「君の長所は、私を愛してることだよ」   作:ルシエド

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以前の失敗の反省を活かし今回はすぐに気付きました!
はい
同じ失敗繰り返すと言い訳のしようがない感じがしますよねすみません


2

 リュウが不良になったのは、悪になりたかったから。

 彼自身もまだそんな自分に気付いていない。

 彼は闇になりたい光だった。

 彼は悪になりたい善だった。

 『友奈』が戦いに苦しむのは彼女が()に選ばれているからであるが、『彼』の苦しみは常に()に選ばれないことから生まれていた。

 悪に堕ち切ることができれば、彼の人生に苦しみは無かっただろう。

 

 人間が自虐に走り、自らの価値を全否定するのはどういう時か?

 多くの場合は、自分の理想を、自分自身が裏切っている時だ。

 

 鷲尾リュウには、自分自身を全否定する理由が山のようにあった。

 だが、彼がここまでこじらせた最大の理由は一つだけ。

 赤嶺友奈が鏑矢に選ばれたこと。

 そしてそれに際し、何も出来なかったことだ。

 

 リュウと友奈の最後の会話は、喧嘩別れだった。

 その会話の内容をリュウは覚えていない。

 果てしなくつまらない、記憶に残しておく必要が無いくらいつまらないことだった、そんなことだけは覚えている。

 リュウと友奈は喧嘩を一度もしたことがない幼馴染ではない。

 ただ、喧嘩をしてもすぐ仲直りするだけだ。

 大抵の場合はリュウの方から謝って、友奈も謝って、友奈の方がリュウに優しくして仲直り。

 喧嘩はしたことがあっても、殺し合いをしたことはなかった。当たり前だが。

 

 喧嘩別れをして、それから一度でも会っていれば、10秒とかからず二人は仲直りし、見ていて恥ずかしくなるくらいの仲の良さを見せただろう。

 だが、その10秒が訪れないまま、一年以上の時間が経ってしまった。

 喧嘩別れの後、友奈は乃木若葉達の指導を受けて鏑矢として育ち、リュウは荒れた。

 それはもう荒れに荒れた。

 

 無力な自分から逃げるように。

 何もできない自分を必死に忘れるように。

 他人を傷付けるためというより、自分を傷付けるために、カツアゲをしている不良に喧嘩を挑んで、ガラの悪い男達に絡まれている女性を助け、強盗に殴りかかっていった。

 威圧するような話し方がどんどん過激化していく。

 殴られ慣れて、痛みには慣れても、専門の格闘家ほど強くはなれず。

 自分を加速度的に見失っていった。

 

 友奈と離れれば自分は空っぽだと言うリュウの心があった。

 そんな情けない自分は認めたくないと言う心があった。

 でも認めなければ友奈の価値を軽んじてしまうと言う心があった。

 そんな情けない自分は友奈の隣に相応しくないと言う心があった。

 

 リュウの人生は、数奇な運命が作った穴の空いた欠損、それを埋める友奈で出来ていた。

 だから、友奈が居なければ穴が空いたまま。

 だから、友奈が居なくても優れた人間で在れなければ、友奈に貰いっぱなしになる。

 助けてもらった分助けることで、心の安定を保っている人間というものは居る。

 鷲尾リュウがそうだった。

 

 鏑矢のお役目は多少の危険があり、それがなくても人殺しの過去を残す。

 友奈がそれに選ばれ、何もできなかった彼の胸に残った穴は、どれほどのものだったか。

 荒れに荒れ、良き少年は不良になり、自分を見失っていく。

 

 幼馴染の赤嶺友奈が鏑矢に選ばれてから鷲尾リュウは、何かをしようとして、何もできなくて、自分に何も無いことに気付き、何も守れず、何も救えず、何も変えられず、何も成せない自分に煮え滾る溶岩のような怒りを憶え―――そして。

 

 気付けば彼は、あまりにも無慈悲に宇宙人を殴り殺し、ダークリングを奪っていた。

 

「……」

 

「い……あ゛……」

 

 彼は手にした鉄パイプで、宇宙人をひたすら殴った。

 宇宙人が動かなくなるまで。

 鉄パイプがひん曲がって折れるまで。

 鉄パイプで殴って、殴って、殴り続けた。

 「これで死んだか?」などとは一度も思うことなく、「何が起ころうと絶対に蘇らないように」という絶殺の意志で、石よりも硬い体の宇宙人を、殴り殺した。

 

 それは、恐るべき精神性。

 精神的に限界ギリギリまで追い込まれた人間は、時に恐ろしい性質を発揮する。

 リュウに躊躇いはなく、迷いも無かった。

 宇宙人を見つけた瞬間、鉄パイプを探し最短時間で最短距離で接近、背後から急所を殴った。

 急所の次は顔面。

 人間で言えば急所を全部鉄パイプで思い切り殴られた後、首から上の感覚器を念入りに潰され、頭が潰された形になる。

 あまりにも恐ろしく、徹底した鉄の殴打であった。

 

 リュウは直感的に、その宇宙人が悪であることを理解していた。

 それは彼の中の因子がもたらした微かな直感。

 "これは世界を脅かす"という直感。

 "これは友奈を傷付ける"という直感。

 その直感は間違いなく正しかったが、リュウは自分が何故そこまで強烈な直感を得て殺害に動いたのかイマイチ自覚が持てず、戸惑っていた。

 衝動的に自分が殺したように思えていた。

 

「テメェ、宇宙人か」

 

「はっ……見れば分かるんじゃないのか」

 

「この星を侵略でもしにきたのか?」

 

「……ぷっ。

 あはははは!

