進撃の世界に鬼が乱入しました   作:創作の巨人

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#17:エレンとユミルの奪還

 ある程度壁から離れた私は、遥か遠くに巨人が見えた辺りで、空を飛び始めた。無論、念の為に物理攻撃を無効化させる為に霧になっている。

 鎧の巨人の足跡は、見ればすぐわかった。湿地でもないのにそれなりに深く足跡が残っていて、どうぞ追いかけて下さいとでも言われているかのようだ。それ程あからさまに足跡が残っている。普通の巨人や私だとこんな跡は残らない。やはり全身に張り巡らされた硬質な皮膚の影響だろう。

 足跡は、ウォール・マリア内の某所に真っ直ぐ向かっていた。巨大樹の森である。といっても、女型を捕らえた時のあの時の森ではない。今回は小規模な巨大樹の森らしい。

 今は夕方。基本的に、巨人は夜になると活動を停止するので、その夜まで森で待機する腹積もりだろう。エレンの例を見る限りでは知性巨人でも巨人の捕食対象のようだし、それはライナーでも同じ事だと推測できる。なら、夜まで待った方が安全且つ確実に、エレンとユミルを「故郷」まで運べる。

 つまりエレン達を連れ戻すタイムリミットは、日没である。それを過ぎたらウォール・マリアの奪還もほぼ不可能となり、人類は詰んでしまう。エレン無くしてこの壁内に未来は無い。…多分。

 

(でもアイツら…どこら辺に居るんだろうな…?まるで気配がしない…。地面に居る巨人達は空に居る私には無反応…つまり霧の状態だと巨人達の索敵網には引っかからないってワケか)

 

 鎧の足跡は、森の入口あたりで途切れていた。そこから木に登ったのか、その後の行方は不明となっていた。一般的な巨人は3~15m級。なら、それらの脅威から避ける為に、15m前後~もっと高くに避難するのが自然だと言える。

 それから、夜になったら速やかに動けるよう、脱出もしやすい場所に陣取るはずだ。しかし彼らだって、エレン達を取り戻そうと調査兵団が追跡してくるであろう事は想定しているはず。ならば今私が居る森の入口…の周辺に居た所で、なんらおかしくない。

 現在の彼らが居る(かもしれない)場所の候補としては、追手が見えやすい入口周辺or逃げ易い反対側の二択まで絞れた。この周辺に人間らしい気配はない。とすれば、後者の逃げ易い反対側に陣取っていそうだ。

 

「おう、エレン。起きたか」

「な……何だこりゃ…?俺の手が…」

「そりゃすまん、俺がやったんだ。何しろかなり急いでたからな…焦って齧り付いたらお前の腕を蔑ろにしちまった」

 

(……!)

 

 森を迂回して進んでいると、不意にライナーとエレンの声が聞こえてきた。成程、近いようだ。やはり予想は当たっていた。ヤツらは向こう側の木の上に避難していた。

 エルヴィンやリヴァイをはじめ、調査兵団達は私より少し遅れてここへやってくる。なら少しはこちらの状況を伝えておこう。信煙弾による合図なんて今回は取り決めてないが、大まかな意図は伝わるはずだ。

 

「見つけたよライナー、ベルトルトッ!エレンとユミルは返してもらう!!」

 

「「……ッ!?」」

 

「スイカ…!何でこんなとこに来てんだ!?」

 

「こりゃ驚いたな……。どうやら、鬼さんからは逃げられないらしい。どーすんだライナーさん?ベルトルさん?お前らの『故郷』に行ったら死ぬかもと思ったが、スイカが来たらもう安心だな」

 

 ククククッ、と可笑しそうに笑うユミルを見て少し安心した。そして、彼らよりも有利な位置…上空20mほどで実体化した私は、黒色の信煙弾を空に向かって撃った。黒は奇行種発見の合図だ。相手は知性巨人だが…アニの時にも黒だったし、これでいいだろうと判断しての事だ。もうじき、馬の足音が聞こえてくる頃合いだ。だから私は、いち早くエレンとユミルを奪還し、ライナー達を少しでも消耗させる。

 

「信煙弾…!?調査兵団が近くに居るのか!?」

 

「ベルトルトッ!エレンとユミルは頼んだ!!」

 

「あ、あぁ…分かった…ッ!エレン、ユミル、大人しくするんだ…!」

 

 ベルトルトは急いでエレン達のそばに向かう。ユミルは動じていないものの、エレンは「腰巾着野郎!」「離せクソ野郎!」と罵っている。手が無いので抵抗らしい抵抗が出来ていない。

