始まりの天使 -Dear sweet reminiscence- 作:寝る練る錬るね
A.アンヘル君という『憧れ』を手にしたエレちゃんにとってネルガルの怨念はみそっかすレベルなので既に権能ごと取り込んでいます。で、エレシュキガルの宝具となった『発熱神殿 キガル・メスラムタエア』のことを聞いた神殿建設中のアンヘル君が「じゃあこの神殿の名前もそれでいいか」ということで建物としての『発熱神殿 メスラムタエア』が完成したわけです。
……本編で触れようと思ったけど入れ方がわからなかったからここで説明したのは内緒ですが……もちろん、ほんぺで触れない以上建物の方のメスラムタエアに神殿以上の役割はないです。
あとは、なんだろう……当作に弁慶が出ないことを言えばいいのか…?
籠を見る。一つの籠に閉じ込められたそれらは、口を揃えて同じことを思う。
『彼に会わなくては』
『彼に詫びなければ』
『彼に話さなければ』
彼、彼、彼。魂のほとんどが、彼を求め、彼を望み、彼を愛している。
(手遅れなのだわ。今更謝ったって、もう遅い)
それ以外。一部の醜い魂達は、籠どころかそこらの洞窟あたりに放り込んである。きっと自分が消えていく感覚を感じながら、ゆっくりと朽ちていくことだろう。
(今更何を思ったところで、もう届かない)
冥界の女主人はその悉くを嘲笑うように無視し続ける。
自分にそんな資格もない。そんな権利もない。そう知りながらも、ただ魂の声に耳を傾けることはなかった。
「エレシュキガル様〜この魂、どうする?」
「……そうね。いつものように籠に入れておいて頂戴。場所は地下でいいでしょう」
「はーい。籠もこっちで作っとくね」
彼が来た途端、魂達はざわざわと震え始める。その光を一段と強くして、ゆらゆらと震え、気付いてもらおうと手を尽くす。
だが、どれだけ足掻こうとその声が彼に届くことはない。望み続けた彼に会うことは叶っても、その声は彼にだけは聞こえないのだから。
嫌気が刺す。
こんなことをしている自分も、どうすることもできない自分も。そして
「知っていて何もしないことは、無知より罪よね、ほんとに」
許せない。自分自身も、罪深い魂達も。
この世界で悪くないのは、きっと彼だけだ。彼以外の全ては悪で、闇で、故にその光、正しさを求める。
でも、それでいい。例えエレシュキガル自身を最後に滅することとなっても、悪から彼を守ることができるのならば、それで。
「ほんとうに、許せないわ」
「エレシュキガル様〜この間のデートの話なんだけど」
「ふぇっ!?」
「……まずは、これについて話しておきましょう」
元々酒場として使われていた空き家へと案内され、霊脈を繋ぎ、掃除をして。紀元前とは思えないほど素晴らしい味の夕食を終えた後に、話はそう切り出された。
マシュ、立香、ハーメルンが机を囲んで椅子に腰掛けて、机中央のシドゥリへと視線を向けている。アナは机から離れて屈んでおり、マーリンはシドゥリの少し後ろで椅子に座っていた。ついでにドクターロマンとダヴィンチも参加している。
そして、音も立てずにシドゥリが机の上に置いたのは、何の変哲もない木の板だった。少し磨かれてれているのか茶色の光沢を放っており、紐が開いている穴に通され、ペンダントのような形を取っていた。
……逆に言えば本当にそれだけ。立香も日本で何度か見たことのある、地味なストラップにしか見えなかった。
「手にとっても構いませんか?」
「はい。大切なものですが、壊すことさえなければ構いません」
マシュが断り、持ち上げて仔細に観察する。しばらく触った後、首を振って立香へと渡してきた。
受け取った立香も、四方から観察してみた。木材も、紐も、何ら変哲のない、そこらのもののように思える。裏の方に何か文字が彫ってあるが、立香には読めなかった。
隣のハーメルンに渡すも、同じくしばらく弄った後に首を傾げ、シドゥリの下へとペンダントを戻す。
「……ええと。これって、一体…?』
ペンダントを見せるシドゥリの意図がわからず、立香が恐る恐る尋ねる。シドゥリは紐を首からかけ直し、自分の胸にあるペンダントを確かめるように、ゆっくりと握った。
「……これは、『
「ほ、宝具!?これが!?」
まじまじと、改めてそのペンダントを確認する。……が、宝具らしき魔力も一切感じられなければ、それらしき神秘もあるようには思えない。実は冗談でただの木のアクセサリです……なんて言われた方が、納得できるほどに。