 面白いジョークだな。

 漫画でも読んでそう思ったか?」

 

「……」

 

「こんなゴミみたいな星、欲しがる宇宙人なんているかよ」

 

「……あ?」

 

「よく見る、神性によって滅ぼされかけている星。

 燃えまくってる灰と変わらねー星だ。

 侵略しても何も手に入らねえ。

 何もかも炎の中。

 炎が消えたところで、手に入れた星がまたいつか神にリセットされるのは目に見えてる」

 

「……」

 

「知ってるか?

 怪獣と宇宙人の箔付け。

 "いくつもの星がアイツに滅ぼされた"

 って肩書きがあると、一目置かれるんだ。

 そんなもんだぞ星の滅びなんて。

 強い奴がその気になったら星が滅びました、なんてよくある話なんだよ」

 

 この星もよくある『宇宙の強者に滅ぼされた星になったな』と、宇宙人は笑った。

 

「なら、テメェは何しに来やがったんだ」

 

「無価値な人間が無価値な星にしがみついてやがる。

 星の外に逃げる技術もないからだ。

 最高に笑えるよなぁ? フライパンの上で生きたまま焼かれる虫みたいだろ」

 

「―――」

 

「見物に来ただけだ。

 ゴミムシも火に放り込めばよく踊る。

 盛大にみじめに、最高に笑える見世物だ。

 奴隷でも確保して、世界の終わりを促進して……

 泣き叫んで滅びるところまで映像に記録しておくと、知り合いにいい値で売れてなぁ」

 

「……そうか」

 

「無価値な星。

 無価値だから滅びろと言われてる人類。

 こんなもん奪っても無価値なのは言った通りだ。

 でもな。

 苦しみや悲しみは違う。

 無価値な人間でも、ゆっくり踏み潰せば最高の音楽を奏でてくれる。

 分かるか? 分かんねえかー。

 もっと小さい子供だと分かるんだけどなー。

 ほら子供って、無価値なはずの虫が足をもがれて苦しむと、楽しそうにもっとやるだろ?」

 

「もういい」

 

 リュウはもう一度、鉄パイプを振り下ろす。

 もう一度。もう一度。もう一度。

 手足ではなく、人間で言うところの急所と頭部と首を狙って、何度も何度も。

 一撃で殺せるだけの強さがないから、何度も何度も殴るしかない。

 

 死なない生物は、本質的には存在しない。

 死なない生物などそれこそ神か何かだろう。

 宇宙人でも、怪獣でも、場所を狙って殴れば死ぬ。

 岩より硬い宇宙人は岩を砕くほどの攻撃を加えれば、鉄と同格の頑丈さを持つ獣は鉄が歪んで折れるほどの攻撃を加えれば、死ぬ。

 

 そうして、リュウは知った。

 ダークリングに強さを依存する者は、道具を使う前に攻撃されればそのまま負ける。

 ダークリングを奪われただけで戦えなくなる。

 それしか頼る物が無いということは、それが無くなれば終わりということだ。

 殴り潰される悪の宇宙人を見ながら、リュウはそれを肝に銘じていく。

 

「うははっ、がっ、うっ、ぎぃっ、づぅ、がぁ……ぐっ」

 

 自分の星がこんな奴に笑われていることに。

 この世界がこんな奴に嗤われていることに。

 今の人類がこんな奴に嘲笑われていることに。

 リュウは情けなさと、憤りと、悲しみと、軽蔑と、憤慨と、言葉にし難い想いを抱いた。

 殴って、殴って、殴って。

 鷲尾リュウは地球を悪の宇宙人から守る正義を成すが、そんな風にはまるで見えない。

 

 悪の宇宙人が、死に際に言葉を残す。

 

「覚えておけクソガキ。お前は選ばれていない。必ず滅びる」

 

「……死ぬのはテメェだ」

 

「宇宙はなんだかんだで因果応報だ。

 お前がそれで怪物になれば、いずれ心も怪物になる。

 怪物に待つのは滅びだけだ。お前は死に方しか選べない。多分死に方も選べない」

 

 こんな狭い世界しか知らないリュウに、宇宙という広い世界を知る悪は言い放つ。

 選ばれた者は何かを得て、救われる。

 選ばれなかった者は何も得ず、救われない。

 

