「我が名はウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツゥ!」「はいはいオダブツオダブツ」「勝手に省略することは許さん!」   作:世嗣

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「お前は持っているのか? 守るべきものを……。
 何故奪うだけで、守るものを持たないんだ!?
 お前だって…ウルトラマンだろうが!」




ドリーマーエンジェル

 

 

 

 

 

 ある日の昼下がり、大赦の蔵書室の自分のデスクで書類仕事をする傍ら、もそもそと翼は菓子パンをかじりながら遅めの昼食を取っていた。安さとボリュームが売りのものである。税込み258円の信頼。

 

『まあた、君は菓子パンか』

 

「これが一番コスパがいいんだよ。腹にもたまるし、味だってそれなりだ」

 

『せっかく朝ごはんを幼馴染み少女に作ってもらっているんだ。ついでに弁当も作って貰えばいいだろう』

 

「ばーか、そこまで迷惑かけれるかよ」

 

『毎朝飯を作らせてるのはなかなかの負担だと思うがな』

 

「仕方ねえだろ、鷲尾さんがどうしてもやるって聞かないんだから。オレとしてはいつでもやめてくれて構わないんだけどさ」

 

 翼の脳裏に今朝の須美との会話が思い起こされる。

 

『美森ちゃん、病み上がりなんだし、しばらくはいいって言ったろ?』

 

『だって私が放って置いたらあなた、体に悪いものばかり食べるじゃないですか。

 部屋の中見せてください! ほら、案の定いんすたんらーめんばかり! 

 本当にもう、私がいないと全然だめなんですから』

 

『カップ麺だって美味いんだけどなぁ』

 

『紅さん』

 

『OK OK、朝ごはんお願いします、美森ちゃん』

 

『返事は──』

 

『OKじゃなくて「はい」な、オールライト、美森ちゃん』

 

『もう紅さん!』

 

 クレナイ・タスクは小学生にお世話されている日々生き恥を生み出し続ける少年ではあるが、何も全く料理ができないというわけではない。

 先日、須美に牡丹餅を差し入れたようにやろうと思えばできるのだが、まあ少しばかりの事情から彼の朝食は全面的に須美に任されていた。

 

『む、それは先日の私たちの活躍か』

 

「活躍というか被害報告だよ。……無茶苦茶やっちゃったからな」

 

『ウルトラマン……いやウルトラマンバーテックスめ! 許せん!』

 

「違うよ、オレのせいだ。ちゃんと守りきれなかった」

 

『む?』

 

「きっとオレがもっと……いや、まずは反省よりも、今のこと、だな。街の修繕とか、市民への説明とかやることは山積みだ」

 

『ふうむ、神樹とやらに任せては駄目なのかね。無数の神様が融合(ユナイト)していると言ってただろう』

 

「ゆないと……? まあ、神樹様は神様だけど万能というわけじゃないから。大抵のことはできるけど、手が届かないところもある」

 

 そういう届かないところをお助けするための大赦(オレ)たちだから、と続けて、食べ終わった菓子パンの袋をくしゃくしゃと丸めてゴミ箱へと投げる。

 

『入らなかったぞ』

 

「……うるさいな、後で捨てるよ」

 

 翼が居心地悪そうに席に座り直す。

 その拍子にポケットの中で二つのクリスタルが擦れ合い、軽やかな音を立てた。

 

「……夢じゃないんだよな」

 

 席に戻りポケットの中のものを取り出すと、翼が目を閉じて何かを念じるように目を閉じた。

 すると、虚空から二つのハンドルのついたアイテムが現れる。

 

 彼を怪獣に変えた『クリスタル』と『ジャイロ』。

 

「なんなんだろうな、これ」

 

『む? 知りたいか。知りたいよな。知りたいだろうねえ! いいだろう、私なら教えてあげよう、ほらほら、私に存分に聞くといい』

 

「いつの間にか胸の中にあった……というかあのよくわからない空間で渡された? 祠の中から出てきたのは間違い無いから神樹様由来か。でもあんな祠記録にはなかったからな……」

 

『あれ少年? しょうねーん?』

 

「この力、強いことは確かだけど今のオレに使いこなすのは難しい。どこかで剣なりを練習できればそれがベストなんだけど」

 

『おい! 無視するなー!』

 

 ぎゃーすかと心の中で騒ぐチェレーザに小さくため息。

 

「はいはい、じゃあこれはなんなんですか、チェレーザさん」

 

『よくぞ聞いてくれた! それは前も話した通り神秘の変身アイテムなのだが、それを語る前には私の活躍であるウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ(全25話)から語らねばなるまい……あー冗談冗談! だから無視して仕事を始めようとするな!』

 

 ゴッホンとチェレーザが無駄に大きな咳払いをする。心の中のチェレーザに喉はないので本当にゴッホンと言っただけである。

 

『まずその二つの円いやつは『クリスタル』。

 この宇宙に存在する無数のエレメント、それに適したウルトラマンや怪獣の力を閉じ込めてあるものだ。

 少年が今持っているのは『剣』のバルタン星人と……』

 

「『雷』のエレキング……だっけ?」

 

『その通り! かのウルトラセブンと戦った有名怪獣だぞ! ……まあ別に強豪怪獣じゃないのが痛いところだが。だいたいさっくり負けてしまうしな』

 

「ええ……ウルトラマンが使ってる時はかなり強かったのに」

 

『アレは使ってるのがウルトラマンだったからなぁ。フィールドも水辺で完全にエレキングの能力を活用できる独壇場だったのも悪かった。おかげでバルタンの身体でも大ダメージだ』

 

「お前ほとんど気絶してて起きなかったもんな」

 

『…………それで次はジャイロの話だが』

 

「露骨に話逸らしたな」

 

『そのジャイロは有り体に言えば“人にクリスタルの力を宿す“アイテムだと言える』

 

「オレたちがバルタンに変身したみたいに?」

 

『うむ。ジャイロ特有の能力として、『形のないものに形を与える』、『怪獣の召喚』といったような能力もある。

 だが、どうやらこれはそこら辺の能力をオミットする代わりに、『所有者の元に転移する』能力をつけた偽物……言うなれば『コピージャイロ』とでもいったところだな』

 

「コピーってことは、もちろんオリジナルのジャイロがあるんだろうけど、それは……」

 

『そこまではさしもの私といえどもわからん。

 まあ、私がもといた世界でジャイロをコピーして模造品を作ったからなぁ、もしかしてその設計図が何かのルートで流れてしまったのかもしれんな』

 

「作ったって……チェレーザが?」

 

 マジで? とでも言いたげな様子で翼が目を丸くさせた。

 このジャイロは翼からしてみれば未知の塊だ。触ってみれば硬いのに、持ち上げても重くない。いらない時は勝手に心の中におさまってるのに、念じれば手の中に現れる。その仕組みどころか、構成物質すらもわからない。

 

 そんなものを、チェレーザは解析してコピーしたという。

 

「チェレーザってさ、もしかしてかなり凄い人?」

 

『ふふん、ようやく少年も私の偉大さがわかってきたかね。存分に私を尊敬していいんだぞう! 

 む! そのジャイロ私の設計図から作られたかも知れんというのならばもっとふさわしい名が必要だな!』

 

「……参考までに聞くけどどんな?」

 

 よくぞ聞いてくれたとばかりにシュババッとチェレーザがキレキレのポーズをとった。心の中で勝手にやったことなのでもちろん翼にも見えていない。

 

『至高の変身アイテムーーー『AZジャイロ』だ』

 

「AZ?」

 

『始まりと終わりを示す文字。私こそがオーブさんに並び立てる唯一無二のヒーローである証、故にこそ愛染(AZ)だ!』

 

「おっけー、ジャイロな。今度からこれはそう呼ぶことにするよ」

 

『私の話聞いてたかね?!』

 

「や、だってなんか腹立ったし……」

 

 仕事を片付けていく傍ら、チェレーザと翼は知識のすり合わせをしていく。

 チェレーザはウルトラマンや怪獣のことに非常に詳しい代わりに、この世界の現状について知らなさすぎたし、翼はその逆だった。

 

『四国以外の人類がウイルスで滅びて298年?! それを神様である神樹が守ってくれている?!』

 

「うん、そして敵はバーテックス。壁の外のウイルスの中で誕生した超生物。安芸さんなんかの大赦の上の方の見立てじゃ、あの『ウルトラマン』もバーテックスの一体なんじゃないかって話」

 

『ううむ、ただのウイルスがウルトラマンを模倣する……? よしんばウイルスがバーテックスの元だとしても、あそこまでウルトラマンの姿が似通うのは些か不可解だな』

 

「……チェレーザ()、信じられない?」

 

『信じられんな。ウルトラマンというのはそう簡単に真似できるものではない。無数の偶然と奇跡が重なって生まれた存在であるし、それにクリスタルの件もある。こんな物体が勝手に生まれたとは考えにくい』

 

 そして、とチェレーザは前置くと、翼に寄り添うようにささやいた。

 

『そう考えているのは私だけではないようだな』

 

 チェレーザは翼が本質的に『大赦』という組織を信じてないというのを敏感に感じ取っていた。

 

「……チェレーザは、三点結界を使うときの鷲尾さんたちの祝詞聞いてたか?」

 

『?』

 

「ああ、お前そういや気絶してたな……」

 

『もちろん覚えてますけど????????』

 

「なんで一秒でバレる嘘をつくんだよ」

 

 目を閉じて、翼があの時聞いた祝詞をそらんじる。

 