勿論そんなことはなく、シドゥリは淡々と説明を続けていく。
「これは、とある人物が十年以上前にウルクの国で配ったものです。……本当に、配られた時はただの木製の飾りだったんですけどね」
「……とある人物って、もしかして」
『天使』の証。それに十数年も前となれば、その像は容易に思い浮かぶ。立香の予想通り、首肯したシドゥリはその名前を口にした。
「……ええ。アンヘル君です。これは、ウルクで一文官として働いていた頃の彼が、国の様々な人たちに渡していたんですよ。当時は友達の証として、ですが」
クルリと裏を回し、先程の文字が刻まれている面を見せてくれる。そこには相手の名前と、その証の製造番号のようなものが刻まれているそうだ。
…なるほど。なんとなく要点が掴めた。アンヘルの思い入れがあったものが、アンヘルの死後そのまま全て宝具化した、ということだ。英霊の宝具は基本的には一つであるが、確かにいくつもの宝具を持つサーヴァントは何度か見たことがある。死の間際、身近にあったものが宝具となったサーヴァントも、確かにいると聞いたことがある。
となると、少し気になることも出てくる。
「ちなみに、この『天使の証』って、いくつくらいあるんですか?」
「そうですね。正確な数まではわかりませんが……恐らく、
『す、数千!?』
キョトン、と語るシドゥリに、今の今まで沈黙を貫いていたロマニが声を上げた。しかし、それも無理もないことだろう。
サーヴァントの宝具。別名
成り立ちこそ様々とはいえ、それぞれ計り知れない力、神秘を内包している。少なくともそんな単位でポンポン存在することはあってはならないだろう。
『そ、それ!どんな宝具なんだい!?そんな量なら、効果自体もお守り程度のものなのか!?』
「ロマニ、少し落ち着きたまえ。シドゥリ殿が戸惑っているだろう」
『これが落ち着いていられるか!Dランク……いや、例えEランクでもそんな量があれば特異点が生成される原因にもなりうる!聖杯がなくとも、魔力炉になる程度には宝具はとんでもない代物だ!お前もわかっているだろう!?』
マーリンの静止も効果がないほど、ロマニは興奮状態にあった。やれやれ、と頭を抱えたマーリンは、ヒョイっと杖を一振りした。途端、カルデアからの通信が突然途絶えてしまう。
「暫く、そっちからの音声は切っておくぞぅ。こっちの声は聞こえるだろうから、考察はそっちで勝手にやっておいてくれ。悪いが、この話題はあまり掘り返すべきものじゃないんだ」
ふざけるな、という返答が立香の脳内で容易に再生された。いや、というか絶対カルデアでそんなことをロマニは叫んでいるだろうが。しかし、カルデアとの通信が切れたことにより、室内に少しだけ静寂が戻ってきた。
「…す、すみません……」
「いえ、お気持ちはわかりますから、平気です。……それで宝具の効果、でしたね」
すぅ、とシドゥリが息を吸う。何かを堪えるような。というか、決意したかのような。数秒の呼吸で、立香は確かにそこに何かを感じた。
「……『天使の証』を持つものは、
「し、死なない!?そ、そんな宝具が、少なく見積もって一千個以上ですか!?」
マシュが、酷く錯乱した様子でシドゥリへと迫る。立香も、マシュが動かなければ同じようにしていただろう。
不老不死。人類が追求し、幾多の権力者達が追い求めてきたソレを持つ人間が、この国には大量にいる……それは、立香にとって、あまりにも衝撃的な事実だった。
……が。
「すみません、盛りました」
「え、えぇ……!?」
シドゥリがお茶目に目を伏せたことで、マシュと共に勢い余って机に突っ伏す。ハーメルンもあまりの肩透かしに体制を崩し、マーリンは愉快そうにケラケラと笑っていた。
「じ、じゃあ、これは宝具じゃないんですか?」
「いえ。この天使の証は、紛れもない宝具です。ただ、『絶対に死なない』となりますと語弊がありまして。…寿命では当然死んでしまいますし、流石に肉体が原型を留めないような死に方でも死んでしまいます。それに、そう何度も死を回避することができるわけでもないんです」
愛おしそうに手の中のペンダントを見つめ、シドゥリは少しだけため息を漏らした。