 光の巨人に救われる地球と、救われない地球がある。

 神に生きていいと認められた世界と、認められない世界がある。

 神樹に選ばれ戦って死ぬかもしれない勇者達が居る。

 神樹に選ばれず無力なまま殺されるかもしれない民衆が居る。

 

 地の神に選ばれ与えられた友奈。

 何にも選ばれず、与えられず、奪い取った力しか持たないリュウ。

 天の神に"生きるべき者"として選ばれなかった人類。

 天の神に"滅ぼす者"として選ばれたバーテックス。

 リュウに選ばれなかった社会。

 リュウに選ばれた友奈。

 ダークリングに選ばれた悪。

 ダークリングに選ばれていないリュウ。

 選ばれるものと、選ばれないものがある。

 

 この世界で鷲尾リュウを"選んだ"のは―――赤嶺友奈だけだ。

 

 だから、彼にとってそれよりも大事なものなど、この宇宙のどこにもない。

 

「誰も、お前を、救わない」

 

 悪の宇宙人が言い残した言葉は、リュウの心に深々と刺さる。

 その手には、死した悪から奪い取ったダークリング。

 悪を殺して奪ったリングだけが、リングが与える力だけが、この世界で何かを成せる鷲尾リュウの拠り所。……それを失ってしまえば、鷲尾リュウには何も無い。

 

 本当はもっと沢山、彼の中には色んなものがあるはずなのに。

 まだ中学二年生なのだから、これから得ていくものもあるはずなのに。

 リュウにとっては、何も無いのと同じであった。

 優しさも。

 気遣いも。

 良心も。

 愛も。

 リュウの中では全てが無価値。

 価値があるのは、誰よりも大事な人を救える闇の力だけ。

 

 だから、弥勒蓮華にダークリングを渡して、友奈のことを任せてしまったその瞬間。

 

 彼の中で、何かが終わった。終わってはならないものが、終わってしまった感覚があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リュウは弥勒蓮華にダークリングを譲ったが、瀕死二歩手前の体のくせに大人しく寝ていることはせず、蓮華にダークリングの使い方を教えることを申し出て来た。

 

「大人しく寝てなさい」

 

 案の定、リュウの体を気遣う蓮華は突っぱねる。

 蓮華の視界の中、片目が落ちて腕がもげて、全身ボロボロでもまだ頑張ろうとする姿が、辛くても辛くても頑張り続ける友奈の姿と重なってしまう。

 しかし、思わぬところから助け舟が出た。

 

「ええんとちゃう? ロックも先輩から教わっといた方がええやろ、あと八時間やで?」

 

「……シズさんらしくない意見ね」

 

「何もできず待つだけの時間もめっちゃ辛いもんや。

 心配すんのも分かるんやけどな、やらせたってくれへんか?」

 

「それは……確かに、そうかもしれないけれど」

 

 待っているだけの辛さを知る静の発言もあって、蓮華は渋々、死にかけのくせに無茶をするリュウの助力を受ける。

 なんだかんだ一年以上の使用経験があり、ダークリングや各カードの特性を試行錯誤で把握していたリュウの助言は、新たなダークリングの使い手にとって貴重なものとなった。

 

「ダークリングは邪悪を選ぶ。

 あンまり体から離さず、常に所有の意志を持つンだ。

 じゃねェと勝手に宇宙のどっかに行ッちまいそーなブツだからな」

 

「ええ、触れれば分かるわ。これ、弥勒みたいな人間は大嫌いな道具のようね」

 

「全ての道具に意思があったら、お前に使われたい道具ッてあんま居ないと思うンだ」

 

「弥勒の手と貴方の手なら、弥勒の手の方が綺麗よ?」

 

「リングを持ってる手の綺麗さの話してんじゃねェんだよ!!」

 

 ダークリングは、使う者の性質によって違う使われ方をする。

 魔導師ムルナウならば他者を使う方向性。

 魔剣士ジャグラーならば自己を強化する方向性。

 リュウはどちらかと言えばジャグラー寄りで、蓮華はどちらかと言えばムルナウ寄りであったようだ。

 

 ある程度リュウに近い『闇の神器と相性の悪い光の属性』を持ちながら、けれどリュウほどには魂がダークリングに拒絶されず、蓮華は闇に堕ちないまま複数の宇宙人を制御していた。

 

 ダークリングを手に入れてから、複数制御の習得まで休憩を抜いて約五時間。

 リュウがバルフィラスを使って居た時の感覚を参考にして、それを再現することに集中していたとはいえ、意識的に技術習得をする時間としては早すぎる。

 友奈同様乃木若葉に鍛え上げられた蓮華には、驚異的な地力が備わっていた。

 

「さらっとやりやがって……

 オレの場合メフィラスの肉体と頭脳がなけりゃできなかったのに……」

 

「そうね……ちょっと頭の中がややこしいわ。

 リュウはこれを闇に堕ちた出力と、メフィラスの頭脳で為していたそうね」

 

「ああ」

 

「正式な訓練を受けて得た地力ではなく、工夫でどうにかする……

 弥勒もそういうのは嫌いではないわ。でも、無茶と工夫を同じにするのは好きではない」

 