「あめつちに きゆらかすは さゆらかす

 かみわがも かみこそは きねきこゆ きゆらかす

 みたまがり たまがりししかみは いまぞきませる

 みたまみに きまししかみは いまぞきませる」

 

 この前半は「阿知女作法」と呼ばれる神楽歌の一つだ。

 その解釈は多様にわたりその未知の専門家ですら一つの答えを出せていないのが現状ではあるが、無数の蔵書を管理しており知識もそれなりにある翼ならば、大赦がどういう意図でこの祝詞を言わせているのかくらいは推し量ることができる。

 

「後半の部分、御霊狩(みたまがり)ってところ、これは人に仇為す存在への()()()()()だ」

 

 おそらく指しているのはバーテックス。

 勇者が打ち倒さなければそのまま世界を滅ぼす異形の化物。

 それを狩るための言葉を、勇者への変身と、三点結界への要の祝詞としている。

 

「きっと鷲尾さんたちは知らないだろう。

 安芸さんもあえて説明はしなかっただろうし、仮に調べてもそうそうは意味を掴めないだろう」

 

 翼が無意識に爪が食い込むほど強く拳を握る。

 

「オレは、何も知らない少女たちに、こんな怨念と殺害の意思を持つ祝詞を唱えさせる人たちを……信じきれない」

 

 その瞳には、どこか全てを知ることのできない自分への無力感と、全てを隠そうとする組織への苛立ちが覗いていた。

 

「……まあ、今はなんの力もない以上、早く偉くなるなりなんなりして、大赦の中枢までいかなきゃな」

 

『ふむ、勝手に見たりしてはいかんのかね。そのパソコン、一応組織の中枢までアクセスできるんじゃないか?』

 

「パスワードわかんないから無理。てかそもそも、そういうのは誠実じゃないだろ」

 

『少年も難儀な性格をしているな』

 

「お前だけには言われたくねーよ」

 

『何?!』

 

「だってお前絶対友達いなかったタイプだろ」

 

 喧嘩になった。

 

 

 

 

 

 太平風土記。

 それは翼に管理を任されている"未来の出来事を記した"書記。

 それに新たな文言が刻まれていることに気づいたのはウルトラマンを打倒してから二日後のことだった。

 

『あなたにはしばらく勇者たちのデータ面からのサポートをお願いしたいと思っています』

 

「データ面、ですか」

 

 安芸からの電話にて告げられて言葉を繰り返す。

 

『技能の面では私の方でも指導できますが、太平風土記の読み解きや、戦闘データの解析については時間が必要なものも多い。

 その点、あなたはどちらも優秀だと上からも認められており、能力も申し分ない』

 

「ええと、光栄です」

 

『公としての立場を心得、勇者様との距離を適度に保ってさえいれば私から言うことは何もありません。

 ……できればあの子たちの助けになってあげて』

 

「え、安芸さん」

 

『こほん、以上です。

 彼女たちは帰りのホームルームの後、少し所用を済ませてから貴方の蔵書室に向かう予定です。きちんと対応するように』

 

「……切れちゃった」

 

 ポリポリと頭をかきながら「鷲尾さんたちが来る前に軽く座る場所くらい整えとくか」と溢して、デスクの棚からお菓子を出しておく。

 言わずもがな勇者三人のためのものである。洋菓子を好んで食べない須美のためにせんべいなどを用意するのも忘れない。

 

 一通り準備し終わり、勇者たちの到着を待つ翼だが、彼女たちはなかなか現れない。

 

「ふあーあ、なんか眠くなってきたな」

 

『この一週間仕事だなんだと夜遅くまで起きていたのが悪いだろう。そのくせ朝は幼馴染みに合わせて早起きときた』

 

「やること詰まってるんだから仕方ないだろ……ふわ」

 

『しばらく寝ているといい。今日の仕事は終わっているのだろう?』

 

「いやでも、そんな訳には、まだ仕事中なんだし……」

 

『なあにその時が来たら起こしてやろう。よし、子守唄でも歌ってやろう。こういう時はオーブニカのメロディが一番だ。たたたた〜たたらららんらんらん〜』

 

「はあ、チェレーザそんなんで眠れる訳ないだ──ぐう……」

 

『わあ本当に寝た。ちょっと引くな』

 

 お前のせいだろ! という翼の幻影が大空の向こうで叫んだ気がしたが、チェレーザは特に気にしなかった。

 

 ウルトラマンを倒したのが一週間前。

 太平風土記の変化に気づいたのは五日前。

 勇者たちの退院が三日前。

 その間安芸の仕事の手伝いや細々とした報告書を仕上げ、勇者たちの入院中には見舞いにも通っていた。仕事は増えているのにやることを増やしているのは真面目というか不器用というか。

 

『だがおかげでずっと試せていなかったアレが試せるな』

 

 シュババッとチェレーザが心の中で気合を入れた。

 

『タスクの体……お借りします! とうっ!』

 

 途端、翼がぱちりと目を覚まして、体をぐいんぐいんと動かし、シュババッとキレキレのポーズを決めた。

 

「愛と善意の伝道師、クレナぁぁイ、タスクです!」

 

 翼の意識を眠らせたまま()()()()()()()()()()()

 

「うん、上手くいったな。前眠ってる時には上手く動かせたからもしかしてと思っていたんだ。ふっふっふ、流石私だ」

 

 憑依してすぐの頃こそ勝手に主導権を奪うと言ったこともこなしていたが、翼はどうにもチェレーザとの相性が悪い。というか、非常に我が強い。

 本来は半分休眠状態になるはずの意識をそのまま保ちチェレーザの方を押し付けている。

 

 この状態は"翼となり変わって完全無欠のウルトラマンになりたい"チェレーザからすると少し避けたい状態だった。

 

「ええと、パソコンパソコン。少年が上司から渡されたデータは……よし、あった」

 

 チェレーザはこの地球に来る前にはとある大企業の社長を務めていた男……ガス状生命体であり、彼ほどにもなればこの程度お茶の子さいさいである。

 

「ふうむ、見たところ疑わしいところはないが、それがかえって怪しいな。特にこの神世紀とかいう元号……これができた298年前の情報がなさすぎる。何があったんだ」

 

 チェレーザが翼の身体で出してあったお菓子の一つを口に放り込むと思考を巡らせる。

 

(そもそも『大赦』って名前はなんだ。何かに許しを媚びているようだ。少年はそういうものだって受け入れていたが、些か不自然が過ぎるな)

 

 大きいに赦すで大赦。彼から見ればこれを組織の名前に据えるのは大変センスがないように見えた。ついでにどうせなら地球防衛隊とかにすればいいのにとか思った。

 

「むむむ、やはりパスワードか……時間をかければいつかは解けるかも知れんが、こういうのは私の本職じゃないのだぞう」

 

 チェレーザがため息混じりにパソコンをいじろうとした時、蔵書室の扉が控えめにノックされた。

 

「こんにちはー! 紅さんいますかー!」

 

 聞こえた声は銀、園子、須美の三人分。

 

(む、もう来たのか……。じゃあ少年に交代……)

 

 そこでチェレーザが手を口元に当て考え込む。

 別に起こすタイミングについては指定しなかったな、と。

 

「あら、いないのかしら」

 

「ううん、勝手に入っちゃ駄目なのか?」

 

「それはこの前やめてってお願いされたじゃない。ほら、紅さんが……」

 

「あー、オケオケ、そうだったな」

 

「こんにちは〜、お菓子食べに来ました〜」

 

「ちょっと、違うわそのっち、太平風土記のことを聞きに来たのよ」

 

「でも今度お菓子食べにおいで〜ってお見舞いに来てくれた時言ってたよ〜?」

 

「ああもうあの人は……!」

 

「すみませーん、誰かいますかー」

 

 今度は少し扉が強めにノックされた。

 

(少年の一人称は『オレ』。話し方は基本敬語で、少女たちは基本名字呼びだったな。それで確か三人といる時は基本敬語で……おっとと、幼馴染みには少しフラットに、と。ヨシ!)

 

 チェレーザがノックされた扉を開き、三人に輝かんばかりの笑みを見せた。

 

「お、開いた」

 

「ふ、お待たせしてしまった。いや何、わたーーー『オレ』にも手を離せない仕事があってね」

 

「なーんだ、そうだったんすか。それならそうと早く答えてくれればよかったのに」

 

「はっはっは、確かにそうだねぇ。君が正しい! 勇者ポイント100ぅ」

 

「おお、なんかよくわからないポイント貰った」

 

「ええと、お邪魔じゃなかったですか……?」

 

「いやいや、そんなことないよ、鷲尾さん。さ、お菓子もある。中に入りたまえ!」

 

「わーい、お菓子だ〜、サンチョのクッキーとかもありますか〜」

 

「さ、サンチョはぁ〜……ないかなぁ? だが! ジュースは置いてあるぞぉ〜!」

 

「わーい、やったー」

 

「紅さん、随分高揚しているようですけど……何かいいことでもあったんですか?」

 

「君たちが来るのを今か今かと待っていたのだよ! さあ、先日の戦いのことを語り合おうじゃないか!」

 

 (チェレーザ)に通された三人はいつぞやの時のように、お菓子の乗った机を囲んで座る。

 

「すみません、来るのが遅れてしまって。少し神樹様の方に行っていて……」

 

「あー良い良い。気にしない気にしない。オレはその程度気にしない。

 はい二人にはジュース……鷲尾さんはお茶で良かったかな」

 

「え、あ、ありがとうございます」

 

