進撃の世界に鬼が乱入しました 作:創作の巨人
(念の為補足)
「ごめんね二人共。待たせたね。やっと、牢から出られそうだよ!」
私とエレンの迎えに来たのは兵士2名だった。1人はトロスト区で出会ったハンジ・ゾエ、もう1人の方は…分からない。とにかく背が大きく、物静かな雰囲気だ。身長に関しては、リヴァイといい対比だ。
「おー、ハンジじゃーん!元気~?」
「覚えててくれたんだ、嬉しいよ!私は元気さ!君の方も元気そうで良かった!ミケ、エレンの方開けてやってくれ!」
ミケと呼ばれた男はハンジに言われてエレンの牢を開け、手枷をつけたままでエレンを出した。私の方はハンジが開け、同じく手枷をつけたまま牢から出た。ここで初めて審議所の中でエレンと再会した。
「お~エレン、久しぶり!元気そうだね!」
「スイカ!?お前、何だってこんなところに…?隣に誰かいるのは分かってたが、お前だったとは思わなかったな…」
「クソけ……憲兵が私を探してるって言うから、自首してやったんだよ。これから、私とエレンの2人分を同時に審議するらしいし、それなら探す手間を省けさせた方が憲兵としても楽じゃん?」
「え?……ハンジさん、俺はずっと審議所の牢に居たんですか?」
「うん。でも大丈夫、君達は思った事をそのまま言ってくれるだけでいい。後の事はエルヴィンに丸投げしちゃってさ」
「え、えぇ……」
エレンは引いているが、ミケすらも頷いているところから察するに、本当にそれで良さそうだ。まぁでも、あのエルヴィンなら権力者をこちらに頷かせる事なんてそう難しくもなさそうだが…。
「何だ、思った事を言うだけ?それだけなら至極簡単だね。でも、本当にそれだけでいいの?」
「ん?何がだい?」
「私、何言うか分からないよ?下手したら暴れるかもしれないよ?」
「ハハハ、君は面白い事を言うね。でも大丈夫、そう言ってる者は案外暴れたりはしないものさ」
「…ふーん」
人外の私は、恐らくはエレンよりも酷い扱いを受ける事になる。あのエルヴィンならそれくらい読んでいる事だろう。なら私は、敢えて奴の策に乗ろう。つまり、
こういった「互いが互いの考えを察して動く」というやり方は、幻想郷ではよくある。まさか、こんな所で幻想郷を感じる事が出来るとは。案外エルヴィンとは気が合いそうだ。
やり方こそ少し違うが、この世界での八雲紫はエルヴィン・スミスかもしれない。
「おっと、少し話しすぎたね。じゃ、行こうか」
ハンジが前に立って歩き出し私達を案内する。ハンジの後ろを私とエレンが歩き、その後ろにはミケが居る。するとミケは、おもむろにエレンの匂いを嗅ぎ……そして鼻で笑った。
「あ……あの……?」
「あぁ、彼はミケ・ザカリアス。私と同じ分隊長だよ。初対面の人の匂いを嗅いでは、あぁやって鼻で笑うクセがある。深い意味は無いと思うね。
…ミケ、流石に女の子はやめておけば?エレンも引いてたろ…」
「あー、別に構いやしないよ。実害が無きゃね」
「はぁ…ごめんよスイカ…」
では遠慮なく、と言わんばかりに匂いを嗅ぐ。しかし今度は鼻で笑わず、少し鋭い目付きで言葉少なに問いかける。
「………お前、いつ酒を飲んだ?」
「…ヘェ。私の中の酒の匂いを嗅ぎ当てるとは…鼻が利くんだね、ミケは。私は何百年も酒浸りの生活を送ってきたのさ。だから、たかが数日酒を飲まずとも、酒の匂いは取れないんだよ。もう、細胞の隅々にまで酒が染み渡ってるだろうねェ」
「………」
「えぇ?スイカは何百年も生きているの?オニはそんなに寿命が長いの?人間は100歳だって無理なのになぁ…」
「そうさ。私達は成長する事を辞める代わりに、永い永い…それこそ、まさに半永久的な命を手に入れたのさ。そんな人外の中でも格別に強い力を持つのがこの私、鬼なんだ」
「そりゃ面白そうだ、是非もっと聞かせてくれ…って言いたい所なんだけど…。着いちゃったね。スイカは大丈夫だろうけどさ、エレンは肩の力を抜いて審議に臨んでね!」
「は…はい…」
厚そうな扉の前でハンジはそう言い、とうとう扉を開ける。そこには沢山の人が集まっていた。部屋に入って後ろを振り返ると、ハンジがガッツポーズで「頑張れ!」と念を送ってきた。全く、こういう厳粛な場でもあの人はあの人らしい。
「そこに跪け」
