進撃の世界に鬼が乱入しました 作:創作の巨人
第57回壁外調査は、早朝から行われる。壁から出て旧市街地を抜けたら、エルヴィンの指示にて長距離索敵陣形を展開する。私達が在籍するこのリヴァイ班は、中央の後方に位置しているので、陣形の中ではかなり安全な場所だと言える。
だからこそ敵勢力を深くまで誘い込まなければ確実に捕えられないという事なんだろう。ただ、その為だけに大勢の兵士達を犠牲にする選択は、決して楽なものではなかったはずだろう。きっと団長は、誰よりも覚悟を決めているに違いない。
「巨人の気配が無いな…。やっぱり、ここが一番安全な位置だからか…?」
「そうだね。ちょっと拍子抜けかもな~」
「お前らな…ここは壁外だ、いつ奴らが来るとも知れないんだぞ。そんな事は言うべきじゃない」
「堅いなぁエルドぉ…。私は一刻も早く巨人共をぶっ殺したいのに。ねぇ、グンタ?」
「い、いや…そこで俺に話を振られてもな…はいともいいえとも答えられん…」
「フン…まぁ俺は何体が相手でも倒せるがな…。だがまぁ、対峙しないに越した事はないだろう…新兵の出る幕はねぇさ」
「おー…オルオにしては珍しくまともっぽい事を言ってるねぇ。悪いものでも食べた?」
「俺はいつもまともだが?」
「「「…………」」」
「何だよお前らッ!?俺はこう見えても討伐数はお前らの中で一番上なん────」
またもや舌を噛んだ。派手に血をぶちまけるがこんなのは普段通りの光景だ。寧ろ和んでしまう程度には見慣れてしまった。
班内ではそんな平和なやり取りをしているが、初列の方では漸く巨人を発見したのか、方向転換を意味する緑の煙弾が放たれた。それを確認次第他に伝達するためにも、班内の誰かが同じように緑の煙弾を放つ。
「オルオ、お前が撃て」
「了解です!」
しかしその直後に、右翼側から馬で駆けてくる兵士が現れる。煙弾ではなく直接来るからには、かなりの緊急事態という事だろう。
「口頭伝達です!!右翼索敵壊滅的打撃!!右翼索敵一部機能せず!!以上の伝達を、左に回して下さい!」
「聞いたかペトラ。行け」
「ハイ!!」
口頭伝達した兵士は元居た配置に戻っていき、反対にペトラは左翼を担当する別な班へと急ぐ。そしてその時、黒の煙弾が上がる。あれは確か、奇行種が現れたときのものだ。より多くの人間が集まる所へ向かう奇行種のみ倒すらしい。だが、いくら奇行種が相手でも、この中央後方まで黒の煙弾が届くまでに至るとは…余程陣形の内側まで侵入させてしまったとみえる。
「エレン、お前が撃て」
「はい!」
「リヴァイ。この奇行種…もしかして…?」
「…もしかして、何だ?ここまで来るとでも?」
「…そうかもしれないなと思ってね」
嘘だ。リヴァイは私の言いたい事が分かってる上でわざとボケている。当然ながら、こんな所で
「知性巨人かもよ?」とは言えない。これで私の考えがリヴァイに伝われば、今はこれで十分だ。この奇行種は奇行種ではない。エレンのような、巨人になれる人間だ。つまりとうとう敵が現れたワケである。
「待てよ…右翼側って確か…アルミン……ッ!」
「あ…」
確か私に渡された作戦企画紙では、アルミン、ライナー、ジャンが右翼側を担当していたはず。まだ新兵なので、端の方ではなく少しは中央部に居るはずだが、壊滅的打撃となるとやはり多少は不安になる。
「大丈夫だよエレン。アルミンだって立派な兵士なんだ、何とかするさ。トップ13に入ったジャンだって居るんだからさ」
「あ…あぁ…そうだな…ライナーも居るしな…」
「…うん…」
もし本当にライナーが敵だった場合、エレンの精神的ダメージは相当なものになるだろう。私はそう考えたから、敢えて彼の名前を出さなかったというのに…。
今作戦では、敵を少しでも炙り出す為、各自に配布される作戦企画紙にはほんの少しだけ細工を施してあるとのこと。エルヴィンの言う所には、エレンの居るリヴァイ班の配置をランダムに記載しておいた…とのことだ。
こうしておけば、敵がそちらから現れた時に、エレンの居る場所を事前に知っていた兵士が敵と繋がっていることになるからだ。
今回敵は右翼側から現れた。つまり「エレンが右翼側を担当している」事を知っている兵士が、その「敵」と繋がっている兵士で…それは恐らく鎧の巨人か超大型巨人の中身だ。
ここまで掴めれば後は楽だ。今襲ってきている巨人を捕らえ、中身を引き摺り出せばいい。だが問題は、途中で追い付かれるか否かだ。もし仮に追い付かれたら、私が少しだけ足を遅らせる手筈にはなっているが……。
「リヴァイ、全体を見てきちゃダメ?」
「ダメだ。この状況でそれをやるのは、こちらの守りを手薄にするのと同義だ」
全体を見るというのは、私が頻繁にやっている監視方法だ。この身体を霧に変え全体に広がる。こうすれば広範囲を見渡せるというものだ。以前幻想郷では、こうやって幻想郷中に広がり、監視したり面白そうなものがあればそちらに行ったり好きに遊んでいたものだ。