「おお、わっしーの好み覚えてるんだ〜」

 

「はっはっは、これでも長い付き合いだからね。ね、鷲尾さん」

 

「紅さんウインクできてないっすよ」

 

「はっはっは、幻覚ですよ」

 

「いや相変わらず誤魔化し方が雑……」

 

「というより誤魔化す気がないのよ。いつもそうなんだから」

 

「はっはっは、鷲尾さんには勝てないな」

 

 バチョーンと下手くそなウインクを決めたチェレーザが心の中で密かにほくそ笑む。

 

(ふ、先日の少年の文言を真似しているだけでもかなり上手くいくな)

 

 チェレーザは高度に彼の身体と一体化しており、視覚や聴覚と言った語幹に関しては常に共有状態にある。

 翼のチェレーザへの警戒から、記憶を辿ったり心を読んだりといったことこそできないものの、合体してから経験したことならばチェレーザは翼と同じ視点から記憶しておくことができる。

 

 彼はもともと他人の身体を乗っとる『精神寄生体』。宿主に言動を似せるくらいはできて当然なのだ。

 

(それにしても演技力が高い……流石私だ……たぶんハリウッドにも通用するセンス……ウルトラマンとして有名になったあとはハリウッド俳優として売り出そうかな……)

 

 今のハリウッドに人はいないけどね。

 

「そういえば、なんすけど、紅先生!」

 

 一口チョコを口に放り込もうとしていた銀がハッと思い出したように手をあげた。

 

「この前の戦いでちょっとわかんないことあったんで、質問いいっすか!」

 

「ほう、元気があってよろしい! このオレになんでも聞きたまえ!」

 

「あざっす!」

 

「あ、ミノさんそのチョコ食べないなら私にちょうだい〜」

 

「うわわっ、園子のは自分のがあるだろ!」

 

「ミノさんのけちんぼ〜」

 

「もう、私の麩菓子をあげるからそのっち我慢して」

 

「なんかわっしーの好きなお菓子っておばあちゃんが食べてそうだよね〜」

 

「おばっ」

 

 ぴしりと固まった須美の横でチョコを頬張った銀が翼に向き直る。

 

「アタシたちって結構周りを気にせずズガーンと敵と戦ってたじゃないっすか」

 

「うむ、中々派手だったな」

 

「でしょでしょ? 

 だから『流石にこりゃバレたな! アタシも有名人か!』って覚悟して学校行ったんですけど、なーんも言われなくて。

 それどころか、そもそもクラスの友達とかは避難警報とかもなんで出たのかイマイチ分かってないらしくて」

 

「せっかくサインの練習して来たって言ってたのにね〜」

 

「コラ園子! それ内緒って約束したろ!」

 

「えへへ〜そうだった〜。うっかりしてたんよ〜」

 

「はあ、園子はさぁ……。

 や、アタシたちを遠目に見てわかんないのはまだわかりますよ? 

 でもあのあのハサミのやつとか……あとウルトラマン? が見えてないのってなんか変だなーって。あれだけでかけりゃ嫌でも目につきそうだと思うんすけど……これってなんでなんすかね?」

 

「ううむ、なんでだろうね」

 

「…………や、紅さんに聞いてるんですけど」

 

「え?! 私……じゃなくてオレ?!」

 

「ええ……なんでも聞けって言ってたじゃないっすか……」

 

「はっはっは、言ったなぁ!」

 

 チェレーザが高笑いをしながら天井を見上げた。

 

(ヤッベ、なんでだっけ。

 なんか少年が報告書にまとめてたような気はするが私はその時『ウルトラマンオーブ傑作名台詞ベスト10』選んでたからな〜〜〜! 

 もう少年起こして任せるか……いやでもこのままこの身体乗っ取りたいからなぁ。なんかいい感じに知識だけ出てこないものだろうか。カム! 少年の記憶! ハーッ!)

 

 という、思考を0.01秒の間に巡らせるチェレーザ。彼は知能の面で言えば常人の翼と比べれば比べるまでもない高さである。

 まあ、だからと言って何か解決策が出るわけではないのだが。

 

 けれど、天運はチェレーザを味方したらしかった。

 

 首を傾げる銀と天を仰ぐ少年の横で、マイペースな園子が、先ほどおばあちゃんと言われたショックで固まっている須美を揺り起こした。

 

「わっしーわっしー、わっしーはわかる〜?」

 

「……はっ! 今私はなんかおばあちゃんみたいって……」

 

「そんなことより〜、かくかくしかじかだよ〜」

 

「私たちの姿が見えてなかった理由?」

 

「そうそう、わっしーならわかるかな〜って」

 

「もう、それはちゃんと安芸先生が説明してくれていたでしょう?」

 

 こほん、と須美が軽い咳払い。

 

「本来ならバーテックスが来た時点でこの世界の時間は止まって、神樹様が世界を樹海へと変える。これが『樹海化』と呼ばれる現象ね。

 でも、あの光の巨人の時は上手くそれが機能しなかったわよね」

 

「うん、アタシたちの初陣の時とかは普通に樹海になってたよな?」

 

「だから、大赦の人たちもびっくりした〜って言ってたよね」

 

「でも、結果として樹海化は起こらなかった

 だから神樹様が次善の措置として、戦闘が起こった場所の認識だけをずらしたそうよ」

 

「んんん?」

 

「大赦でない人たちはお役目のことはもちろん、バーテックスのことも知ることはできない。

 神聖なお役目だし、何よりそんな者がいるって知ると悪戯に混乱を招いてしまう。だから、原則私たちのお母様たちでも詳しいお役目のことは知らないの。

 きっと、どうしてもという時は安芸先生が私たちのお父様やお母様にだけはお話しするんじゃないかしら。

 銀、これでわかった?」

 

「ああ! つまり園子つまりどういう事だ!」

 

「ちょっと銀!」

 

「みんながびっくりして大赦に怒ったりしないように、神樹様が戦いの場所は隠してくれてるんだよ〜」

 

「なーるほど、さっすが神樹様ぁ!」

 

「まあ、それでも完璧には隠せなかったから大赦の人たちが電線の事故だ〜とか、いろいろ言い訳に苦労してるんよ〜」

 

「……そういうことね」

 

 呆れたように軽くこめかみを抑える須美が、それまでボケーっと話を聞いていたチェレーザに目を向けた。

 

「私たちの理解、どこか間違ってるとことかありませんでしたか、紅さん」

 

「……あ、オレか! OK! パーフェクトな理解だったぞう! 鷲尾さん!」

 

「紅さん」

 

 ジトっと須美が恨めしげに(チェレーザ)を見つめ、適当な相槌をうった彼は不思議そうに首を傾げた。

 

「なにかな、鷲尾さん!」

 

「えっ、いえ……その、英語が……」

 

「うん、英語?」

 

「……いいえ、なんでも、ないです……」

 

「? どーしたんだよ、須美」

 

「別に、どうもしないわ、銀」

 

 何故か急に口ごもる須美に、眉根を寄せるチェレーザ。

 少し考えてみたが特に何かをミスしたとは思えない。

 

 だが、何やら須美が拗ねているらしいのは事実。

 

(まったく、子どものことはわからんな。

 困ったとあればすぐにすねて不満を表す。

 それに加えて大抵の子どもは、往々にして自分が間違っとるなんぞつゆ程も考えないんだから、本当に厄介だ)

 

 自分を完全無欠のヒーローと疑わない宇宙人が呆れたように独りごちる。

 まあこのまま拗ねられても良くないし、ちゃーんと褒めて機嫌を戻してやろう、と加えて思う。

 

 空気を読まないだけで気遣いができないわけではないのが彼だった。

 

「ウルトラマンとの話をしていて思い出したが……この前の戦い、鷲尾さんはナイスな活躍だったぞう」

 

「え?」

 

「特に最後バルターーー怪獣が落ちてる時にウルトラマンの鞭を逸らした一撃! アレには救われた……と思うぞう! 

 まさに『窮地に一矢を得る』! 

 ピンチのピンチのピンチの連続、そんな時に仲間からの助けが入るという意味だよ! どうかな?!」

 

 チェレーザが「決まった……」と心の中で自身を褒め称えた。

 

(スタンディングオベーションものだ。

 さあ、あとは

 『わー紅さんありがとう〜。いつもの紅さんよりも100倍素敵だわ! (裏声)』

 『ふっ、オレと君の中だろう鷲尾さん……いや須美』

 『ヒューヒュー! 熱いぜ!』

 『私紅さんのこと好きだったのに……(ホロリ)』

 と私を褒め称える声が聞こえ……聞こえないな????)

 

 あれ? とチェレーザが机を囲む三人に目を向ける。

 

 そこにはぽかんとした顔の銀と、不思議そうに小首を傾げる須美がいた。

 

「あの紅さん」

 

「うむ?」

 

「なんで、紅さんが樹海での戦いのことを知ってるんですか? 映像とか残ってませんでしたよね?」

 

「……………………」

 

「何か大赦の方は私たちの知らない方法で樹海の中を確認できるんですか?」

 

 須美の言葉にうんうん、と銀も首肯で肯定し、園子はその横でむにゃーっと寝始めた。

 

「ーーーーーー」

 

 チェレーザが再び天を仰ぎ、そしてふっと、気障に笑った。

 そして立ち上がると徐にデスクの方へと歩き出す。

 

「紅さん?」

 

「その話をするには少し手順が必要でね」

 

 デスクに行ってなにか言い訳できるようなものを探そうとする微妙にみみっちい手段に出たチェレーザ。

 だが、彼は眼を瞑って腕を組み歩いていた──本当に意味もなくカッコつけて──せいで、足元にある翼がゴミ箱に入れ損ねたゴミに足を取られてしまう。

 

「あ」

 

「え」

 

「あちゃー」

 

「すぴー」

 

 滑った足は天へ向けての反抗を示すように雄々しく突き上がり、頭は世界を守る大地へと感謝の平伏をするように下がり、まるで美しき黄金長方形を描いた螺旋の回転を体現した少年の身体は、0.1秒後に床に後頭部を強打した。

 

 ゴン、とわりとシャレにならない音が蔵書室に響く。

 

 その拍子に、心の中で声ならぬ悲鳴が上がる。

 

(あいっだああああああああああッ!)

