進撃の世界に鬼が乱入しました 作:創作の巨人
「うおおおぉぉぉおおぉぉっっ!!!」
15m級と化した私は、落下のエネルギーを利用しながら鎧の巨人…ライナーを殴る。手が痛い。これが鎧の巨人の防御力か。しかし多少手に傷がついた程度で、エレン巨人のように手が砕ける、なんて事にはならない。
当たり前だ。この程度でいちいち骨折等の怪我なんてしていたら、山等は吹き飛ばせないのだ。その一方で、鎧に与えたダメージは甚大だった。顎の鎧が剥がれ、筋肉が露出している。いける。勝てる。力任せでもいける。
鎧が剥がれてしまえば、あの鎧の巨人も普通の巨人と同じ。寧ろ、勝てないわけが無い。如何に知恵があろうとも、絶対的な力には敵わない。
エレンは巨人体の顔が半分欠損していて、手と共に再生させている途中。彼が万全の状態になるまでは私が1人でライナーの相手をしなくては。まぁ尤も、エレンの回復を待たなくとも、ヤツを倒してしまえばそれで済む話だ。
「うなじに居るんだろう、ライナー…?私達で、お前を引き摺り出してやるよッ!!」
前傾姿勢になり、タックルをかましてくる鎧。私の背後は壁、つまり飛び退くことができない。しかし、ライナーは肝心な事を忘れている。私は空を飛べる。壁と自分で挟み撃ちにしてもそれは何の意味も成さない。逆に、空という私にとって有利な戦場へ誘導しているようにも思えるほど、愚鈍な策だった。
わざと追い詰められたように壁まで後退して、限界まで引き付け…そして飛ぶ。すると、急には止まれないのか、鎧は壁に正面から突っ込んだ。当たり前だ。あんな巨体が、そう直ぐに止まれるはずがない。
ライナーは、どこぞの氷の妖精とは違って馬鹿ではない。しかしもう少しで勝負を決められると思ってしまえば、流石のライナーも勝負を焦り、そして引っかかってくれるだろうと考えた。その結果、まんまと頭から壁に激突してくれた。
「トドメだ…!鬼符『大江山悉皆殺し』ッ!!」
鎧の足を掴み、壁から引き摺り出す。そして、力のままに振り回し、何度も地面に叩き付ける。何度も、何度も。地面に大きなクレーターができ全身の鎧が剥がれ掛けてきた所で、より一層強い力で叩き付け、爆発を起こす。
「…おっ、エレン復活した?じゃあ、ライナーは頼んだよ。食べちまいな、やり返してやれ!」
体を再生させたエレンは、もうピクピクとしか動かなくなったライナーの頭と背中を押さえて、鎧の剥がれたうなじに噛み付こうと口を開ける。私は、決着の瞬間まで見届ける事にした。
するとその瞬間、うつ伏せのままのライナーが声を上げた。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!」
「へっ…断末魔ってヤツかな。流石のライナーも観念した…のかな…?」
勝てる。そう確信した。しかしその時、上から何か巨大なものが降ってきた。地面に映る影で、私はそう察知した。上の兵士も、避けろと私達に叫んでいた。それでも、これでは間に合わない。間に合うはずがない。
降ってきた物体の正体は、上半身のみが巨人化していた超大型巨人だった。私は、回避する事も霧化して逃げる事も叶わず、超大型の炸裂攻撃に耐えられず吹き飛ばされてしまった。あの巨体を瞬間的に蒸発させたのだ。膨大な熱量と風圧が、私にかつてない程のダメージを叩き込んでくる。壁に勢いよく頭をぶつけたが、とても痛い。
そんな中でやっと見えてきた光景は…エレンが鎧にうなじごと齧り取られる姿だった。既にボロボロになっていた鎧だったが、辛うじてあの爆裂攻撃に耐えられたと見える。落下中にライナーの異変に気付いたからベルトルトも威力を抑えたと考えるのが自然だろう。
「くそぅ……!何で私は…肝心な所で……」
私はこれまでにない屈辱感を味わった。巨大化させた身体も縮み、もうダメだ、と気絶しかけたその時、壁上から1人の兵士が飛び降りてきて、私を抱き抱えて上へと戻る。
「バカ野郎が。まずいと思ったらさっさと退け」
「リ…ヴァイ……」
「…すまねぇな。超大型は仕留められなかった。蒸気を出され続けて立体機動による攻撃が無力化されたからだ。そのせいでまんまと鎧のガキとの連携を許しちまった…」
「ダメ…放して…エレンが連れ去られる…ッ!」
