進撃の世界に鬼が乱入しました   作:創作の巨人

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ここからは萃香の一人称視点で書きます。


#2:約束

「イテテテテ…。紫の奴、予告も無しに急に送り出すなんて酷いよぉ…。痛みで酔いも覚めたし。幻想郷に戻ったらブン殴ってやろ」

 

 足元に開かれたスキマは、本当に別の世界へと繋がっていた。酔いが覚めた頭でなら、すんなり思考が進む。見た事の無い建物に、奇妙な壁…。確かに、あの世界のものだろう。

 だが私の目を引いたのはそれではない。周囲の人間だ。私は、突然落ちてきたのだから、注目を集めてしまうと思った。しかし人間達は、一様に空を見上げている。私は彼らの視線を追って同じように空を見上げた。

 そこに居たのは、表紙に居た赤い巨人だった。

 

「ひぇええええっ!?で、でっかあぁぁぁっ!?あれが巨人……思ったより大っきいなぁ…」

 

 私が能力を使えば、アレよりも大きくなれると思うが、幻想郷では使ったことがない上にあんな大きな妖怪も居ないので、軽く驚いてしまった。

 だがそんな私を、更に驚かせる事態が起きた。ついに件の赤い巨人が動き出し、轟音と共に壁を蹴破ったのだ。

 

「って…おいおいおい!壁の破片が…!!」

 

 巨人に蹴破られた壁の破片が、流星のように、壁に囲われた街の中に降り注ぐ。このままでは、周囲の人間が押し潰される。というよりも、住む場所が無くなる。

 

「しょーがないなぁ…いっちょやりますかぁ!」

 

 私の《密と疎を操る程度の能力》を使い、少し巨大化して降り注ぐ破片を受け止めようとした、その時。

 

「オイお前、そこに居たら危ないぞ!早く壁から離れるんだ!!」

 

 金髪の短髪、ちょび髭が特徴的な男が、突然に私の腕を掴んで走り出した。少し酒臭い。匂いで察したがあまり上等な酒では無さそうだ。胸元の薔薇のエンブレムを着けた短ランのような服は、どこか制服のような雰囲気がある。彼の腰には、表紙の彼のような装置をつけている。成程、この男や表紙の彼は兵士らしい。どうみても一般人の格好ではない。

 

「離せよ、何なんだ!?私はな、あの壁の破片を受け止めようとしてるんだぞ?」

 

「はぁ!?何を訳の分からんことを言ってる!?うっ、お前、子供のくせに酒飲んでやがるな!?いいから、お前は避難するんだ!」

 

「あんたこそ避難しな、あとは私に任せろ!」

 

「ええい、この分からずやの小娘め!!どっかのガキンチョと同じくらい聞きわけがねぇなッ!!子供は逃げて、こういう事は兵士に任せろ!!」

 

「じゃあ破片はどうするんだよ!防げないだろ、ただの人間じゃ!それともお前、能力持ちか?」

 

「何言ってんだお前?とにかく逃げろ、いいな!ここで逃げなきゃお前は死ぬぞ!」

 

「!」

 

「他の人達の事は兵士に任せろ、いいな!何度も言わせるな!川伝いに行けば避難する船がある、お前は子供だから優先的に乗れるはずだ。さぁ、早く行け!俺ァ仕事が残ってんだ!お前にばかり構っちゃいられねぇんだ…よッ!!」

 

 川が見えてきたところで私を投げ捨てるように手放した男。本当だったら罵詈雑言を浴びせたいところだが、今はそうも言っていられない。この男も忙しいのだ。仕事があるなら邪魔は良くないだろう。

 

「あぁそうかい、分かったよ!私は死なないが、お前も気を付けるんだぞ!」

 

「へっ、口が減らねぇやつだ!じゃあな、もしも生きてたらまた会えるかもな!」

 

 男は腰の装置から紐を発射し、飛翔した。走るよりもずっとずっと早く。あの放置は、飛べない人間が飛べるようにした機械らしい。

 河童の技術の一歩手前まで及んでいそうだ。

 

「っと…船っていうのは……アレかな。うへぇ、人が多いなぁ。おしくらまんじゅうかい?」

 

 あの男は優先的に乗せてくれると言っていたが実際はそうでもないらしい。老若男女問わずに、我先にと船…いや、舟に乗り込んでいく。

 人間の数に対して舟が少なすぎる。ましてや、サイズが全然足りていないだろう。時間と材料があれば、私が舟を作ってやれるが、今はどちらもないので、仕方ないと諦めるしかない。

 私が舟に乗れたのは夕方頃だった。割り込みが多かったので、本当ならもう少し早く乗れたとは思うが、抜かされた場合は人間優先にしていた。私は妖怪…しかも鬼だ。そう簡単には死なない。