「だろうな。お前はそういう奴だ」

 

「今、色々試して見て分かったの。

 これは使い手によって使い方が変わる道具よ。

 それはおそらく、この神器が使い手の心をある程度反映するものだから」

 

 蓮華は手の中で、軽快にくるりとダークリングを回す。

 

「弥勒が強く願うと、弥勒の中に力が湧く。

 これは所有者の負の心や、欲望に反応して、所有者を強化するのね」

 

「それはオレもなんとなく感じてたな」

 

「同時に、一人で頑張ろうとすると、宇宙人達の制御が乱れる。

 一人で頑張ろうとするのをやめると、制御が正確になっていく……

 超合体や巨大化のやり方は分からない。

 でも複数制御のやり方は分かるわ。

 つまりこれに必要なのは

 他人を頼る心か、他人を支配する心かのどちらか。

 誰も頼る気がなく、誰も支配する気がない人間には、複数制御の力が向かないのね」

 

「……!」

 

 リュウは若葉の言葉を思い出す。

 

―――優しさを失うな。そして、本当に辛い時は人を頼れ

―――私の掛け替えのない親友と似て非なる、まだ幸せになる余地のある男よ

―――お前はきっと、それだけでいい。……それだけで十分だ。乃木若葉が保証する

 

 若葉は本当に的確に、リュウが失っていたものを見抜いていた。

 今の彼に無いものを見抜いていた。

 それさえあればいいということに気付き、指摘していた。

 

「友奈はちゃんと分かっていたわよ。貴方に言われたからって」

 

「え……オレ?」

 

「"オレが保証する"とまで言ったのでしょう? 友奈に」

 

「……あ」

 

 リュウはかつて、自分が友奈に言った言葉を思い出す。

 

―――困った時は周りを頼れ

―――周りの人と助け合っていければ、お前にできないことはあんまない。オレが保証する

 

 それは、シグマゼットン戦で友奈に新たな力を覚醒させた記憶の言葉。

 リュウが以前何気なく言った言葉と、若葉が何気なく言った言葉が同じということは、因子のオリジナルがかつて似たようなことを若葉に言った、ということなのかもしれない。

 遠い昔の鷲尾リュウのオリジナルの言葉が、今の鷲尾リュウに刺さる。

 お前にはそれが足りていない、とでも言うかのように。

 

「そろそろ休憩にせえへん?

 分かっとると思うけど、もうあんま時間あらへんからな。

 体力残しつつ練習して、本番前にちゃんと休憩して作戦開始するで」

 

 18時には外から敵が来る。

 それを処理して、次に大赦と友奈関連をどうにかする。

 大赦とリュウ達が共闘して、外の敵に対処し、なあなあの空気にできればそれが一番であるのだが、流石にそれも難しいだろう。

 ゼッパンドンがやりすぎた。

 穏便な着地点を探すには、何もかもが足りない。特に時間が足りていない。

 リュウ達の視点から見れば、戦う以外の選択肢はないのだ。

 

 休憩しながら、上品に人差し指を立てた蓮華が、リュウに微笑む。

 

「リュウ、面白い話をしなさい」

 

「人類史で最も人を苦しめてきた無茶振りをナチュラルに振ンじゃねェ」

 

 無茶振りであった。

 

「えー、あー、うン。

 昔のオレはなァ、あだ名がのび太君だった。大人しかったしな。

 ンで友奈がジャイアンだった。

 最初はジャイ子だったけどな。

 活動的で腕力もあったから、筋肉女のジャイアンとか呼ばれてたわけだ」

 

「へぇ……弥勒が知らない話ね」

 

 のび太と結婚するからジャイ子だったんやないか、と静は静かに話を聞きつつ思った。

 

 そしてこの話のフリから、話のオチに気付く。

 

「あ、分かった! ウチがしずかちゃんやな!」

 

「……話のオチを先読みして先に言ってんじゃねェ張り倒すぞ!?」

 

「ふっ……ちょっと面白かったから合格よ」

 

「あ、はい、そッすか」

 

 わいわい、やんややんやと、楽しそうに三人は話す。

 とても楽しい時間が過ぎて、会話しながらも、三人は思う。

 友奈をここに加えて、四人で楽しく話したいと。

 

「そういや、地の神様は他に何か言ってなかったのか、シズ。

 巫女の神託しか今は頼りになる情報源がねェんだよな……」

 

「んー……あー、そや。アカナが今使っとる装備あるやん? 鏑矢のとはちゃうやつ」

 

「ああ、あッたな」

 

「アカナが着とるあれが『摂理に反している』っちゅう話やったな、確か」

 

 戦いまで、残り時間は三時間を切っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤嶺友奈は、一人ぼっちの御飯を食べ終わり、見舞いに行った。

 乃木若葉の見舞いである。

 ゼッパンドンの炎で火傷し、念の為検査入院したと聞いたのだ。

 軽傷と聞いたが、軽傷だろうと心配するのが友奈である。

 