「この証を、名前が刻まれている人が持っている状態で命を落とすような傷、または病気を負ってしまったとき。この証は即座に砕け散ります。その代わりに、今後その傷や病気で死ぬことは絶対にありません」
「ま、君たちにわかりやすく言えば、一度きりの
「一度だけ……死を?」
それは、とんでもない代物ではないのか。事実上、命が一つ増えるようなものだ。寿命は避けられないこととはいえ、魔獣の脅威に脅かされているバビロニアでは、まさに救いのような宝具であるように思える。
だが、それは……
「す、凄いです!これさえあれば、魔獣の被害で亡くなる方はかなり減らすことができるのでは!?」
「マシュ。……多分、違う」
マシュの意見を否定する言葉が、自然と口から出てきた。違う。きっとそんなものではないという確信が、なぜか立香の中には存在していた。きっと、そんなものを持ってしまえば。
「………それは……怖い、ね…」
「え?」
ずっと口を一の字に結んでいたハーメルンが、立香の言おうとしていたことと全く同じことを口にした。
…人の命を救うという面では、確かにそれは素晴らしい代物のように思えるかもしれない。だがそれは逆に、持っていれば一度だけは助かるという、信頼を騙った油断を、心のどこかで許してしまうもののようで。
「……はい。ハーメルン君のいう通り、これは決して万能のものではありません。事実、数年前にこの力を過信した兵士達が無茶な特攻をしてしまったせいで、数百単位で魔獣に連れ去られました。それに誤った噂が広がり、力尽くでこの証を奪う人も現れて……」
「……そんな…!」
強大な力というものは、時に人を狂わせる。そのことを立香はよく学び、そして気をつけていた。英霊に力を貸してもらっている身として、それは最も気をつけなければならないことだったのだから。
「勿論、それ以来魔獣によるウルクへの人的被害はかなり少なくなりましたし、この証の認識も広まるようにもなり、証を盗難する人も減りました。……ですが」
言いにくそうに、シドゥリが突然押し黙った。何かを我慢するように、握られた手がわなわなと震え始めていた。そんなシドゥリの肩を、マーリンが優しく叩く。
「替わろうか、シドゥリ殿。ここからはボクが話してもいい。あまり思い出したくない話もあるだろうからね」
「……いえ、私が話します。話させてください。この話は、私が語るべきですから」
そう言って気丈に持ち直し、シドゥリは大きく深呼吸をした。吸って、吐いてを何度か繰り返すシドゥリを、立香達も無言で待ち続けた。
「……藤丸。あなた方は、
「は、はい。……その、この天使の証が凄いのは分かりましたけど、それと
「……先に。藤丸達の人柄を見込んで、一つ断らせていただいても、よろしいでしょうか?」
「…なんでしょう?」
神妙な顔で語るシドゥリに、思わず生唾を飲み込みながら尋ね返す。その口から出たのは、立香が思っても見なかった言葉で──
「本日より半月ほど。
「………はぁ」
それから、暫くして。話し合いが完全に終わってから、立香は酒場跡……マシュによってカルデア大使館と名づけられたが……の屋上へと昇り、ぼんやりと空の月を眺めていた。……正確には、その月の周りをぐるっと覆う、蒼く照らされた光帯を。
「……親、様?」
「あれ、ハーメルン?どうしたの、こんな夜中に」
月明かりで朧げになった視界でも、ハーメルンの黄色のレインコートはよく目立った。今はおそらく深夜帯。子供であるハーメルンが起きているには、睡眠を必要としないサーヴァントとはいえ少しおかしい気もする。
マーリンの言葉を思い出して、少しだけ警戒してしまう。
「……ひとりじゃ、眠れなくて…親様は、さっきのこと?」
「……あぁ、うん。別に気にしてるわけじゃないんだけど、シドゥリさんの言葉の意味を考えちゃって。難しいことを考えるときは、こうやって空を見ながら考えるほうが集中できるような気がしてさ」
……嘘だ。本当は、空の光帯を見ていると、自然と前向きになる、ならざるを得なくなるから。自分が進まないと、世界が終わってしまうと。そう実感するしか他になくなってしまうから。だから考えが後ろ向きになったときは、こうして空を仰ぐことにしていた。
「……ね、親様。近くに行って、いい?」
首を傾げた彼に頷いて肯定すると、ハーメルンは足元を探るようにしてゆっくりと歩き……そのまま、立香の隣を通り過ぎて腕の中に収まった。少し冷たいの服の下からでもわかる体温と柔らかな感触が、少しだけ立香の心をほぐしてくれる。
