面を叩いて転ばせるまでいく
貴依が止めてくれるが、止めてくれなくても反撃されて中断させられる
警戒度は高く、友好度は低い状態での進行になっただろう
精神値
・千翼優衣
44/90
・丈槍由紀
82/100
・恵飛須沢胡桃
48/120
・若狭悠里
80/80
・直樹美紀
83/100
・柚村貴依
72/130
・祠堂圭
100/100
・若狭瑠璃
98/100
・月日星夜
98/100
・佐倉慈
18/110