 ただし。

 今の友奈の心境は、あまりにも複雑な状態にあった。

 師である若葉を純粋に心配する気持ち。

 若葉まで"居なくなる"ことを恐れる気持ち。

 誰でもいいから、友奈のことを理解している知人と会話したいという気持ち。

 ゼッパンドンから守りきれず、怪我をさせてしまったことを謝りたい気持ち。

 何もかもが混ざっていて、どれも全て友奈の本音の気持ちだった。

 心配で、怖くて、寂しくて、謝りたくて、でもやっぱり心配で。

 

 なのに、友奈は若葉の病室まで通してもらえなかった。

 大赦の男が、友奈に落ち着いた口調で説明していく。

 

「今、貴方様の内側には精霊の穢れが蓄積されている可能性があります」

 

「精霊の穢れ……?」

 

「西暦末期、切り札と呼ばれたものを使用することで蓄積されたもの。

 大赦が勇者の暴走を恐れる理由。

 勇者の感情を歪め煽り暴走させてしまうものです。

 現在、若葉様の病室は聖域化されています。

 邪気、汚染、病原菌、そういったものが入れない清浄な空間。

 火傷の傷から悪いものが入れないようにする処理です。ですが、穢れが入れば……」

 

「へー……なるほど……?」

 

 心を汚染する毒。

 精神に染み渡る闇。

 西暦末期の勇者達は、凄まじく強力な精霊の力を使う度、それが己に流し込んでくる穢れと心の中で戦わなければならなかった。

 かつての勇者達は現実でも心の中でも戦わなければならず、敵は怪物だけではなく己自身ですら敵だった。

 穢れに飲まれれば、善良な勇者が一般市民を殺すことは容易に起こり得る。

 だからこそ一度、精霊を使うシステムは封印処置がなされたのである。

 

 赤嶺友奈は、その頃の勇者達の二の舞を懸念されている。

 穢れを祓う鏑矢が穢れに蝕まれれば、それをどうにかできる者はいない。

 

「勿論、蓄積されていない可能性もあります。

 ただ何分、七十年以上前に問題視されたものです。

 精霊の穢れを測定するにも動く機材がありません。

 誰も予想していなかったのです。貴方が精霊の力を引き出す、だなどとは」

 

「なんか引けちゃったので……」

 

「なんかで獲得しないでください赤嶺様……

 ともかく、自分の心の状態には注意してください。

 まだ穢れの話は確定ではありません。ありませんが。

 大きな力にはリスクがつきものです。どうか自分を見失わないように」

 

「……気を付けます」

 

 大赦の男が懸念するのは、赤嶺友奈の暴走。

 今、この狭い世界の中で間違いなく最強である彼女が、精霊汚染による暴走をしてしまえば、もう本当に誰にも止められなくなってしまう。

 『暴走する正義』は誰にも止められない。

 だからこそ、息子を救うために大赦を誘導していた元凶が、神の力を持つ少女は危険だという誘導を成功させられたのだ。

 

「赤嶺様。

 私には多くのことを話す権限がありません。

 他の者もそうですが、箝口令を破ることができないのです。

 私がクビになれば家族が路頭に迷いますし。

 我が家で働いているのは現状私のみ。

 新築の家のローンは丸々残っていて、子供三人の学費も払えなくなるのはちょっとアレです」

 

「途中からめっちゃ世知辛い話混ざってきましたね……」

 

「ですが、業務規程の範囲であれば話すこともできます。

 どうかお気を付けて。

 貴方の装備、周りのこと、現状、何もかも……大赦の人間ですら多くは知らないのです」

 

「……え、大赦も知らないんですか?」

 

「はい。大赦が全てを知っている、と考えない方がよろしいかと思います」

 

 この世の全てを知る者など、神しか居ない。

 

「特に貴方が今使われている『花結装(はなゆいのよそおい)』。

 それがいつどこから来たのか、少なくとも私の権限では知ることもできませんでした」

 

 リュウも。

 友奈も。

 民衆も

 大赦の多くの者も。

 多くのことを知らないまま、運命に流されるように、破滅へと向かっていっている。

 皆が皆、全てを知る黒幕になんてなれるはずもなく、必死にもがいている。

 

「勇者の支持者として申し上げます。どうか、賢明な判断をお探しください」

 

「わぁ、もうファンが出来てる。はい、なんとか、頑張ってみます」

 

 若葉に会えなかったことで寂しさ等は消えなかったが、応援の気持ちを受け取って、少しばかり元気を出して己が心を奮い立たせる赤嶺友奈。それは、きっと痩せ我慢だった。

 

「大赦のおじさん、名前はなんて言うんですか」

 

「三好です」

 

「ああ、マリオが乗り捨てて落ちていくやつ……」

 

「それはヨッシーです」

 

「それじゃ、また今度来ますね。ヨッシーおじさん」

 

「その時は一報ください。ヨッシーおじさんなら便宜を図れることもありますので」

 

 戦いはまだ続く。

 