2つ並んだ台座にそれぞれ座らされて、手枷で繋いだ腕を拘束するように、手枷の鎖分の隙間が空けられた角柱を台座に差し込まれた。これなら普通の人間は動けないだろう。
私は霧になれるし、力ずくで破壊する事も容易だが、今だけは、大人しく従っておこうと思う。エルヴィンの策を発動させるのは、今ではない。
すると正面の…裁判で言う所の裁判長の席に、妙にガタイの良い白髪の老人が、腰を下ろした。もみあげと髭が繋がっている程に毛が多い。
5年もこの世界に居れば、嫌でも有名人の顔と名前くらいは頭に入る。彼はダリス・ザックレー総統だ。詳しくは知らないが、名前と顔くらいは知っている。
「さぁ…始めようか。エレン・イェーガー君に、スイカ・イブキ君だね?君ら2人は公の為に命を捧げると誓った兵士である……違わないかい?」
「「はい」」
流石の私も、こういう時くらいは敬語で話す。エルヴィンの策まで持っていくには、とりあえずこの審議を進めなければ話にならないだろう。
「異例の事態だ。通常の法が適用されない、兵法会議とする。決定権は全て私に委ねられている。君らの生死も今一度改めさせていただく。異論はあるかね?」
「ありません!」
「無いです」
「察しが良くて助かるな。この事態は────」
ザックレーはダラダラと文言を並べ立てるが、私の頭には大して入っていない。早く、巨人共と戦いたい。早く、早く、早く。こんな裁判じみたことに、一体何の意味があるのか。私は、こんな下らない事をする為にここに来た訳じゃない。
ザックレーはそれぞれの兵団の代表に、私達の処遇をどうするのか、という提案を訊ねる。主に私というよりもエレンの事だったが…。どうやら憲兵団は私達を解剖の後に、処分すると言った。憲兵団の言い分としては私達……特にエレンは、あまりに政治的な存在になりすぎた、これは壁内での争いの火種になると言い放った。
それに対して調査兵団…エルヴィンは、私達の力を利用し、かのウォール・マリアを奪還すると宣言。すると、宗教団体の者が数名騒ぎだした。こんな時でも己の利益を優先しようとする者には心底うんざりする。エレンも同じ事を思っているのか、今にも溜息をつきそうな顔になっている。
やがて、議論は巨人化したエレンの話…あの時ミカサを殴ろうとしたときの事に話題が移った。ザックレー曰く報告書に記載してあったとのことだが、ミカサがエレンに不利になるようなことを書くはずがない。…誰かと思えば、精鋭班のリコ班長がそう書いていたらしい。ミカサでも小さく舌打ちしていた。
暴れていた時の事は覚えていないのか、それを聞いたエレンは驚愕していた。あの時は、エレンとしての意識が眠っていて巨人の肉体だけが独り歩きしていたのか…何が何だかよく分からない。だがエレンの意識からくるものでは無い事だけは分かるような気がした。
その後、ミカサはエレンを庇うが、彼の素性を調べたと豪語した憲兵団師団長…ナイル・ドークは、よりにもよって審議の場で、過去にエレンとミカサが強盗を3人殺したと余計な発表をした。おかげで非難は更に集まり、仕舞いにはミカサも
「解剖すべきだ」と言われ始めた。エレンは己にヘイトが向くのは割と大丈夫らしいが、ミカサがそう言われるのは我慢ならないらしく、彼の額に青筋が浮いている。
……そもそも、宗教団体の連中のせいで、話がエレンの方に逸れすぎだ。私の方は、一向に話が進みやしない。……そろそろ、我慢の限界だ。
「お前ら本当にいい加減にしろよ?」
力で拘束器具を破壊した私は、その場に立つ。それを見たナイルは、部下に銃を構えろと指示。あんなものは、当たったところで死にはしない。何も恐れるものは無い。
「口を開けばグチグチとさぁ。やれ人類の為だ、やれ内地の争いの元だの…バカなんじゃないの?憲兵団と調査兵団、どっちも『人類の為に』って主義主張は一貫しているように見えて、実は全く違うよね。憲兵団は権利者の犬だ。醜い奴隷だ。対して調査兵団はどう?何の為に、今ここで私とエレンを求めてる?ウォール・マリア奪還の為。要は、人類が奪われた土地を取り返す訳だろう?憲兵団は、エレンに『政治的存在になりすぎた』なんてふざけた事を抜かしてたけどさ。それって民衆がエレンを英雄視して、
「こ、コイツ…!」