 

(あっ、少年起きちゃった)

 

 どうやら頭を打った時の痛みが翼の意識を叩き起こすトリガーになったらしかった。

 

(いったぁ!? え? なに?! 取引に夢中になってて黒ずくめの男から後頭部ぶん殴られたりした?!)

 

(おはよう少年)

 

(ああ、おはようチェレーザ……って、なんで天井が見えてんの。それになんか視界の端に美森ちゃん達も見えるんだけど)

 

(……あとは任せた!)

 

(おまっ、勝手に体動かしたな! おいこらチェレーザァ! なんとか言えー!)

 

 

 

 

 

 

「お見苦しいところをお見せしました」

 

 その後、体の主導権を返してもらった翼が頭を下げる。

 

「いやいや、いーんすよ、アタシ達は。むしろ、紅さんの方が心配というか」

 

「ははは、心配痛み入ります。でもオレは大丈夫ですよ」

 

「すごいたんこぶになりそう〜。痛い時はね〜、何か別のことに夢中になるといいんだよ。はい、これチョコレート。おいしくて夢中になることうけあい〜」

 

「ありがとうございます乃木様……まあ、これオレが出したお菓子なんすけどね。あと、あーんは勘弁でお願いします」

 

「ちょっと紅さん動かないでください。手拭いがずれちゃうじゃないですか」

 

「いやそれくらい自分で抑えるって」

 

「駄目です! あんなにすごい音だったんですから……あとで酷く腫れても知りませんよ」

 

「いや、心配ないって鷲尾さ──」

 

「はいそうですか」

 

「あいたたたっ!」

 

 頭を強かにぶつけた翼をテキパキと治療する須美が、軽くタオルの上から頭を小突くと、情けない声が上がる。

 

「ほらやっぱり、全然大丈夫じゃないじゃないですか」

 

「……はぁ、ソーリーソーリー、オレが全面的に悪かったです」

 

「……わかれば、いいです」

 

 ぼそぼそと呟くような須美の返答に、あれ? と翼が首を傾げた。

 

「いつもの言わないの、『紅さん、英語じゃなくて日本語で』とか言うアレ」

 

 途端、須美の表情がほんの一瞬明るくなったが、すぐにむすっとしたような拗ねた表情に上書きされた。

 

「ーーーも、もう! わかってるなら最初から我が国の言葉だけで話してください! さっきなんか、わざと気づかないフリなんかして

 

 あっという間に須美の機嫌が良くなると、くどくどと須美の小言が矢継ぎ早に投げかけられる。それを頭を濡れタオルで冷やされている翼がげんなりとした表情で聞き続ける。

 

「だいたい紅さんはいつもだらしがないです! ゴミだってちゃんと拾っておけばこんな事にはならなかったのに」

 

「面目次第もない……」

 

「まったく、本当に私がいないと駄目なんですから」

 

 やれやれ、とでも言いたげだが、どこか得意げな須美が小言を締めると、ようやく話の内容が本来のテーマに帰ってくる。

 

「それで、太平風土記の記述のことだったよね」

 

 翼がぺらりと太平風土記のページをめくる。

 

「君たちもある程度は安芸さんに聞いていると思うけど、太平風土記っていうのは未来について書かれた本なわけですよ」

 

「それも適宜内容が書き変わっていくものなんでしたっけ?」

 

「そうそう。それで新しい記述が出たんだけど……本題に入る前にいつの間にか寝てた乃木さんを起こそうか」

 

「さっきまで起きてたのにもう寝てる……」

 

「すぴぴぴ……」

 

「こら園子寝てないで起きろって」

 

「むにゃむにゃミノサンチョ……」

 

「アタシは抱き枕じゃないぞー」

 

 銀にしがみつくようにして目を覚ました園子に、「この分だと話は聞いてなかったろうなぁ」と翼が苦く笑う。

 

「乃木さん、聞いてなかったかもしれないけど今はですね……」

 

「それで太平風土記には新しくなんて書いてあったんですか〜?」

 

「えっ? さっき寝てたよね君。もしかして狸寝入りだったりした?」

 

「ちゃんと寝てたよ〜、あなたの声すごい柔らかい感じでいつの間にかぐっすりで、楽しい夢も見れました。ありがとうございます」

 

「わー、紅さんすげー顔してる」

 

「そのっちのそれ初見だとやっぱりびっくりするわよね」

 

「あ、これが新しく出てきた文字ですか〜? なんかにょろにょろしててヘビさんみたい〜。へいへい、げんき〜? あれれ〜、ヘビさん動かないね」

 

「まあそりゃ文字だからね」

 

「いつも本の中で並べられてて窮屈そう。踊ったりしてたらいいのにね」

 

「踊ってたら……? うーん、それは確かに楽しそうな提案だけど、踊られたら読めなくなっちゃうからなぁ……」

 

「それでここにはなんで書いてあるんですか〜?」

 

「お、おお、今度はそっちに戻るのか。君との会話のペースを掴むのはなかなかコツがいりそうだ。少し解説するからちょっと待ってな」

 

 思考の整理も兼ねて翼が軽くとんとんとこめかみあたりを叩く。

 そして、蔵書室の倉庫の中から引っ張ってきたホワイトボードにさらさらと太平風土記の内容を書き写していく。

 

「園子、なんて書いてあるかわかるか?」

 

「えへへ〜、さっきヘビさんみたいって言ったよ〜」

 

「だよなー。漢字はわかんね」

 

「これは、万葉仮名……ですか?」

 

「お、流石、みも……鷲尾さん。

 でもコレかなり独自色が強いから後世の人が形だけなぞって使ったんだと思うんだよね。それは多分神樹様のお力を正しい形で再現するために……とか解説しても特に意味ないし、端折ってわかりやすく現代語訳したのだけ書くとしますか」

 

「お、やたっ」

 

「わーい」

 

「そんなぁ」

 

「小難しい日本の昔の話がしたいなら後でいくらでも付き合うから今は我慢してな……っと」

 

 せっかく日本の話をできそうな話題を早々に切り上げられた須美が残念そうに眉をハの字に肩を落とすのを尻目に、翼があらかじめ訳してあった内容を先ほどと同じようにホワイトボードに記していく。

 

「大地の理書き変わりし時吹き荒るるは

 地を燃やし闇を無に帰す光の巨人

 其は原初にして終焉の名を冠し

 焔の剣にて勇者を討つ

 業火は魔剣にて切り裂けず

 纏う嵐のみが道を開く」

 

 書いた文字を読み上げて、翼がペンを置いた。

 

「……これは」

 

 須美が、少し考え込む。

 

「ううーん」

 

 銀が必死に理解しようと頭を巡らせる。

 

(あの雲なんかこの前の怪獣さんと似てる〜)

 

 園子が怪獣の手で守ってもらったことを思い出しながらほわほわと雲を見る。

 

「一応オレの方でも訳はしてみたんだけどこれをどう見るのかについてはイマイチ考えが纏まってなくてさ。実際に戦う君たちに予言について知恵を貸して欲しくてさ」

 

「紅さんが自分でされないんですか?」

 

「オレは……なんというか、こういうの噛み砕くの苦手でさ。覚えた通りに訳していくとかは得意なんだけど」

 

 ぽりぽりと頭をかいた翼がひとまず自分の考えを話していく。

 

「たぶん焔の剣や業火といった単語があることからたぶん炎を使う敵なのかな、とは思う。文中にある光の巨人というワードからも、前回のウルトラマンみたいな敵なのは間違い無いだろうと見てるんだけど……」

 

 君たちはどう思う? と翼が聞く。

 

 一番早く手が上がったのはやはり、と言うべきか意外に、というべきか、須美だった。

 

「おー須美、もうわかったのか?」

 

「ふふふ、少々難解だけど、これも我が国の誇るべき文化の一つよ! 似たような形態の文は読んだことがあるもの」

 

 ふふん、と須美が得意げに歳の割に大きい胸を張る。

 彼女の将来の夢は日本について調べる歴史学者。その分日本への思い入れは深く、自他ともに認める国防オタクである。

 

「『大地の理書き変わりし時』って言うのはおそらく日没のことね。日が落ちて昼から夜に変わるのはいかにも世界の変転を表しているように見えるもの」

 

「おおっ、それっぽいじゃん!」

 

「そして次の『地を燃やし闇を無に帰す』は夜に変わった世界を炎で燃やすことの示唆だわ! 前の『ウルトラマン』も夜に現れたし、今度のバーテックスも夜に現れるとみて間違い無いと思うわ」

 

「おお! すげー……じゃん……?」

 

「銀?」

 

「いやなんというか、イマイチしっくり来なくて」

 

 銀が腕を組んで唸る。

 