 何も分からなくても、突き進む以外に選択肢はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蓮華はどんどんダークリングの扱いに習熟していく。

 友奈のような進化ではなく、リュウのような闇に落ちていく最適化でもなく、練習と慣れによる技術の向上で強くなっていく。

 巨大化も超合体もない。

 不安要素しか無いが、工夫と作戦、本当に危険極まりない事態になればリュウのようにダークリングの闇に染まるという手もあるだろう。

 

 とにかく、これで行くしかない。

 

 なのに、リュウの心には、ポッカリと穴が空いていた。

 

「……」

 

 それでいいのか、と心が言っている。

 蓮華は既にゼットン、バルタン、ザラブ、Σズイグル、メフィラスの五体を出現させ、それを同時制御する練習に入っている。

 リュウの眺める空き地で蓮華に操られ連携する五体の怪物は、メフィラスの力を使わなければリュウではとても真似できないレベルだった。

 この分野においては、既にリュウを超えている。

 

 弥勒蓮華なら、という想いがあった。

 だけど、という想いがあった。

 リュウは納得していない。

 けれど、自分が何に納得していないかも分かっていない。

 何かに納得できない。

 何かを了承できない。

 だから、分からない想いを分からない言葉に変えられないまま、苦悩している。

 

 ベンチに座って項垂れているリュウの体に、影が差す。

 リュウが顔を上げると、そこにはメフィラスが居た。

 夕日を背にして、メフィラスがリュウの目を真っ直ぐに、じっと見ていた。

 

「いいのですかな」

 

「え? お前、喋れ」

 

「本当にそれでいいのかと、聞いているのです」

 

 メフィラスは強い口調で言い放つ。

 

「私は貴方の生死には興味がない。

 貴方が生きて終わるも、死して終わるも、どちらでもいい。

 私の言葉は貴方の心への挑戦。

 この挑戦にどんな答えを返すかは、地球人である貴方次第です」

 

 それは、地球人の心を試す言葉。

 

「全てを彼女に任せ、全て彼女に背負わせ、何もかも丸投げして、待つだけでいいのですか?」

 

「―――それ、は」

 

「それで納得できるのかと聞いているのです」

 

 リュウが僅かに、息を飲む。

 

「貴方は許せなかったものがあったはずです。

 受け入れられないものがあったはずです。

 納得できないことがあったはずです。

 だから貴方は、善でもなく、正義でもなく、光でもない、何かになりたかったのでしょう」

 

「オレが……納得できないこと……」

 

「だから貴方は、悪を、闇を、この道を選んだはずです。この身はそれをずっと見ていました」

 

 メフィラスの言葉が、リュウに何かを思い出させる。

 それは、彼が間違うことを願った理由。

 悪に、闇になることを望んだ理由。

 

 リュウはベンチから立ち上がり、訓練中の蓮華に歩み寄った。

 

「レン」

 

「何かしら?」

 

「ダークリングを返してくれ」

 

「……」

 

 蓮華は一瞬真面目な顔になり、やがて困ったように微笑んだ。

 

「そう言うかもしれないと、思ってたわ」

 

 蓮華がダークリングを振ると、ゼットン、バルタン、ザラブ、Σズイグルが蓮華を守るように、リュウの前に立ちはだかるように立つ。

 かつての仲間は、今や全て敵。

 リュウの手の中に力はない。

 

 ダークリングは取り返せない。

 怪物の壁は越えられない。

 蓮華がリュウのことを思ってくれる限り、リュウの手元に闇の神器は戻らない。

 それでも、とリュウの心は叫ぶ。

 

「ずっと……ずっと! お前らを見てて、おかしいと思ッてた!」

 

 リュウは叫ぶ。

 

「だってそうだろ!

 なんで昨日まで普通に生きてた女の子が、突然呼び出されて!

 力与えられて! 訓練されて! 社会の危険人物殺す仕事任されてんだ!」

 

「……リュウ。貴方は、優しすぎるのよ。弥勒達は望んでやったことだわ」

 

「……"自分の幸せのために少女に人を殺させる"のも!

 自分の手を汚さないで普通の女の子に手を汚させンのも!

 平和のために必要な人殺しの罪を子供に押し付けんのも!

 っていうか、人殺しそのものも神樹様に押し付けてんのも!

 何もかもが! 気に入らなかった! 大赦の正義が大嫌いだった!

 それ以上に! 人を滅ぼす天の神が掲げてる神の正義が大嫌いだった!」

 

 叫ぶ。

 

「正義が大嫌いだったから!

 世界が大嫌いだったから!

 人間が大嫌いになりそうだったから!