つまり、私はリヴァイ班から少々離れることになるので、リヴァイがそう懸念するのも仕方ないことではある。
「…!兵長…このまま行くと、巨大樹の森に入ることになりますが…」
「見ればわかるだろ。俺達含め、中列は森の中を突っ切る」
言っている間に、リヴァイ班も巨大樹の森へと侵入を開始する。過去には観光名所だったらしいこの森だが、ウォール・マリアの陥落後は当然、整備されておらず、路地以外は荒れ果てていた。路地に草木が生えていないのは、巨人が往来したからだと考えて良さそうだ。
「ここ森ですよ!?中列だけがこんなに森の中に入ってたら、巨人の接近に気付けません!右から何か来ているみたいですし……どうやって巨人を回避したり、荷馬車班を守ったりするんですか?これじゃ索敵陣形の意味が…」
「わかりきった事をピーピー喚くな。もうそんな事ができるわけねぇだろ」
「えっ!?な…なぜそんな…」
「周りをよく見ろ。この無駄にクソデカい木を。立体機動装置の機能を生かすには絶好の環境だ。そして考えろ。お前のその大した事ない頭でな。死にたくなきゃ、必死に頭を回せ」
だからこそ、この森で敵を捕えるという計画に至ったのだ。リヴァイの言う通りで、「立体機動装置の機能を生かすには絶好の環境」だからこそこの森が捕獲地点として選ばれた。
しかしこの作戦を知っているのは、ごく少数の兵士達のみ。リヴァイ班の精鋭達も、この状況を理解している者は誰もいない。オルオ達は完全に混乱状態に陥っている。それでも、全ての判断を信頼するリヴァイに委ね、生命をも委ねている。
やがて、背後から足音が聞こえてきた。通常の巨人よりも速く、スピード感がある足音だ。
「兵長、後ろから何か来ます!!」
「お前ら…剣を抜け。それが姿を現すとしたら…一瞬だ」
後列の班が、作戦通りに命を散らして、巨人の進行を少しでも遅らせている。兵士の叫び声が、とても痛ましく森に響き渡る。きっと背後では、阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていることだろう。
それでも、私達は足を緩める訳にはいかない。仲間達の命を切り捨てる代わりに、敵を捕える。そう誓ったのだから。
「来た…!アイツが右翼側を……ッ!」
「あれは14m級かな。女みたいな身体付きなんて珍しいね。にしても筋肉質だなー」
「スイカお前…少し楽観的過ぎだぞ!?これじゃ追い付かれるかもしれない…。兵長、立体機動に移りましょう!!」
とうとう姿を現した女型の巨人。予想していた通り、アニに似ている。もしアニが髪を解いて、全裸になって走ったとしたら…まさしくこの姿になりそうだ。
そしてエレンが立体機動に移ろうと進言するもリヴァイは何も言わない。奴との距離を、慎重に測っているようにも見える。
「背後より増援!!」
後列の班が女型のうなじにアンカーを飛ばし、うなじの肉を抉り取ろうとブレードを振るうが、うなじまで到達する前に、女型が体当たりしたりキャッチして樹木に叩き付けたりと、好き放題に殺戮する。
「兵長!」
「指示を!!」
「やりましょう!あいつは危険です!!」
「俺達が殺るべきです!!」
オルオ達も喚くが、相変わらずリヴァイは何も言わない。それどころか、逃げながらゴソゴソと懐に手を入れている。
「リヴァイ兵長!?」
「指示をください!!」
「全員、耳を塞げ」
煙弾と同じように、真上に向けて何かを放つ。すると、キィィィンと甲高い耳障りな音が森中に響き渡る。これは音響弾、作戦通り上手く巨人を引き付けたと前方で罠を仕掛けたエルヴィン達に手早く知らせる為のものだ。
「…お前らの仕事は何だ?その時々の感情に身を任せるだけか?そうじゃなかったハズだ……この班の使命は、そこのクソガキにキズ一つつけないように尽くすことだ。命の限り。俺達はこのまま馬で駆ける。いいな?」
「「了解です!!」」
「了解!」
私や先輩達はそう答える。しかしエレンだけは納得がいかないようだ。後ろを見てみればまたも増援の兵士が掴まれ、潰され、叩き付けられて、次々と殺されている。
「クソッ…どうしてですか兵長!!リヴァイ班がやらなくて誰があいつを止めるんです!!何故、仲間をそう見殺しにしてまで逃げるんですか!?戦いから目を背けろとでも言うんですか!!」
「…そうだよ、エレン。今は…今だけは逃げるが勝ちなんだよ。たとえ仲間達を犠牲にしてでも、今は戦うべき時じゃないんだ」
「だから何でだよスイカッ!だからって見殺しにする理由もわからないしそれを説明しない理由もわからない!今ならまだ間に合うだろ!!」
「そんなの、リヴァイが説明すべきじゃないって判断したからでしょ。私達班員は班長に従うの。私達兵士は心臓を捧げると誓った。死んでいったあの兵士達も、悔いはないだろうさ。この兵団に所属してる以上、いつ死ぬかなんてわからないんだからさ。…これくらいはいい加減分かりなよ。もう、ガキじゃなくて兵士なんだよ。皆助かると思ってその通りになる程、この世界は甘くない。世界は残酷なんだからね」
