ワールドトリガー〔Another〕   作:麒麟@

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彼はボーとしてるととんでもない人に捕まる

 彼のことを好きになったのは本当に偶然だった。私は風間隊のオペレーターになってからは少し辛かった。元々宇佐美先輩がやっていた穴埋めと思っていた。実際のところはどうかは知らない。そんな毎日で過ごしていた時に話しかけてくれた。

 

 

「なぁ、あんたちょっと付き合ってよ」

 

「へ?」

 

 

 私にしたら驚いて変な返事になったと思う。それ以上の言葉が出てこず私は連れて行かれるままいろんなところに連れて行かれた。ショッピングはもちろん遊園地、温泉なんかにも連れて行かれた。そして気がつくと私の中に溜まっていた不安はなくなり、いつの間にか自然笑っていた。

 

 

「あははは」

 

「やっと笑ったな」

 

「え、どういう」

 

「なーんか見た当初から呆れたというか絶望した目をしてたからなんとなくかな」

 

「そんなに酷かった?」

 

「まぁな」

 

 

 その時の顔は忘れられない。酷く悲しい笑顔で私の方を見ていた。それに対しては聞くことも攻めるとこともできなかった。けれど新一くんには本当に助けられた。あの時声をかけられていなかったら私は今風間隊でオペレーターをしていない。

 明日のランク戦では手を抜かないけどちょっと過去に思い耽った。私はベッドに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ランク戦当日

 

 

 朝起きていつも通りにした。けれどまだ体が硬い。やっぱり緊張している。

 

 

「お兄ちゃん、今日はがんばろうね」

 

「ああ、夜からだからゆっくりしとけよ」

 

「うん」

 

 

 俺は服を着て家から出ていく。少し頭を冷やすためだ。頭を冷やしておかないと後が怖い。流石にA級トップの人たちに頭が血が昇った状態で勝てるわけもない。

 俺は歩いていると前から見慣れた顔がやってきた。

 

 

「あれ?新一くんどうしたの?」

 

「綾辻さん。まぁ頭を冷やしてるんです」

 

「そっか。新一くんも緊張するんだね」

 

「俺を何だと思ってるんですか、それぐらいしますよ。それに美琴を綾香を桜を勝たしてやりたいんです」

 

「その敬語も外して欲しいんだけどなぁ」

 

「年上ですから」

 

「けど外して欲しいんだよ」

 

「んん〜考えておきます」

 

「うん、それじゃあね」

 

 

 俺はそこで別れて歩き出す。何も考えてなんかいない。そして着いたのは本部だった。何を思って着いたのかはわからない。気がつくと目の前に本部があったとしかいえないけど着いたから中に入るとそろそろランク戦昼の部が始まるところだった。

 

 ついでだから見にいくことにした。昼の部は冬島隊と嵐山隊、そして加古隊だった。朝にあった綾辻さんは本部に行っていたんだろう。俺もちょっと遠回りして多分ここに着いたんだと思う。

 飲み物を持ち席に座る。少しすると隣に東さんがきた。

 

 

「よ、川原。見学か?」

 

「まぁ今期は勝ちたいんで見にきました」

 

「そうか。予想を聞いてもいいか?」

 

「当真さんをどう見つけるかによりますね。冬島さん達は点取り屋は当真さんだけです。そして当真さんは狙ったら必ず当ててきます。一方で佐鳥はチームでの行動を優先します。だからチームのピンチになるとそっちにいくはずです」

 

「なるほどな。俺も概ねその意見には賛成だが今回俺が見たいのは加古達だな」

 

「加古さんですか?」

 

「あぁ、加古は昨日俺のところに来てな。勝つためにはどうしたらいいかだとさ。よほどお前達に負けたのが悔しかったんだろうな」

 

「本当ですか?」

 

「あぁまちがいないよ」

 

 

 俺は言葉を失った。加古さんはどちらかというとそういうことはしないタイプだと思っていた。感覚主義なところが多いから。その加古さんが東さんに聞きにいくなんて思っても見なかった。まぁ元々同じ隊にいたから聞きにいくのはわからないでもないが、それを差し引いても意外だ。

 

 試合を見ていくと想像だにしていない展開になった。加古さんがメテオラを使っている。見る感じ試作のタイマーとテレポーターを外したんだろう。メテオラで逃げ道をなくしたところをハウンドで追い詰めていく。

 木虎はそれでやられて時枝先輩は嵐山さんに会いにいく前に捕まった。シールドで防いでいると双葉ちゃんの韋駄天にやられた。

 あれはかなりエグい戦法だな。シールドを広げるとハウンドやメテオラの爆風は防げるが双葉ちゃんの韋駄天は防げない。今はシールドの性能が上がっているとはいえ孤月を防げるほどじゃない。

 

 

「これはなかなかエグいですね」

 

「けど新一には通用しないだろ」

 

「通用しないわけじゃないですけどなかなか厳しいですね。僕のサイドエフェクトも結局は体が動かないと意味ないので」

 

「確かにそうだが川原はそれを補うための特訓は欠かさないだろう」

 

「まぁそうですね。それでも処理できないことは多いですから」

 

「はは相変わらず自分に厳しいな。他人には優しいくせに」

 

「むぅ、放っておいてください」

 

 

 そこからは2人で試合を見るが一言も話すことはなかった。結果だけでいえば加古隊の勝ちだった。けれど内容的にはそこまで嬉しいものじゃない。当真さんが落ちると同時に冬島隊は全員ベイルアウトした。嵐山さんは最後まで粘っていたけど2対1の上加古さんの気合が違って落とされていた。

 加古隊は今回から気が抜けない相手になりそうだ。あ、もちろん今までも気を抜いていたわけじゃないけど。

 

 

「東さんそれじゃあ失礼します」

 

「あぁおつかれ。夜の部楽しみにしてるぞ」

 

「期待に添えるように頑張ります」

 

 

 東さんとも別れて俺はまた歩き出した。恐ろしいことになってきた。B級のランク戦ならともかくA級のランク戦は同じチームと何回かは必ず当たる。加古隊は気の抜ける相手じゃなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいたっ!」

 

「およ?ってしんしん〜」

 

「国近さん!?」

 

 

 会いたくない人に会ってしまった。この人は基本作戦室に篭っているのに何でこんなところで会うのかな〜?ほんとうにタイミング最悪。

 

 

「しんしんまた今度ゲームしようね〜」

 

「いつになるかわからないですけど」

 

「今日のランク戦が終わってからだよ〜」

 

「いやいやいや」

 

「やってくれないならみんなに言いふらすよ〜」

 

「何をです」

 

「胸にぶつかられてその上押し倒されたって」

 

「ちょっ!ぶつかったのは確かですけど押し倒してないでしょ!」

 

「みんなはどっちを信じるかなー」

 

「わかりました。ランク戦終わってまた連絡します」

 

「それでよろしい〜」

 

 

 別れた後ため息を隠すことはできなかった。あの人とゲームをすると地獄だ。しかも始めると俺も手加減ができず勝つことがある。実力だけでいえば五分五分だと思う。

 それにしてもあの人試合前に余裕だな。まぁ今一位の太刀川隊からするとそんなに緊張することでもないのかな。

 俺も作戦室に戻りソファーに寝転び時間まで寝ることにした。

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