 オレは! 正義の敵になって、正義の犠牲を救える、悪になりたかったんだッ!!」

 

 叫ぶ。

 

「……ありがとうな蓮華。本当に感謝してる。

 優しくしてくれて。気遣ってくれて。

 本当は気持ち全部伝わってる。だけどな。

 お前に友奈を救うために必要な罪は背負わせねェ。

 そいつはオレが持っていく。

 手を汚させられてきた鏑矢に、これ以上任せる気はねェ。

 オレが背負える分の罪も悪も、全部オレが背負いたいと―――そう、思ったんだ!」

 

 世界のため、大赦のため、人々のため、必要な汚れ役を全て押し付けられた少女達に、もう何も押し付けなくていい、全てを引き受けられる悪になりたい。

 

 そう願った。だからこの道を選んだ。そして彼は、こうなった。

 

「"皆のために"。それだけで辛い役目を背負ってくれたこと、オレは感謝してる」

 

「鏑矢にそんなことを言ってきた人、貴方がきっと初めてね。……陰のお役目だったから」

 

 彼の言葉は、全てが決意で、全てが願い。

 

「オレはいい。

 戦うために作られたようなもンだ。

 でもな、お前らは違う。

 普通に生まれてきたンだろ?

 親の愛の結果として生まれてきたンだろ?

 じゃあ違ェんだよ。

 オレは、強い戦士として戦うことを望まれて生み出された。

 だけどな……お前らは、幸せになることを望まれて、生まれてきたんだ」

 

 全てが祈りで、全てが覚悟。

 

「普通に生まれてきたお前らと。

 オレが幸せになってほしいと願ってる友奈。

 そういう奴らが不幸になっちゃァいけねェよなァ」

 

「貴方も不幸になってはいけないのよ」

 

「オレが男で、お前は女の子だろうがよ」

 

「前時代的な考えね、西暦脳かしら」

 

 蓮華は、リュウの覚悟を受けて、けれどその奥の隠された本音を語調から見抜く。

 

「それが全てではないはず。

 まだ貴方には、弥勒に言っていない本音があるはずよ」

 

 リュウは目を閉じ、若葉が伝えてくれた、上里ひなたの遺言を思い出す。

 

―――『貴方はもっと自分勝手でよかった』

 

 だから、自分勝手に、叫んだ。

 全力で叫んだ。

 

「オレが、この地球上で、一番に友奈を愛しているから!」

 

 それは、愛の叫び。

 

「するべきことが同じなら。

 背負う罪が同じなら。

 誰がやっても、友奈が救われるのなら。

 ―――あいつに未来をやるのはオレでありたい。それは、オレの自分勝手だ!」

 

 自分勝手な愛の叫び。

 

 全てを背負い罪を重ねて悪として突き進むことを決めた、彼の心の原動力。

 

 世界を壊して友奈を救ったという罪を、弥勒蓮華から奪い取る自分勝手な叫び。

 

「存分に否定してくれ。

 クソみたいな自分勝手だ。

 合理性もクソもねェ。

 自分の願いのために踏みつける人のことを考えてもねェ。

 だけど……

 誰の期待にも応えられず生まれてきた出来損ないが……

 間違ってた人生の中で、空っぽな自分の中に見つけた、たった一つの願いなんだ!」

 

 その叫びを。

 

 『彼ら』は、ずっと待っていた。

 

 

 

 

 

 弥勒蓮華が、呆然とする。

 蓮華の操作で蓮華を庇ったザラブとΣズイグルが、一瞬で倒され、カードに戻されていた。

 二体を倒した怪物―――ゼットンとバルタンが、蓮華の手からダークリングを奪い、リュウに無言で寄り添って、彼にダークリングを渡す。

 ダークリングの支配はまだあったはずだ。

 ゼットンとバルタンを出したのも蓮華であったはずだ。

 なのに、ゼットンとバルタンは、あらゆる理屈をすっ飛ばして、鷲尾リュウを"選んだ"。

 

 『行こう』と、言葉なくとも、ゼットンとバルタンの気持ちが伝わった。

 

 鷲尾リュウは、強く頷く。

 弥勒蓮華と桐生静は、"納得はしていないがしょうがない"といった顔をする。

 

「……生きて帰って来なかったら、弥勒は許さないわ」

 

「無茶はするんやないで? アカナが泣くからな」

 

「ああ。分かった」

 

 バルタンの手から、脱皮再生光線がリュウに放たれる。

 それは骨や内臓を治すことはないが、肉はある程度脱皮効果で治せる光線。

 多少ではあるが、リュウの体がマシになる。

 鷲尾リュウは強くなろうとしても、もう天井にぶち当たっている。

 だけど。

 意思ある仲間が力を貸してくれれば、もっともっと強くなれる。

 

「ありがとな」

 

 夜が来る。

 夕の刻が終わる。

 夕映えの戦士達が並び立つ。

 

「ゼットン。

 バルタン。

 なんだかんだ、お前達が一番相性良いンだよな。

 合理性とか何もねェが……お前達を信じて、進む。

 悪ィ、最後の最後まで、オレと友奈に夜明けが来るまで、付き合ッてくれ」

 

 ゼットンとバルタンが、力強く頷いた。

 

 怪獣全てが自らの意志でカードに戻り、リュウの手元に戻っていく。

 

 18:00まで後少し。鷲尾リュウは、走り出した。

 

 

 

 

 