「……ハーメルン?」
「親様、やっぱり……気にしてないなんて、嘘。……シドゥリさんの言葉……そんなにショック、だった?」
見下げる形で、ハーメルンの琥珀と目があってしまう。吸い込まれそうな蜂蜜色が、まるで立香の心の底を覗き見るように、大きく見開かれていた。目を逸らそうにも、その美しい宝石の目から逃れることは、どうやらできなさそうだった。
嫌が応にも、つい先程の出来事が思い出されてしまう。
『それは、どういう意味ですか?』
『……今この場で、私たちが死を尊ぶ理由を話したところで。きっと、理解はしていただけないと思うのです。……ですからどうか、半月ほどこの国で働き、過ごしてみてほしい。その上で、私から事の真相、本当の全てをお話しさせていただきたいと思っています』
先程、シドゥリに言われたことが、鮮明に、フラッシュバックした。
「……なんていうか。会って初日だから、仕方のないことだとは思うんだけど。………やっぱり、俺ってウルクから見ると関係のない他人なんだなぁって」
ショックだった、というほどではない。寧ろ、出会ったその日から信用されないなんて当然の話だ。……ただ、どうしても感じてしまう。自分がこの国、世界にとっては異物で、余所者であるという事実。今まで第六までの特異点を解決してきても拭えなかった、どうしようもない疎外感を。
そして、言ってしまってから。……そんな醜い立香の心を目の前の無垢な子供に話してしまったことへ、軽く罪悪感を覚えてしまう。
「ご、ごめんね!ハーメルンにこんなこと話しても、しょうがない、よな…」
「……親様…」
誰が悪いというわけではない。これは立香が勝手に感じてしまったことで、ただの醜いエゴイズムだ。決して、何も知らない子供に話してしまっていいような、綺麗な話ではない。
堪えることもせず、汚い胸の内を吐露してしまったことを少し後悔した。……そんな時。
「ん……親様」
不意に立香の朴がハーメルンによって押さえられる。そのまま顔が近づけられ、視界いっぱいに彼の整った容姿が映し出された。まさに目と鼻の先。至近距離で、流石に恥ずかしいのか、少し赤らんだ顔を見つめることになる。
「……親様。僕の、目を見て。……どう?」
言われた通りに、目を見つめる。目の中に映る光が光沢のように煌く、
「どうって……すごく、綺麗だと思うけど…」
「……んん、そ……そうじゃなくて。……目の、色。どんな色に…見える?」
次は、言われた通りに。立香の言い表せる限りの色彩感覚で、ハーメルンを観察して、形容しようとする。
「……蜂蜜色?」
少し赤くなった白っぽい顔についているのは、やはり黄色と言うには少し暗い、でも透明感のある、蜂蜜のような色だった。同じように、髪は少しそれが濃い琥珀色。服は変わらない色に見える。
「……ボク、この国で、見なかった。……は、髪は、ちょっとだけあの王様と似てたけど……でも、この色の目の人は、一人もいなかったよ。……髪だって…あの王様以外は……誰もいない……」
「……そりゃあ、そうだけど」
確か、金色の髪を持っているのはウルクの神々の証で。……ハーメルンも神性を持っているとはマーリンに聞いてはいるけれど。……でも、やはりハーメルンの髪はこの国では見ないものだ。
「でもね。……親様の黒い髪。それは、ウルクの人たちと同じ。いっぱいいて、たくさん……だったよ。青の目の人も、いないではなかった。………だから、親様は……ウルクの人たちと、似てる。ウルクっぽい」
「ウルクっぽい……?」
「う……ん。親様、今は余所者……でも、半月も経ったら、ウルクの人と区別がつかないと思うから……それに、それに……えっと……ええっと……」
それは、彼なりの気遣いのようだった。
ただ、それにしても不器用というか、不格好というか。……正直、全然理論立っていなくて。それなのに、子供なりのフォローの暖かさが、温度が、身に染みて感じられて。
「……ぷふっ」
思わず、吹き出してしまう。先ほどまで感じていたら孤独の感情など、どうでもいいと思えてしまうほどに。
「……わ、笑わないで!………笑わないでよぅ」
慌てたように手をバタバタとして立香に抗議するハーメルン。その姿が、余計に面白くて、可愛らしくて。