「そのクセ、エレンに対しては『エレンは高度に政治的な存在になりすぎたので解剖の後に処分』だと?ヘッ、頭おかしいとしか思えないけどね。どちらの選択がより人類の為になるのか……よく考えてみたらどうかな?そんなにふざけてると…私が人類を滅ぼすぞ?巨人よりも早く…圧倒的な力でね」
「「「………ッッ」」」
審議の場が静まり返った。そして、私の言葉に発破をかけられたか、今度はエレンが口を開く。その言葉にはどこか力が籠っていて、やっと彼の本心が聞けそうだった。
「そうだ…。そうやって、自分の都合の良い憶測ばかりで話を進めたって現実と乖離するばかりでロクなことにならない。大体、あなた方は巨人を見た事もないクセに何がそんなに怖いんですか?力を持ってる人が戦わなくてどうするんですか。生きる為に戦うのが怖いって言うなら力を貸して下さいよ。…この…腰抜け共め…」
「何…!?」
「いいから黙って全部オレに投資しろ!!」
私が言い放った時よりも、明確に、会場全体が静まり返った。流石はエレン、死に急ぎ野郎だ。本当に言った。私と違って絶対に死なないという自信も無いのに、だ。死に急ぎ野郎の二つ名は、まさにエレンにピッタリだ。
だがその瞬間、どこか殺気にも似た事を感じた私は、瞬間的に霧になりエレンの柱の上に行く。何かと思えば、エルヴィンの補佐のような感じで会議に出席していたリヴァイが、エレンを力強く蹴り飛ばしていた。カツンとエレンの歯が飛ぶ。蹴られたのは顔らしい。2発目は腹蹴り。そして今度は頭を押さえつけ膝で顔を蹴る。
ミカサが飛び出しそうになりつつ、アルミンがそれを止めるのが、声で何となく伝わってきた。
「これは持論だが……躾に一番効くのは痛みだと思う。今お前に必要なのは言葉による『教育』ではなく『教訓』だ。しゃがんでるから、丁度蹴りやすいしな」
それからは何度もエレンを蹴り飛ばした。私はリヴァイを止めたかった。だがこれこそが彼の…エルヴィンの策だと気付いた私は、とりあえずは霧のまま停滞する事にした。やがて、何を思ったのか、ナイルはリヴァイを止める。
「待て、リヴァイ」
「何だ…」
「…危険だ。恨みを買ってこいつが巨人化したらどうする」
「…何言ってる。お前らはこいつらを……おい、もう1人のクソガキ。消えてねぇで出てこい」
クソガキ呼ばわりは気に入らなかったものの、こんな所でそんな意地を張っても仕方が無いので仕方なくエレンの柱の上で実体化する。すると、ナイルを初め、宗教団体の連中やその他の者が、恐怖、畏怖の視線を向けてくる。
「……お前らはこの2人を解剖するんだろ?」
ナイルやその他憲兵は沈黙を決め込む。これがエルヴィンの狙いだったのだ。あまり考えたくはないが、これが人間の考える事だとは思えない。何なら、霊夢の方が温情がありそうなものだ。
「はっ…。こいつは巨人化した時、力尽きるまで20体の巨人を殺したらしい。オニのガキの方は、最初に力を発揮した時とトロスト区防衛の時とを合わせれば40体以上殺したそうだ。敵だとすれば知恵がある分厄介かもしれん。だとしても、俺の敵じゃないが…お前らはどうする?ガキ共をいじめた奴もよく考えた方がいい。本当にこいつらを殺せるのかをな…」
それからはザックレーとリヴァイ、エルヴィンとナイルが少し問答し、少々の条件付きではあるものの、どうにかエルヴィンの弁でザックレーを言いくるめられそうだった。
「…決まりだな。エレン・イェーガー、スイカ・イブキは調査兵団に託す。しかし、次の成果次第では再びここに戻る事になる」
◆
その後、審議所の一室にて。調査兵団の幹部と私とエレンは、一堂に会した。私とエレンは少し長いソファに腰掛けている。これでやっと、調査兵団に入れる事になった訳だ。エレンは、未だに身体が痛むようではあるが、とりあえず元気そうでよかった。
「イテテ…」
「すまなかった…。しかし君の偽りのない本心を総統や有力者に伝える事が出来た」
「はい…」
「まぁ尤も……君があそこまで言ってくれるとは思わなかったけどね。スイカ・イブキ…」
「ムカついたんだ、アイツらの言い分にさ。でも結果オーライだろ?そんならイイじゃん?」
「その通りだ。過程はどうあれ、結果が全てだ。君の本心も伝える事が出来て良かったが…あまり啖呵を切るものだから冷や汗をかいてしまった。ともあれ効果的なタイミングで用意したカードを切れたのも、君の痛みと君の発言の甲斐あってのものだ。…君達に敬意を…」