 走っている内に、夕の世界は夜の世界になっていく。

 走る。

 走る。

 走る。

 大赦によって人が居なくなった街の中を、結界の端に向かって走る。

 

 魂は風よりも速く。光よりも疾く。心は何よりも速い神速に。

 

「ゼットン!」

 

 叫ぶリュウの左手が掲げたリングに、独りでにカードが飛び込んで来る。

 

《 ゼットン 》

 

 足がもつれる。傷が開く。血が吹き出る。それでも足は止めずに駆ける。

 

「バルタン!」

 

 叫ぶリュウの左手が掲げたリングに、独りでにカードが飛び込んで来る。

 

《 バルタン星人 》

 

 ゼットンとバルタンのカードがほどける。

 リュウを"選んだ"二つの異形が、リュウの左右に並走する。

 リングを握るリュウの左拳、ゼットンとバルタンの左拳が同時に頭上に突き上げられた。

 

「『戦う力』、オレに貸してくれ!」

 

 それは、天への反逆の意志。

 天を打ち倒さんとして突き上げられる男達の拳。

 もう一つの()()()()

 二つの異形と一つの人が、今、心と体を一つにして昇華する。

 

「超合体―――『ゼットンバルタン』ッ!」

 

 かつて、心も通わせないまま、超合体が何かも分からないまま繰り出した時とは"桁が違う"と言い切れるほどの、絶大な力が全身を覆う。

 降臨するは、ゼットンバルタン。

 彼の始まりの超合体。

 

 結界の外に飛び出した巨大な怪物は、壁の外に迫る怪物達の第一陣を睨んで叫ぶ。

 

『これからまたオレと友奈の戦いだ! お呼びじゃねェんだ失せろッ!!』

 

 敵は無数。

 燃え盛る世界を進軍するは、星の屑と十二の星座。

 圧倒的な数の第一陣に、ゼットンバルタンは"無数に増える"ことで迎え撃つ。

 

 数千を超える、60mクラスのゼットンバルタンの分身が、敵へと突っ込み。

 その全てが、自爆した。

 太陽表面爆発を遥かに凌駕する連鎖爆発が、それぞれの爆発の威力を際限なく上昇させ、バーテックスの侵攻第一陣を吹き飛ばす。

 分身。

 突撃。

 自爆。

 あまりにも恐ろしい、宇宙的スケールの自爆大行進。目を疑うような攻撃であった。

 

 生き残っているバーテックスは0。

 ゼットンバルタンは瞬く間、ほんの数秒で、侵入準備をしていた怪物・バーテックス――星屑と呼ばれる末端個体群――を一掃し、四国の街中に降り立った。

 本当に戦うべき少女と、相対するために。

 隻腕のゼットンバルタンは、体を軽く動かし、痛みがないことに感謝する。

 

『負荷が全然ねェ……ありがとな、ゼットン、バルタン』

 

 元々、普通の怪獣カードの負荷が10、力が10とすれば、バルタンは負荷5で力10、ゼットンは負荷10で力20という不思議なバランスだった。

 リュウが使いやすいと言っていたのは、そういうこと。

 その特性が、今や比べ物にならない規模で発現している。

 

 戦える。

 まだ戦える。

 一人じゃなくて、三人ならば、戦える。

 ゼッパンドンを超える力を全身に漲らせ、隻腕のゼットンバルタンは腕を構えた。

 

 見据える先には、火色の勇者。

 

「火色舞うよ」

 

 救え、とゼットンとバルタンが言う。

 守れ、とゼットンとバルタンが言う。

 頑張れ、とゼットンとバルタンが言う。

 あなたが使える力はここにある、とゼットンとバルタンが言う。

 

 それは本当は言葉でも何でもない、純粋な想いを伝える意志。

 

 それを受け止め、リュウは力強く頷き、星々煌めく夜空を背後に、飛翔した。

 

 

 




・『シャドーエクスプロージョン』

 命知らずの宇宙忍者こと、バルタンバトラー・バレルの得意技。
 ゼットンバルタンの素材であるバルタン星人も習得しているバルタンの秘技。
 非常に高度な"忍術としての自爆"であり、2mクラスのバルタンが数十mクラスの大怪獣に放っても、ほぼ即死級のダメージを与える強力な自爆である。

 バルタン星人の自爆の用法は戦闘手段に限定されず、ウルトラマンコスモスと戦ったネオバルタンは、同族の未来のために許しを請おうと自爆を行い、自らの命をもって温情を求めるなど、敵を倒す以外の目的で自爆している姿も確認されている。
 彼らの自爆は個人の代名詞である特殊技能ではない。
 ただの攻撃手段でもない。
 やけっぱちになった自暴自棄でもない。
 多くの技術体系の上に存在する、宇宙忍術の一つなのだ。

 リュウ、ゼットン、バルタンが一つとなったゼットンバルタンは、実体を持つ分身を数え切れないほどに発生させることができ、それらを自爆させることが可能。
 一人では使いこなせない、究極の自爆技能である。
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