「須美の解釈だと、変わった世界は夜ってことなんだよな? でもさ、その後に地を燃やすってあるけど、別に昼に燃やしてもよくね? なんでわざわざ夜に来んの?」

 

「そ、それもそうね……」

 

 銀の質問に須美がちょっとしゅんっとなる。もし尻尾でも生えていたならば先ほどまでぶんぶんと振られていたのがぱたりと動かなくなってしまったのが見えた事だろう。

 

「ねえねえ」

 

 不意にくいくいっと袖が引かれた。

 

「ん、どうかした乃木さん?」

 

「ちょこっとわからない単語があるんだけど教えてほしいな〜って」

 

「うん、別に構わないよ」

 

 ノリノリで太平風土記を読み解いていく須美と銀の横で、園子が指さした単語を一つずつ丁寧に翼が解説していく。それを聞いて園子は真面目にふんふんと頷き、じっと文言をみつめる。

 

「──ぴっかーんとひらめいた!」

 

 きらーんと園子の目が光った。

 

「ミノさんも言ってたけど、最初の文*1を夜との境目って言ったけど、そうすると次の地を燃やしってのがしっくり来ないんだよ〜」

 

「そ、そうね……まあ、ちょっと間違えちゃったかもしれないみたいな……」

 

「でもわっしーの考え方自体はすごくいいと思うんだ〜。だから、視点を少し変えてね、なんで敵は"変わった世界"を"燃やそう"としてるのかって考えてみるんだよ〜」

 

「なんで、燃やす?」

 

 銀が首を傾げた時、翼がぽんと手を打った。

 

「なるほど! ()()()か! 乃木さんマジで冴えてるな……すごいよ、君」

 

「えへへ〜、褒められた〜」

 

「? どーいうことだ、須美?」

 

「ええと、ど、どういうことかしら……」

 

「ほら、君たちはオレなんかよりもよく知ってるんじゃないの、"変わった世界"で、"燃えやすく"なるような場所」

 

「燃えやすく……って、あー! それって、あそこか?!」

 

「えっちょ、銀? わかったの?」

 

「なんだ須美まだわかんねーの? しょうがないな、この銀様が教えてやるとしよう」

 

 得意げな表情の銀がパチンと指を鳴らす。

 

「樹海だよ。あそこ、木の根っこだらけで超燃えやすそうじゃん!」

 

「じゅ、樹海っ?! で、でもあれって神樹様のお体の一部でしょう?」

 

「いや樹海って名前から分かる通り、アレは基本として『木』なんだよ。たぶん火がつけば、最悪伝播するように一気にが燃える……かもしれない」

 

「……じゃあ今回は樹海に敵を呼ばないように戦った方が良いってことに」

 

「いや、もし仮に敵がまたウルトラマンみたいなサイズの敵で……街の方に行って火事を起こされたら、避難とかでもカバーできない気がする」

 

 樹海化。

 それは四国を守る神樹の力で世界の時を止め、生物非生物を問わずその身体と一体化したバトルフィールド『樹海』に変えることで被害を抑えようとする神の御技。

 ただし、世界と一体化するということは、樹海が破壊されれば現実に被害が起きるということでもある。

 軽微な破壊であれば軽い事故や土砂崩れなどで済むかもしれないが、大きくなれば人の怪我や、最悪命にまで繋がるかもしれない。

 

 今は樹海化の不調から、勇者を起点とした三点結界を使わなければならないが、それでも一度発動すればバーテックスのような巨体が縦横無尽に動き回れない瀬戸大橋に押し込めるのは大きな強みだと言える。

 

「うーん、じゃああのハサミの怪獣さんに手伝ってもらうっていうのは〜?」

 

「手伝ってもらうって、どうするの?」

 

「すごく大きいバケツに水を入れて燃えたところに水をかけてもらうとか〜、えいやって」

 

「おいおい園子、そんなでかいバケツどこから持ってくるんだよ。それにあの怪獣だってまた来てくれるかもわかんないんだぞ?」

 

「……私は、来てくれるような気がするけれど」

 

「いやいや、悪い奴ではないとは思うけど、その保証はないだろ。な、紅さん」

 

「えっ、あー、おー、そ、そだね」

 

(相変わらず隠し事ヘタクソか)

 

(る、るせっ! オレをいびれそうなタイミングだけ出てくるなよチェレーザ)

 

 むむむ、と腕を組んでいた、何かを思いついたように園子がぴんっと指を立てる。

 

「じゃあじゃあ、うーんと壁の近くで戦うっていうのはどうかな〜?」

 

「壁の、遠くで?」

 

「ほら、瀬戸大橋の樹海って、すごーく広いよね〜。だから、壁際の方まで行けば、もし燃えちゃっても、被害が軽めで収まったりしない?」

 

「……神樹様の融合している場所のことか? 確かに神樹様の本体に近づくにつれて樹海の密度は濃くなるけど……まさか、人の方がそっちに重点的に集められて……」

 

「前樹海を見たときになんか先の方は色とか根も薄くて、分け御霊も少なかったからもしかしてと思って」

 

「……断言はできないけど、もし樹海と四国の融合箇所を決められているなら、たぶん瀬戸大橋の先の方は海や人がいない浮島が中心だから、なんとかなる、かも」

 

「おおっ! いいじゃん! お手柄だよ園子!」

 

「えへへ〜、わっしーやミノさんが先に色々話しててくれたからたくさんアイデアが出たんだよ〜」

 

「いやそれでもすごいよ。よくこれだけの情報から推察できたな……」

 

「謙遜しやがって、このこのっ」

 

「わー、ミノさんに髪がぐちゃぐちゃにされる〜」

 

 きゃっきゃっとじゃれ合う二人。けれど、須美はそんな二人を少し複雑そうに見ながら、机の上の太平風土記に目を落とした。

 

「スカート、シワになっちゃうぜ」

 

 ハッとしたように須美がいつの間にか強く握っていたスカートの裾を手放した。

 

「そのっちはやっぱり凄いです」

 

「そうだね、何も考えてないみたいに見えたけど、とんでもないな。頭が柔らかくて、回転も早い」

 

「それに比べて私は、見当違いの事を言うし、樹海のことだって最後まで気づかなかったし……きっとこの中で一番頭が固いのは私です……」

 

「でもその分一つのことに夢中になれるじゃないか。自分の意見はしっかり伝えられるし、そういうのは君の強みだろう?」

 

「でも……」

 

「はいはい、自虐は終わり。オレは君のそういうところ、好きなんだから自信持ってくれよ」

 

「すっっっ」

 

「はっはっはっ、相変わらず耐性ないなぁ、みも──鷲尾さんは」

 

「か、からかいましたねっ!」

 

 キリッと睨む須美に、にこりといつもの笑みを見せる翼。

 叱ったり叱られたり。からかわれたりからかったり。

 

 割といつも通りの二人の距離感なのだが、そんな二人を銀と園子が面白そうにじっと見ていると、きろりと須美の視線が銀に向いた。

 

「銀、そのっち、何でそんなにやにやしているの」

 

「ほこうやってみると二人って本当に幼なじみなんだなーって〜。私にはいないから不思議な感じだなーって」

 

「なんというか、仲良いって言うか、気安いって言うか、通じ合ってるって言うか、なんていうんだろうな、こーいうの、めんどり夫婦?」

 

「それをいうならおしどり夫婦だよ……というか、そもそも夫婦じゃありませんっ!」

 

「おお、いいよいいよ! 鉄板の返しだよわっしー! わかってるね!」

 

「なんの話よ!」

 

「ちょっとメモ取ってもい〜い?」

 

「駄目!」

 

「紅さんの方はあんまり焦ったりとかしないんすね、須美とかこうなのに」

 

「まあ()()()()()とは長い付き合いになるからなぁ、ボチボチこういうこともあるわけですよ」

 

「みもりちゃん?」

 

 銀が聞きなれない単語をおうむ返しし、露骨に翼が「やべっ」という顔になる。

 

 慌てて翼が須美の方を振り返ろうとして────目の前から勇者の三人が消え失せた。

 

『おいおい! 少年みんな消えてしまったぞう!』

 

「いや、違う。消えたんじゃない。時間が止まって、その間に大橋の近くに"転移"したんだ」

 

『む?』

 

「今ならわかる……『ウルトラマン』が、来る」

 

 翼が蔵書室の窓を開けて向こうの空を見て、直感的にその空の向こうから迫ってくる圧倒的な『光』を感じた。

 

 自身が何かから与えられた全てを飲み込む『闇』とは正反対の、全てを照らす『光』の力。

 

『なるほどな、つまりは私たちの出番というわけだ。ほれ、私に体を私に渡したまえ』

 

「断る」

 

『にゃにおぉっ?!』

 

「チェレーザは勝手に戦いすぎだ。最初はオレだけで戦う。今度こそ、みんな傷つけさせない」

 

『はー、ま、やれるだけやってみたらいい。すぐに私の力がなければならんという事を思い知るだろう』

 

「そんなの、やってみなきゃわからないだろ」

 

 翼が、走って蔵書室から出ると光がやってくる方へと────勇者たちの転移した瀬戸大橋の方へと向かって走り出す。

 

『ほら行くぞ! 少年!』

 

「ああ、行こうチェレーザ!」

 

 念じると内的宇宙(インナースペース)より『ジャイロ』が現れる。

 

「コネクト、バルタン星人!」

 

 クリスタルを手に取り、ジャイロに嵌め込む。

 

《 バルタン星人! 》

 