腰を屈め、私達と目線を合わせるようにして、両手を差し出すエルヴィン。今度は心からの想いなのか、私の目にも言葉通りの行動に見えた。
「エレン、スイカ。これからもよろしくな」
「はい…よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね、団長さん」
すると、リヴァイがエレンの隣に足を組みつつ座り、相変わらずの仏頂面(に見える顔)で問いかける。
「なぁエレン」
「は…はい!」
「俺を憎んでいるか?」
「い…いえ。必要な演出として理解してます」
「ならよかった」
成程。リヴァイは、あぁ言いつつも心の中では
「恨みを買って」いるのが怖かったのだ。なら、少しだけ遊んでやろう。
「私は恨んでるけどねー、リヴァイのこと」
「…あ?」
「幾ら何でもやりすぎでしょ、アレは。だって、エレンの歯が折れちゃったんだよ?」
「そうだよ?限度があると思うけどねぇ」
エレンの歯をご丁寧にハンカチで包んだハンジまで乗っかってくる始末だ。しかし彼は、「解剖よりはマシだと思うが…」としか言わず、私は、リヴァイで遊ぶのをやめた。
「あぁそうだ。君達の持ち物だ、今返すよ」
「…!ありがとうございます」
「あーっ!!私の伊吹瓢ちゃ~ん!やっとだー!会いたかったか~?私も会いたかったよぉ~♪」
エレンは鍵を、私は伊吹瓢を、エルヴィンから返却してもらう。傷一つ無く、相変わらず綺麗な瓢箪だ。中からは相変わらず水っぽい音が…酒の音がして、それだけでもどこか安心できた。
「あーあ、折角の永久歯が途中で折れてるよ…。さぞ口の中は血だらけなんだろうね…。エレン、口の中見せてみてよ」
ハンジに言われ、パコッと口を開けるエレン。口の周りの傷が、特に痛々しく見えてしまう。
「……え?歯が生えてる」
現在公開可能な情報
ミケ・ザカリアス:分隊長。身長196cmという、極めて高身長な男。低い身長がコンプレックスのリヴァイは、出来ればミケの隣に立ちたくない。初対面の人の匂いを嗅いでは鼻で笑うという少しおかしなクセがある。ハンジ曰く、「深い意味は無いと思う」。こんな変人でも、実は
高身長故に萃香との身長差はえげつない。下手をすればミケが萃香を誘拐しているように見える。
ダリス・ザックレー:総統。憲兵団、駐屯兵団、調査兵団という3つの兵団組織の実質的トップ。萃香曰く「何か面白そうな野望を抱えている」。それが何かは不明だが、鬼の言う「面白そう」はロクでもない事だろう。
そういえばエルヴィン、原作内ではエレンの鍵について「君の持ち物だ。後で返すよ」って言ってましたけど、これ、審議に勝つ気満々ですよねw
だって、憲兵団があの審議に勝ってたとしたら、エレンは解剖の後に殺されるワケで、きっと鍵は彼の元に返されなかったんでしょうし…。
前回のエルヴィン団長、リヴァイ兵長とのお喋りシーンでは、東方萃夢想の「砕月」というBGMが合うかもしれません。萃香の流れですし(笑)
そしてこれから女型編となるんですが、ここから大きく原作から乖離させます。エルヴィンは悪魔なので、トコトン萃香の力を利用しそうですね。
やっと女型編まで来たよぉ…(泣)
1日に1回の更新は難しくなるかもしれませんがそこは悪しからず。原作を読み込んで、もう少しアレな展開にしたいので。アレな展開です。
本作を読んでる方は、進撃の巨人と東方Projectをどの程度ご存じですか?折角のクロスオーバーなので、それぞれのネタなどを使うにあたって参考にさせて頂きます。
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進撃は知ってる/東方は知らない
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進撃は知らない/東方は知ってる
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どちらも知ってる(ある程度原作履修済み)
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どちらも知らない(聞いた事がある程度)