 足でバタバタと抵抗しているが、ベルトルトはエレンの頸動脈を絞めて難なく落としてしまう。手が無ければ抵抗しようがないので、仕方ない。

 元々、ライナーとベルトルトは立体機動装置を装備していなかったはずだが…。エレンが装備をしていない事から考えるに、2人の内どちらかはエレンから奪ったに違いない。片方は、何らかの方法で入手したのだろう。汚い奴らだ。

 

「くそっ、こんな所で力を使いたくなかった…!クソォッ!!」

 

 手のひらに傷を入れたライナーは、木から飛び降りながら巨人化する。ベルトルトは、オトしたエレンをおんぶ紐のように自分に括りつけ、更にユミルを抱え立体機動で避難を開始した。ヤツの長身なら、そんな芸当も不可能ではなさそうだ。細身に見えて、案外筋肉もあるベルトルトなら。

 一方ライナーは、手近な樹木を一本引き抜き、両手で持って振り回し始めた。空中に居る私を、吹き飛ばすつもりらしい。

 

「そんな樹木で、鬼であるこの私を倒せるとでも思ってんの!?こんな木、一発で粉砕だッ!!」

 

 空中で体勢を上下反転した私は、避けようともせずに迫り来る巨木を殴りつける。すると殴った箇所は木のチップのように粉々になり、至極簡単に壊れてしまった。

 失敗したからか、ギリッと歯を食いしばる鎧。口の開閉ギミックは少々小洒落ているようだが、そんなモンは私が殴ってしまえば瞬で粉微塵だ。

 手元に残った、今や切り株のような有様の木を投げ捨て、どうしようかと手をこまねいている。それもそのはずだ。

 私は空中に居るが鎧は空を飛べない。そして、今ここでエレン達2人を連れて逃げようとしても私がそれを阻む。つまり、何をしようとも結果は失敗に終わるのだ。

 とはいえ、そろそろ調査兵団が見えてくる頃。彼らに余計な被害を与えぬように、ここで奴らに力を使わせよう。

 鎧の巨人…ライナーにトドメを刺そうと、私は地面に降り立つ。鎧は私を掴もうと駆け寄りつつ手を出してくる。掴んだら握り潰そうか、とでも考えているのかもしれない。確かにそれなら私も肋くらいは折るかもしれない。……尤もそれは、

「私を掴めたら」の話だが。

 

「…じゃあね、ライナー…私達104期の兄貴…。四天王奥義『三歩壊廃』ッッッ!!!」

 

 歩く毎に巨大化し、威力を増やしながら相手を殴りつける技を発動させる。これならほぼ確実にトドメを刺せる。

 

 ──────まず一歩目。

 

 私は普段通りのサイズで、私に向けて伸ばしてきていた右掌を殴りつける。右手は、当然ながら粉々に砕け散り、攻撃の余波で右肩までは壊れたらしい。

 

 ──────二歩目。

 

 10m級まで身体を巨大化させ、二発目を胴体にぶち込んだ。少々手は痛い。しかし鎧を貫いて、温かくも硬い筋肉まで、私のこの拳は到達した。

 

 ──────三歩目。

 

 15m級になり、かなり力を込めて、真正面から強かに顔を殴りつける。バキバキッと鎧が砕ける音がしたかと思えば血を吹き出しながら筋繊維が千切れていき、やがて勢いよく首が吹き飛んだ。

 ライナー本人は巨人体に居るようなので捕獲は簡単だろう。本体に意識はあるようだ。そして、いくら巨人とはいっても、巨人体の脳がなければ行動を起こせないのか、本人は鼻血を出しながらこちらを睨んでいる。

 いや、よく見てみればライナーの怪我は鼻だけではない。片目は潰れている上に、首が飛ぶ際に外側の硬質な皮膚の破片で怪我したのか、口まで裂けてしまっている。元の男前が見る影もない。本体の怪我は治りが遅いが、巨人体の方は回復が早い。既に、下顎まで回復してきている。お陰でライナー本人は、殆ど見えなくなってしまった。今回はトドメは刺せなかった。しかし、もう一度頭を吹っ飛ばせばそれで済むことだ。

 

「ライナァァァァァァァァッッ!!」

 

 回復に手一杯なライナーは放っておいて、次はエレン達を奪還しようと森に目を移す。すると、彼らをどこかに下ろしたのか、立体機動装置のみ装備したベルトルトが、何と近くの木から叫びながら天高く飛び出した。

 それを見るや否や、ライナーは巨人体を倒して隠れかけの自分の体を、鎧の巨人の肉体で完全に覆い隠してしまった。

 ハッとして後ろを見てみれば、森の向こう側…私が来た方向から緑の信煙弾が上がっているのが目に止まる。調査兵団が近くに来ているようだ。もしやベルトルトは、森ごと私や調査兵団を吹き飛ばそうとでもいうのか。それをすると奪おうとしているエレン達も危険に晒されるというのに。