 音ともに剣持つバルタン星人のビジョンが現れ、内的宇宙(インナースペース)の中に溶ける。

 

『少年、わかってるな? レバーを引くのは』

 

「三回!」

 

 一、二、三、引いた力が闇へと変わり、チェレーザの掛け声に翼が声を合わせる。

 

 

『「 纏うは剣! 闇纏う魔剣! 」』

 

 

 瞬間。日が沈み夜が世界を覆い隠すように闇が広がり。

 拳を突き上げた少年を、天を衝く怪獣へと姿を変えた。

 

 

 

 

 

 闇の柱が屹立し、魔剣のバルタン星人が勇者たちの目の前に降り立った。

 

「あの時の、怪獣」

 

「須美の言う通りだった、本当にきた」

 

「ということは……やっぱり、来るみたいだね、バーテックス」

 

「予言の内容をまだ全部読み解けてないのに……」

 

 バルタンが背後に三人を庇い、今の世界を見渡す。

 

「樹海化は……起こってない。敵が来るまでは大橋で戦うしかなさそうだ」

 

『今度はポカをするんじゃないぞう? 良いかね、ウルトラマンは街を壊さないようにすべきだが、ある程度は壊さないと緊張感も出ないし、それに仲間にバカヤローと言ってくれる人間がいれば──』

 

 チェレーザがやたらと長い蘊蓄を語り出す。

 その刹那、銀閃が瞬いた。

 

『──剣を横に振れっ!』

 

 チェレーザに珍しい真剣な声につられるように翼が言われるがままに剣鋏を振るうと、何か硬質的なものがその剣先にぶち当たった。

 

「っ、攻撃っ?! どこからっ」

 

「それは後に考えよう! 敵が来たら打ち合わせどおりすぐに三点結界で大橋の一番向こうに飛ばすよ!」

 

「応よ! 気合入れてこーぜ!」

 

 がいん、と飛んできた銀色のものが空中で大きく弧を描きながら回転しつつ、それを放った主人の元へと帰っていく。

 

『まさか、今のはアイス──いや、そんなまさかっ!』

 

 銀閃が大橋の向こうの『彼』の手に戻り、そして、主人と共に再びその姿を表す。

 光を宿した瞳。銀と赤、そして青の体。そして、手には二つの『スラッガー』。

 

 そう、君の名は──。

 

 

『──ウルトラマンゼロッ!』

 

 

 ゼロの手の中の二対のゼロスラッガーが閃いた。

 

 バルタンはそれに食らいつくように遮二無二に剣を構え受け止めたが、二つあるうちの一つは弾くことができず肩口を浅く切り裂かれる。

 

「ぐ、ぐううっ!」

 

 バルタンは半ばカウンター気味に蹴りを叩き込み距離を離そうとするが、ゼロはそれを軽々とガードしてさらにバルタンとの距離を詰める。

 

「うっそ、だろっ!」

 

『少年! ゼロはウルトラ兄弟のレオ兄弟から宇宙拳法を教わっている! 近距離戦は自殺行為だぞ!』

 

「そう、言われても! このウルトラマン、バルタンの鎧を豆腐みたいに……っ!」

 

『ええい、ほら、もっとこう、上手くやらんか!』

 

 だん、とゼロがバルタンとの距離をさらに一歩詰めると、ゼロスラッガーが瞬きの間にバルタンを切り刻んで行った。

 

「があああああっ!」

 

 傷口から滲むように闇が漏れ出す。それはまるで人間が怪我をした時に流れる血のようだった。

 

 バルタンがダメージに足が止まり、剣が下がる。

 

 その隙をゼロは見逃すことなく、手に持つ二つの万物切り裂く刃(ゼロスラッガー)を、ブーメランとして投擲しバルタンの首を狙う。

 

「そ、りゃあっ!」

 

 が、投げたゼロスラッガーが空中で炎の斧に迎撃され、弾かれる。残る一つも槍を器用に扱う園子によって逸らされ、あらぬ方向へと飛んでいってしまう。

 

「──今っ!」

 

 そしてその僅かな間に差し込むように須美の矢が飛び、ゼロの肩に突き刺さり、一秒の時間をもって爆発する。

 爆煙が立ち上り、ゼロの視界を僅かに覆い隠す。

 

 今だ、と翼が呟く。

 

 右手の魔剣を構え、そして勢いを乗せた横薙ぎの斬撃を繰り出した。

 ゼロのスラッガーが全てを斬り裂く刃なら、バルタンの剣鋏は全てを斬り裂く魔剣である。

 どちらも生半な武器では刃こぼれさせる事すらできない金属で作られており、きっと武器の面では互角と言える。

 

 ならば、二人の差を分けるのは使い手の技量に他ならない。

 

「──いないっ?!」

 

 剣が敵の体を捉えることはなく虚しく空だけを斬り、バルタンの目の前からゼロの姿が消えた。

 困惑したように翼が辺りを見回して、頭上に一筋の影が差す。

 

『違う少年、上だっ!』

 

 弾かれるように翼が頭上を見上げると、そこにはまるで小馬鹿にするように腕を組むウルトラマンゼロの姿があった。

 そして彼は、愚かな人間を、怪獣を見下すように鼻を鳴らして()()()()()()

 

『こ、こいつ〜〜〜コピーのくせに偉そうに〜〜〜!』

 

 翼が上に向けて剣を振るうが、ゼロはまたもや姿が掻き消えたようにさえ見える高速移動を行い、バルタンの背後に現れるとバルタンの背中にヤクザキック。

 

「こいつ、一々攻撃が荒っぽいな!」

 

 転がるようにバルタンが大橋の方へと吹き飛んで行き、ゼロが追撃のスラッガーを飛ばそうとして、気付く。

 

 自分の周囲に三色の三角形が描かれている。

 

「三点結界! 行くよ!」

 

 無垢なる少女たちの祈りが届き神樹が世界から隔離すべき対象を捕捉し、花を吹雪かせ樹海を展開しようとする。

 

 だが、その直前、ウルトラマンゼロの体に焔が走る。

 

《 ウルトランス! ファイヤーモンスフレイム! 》

 

 翼の目に、一瞬、ゼロの背後に鳥のような燃える怪獣の姿が見え、それが溶けるようにゼロと重なる。

 

《 ストロングコロナゼロ! 》

 

 ゼロの姿が()()()()

 

 スラッガーは金に、体は赤と銀に、宿す力は一層熱く、紅く。

『ストロングコロナゼロ』。

 ゼロを模したバーテックスのオリジナルがかつての戦いで得た、灼熱と格闘能力に特化した『前に進む力』。

 

 そして、ゼロは拳に火炎を集めると地面を殴りつけ──三点結界の構築を粉々に破壊した。

 

「きゃあああっ!」

 

「お、う、うおわっ!」

 

「ーーーっ」

 

 武器を地面に突き刺していた三人が爆炎の勢いに吹き飛ばされて、そのうちの最も近くにいた園子に向けて額のランプから緑色の光線──『エメリウムスラッシュ』を放った。

 

『危ないっ!』

 

 翼が叫び、光線から身を呈して園子を庇うと、その背中にエメリウムスラッシュがぶち当たる。ウルトラマンのエネルギーであるスペシウムも多大に含む光線故に、その威力は絶大。

 ただでさえスペシウムに弱いバルタンへの効果は抜群である。

 

「ぐ、ううううっ」

 

 翼が苦悶の声を上げ、光線に傷つけられた鎧の間から血のような闇が滲んで空気の中に溶けていく。

 

「怪獣くん……」

 

 翼がバルタンの瞳で園子を見下ろして、怪我がなくて良かった、と心の中で呟いた。

 

 そして、また立ち上がると剣を振るい紅蓮のゼロに向かっていくが、赤子扱いでまるで勝負にすらならない。

 

「攻撃が当たらない……!」

 

『む、無理なんだよ少年! ウルトラマンゼロだぞ?! 一度は光の国を滅ぼした大罪人を一人で圧倒したバケモノだ! そのコピーと言えど私たちに勝てる存在じゃない!』

 

 チェレーザが情けなく叫び、翼の心の中に、弱気の陰が差した。

 

(わかってるよ、そんなの)

 

 ウルトラマンゼロ。

 おそらく彼が予言にあった"地を燃やし闇を無に帰す光の巨人"。

 闇から出でし翼のバルタン星人では勝てないと、その予言に示されてしまっている。

 

(オレじゃあ、こいつに勝てない)

 

 ならばチェレーザに任せるかと一瞬考えそうになって、そんな自分に都合のいい事だけを任せられるか、と首を振った。

 

 敵わないことを知りながらも向かってくるバルタンをゼロがその燃える拳と、無双の刃で斬り刻んでいく。

 勇者たちも斧を振るい、矢を放ち、盾で守るが、バルタンの身体は刻一刻と死に近づいていくことを緩やかにすることしかできない。

 

 その様子に、チェレーザ根負けしたように叫ぶ。

 

『ええいわかった! 少年ここはいいから引け! 勇者たちが三分耐え、相手が弱ったタイミングでもう一度攻撃を仕掛けよう! それしか私が生き残る術はない!』

 

「そんなの、できるわけがないだろ……守らなきゃ、いけないんだ」

 

『あーもう! この頑固者! わかった! じゃあクリスタルだ! この前エレキングのを手に入れていただろう!』

 

「はあ、はあ、それで、勝てるのか……?」

 

『知らん! だが当たらん攻撃を続けるよりは100倍マシだ! ほら、ジャイロのバルタン星人をエレキングに変えろ!』

 