「いや、だってハーメルン……ウルクっぽいって……ちょっと……いや、ダメだなぁ……ははは!」
「もう、親様ぁ……」
ちょっとだけ大きな声を立てて、クスクスと笑う。ハーメルンは涙目でこちらを見つめているが、でも、笑わずにはいられない。
ハーメルンの気遣いもそうだが……自分が。自分がこの国にとって異物だなんて考えていた自分自身がそれ以上におかしくて、どうしても笑ってしまうのだ。
こんな子供に無理をして語らせてしまうほど愚かな自分なんて、どうしたっておかしすぎて、笑ってしまう。
「……そうだよね。今は他人でも、暫くすれば他人じゃなくなる。俺はそうやって、今までも信頼を勝ち取り続けてきたんだ。急に全部話してもらおうなんて、どうにかしてる」
別に、英霊のような無茶無謀、あるいは輝かしい偉業でもなんでもない。ちょっとした努力と、地道な研鑽こそ、立香が今まで積み上げてきたものだったのだから。
「……親、様?元気、でた?」
「あぁ、すごくでた。ありがとう、ハーメルン。俺、ちょっとのぼせてたかもしれない。最後の特異点で、少し最初がうまくいったからって。……そうだよね。こんな逆境、いつも通りだ」
大きく空を見上げて、手の中のハーメルンを思い切り撫でる。全身をくすぐり回すようにして、優しく、優しく。ハーメルンもフードを目深に被り直して顔を赤くしながらだが、少し嬉しそうに頬を緩めてはしゃいでいた。
「……あと……あとね、親様」
「ん?どうしたの?」
少し言いにくそうに顔を陰らせるハーメルン。頭を撫でるのをやめないまま、立香は密着姿勢で話を聞き続けた。
「……シドゥリさんは……親様とマシュさんに……ううん。ボクたちに必要だったから……今言わなかった……言えなかったんだと思う……あの人、ボクらに話せないの、凄く苦しそうだった」
「……うん、そうだね。俺も今はそう思う」
何度かシドゥリが苦しそうな……戸惑うように言葉を濁していたのは、そういう事情もあったのだろう。きっと、今の立香たちでは理解しきれないほどの事情が、この国にはあるのだろう。
そしてそれは、今の立香にはどうしようもない。未来の立香ではないと、そのことを理解するのは、きっと不可能なのだ。
「……お仕事……明日から、忙しくなる、よ?」
「……うん、そうだね。そろそろ寝よう。1日でも早く、ウルクっぽくならないと、ね」
「…………親様の、いじわる…」
「ごめんごめん」
ぷぅ、と可愛らしくて頬を膨らませて怒るハーメルンが、少し残念なことに立香の腕から抜け出てしまう。温もりを少し惜しみながらも、流石に座り続けるのも疲れたので立ち上がった。
長い間座っていたから、体が少し硬い気がして大きく背伸びをする。ポキポキと小気味良い音が鳴って、少しだけスッキリした気分だ。
「……ね、親様…」
「どうしたの?」
少し立香から離れて、けれどそこからわかるほどに顔を赤らめ、モジモジとしながら言葉を紡ごうとするハーメルン。その口元が何度かもごもごと動いて、三度、四度と小さく悲鳴のような声を漏らしながら、ようやく声を出した。
「ひ……じゃ…」
「ひ?」
「ひ、1人じゃ、怖いから……一緒に寝ても、いい?」
「ヴッ!(尊死)」
立香は、どうやら就寝前に致命的なダメージを受けてしまったらしいことを悟った。
……当然、その夜は緊張してあまり寝れなかったという。子供が可愛すぎるのも、考え物である。
天使の証
ランク: D
種別:????
レンジ:???
最大捕捉:???
詳細不明。どのような原理が発生しているかも一切不明の、謎の塊。その証に名が刻まれた者が死亡するとたった一度だけ救い、その死に耐性を与える、ただそれだけの宝具。過去現在、ギルガメッシュの頭を悩ませる種でもあり、ウルクを救ってきたものでもある。ちなみに、本当に死んでから生き返っている。現在の総数、千五百枚超。
すまない………アンヘル君の出番もなければ
ハーメルンのマシュの呼び方が変わってるのはミスじゃないです。仕様です。……レオニダス王?まだ戦場で頑張ってくれてます!ムァダムァダァ!
『簡潔に説明するなら、
『冥界デートスポット少なすぎ案件』
『この国を、三つの復讐が襲う』
『とりあえず、手でも繋ぐ?』
『いいこ、いいこ』
『さぁ、冒険にいくぞ!勇者ども!』
『親様、ダメぇぇっ!』
『お前なんかに、何がわかる!?』
『……