「……ッ…」
…それにしても、予定の地点に到達するまでの道のりがこんなに長く感じるとは思わなかった。やっぱり私には追われるより追う方が合っているだろう。
相手は14m級で、しかも知性巨人。下手すれば追い付かれるかも、という距離感になっている。このまま走ればペシャンコになる。
「…チッ。エルヴィンの奴、読みを外したか…。スイカ!短時間でいい、奴を足止めしろッ!!」
「はいよっ!3秒だけ待ってね!!」
私は納刀し、馬の上に立つ。そして女型の方へ向き直り、天に両手を掲げる。
「『元鬼玉』ッ!……うぉらぁぁあああッ!!」
周囲の熱を萃めて火の玉を作る。そして、3秒キッカリ溜めて玉を巨大化させた後、それを奴の顔面に投げつけた。予想通り女型の足は一瞬だけ止まったので、私達との距離がグンと開いた。
火の玉は女型が叩いて消してしまったが、この僅か1秒や2秒だけでも、大きなリーチとなる。
馬に座り直して改めて手網を握ると、珍しくもリヴァイが労いの言葉をかけてくる。
「…よくやった。もう少し遅ければ潰されていたかもしれん。……だがまだ安心するな。奴は未だ俺達のすぐ後ろに居るという事を忘れるな」
「分かってるよ!」
予定の地点まではあと数10m。距離を置かれたことで焦りが生じたか、女型は更に速度を増す。そしてエレンへと手を伸ばした所へ─────
「撃て!!!」
街道沿いで待機していたエルヴィンの指示で、罠の準備をしていた兵により頑丈なワイヤー付き銛が放たれ、女型の全身に突き刺さる。銛の反対は木に刺さるようになっていて、これでもう奴は動けなくなった。
咄嗟に両手でうなじを押さえたようだが、中をほじくるのにさして支障は無いだろう。
「え!?なっ…こ、これは…!?」
「少し進んだ所で馬を繋いだら立体機動に移れ。俺とスイカとは一旦別行動、班の指揮はエルドに任せる。適切な距離でアイツからエレンを隠せ。馬は任せたぞ。いいな?」
有無を言わさず、リヴァイは立体機動装置にてUターンする。遅れては文句を言われそうなので私も早めに向こうに向かうことにする。勿論馬はエレンに任せて、である。
「じゃあねエレン、また後でっ!」
「ホントにスイカまで…!?」
リヴァイは速い。直線も曲線も構わずスイスイ空中を駆ける。私は、髪を縛る飾りには3つ目の重りがついているし、それによってカーブ時にはバランスを崩す事があるので、あそこまで速くは動けない。
漸く追いついた時にはリヴァイはエルヴィンの隣に立っていて、何やら話し込んでいた。
「遅せぇぞ、スイカ。何をチンタラしてやがる」
「リヴァイが速いだけだよ!」
「……。何にせよ奴の動きは止まったようだな」
「まだ油断はできない。しかしよくこのポイントまで誘導してくれた」
「後列の班が命を賭して戦ってくれたおかげで、時間が稼げた。スイカにも助けられた。それらが無ければ、土台不可能だった」
「そうか…」
「そうだ…。彼らのおかげで、こいつのうなじの中に居るヤツと会える。中で小便漏らしてねぇといいんだが…」
アニと似た巨人の頭を蹴りながら、リヴァイはそう吐き捨てるように言った。…中身は十中八九アニなのだろうが、同期の私としてはどうかこの予感が外れてくれと願ってしまうのだった……。
エルヴィンといえば失敗の無い最高の団長!…と言われることがしばしば散見されますが、実際はそうでもないんですよね。いや失敗が少ないのは確実ですが、失敗がゼロではないんですよね。
原作中でも、森の中で女型を捕らえるのに失敗をしていたりすることから察するに、エルヴィンの策も完璧ではない事が分かりますね。そのお陰でストへス区での戦いに話が動くワケですが。
やはり博打打ちの団長はなぁ……良いですよね。
本作ではそこら辺がどうなるのか、あんまり期待しないでお待ち下さい。バリバリの二次創作街道突っ走ります。
因みに「元鬼玉」はオリジナル技ではなく萃香の非スペル技として原作でも出てくるものですね。
某龍球の技のパロディのようです。
本作を読んでる方は、進撃の巨人と東方Projectをどの程度ご存じですか?折角のクロスオーバーなので、それぞれのネタなどを使うにあたって参考にさせて頂きます。
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進撃は知ってる/東方は知らない
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進撃は知らない/東方は知ってる
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どちらも知ってる(ある程度原作履修済み)
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どちらも知らない(聞いた事がある程度)