 心の中の世界でモヤモヤのチェレーザが翼にクリスタルを投げ渡す。

 受け取った翼はバルタンのクリスタルを外し、エレキングのクリスタルを嵌め込む。

 

『よし行くぞう! 纏うは雷──』

 

「ま、待ってチェレーザ」

 

『あん?』

 

()()()()()()()()っ! それどころか、全然反応してる様子もない!」

 

『なにぃっ?! ほらもっと、こう、勢いでビュッとならんもんかね!』

 

「わ、わかんないよそんなの!」

 

『あーもう私たちいっつもこんなのぉ……』

 

 ゼロの鋭いかかと落としが叩き込まれ、バルタンが足をついた。

 この時点で、戦闘開始から僅か30秒。

 

『こう、なったら……せめて、一矢だけでも!』

 

 翼がハサミ閉じて、身体の中からエネルギーを集めハサミの中に充填し、破壊の光線へと変える。

 

『白色ーーー破壊光線ッ!』

 

 膝をついた姿勢から放つ破壊の光線。このバルタンにとって最大威力の遠距離攻撃であり、ウルトラマンを撃破には至らなかったものの、大きなダメージを与え最後の一撃へと繋げたもの。

 

「──セェイヤァッ!」

 

 だが、それをゼロは頭のゼロスラッガーを射出し、真っ二つに切り裂いて見せる。

 

 そしてバルタンの腹を掴むとジャイアントスイングのように豪快に回転させる。

 まるでプロレスのワンシーンのような技だが、ウルトラマンの規模とゼロの怪力が合わさればそれだけで()()()()()()()

 

 まるで火災旋風。ゼロの業火が混じった竜巻は、勇者たちを近づける余地すら与えずに、そのままバルタンを遙か空の彼方へと投げ飛ばした。

 

 バルタンは結界ギリギリの空まで浮かび上がると、数秒後に地球の重力による自由落下が始まる。

 翼とチェレーザの操るバルタンに飛行能力はないため、ただ落ちることしかできない。

 

「セェヤッ!」

 

 そして、ゼロが空を飛ぶ。

 バルタンが落ちてくる軌道上に立ち塞がると、ぐぐっと右手に引き絞るように力を溜めていく。一秒毎にゼロの拳に集まる熱量は勢いを増し、その身体が真っ赤に輝き始めた。

 

 須美にはその姿が、どこかウルトラマンが『スペシウム光線』を撃つ時の構えに似通っているように見えた。

 

「まさか、空のあの人を狙っているの?!」

 

 させない、と須美が弓を引き絞り貫通力を底上げする『溜め撃ち』を行う。けれど。

 

「竜巻が邪魔して、矢が、相手まで届かない……!」

 

 火炎の竜巻が、須美の援護を許さない。

 初戦では、ウルトラマンの時には何度もバルタンを助けた鷲尾須美の射撃が、今度は役に立っていない。

 まるで、露骨な『鷲尾須美の対策』をされているような、そんな感覚。

 

「あいつ空とか飛ぶのずるいだろ! 降りてきやがれぇっ!」

 

 銀が悔しそうに唇を噛み、ぐるぐると肩を回した。

 

「こうなりゃ一か八かアタシのオノを投げてあの怪獣を助け──」

 

「ミノさん! 私を竜巻に向けて投げて! 思いっきり!」

 

「あ、そ、園子? 突然なんだよ?」

 

「いいからお願い! 今いかなきゃ間に合わなくなっちゃう!」

 

 唐突な園子の頼みに銀は戸惑うが、彼女は園子が意味もなく何かを頼んだりしないことを知っていたし、何よりその瞳に宿る真剣な光に、戸惑いの気持ちなど一瞬で消え失せた。

 

 銀が園子の手を掴み、ぐるりと回転しながら、全力で投げ飛ばした。

 

「いっけえええええっ!」

 

 勇者唯一の前衛で一番力の強い銀故にその勢いは絶大。まるで弾丸のように飛んでいった園子は全く減速することなく竜巻に突っ込んでいく。

 

「──ここっ!」

 

 竜巻に巻き込まれる寸前、園子が槍を変形させ、盾へと変える。

 彼女の武器は槍であり、盾。そしてその盾の形態は、まるで"傘のような形"をしている。

 ならば、彼女の武器ほどわかりやすく、風に乗れる武器はない。

 

 けれど、だからと言って迷いなく炎に突っ込めると言えばそうではない。

 

 園子が迷いなくそれを行えたのは、『勇気』があったから。きっと彼女は三人の中では一番『勇気』がある、一人でも頑張れる『勇気の勇者』。

 

 園子は竜巻の勢いに乗りながら回転しつつ上空へと飛び、足りない高さは空中に固定した槍の穂先を足場にしつつ、ゼロの元までたどり着く。

 

「その熱いの〜〜、怪獣くんに当てないで〜!」

 

 園子の穂先が紫の光を宿し、エネルギーの臨界点を迎えようとしていたゼロの右腕に打ち当たり、高度に制御されていたバランスを崩した。

 

 ゼロの炎が、右腕を巻き込みながら、暴発する。

 

(ーーー乃木さんが、助けてくれた。オレに、チャンスを作ってくれた)

 

 それを上空に投げ飛ばされ落ちていたバルタンが見て、一つの覚悟を決めた。

 

(光斬も光線も駄目だ。なら、せめて、こいつを追い返す。オレのありったけのエネルギーを込めて、あいつを二、三日はこっちに来られないレベルの大ダメージを!)

 

 翼が光線を撃った時の感覚を思い出して、身体中からエネルギーを集めて、集めて、集めて、自分の生命力も、精神力も、変身に使った闇の力すらも集めて、全部全部全部身体に満たしていく。

 

(オレの身体はどうなってもいいから、今、あいつをぶっ飛ばす力をオレに寄越せ! バルタン!)

 

 翼の想いを、闇は形にする。

 

『待て少年! 今何をしようとしているっ!』

 

『あいつを、ぶっ飛ばすんだよッ! 全部纏めてッ!』

 

 バルタンが右腕を園子の一撃で負傷したゼロに近づいた瞬間、全ての攻撃の手段を投げ捨てて、溜めた力を一気に放出する。

 

 

『シャドウーーーエクスプロージョンッ!』

 

 

 バルタンの身体から闇と光が解き放たれる。

 それは純然とした破壊の力へと変わり、ゼロと、ゼロの起こした竜巻と、バルタン自身すらも巻き込み、大爆発を起こす。

 

 『シャドウエクスプロージョン』。

 それは剣のバルタン星人に宿っていた「自分の身体なんてどうなってもいい」という気持ちを形にしたような、『自爆技』。

 威力は高いが、それ故に自身の命を守ることもできない。

 

 その姿はまさに『命知らずのバルタン星人』そのもの。

 

『ーーざまあ…………みや、がれ』

 

 焼け焦げたバルタンが大橋の近くの海に向けて落ちていき、ゼロが予想外の一撃のダメージから、残り二分以上の戦闘可能時間を残してカラータイマーの点滅が始まる。

 

 その瞬間を狙いすましたように、時が止まり、止まった世界の中で花が散る。

 

「……鎮花の儀」

 

 散る花は神樹の化身。

 力の弱ったバーテックスを無理矢理結界の外に弾き出して、世界を助ける神樹の権能。

 

 その力が、カラータイマーが点滅するほど弱り切ったゼロにならば、作用する。

 

 花降る寂寞の中、花弁がゼロを包み、バルタンを包み、散る花に混ざるようにして消えていった。

 

「……勝った、のか?」

 

 銀が、戸惑うようにその言葉を溢す。

 

「いいえ、違う。なんとか、追い返せたの」

 

 須美があたりを見る。前のように街中でなかったため大きな被害はないが、橋を主戦場としたせいか、一部の鈴鳴子が焼け焦げている。

 

「きっと、あの巨人は何度も来るわ。きっと、私たちを殺すまで」

 

 何度も続くバーテックスと人間との争い。

 これは、そのほんの一戦でしかない。

 

 敵の名は『ウルトラマンゼロ』。

 黒き悪魔を撃ち破り、神に認められた『光の勇者』。

 

 

 

 

 

 

 

「が、がはぁっ、はあはあ、死ぬかと、思った……」

 

 大橋から少し離れた入り江で、びしょ濡れの翼が海から上がってくる。

 神樹が鎮花の儀である程度は沖合いから運んでくれたようだが、それでも地上まで飛ばすのは無理だったらしい。

 

 荒い息の翼が息を整えながら、濡れてしまった上着を小脇に抱えて大赦に向けて歩き出そうとする。

 

「チェレーザ、起きてる、か……」

 

『当たり前だ! 自爆とか何を考えているんだこの馬鹿者め! いやまあ大変ウルトラマンオーブポイントがある行動ではあったが……』

 

「はは、なら、悪く、ないかもな……()ぅっ」

 

 抑えた腕から血が滲む。

 ゼロから斬られた傷と、自爆の傷は変身を解除しても、まだまだ色濃く残っていた。

 翼は大赦の服のインナーを破いて強引に傷口をしばると簡単な止血の処理をする。

 

「前、ウルトラマンを倒した時は、怪我治ってたのに、な……あれ」

 

 ぽつり、翼の頬を水滴が打った。

 最初はぽつりぽつり、と数滴落ちてくるだけだったが、あっという間に水滴は勢いを増して、絶え間なく続く雨に変わった。

 

『げげっ、雨だぞ少年!』

 