 決死の覚悟…なのかもしれない。或いは、賭けなのかもしれない。エレン達は巨人化能力者だ。例え瀕死でも、生き残る事は可能だ。つい先程のユミルのように。

 ここで大爆発を起こして調査兵団を壊滅させ、後から大怪我したエレンとユミルを探せばいい。手順なんて、何も一通りではないのだから。

 しかしこうなると厄介だ。奴らは死に物狂いでこの局面を突破するつもりだ。

 

「ユミル!今すぐ巨人化してエレンを連れて調査兵団と合流して!もう近くに来てるからッ!!」

 

(オイオイマジかよ…!巨人化の力に疎い私が、そこらに詳しいコイツらから逃げられるのか!?私の力は練度も低いし、調査兵団でもコイツらに敵わないってのに!………だけどまぁ、スイカが言うんなら、一か八か賭けてみるか…ッ!!)

 

 すると私の後方で巨人化の光が放たれる。私の呼び掛けに応じてユミルが巨人化したのだ。その直後、目の前で巨大な爆発が起きた。

 

「うぶぁっ!?風がっ……」

 

 とんでもない爆風と砂埃。爆発によって巨大な樹木が地面ごと抉り取られて空を舞った。運悪くそれらは調査兵団の団員達に降り注いだようで、重い物体が落ちてきたような落下音と共に悲鳴が聞こえてくる。血のニオイもしてきた。

 風や砂埃が収まって漸く目が使い物になると、そこには阿鼻叫喚の光景が広がっていた。なんとエルヴィンは巨人を引き連れてきていたらしく、それにより、先程の風と砂埃で行動不能に陥った調査兵達は、後ろから襲いかかってきた巨人達に食われてしまったようだ。

 中途半端に残った死体が何ともグロテスクだ。巨人は4、5体居たようだがいずれもリヴァイが屠ったようで、こちらも大きな死体だけが地面に転がっていた。

 超大型と化したベルトルトは調査兵を踏もうと歩き始めた。調査兵達は勇敢にも攻めていって、しかし足が迫る地点からは避け、隙を見て攻撃を仕掛けようとしている。

 そんな中で、流れに逆らうようにして団長へと接近する巨人が一体。そうだ、ユミルだ。手にはエレンを握っているので、巨人ユミルを見た兵も彼女に手を出そうとはしなかったのだ。

 そして顔のみ外に覗かせたユミルは、巨人体と接続している顎周辺の肉がちぎれながらも必死に話しかける。

 

「おい団長さん!アイツらから、気絶させられたエレンを奪ってきた!一先ず、撤退しないか!?知っている限りの情報は全て話す、だからここは壁内に戻ろう!あのデカブツ相手じゃあ私でも…起きてたとしてもエレンにとっても分が悪い!!負けるのが確定してる勝負だ!」

 

「…ああ。これまで巨人の力を隠していた理由も併せて教えてもらう事にしよう。…総員撤退ッ!急ぎ、壁まで撤退せよっっ!!」

 

 ……撤退、か。また、ライナーとベルトルトを殺しきれなかった。奴らを殺す事に躊躇いなんて無いはずなのに。あの時、剥き出しになっていたライナーを殺さずにエレン達を探したのは、一体どうしてだろう。作戦の最低条件は2人の奪還。だからその行動自体は決して間違ってなどいないハズなのだ。なのにその考えに自信が持てない。本当にこれでよかったのだろうか、と。

 

「……ちぇっ。今度こそ殺す……!」

 

 どこか悔しさのような感情を残しながら、私は調査兵団員の真上を飛んでウォール・ローゼへと帰還。…そして早速、その夜にユミルへの尋問が始められた…。




次回、ユミルのお話!
何故あまり抵抗せず、ユミルが大人しくしていたのかも次回明かす予定です。
王政編か…正直ここからが正念場ですかね…。

団長の片腕パックンチョイベントが無くなった!ヤッタネ!!…いや、叫びは!?((((



現在公開可能な情報
信煙弾の色と意味について

赤:通常の巨人を見つけた際に使用。

緑:長距離索敵陣形などでの進路方向を示す際に使用。基本的に初めに撃つのは団長。

黒:奇行種を発見した際に使用。

紫:緊急事態を知らせる際に使用。

黄:作戦遂行が不可能な事を知らせる際に使用。どの兵士も撃つことは可能だが、作戦全体に関係することなので基本的には団長及び作戦指揮者が初めに撃つ。

本作を読んでる方は、進撃の巨人と東方Projectをどの程度ご存じですか?折角のクロスオーバーなので、それぞれのネタなどを使うにあたって参考にさせて頂きます。

  • 進撃は知ってる/東方は知らない
  • 進撃は知らない/東方は知ってる
  • どちらも知ってる(ある程度原作履修済み)
  • どちらも知らない(聞いた事がある程度)
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