こうしている間にもズシンズシンと鎧の巨人の重い足音が遠ざかっていく。今行かなければ絶対追い付かない。しかし爆発の衝撃で軽く脳震盪を起こしているのか、身体にあまり力が入らない。これでは上手く飛べないだろうし、何より馬にも乗れないだろう。
「待て。お前の他にも多くの兵が傷ついている。だが奴を追うには、少しでも多くの兵が必要だ。エレンの幼馴染のガキ……ミカサも気絶している程だしな。お前も少し休め。準備は俺達がやる」
「ちっ……。ナイス連携だったよ…アイツら…!この私を…ここまで追い詰めるとは…久しぶりに褒めるに値する人間が…現れた…ね…」
そう軽く言い放ちながら、ハンジ分隊長やその部下達のように横になる。人数を見るにユミルも連れ去られたらしい。とするとやはり、まんまと巨人化能力者を総取りされてしまったようだ。
ゆっくり押し寄せてくる絶望感に苛まれつつ、一時の安息に身を委ねた。
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「─────イカ。スイカ、今すぐ起きてくれ。至急、伝えなくてはならない事がある」
「う…ぅん……?何だよぉ……ふあぁ…」
「流石に頑丈だな、オニは。つくづく、君のその頑丈な体が羨ましいよ」
「用件は何さ、エルヴィン?」
横になっていた私の傍で立膝をついて、静かに語りかけてきたエルヴィン。空を見るにもう夕方らしく、エレンとユミルが連れ去られてから既に数時間が経過しているようだった。
「なに、シンプルな事さ。我々はこれより、馬を下に降ろして追跡を開始する。しかしその前に、君には別の作戦を伝えておこうと思ってな」
「別の…?って、一体何さ…」
「君は我々よりも一足先に奴らを追い、エレンとユミルを奪還し、彼らとの戦闘を開始してくれ。だが殺す為ではない。…アルミン・アルレルトの提案により、最後の希望に賭ける事にした」
「アルミンが…?」
ふと辺りを見回してみれば、アルミンがほかの参謀達と作戦会議を行っているのが目に入った。何となく、彼の考えが分かった気がする。
「生け捕り、か」
「そうだ。だから君には、彼らを疲弊させる事に全力を尽くしてほしい。我々は時間差でそちらに向かい、彼らが疲弊した頃に一斉に襲いかかる。しかしこれは、あくまでも『できれば』の話だ。最低でも2人の奪還は果たさなくてはならない。彼らを疲弊させれば、奪還も容易になるだろう。
…作戦は以上だ。何か質問は?」
「単独行動は軍規違反で処罰対象…だったと思うけど、今は特別なんだよね?」
「無論だ。誰も君を責めない。責任を咎めない。だから君は、好きなだけその力を奮ってほしい。失敗しても良いんだ。調査兵団は、未だに負けた事しか無いのだから」
“失敗しても良い”。エルヴィンのその言葉に、私はどこか心が救われた気がした。だからそれに報いるために、その作戦を伝達された直後、壁上から飛び降りて追跡を開始した。
ちらりと後ろを振り返ってみれば、団長や他の現在起きている面々が、私に敬礼を送っていた。
原作じゃ関節技を使うという頭脳プレイを見せたエレンですが、手を治している間に萃香の圧倒的パワーによって敵がほぼ屠られていて、それらを披露する隙が無くなりました。寧ろ萃香の攻撃を邪魔してしまうほどかもしれません。
「小手先のテクニックを無視する」ほどの圧倒的パワーですし、力押しでも何とかなるようです。
折角の二次創作ですから、104期ユミルについて色々書きたいですね。
次回、巨大樹の森で萃香が………?
本作を読んでる方は、進撃の巨人と東方Projectをどの程度ご存じですか?折角のクロスオーバーなので、それぞれのネタなどを使うにあたって参考にさせて頂きます。
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進撃は知ってる/東方は知らない
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進撃は知らない/東方は知ってる
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どちらも知ってる(ある程度原作履修済み)
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どちらも知らない(聞いた事がある程度)