「踏んだり蹴ったりな、全く」

 

『君はゼロに踏まれたり蹴られたりした側だろう』

 

「まあ違いないな」

 

 これ以上濡れないように翼が走って雨宿りできそうな場所を探す。

 すると、近くに人気のない神社があることに気づく。

 確か大赦の人間がたまに整備に来るだけの、半ば打ち捨てられたようなところである。

 雨が落ち着くまでにはここで雨宿りしようと、翼が神社の軒下に入ろうとして、それと全く同じタイミングで一人の少女が神社にやってくる。

 

「ふー」

 

「はー」

 

「偶然近くに神社があって良かった〜」

「偶然近くに神社があって助かったな」

 

「「 ん? 」」

 

 僅かに雨に濡れた金糸のような髪。黒い瞳に、白い肌は典型的な「お嬢様」と言った容姿であるにも関わらず、その内面から壊れ物のような印象を与えない少女。

 

 勇者の一人で鷲尾須美の友人、『乃木園子』がそこにいた。

 

 

 

 

「そうか、戦いの後はひとまず解散ってことになったんだ」

 

「うん、安芸先生が対策は明日やるから〜って」

 

「それなのに君は帰っている途中で雨に打たれてしまって……ん? ここって乃木家から反対の方向じゃ……」

 

「それがね、聞いてよ、たすくん。帰ってたらね、なんかすごーく綺麗な目の猫さんがいたんよ〜。それを追いかけてたらいつの間にか変なところにいて〜」

 

「ああ、そのタイミングで雨が降って来て……ん?」

 

「そうそう、だから雨宿りできる場所を探してたらね〜、この神社があって〜、しかも、たすくんまでいたから2倍びっくりなんだよ〜。お得だね〜」

 

「ちょ、ちょっと待った、乃木さん。その『たすくん』って何?」

 

「えへへ〜、あだ名だよ〜。わっしーはわっしーで〜、ミノさんはミノさん〜。だから、たすくんはたすくん」

 

「いやあだ名なのはわかってるんだけど……まあいいか」

 

 にこにこと「たすくん」と呼ぶ園子に毒気を抜かれたように、翼が頭をかいた。

 

(たすくん……(タスク)くん、でたすくん、かな?)

 

『少年、年下の少女に見惚れるのは良いがくれぐれも正体は隠すんだぞ』

 

(別に見惚れてねーよ)

 

『ウルトラマンに置いて正体を明かすのは一大イベント! それまでは隠しておくのが鉄則だ!』

 

(はあ、はいはいわかりましたよ)

 

 チェレーザの妄言を頭の端に寄せながら翼がため息混じりに園子に視線を滑らせた。

 

「……怪我、してないみたいだね」

 

「?」

 

「ほら、君たち戦ってた……んだろう? 前のウルトラマンの時はかなり怪我が酷かったみたいだから、今回はあんまり怪我してなくて良かったなって」

 

「心配してくれたんだ〜」

 

「当たり前だよ。君たちはまだ小学生だし、その前に女の子だ。君たちにもしものことがあれば、大赦がお見合いまでセッティングしなければならなくなってしまうぜ」

 

「私たちが自分で結婚できるって思ってないんだ。大赦ってひどいよ〜」

 

「いやいや、君たちは素晴らしい子たちだけど、もしもがあればそれくらい大赦は責任を取るつもりだぜってことだよ」

 

 冗談めかして言いながら、社の中に入ると、整備のために置いてあり、ちょくちょく交換してある清潔なタオルをビニールを破り中から取り出す。

 

「君たちに怪我がないことが、きっと親御さんも一番喜ぶ」

 

「それは、たすくんも?」

 

「まーね」

 

「わぷわぷ」

 

 翼が取り出したタオルでわしわしと濡れている園子の顔と頭を拭いて、頭に載せるとタオルの上からぽんぽんと軽く撫でた。

 

「君たちは凄いよなぁ、本当に」

 

 ぼんやりと雨の滴が落ちていくのを目で追いながら、翼は柔らかい調子で言葉を続ける。

 

「世界のために戦うって、なかなかできないことだ。ましてや君たちは小学生で……本当はまだ友達と遊んでいていい歳で」

 

 翼がまぶたを閉じて、一人の少女のことを思い出す。

 必要以上に重いものを背負ってしまって、頑なになってしまった彼女のことを。

 

「お役目ってのが名誉なことでも、それを断る権利も君たちにもあったはずなのに」

 

 自分から受け入れた彼女とは違って、園子と銀は家柄から勇者に選ばれた面がある。家格が勇者を作ったのだ。

 

「……なんてな。ちょっと変なこと言っちゃったな」

 

 ごまかすように軽く笑う。

 何か新しい話題を振ろうと翼が隣を見ると、じっと自分を見つめている園子と目があった。

 

「たすくんは、真面目な人だねえ」

 

「……乃木さん?」

 

「私たちが怪我したときにはお見舞いに来て、安芸先生の言ったことを守って、わっしーのことをすごーく気にかけてる」

 

 園子が真剣な面持ちから表情を崩して、ほにゃっと頬を緩めた。

 

「だから、たすくんは、すごーく真面目な人〜」

 

「……オレ、結構隠し事する方なんだぜ」

 

「うーん、良いんじゃないかな〜。大赦のお仕事もあるだろうし〜、それにみんなが頑張るぞ〜って気持ちなら、きっと良い結果になると思うんよ〜」

 

 ほにゃほにゃと笑う園子に、翼もまた柔らかく笑む。

 

「君は、なんというか、黒瑪瑙みたいだな」

 

「めのう?」

 

「うん、宝石の一つだよ、瑪瑙」

 

 瑪瑙。別名はアゲート。

 黒瑪瑙のことならばオニキスということが多い。

 

「神世紀になる前にあった法華経で言う七宝の一つで、キリスト教とかだったらロザリオに使うところもあったのかな。黒くて、とても綺麗な石でさ」

 

 そこまで言って、翼が園子の瞳を覗き込む。

 澄んだように美しい黒色で、白い肌によく映える瞳だった。

 

「あとは、身につけてると人の悪感情や悩みや、まあそういうネガティブなモヤモヤを吹き飛ばしてくれるらしい。

 君の話し方や雰囲気には、そういう優しくて柔らかいものがある」

 

 そう言って、また翼がタオル越しに園子の頭をぽんぽんと撫でた。今度は少し、照れ隠しの意味もあったかもしれない。

 園子は不思議そうにその様子を見ていたが、すぐに翼へとすり寄っていく。そんなことよりも気になることができたのだ。

 

「ねえねえ、たすくん、瑪瑙ってどう書くの? 私知りたいな〜」

 

「ん、おお、勉強熱心だな、乃木さんは」

 

 翼がそこら辺にあった木の枝を拾い、雨に濡れないように気をつけながら、ガリガリと地面に瑪瑙の字を書いた。

 

「うーん、難しい漢字なんだねえ」

 

 むむむ、と眉を寄せる園子。

 

「まあ小学生どころか高校生になっても習わない感じだもんなぁ」

 

 そう言って、ふと翼が「そう言えばまだ自己紹介してなかったな」と思いだす。

 

「そういえば乃木さん、よくオレの名前読めたね、あれ結構難しいと思うけど」

 

「名前?」

 

「ほらオレ、紅翼(クレナイ・タスク)だろ? 結構珍しい読みだからさ。鷲尾さんにでも教えてもらったの?」

 

 普通なら「ツバサ」と読まれる字だ。彼も物心ついてからツバサと呼ばれた回数は数知れずだ。

 だから、園子もおそらく須美から教えられたのではないかと思ったのだが。

 

 だが、帰ってきた答えに翼の眉間に皺が寄る。

 

「へえ〜、そういう名前だったんだね〜。初めて知った〜」

 

「え、いやだって、君オレのこと「たすくん」って……」

 

「あ〜、それか〜」

 

 それで知らないのはおかしくないか? と言外に伝える翼に、園子は変わらずほにゃっとした調子で、彼女らしい一本調子で、言った。

 

 

「それはね〜『怪獣くん』の略〜」

 

 

 翼の頭が完全にフリーズした。

 

「は、は、は……?」

 

「あ、わかりにくかった〜? 

 怪獣くん、モンスターくん、スタくん、たすくんってわけなんだよ〜」

 

「な、なんで、オレ、怪獣って、え、言って、ちょ、え……」

 

「えへへ〜、歩き方が一緒だったし、よくわっしーのこと見てたからすぐ分かったよ〜」

 

 その日、乃木園子は「ヒーローは正体を隠すもの」という定石をにこにこ笑顔でぶち破っていった。

 

 

 

 

 

*1
大地の理書き変わりし時




そのっち〜


『ウルトラマンゼロ』
かつてウルトラマンの故郷ウルトラの星を滅ぼした悪のウルトラマン『ベリアル』を倒し、ウルトラマンの神に認められた『光の勇者』。
まだ若いながらもその強さは歴代でもトップクラスであり、初代マン、セブン、メビウス、ダイナ、ゴモラ、怪獣使いのレイオニクスが協力しても苦戦していた復活怪獣100体を初陣にも関わらず一人で叩きのめし、その力を知らしめた。
天の神がコピーしてきたのはその初陣の時のゼロであり、その後にある多彩なフォームはないものの、《ストロングコロナ》の力だけはウルトランスの力で後付けで与えることに成功している。
現場のバルタンでは技量の問題から白色破壊光斬を当てることはできず、威力の面から白色破壊光線で押し切ることができない。


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