なぁ、お前知ってるか?『忌みの一本木』の話を。
知らないだと?。ハハハさてはお前オカルトとか幽霊とか信じない類の人間だな。いやもう雰囲気で察したよ。
……白けた顔すんな馬鹿。え、お前誰だよかって?。
やだなぁ。この制服が見えないのかいお前。お前んとこと同じ学校の奴に決まってんだろ。
見たこと無い?こんなナイスガイを!?酷いなお前。
まぁ、同じ学校のよしみとして聞かせてやるよ。忌みの一本木改め、ウメノキの話をな。
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昭和10年、日本のある村に一人の女の子が産まれた。
夫婦は庭にある梅の木に咲いた花を見てウメと名前をつけた。ウメと名づけられた幼子は貧しくも実家の手伝いや学業に励み健やかに育った。
…………それから10年、日本は終戦を迎える。
「負けちまったんだね日本は」
「おっかぁ……」
ラジオから流れる玉音放送に耳を傾ける母親の姿は悲しく儚くウメの目に映った。
ウメ達が住む田舎は空襲の被害は皆無だったが都会では連日空襲が酷く焼夷弾で燃やされたりして大勢の人がなくなったらしい。
広島、長崎には原子爆弾が落とされ、沖縄も米軍との戦闘で軍民含む犠牲者が多数出たそうだ。
ウメの村は今日もことりが囀り、野花がそよ風に身を揺らしてる。
「オマエも無事だったね」
自分の名の由来となった梅の木を優しく撫でた。
この触り心地は昔から変わらない。
偶然か必然か、安寧が残されたこの場所でウメは犠牲になった方々を母と共に悔やんだ。
それから8年……。
「じゃあね!ママ!行って来るから!」
「なんだい。ママだなんて…ハイカラな言葉使って」
「別にいいじゃない!」
1953年日本はまた新たな道を歩み出した。
この8年色々あり戦地に赴いた父親が帰ってきたり、弟や妹が産まれたりした。
ウメもすっかり若者として現代に染まり、高校や実家の手伝いをこなしながら休みの日にはお洒落して友達と遊んだりと充実な毎日を過ごしていた。
ある日曜日、本来ならとっくに帰ってきていい筈のウメが帰って来ない。
「かかぁ。随分と遅いじゃねぇかウメの奴」
「全くねぇ…友達と騒いでるんじゃないかい」
「お母さん。ウメねぇまだ来ないの?」
「私お姉ちゃんに本読んでもらいたい」
弟と妹二人も姉が帰って来ないのが気になり母にたずねた。
「ごめんよあんた達。あの子ったら帰ってきたら怒んなきゃね」
結局、その日ウメは帰って来なかった。
翌日ウメの家に警察から電話があった。
『もしもし。ウメさんのお宅ですか?』
「はい!そうです!」
母は必死に話を聞く。
娘が警察に…何があったのか。
『実は娘さんが複数の男に暴行され今交番で保護しています。かなり怯えております。場所は……』
母は子供二人を連れながら大急ぎで言われた交番へと向かった。
「ウメ!ウメ!大丈夫だったかいあんた!」
交番の椅子に座る娘に駆け寄りその身を抱き締めた。
妹と弟もそれぞれ、ウメねぇ。お姉ちゃんと言って近寄る。
「おか…あさん……ごめんなさい。ごめんなさい……!」
ウメは泣いた。
軽はずみな自分の行動で家族に迷惑を掛けたこと、男に犯されたことを悔いて……。
ウメはこの件から1ヶ月後、自分の名の由来となった梅の木で首を吊り自殺した。
だがその顔は苦痛に歪んだものではなく満面の笑顔を浮かべて嬉しそうに死んでいた。
その後間もなく村の住人は全員死んだ。
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これで話は終わりよ。やだ、もしかして怖がってるの?。ちょっと男なんだからこれくらいでビビってどうすんのよ。
なんで女になったかですって?
何言ってるの?。私は最初から女よ。
怖がってるあんたにもう1つ付け加えてあげる。
その梅の木にはウメの魂が宿ったとされてるの、そのウメノキは今でも人間を恨んでてね、死んだウメが人に化けて人間を招きに行くんだって……特に若い男を狙って。
ふぅ。それにしても山道は大変よね。……本当こんなとこで大声出しても中々助けなんて来ないんじゃないかな。スマホも圏外だし。
あら、見てあの花を咲かせた木。梅の木ね。
……綺麗。私本当に梅の木が好きなの。
硬くて赤くて
人間の血みたいだから。
ありがとうあなたのおかげでまた綺麗になれそうだわ。