 

「この便はもう満員だ!!出航する!!」

 

 舟に乗って人間を守る兵士の叫びを合図に舟は出航した。それでもなお、泣き叫びながらも船に追いすがる人間は、川に落ちたり、又はその場にうずくまって絶望感に打ちひしがれている。

 壁の破片は、もうその全てが落ちてしまった。今の空に舞っているのは、粉塵くらいのものだ。叫び声は絶えず聞こえてくる。その叫びは妖怪に侵略された人里に住まう人間の断末魔のようだ。

 その他にも、兵士のやり取りが聞こえてくる。

 

「これ以上は危険だ、閉門しろ!!」

 

「何言ってんだ、まだ中に大勢の人が残っているんだぞ!!」

 

「この門が破られたら街一つが巨人に占領されたどころの話じゃない!!次の壁まで、人類の活動領域が後退するんだぞ!?」

 

「目の前の人間を見殺しにする理由はない!!」

 

 かなり言い合っている。しかし、そうしている間にも、巨人が猛烈な勢いで門とやらに接近してきているようだ。地響きと足音が凄まじい。

 そう気付いた次の瞬間、再び壁の…いや、扉の破片が飛び散った。巨人がタックルしたらしく、兵士達が閉じようとしていた門は破壊された。

 その巨人は、赤い巨人よりは小さいが、周囲の建物よりも大きいので、舟からはよく見える。

 その巨人は、人間のような皮膚ではなく、鎧のようなものを纏っている。名前をつけるのなら、そのまま「鎧の巨人」だ。

 私がそんな事を思っていると、隣に居た少年が涙を流しながら立ち上がった。

 

「駆逐してやる!この世から…一匹…残らず!」

 

 親でも殺されたのか、その少年から感じる暗い感情は並大抵のものではなかった。憎悪、執念、怨恨…様々な感情が、彼の表情から読み取れる。その中でも一番大きいのは怒りだろう。

 私は妖怪なのでよく分からないが、もしも私が彼の立場だったら…きっと怒り狂うのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はそれから、各地の避難所を転々としながら細々と暮らし、たまに伊吹瓢で酒を飲みながら、この世界の知識を取り入れた。

 この世界は三重の壁があって、巨人に奪われたのは最も外側の壁…ウォール・マリア。そして今私が住んでいるのは、ウォール・ローゼだ。一番内側の壁はウォール・シーナという名前らしい。

 そして巨人と戦うことが出来るのは…つまり、兵士になる事が出来るのは15歳から。それ以前…具体的には12歳からは、訓練兵になれるらしい。

 私は巨人と戦う為に兵士になりたい。だから、行く先々の避難所で集めた情報を頼りに、とある兵団基地に乗り込んだ。けれどもそこは訓練兵団とやらで、入るには12歳以上が必須条件だった。

 当然私は12歳以上だ。というより、その何倍も生きている。なのに、12歳以上だと主張しても、10歳位だろう、と聞く耳を持ってくれなかった。

 あそこの教官…キース・シャーディスとやらはただの頑固ジジイだ。髪の毛も薄くなっている。どうせ数年後には、卵のような頭になっているに違いあるまい。

 なので、その時にキースと約束した事がある。

 二年後に、訓練兵として受け入れてくれると。つまり、今の私は10歳という設定らしい。そこはかなり不服だがキースは約束してくれた。だから私は彼を信じる事にした。もし約束を破ったら、奴を巨人に食わせてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい兵士!キース・シャーディスという教官はまだ居るか?もしも居るなら連れてこい、約束を守ってもらう時が来た!」

 

「…?」

 

 兵団基地の入口で、私は門兵達にそう告げた。話を聞いていた兵士が奴を呼びに行ったらしく、ほどなくして奴はやってきた。

 予想通り、卵のような頭になっている。

 

「本当に……来たのか」

 

「おうとも!約束は覚えているんだよなぁ?」

 

「あぁ、覚えている。だからこそこうして来たのだが……全く成長していないな…」

 

「あー…ほら、アレだ。避難の影響でろくに栄養摂れなかったから、成長が止まったっぽいんだ。よくあるだろう?そういう事はさ。ほら、お前の髪の毛だって成長が止まったじゃないか。栄養が行き渡ってないからだろ?」

 

 何人かの兵士が、派手に吹き出した。キースは彼らに視線をくれてやると、彼らは顔面を蒼白にさせながら黙り込んだ。

 

「……約束は約束だな。お前の入団を認める」

 

「やりぃ♪」

 

「教官!?本当に認めるのですか!?どう見ても10歳くらいにしか見えませんが…」

 

「ああ。二年前もこうだった。私は当時、10歳と判断した。二年が経過した今なら……もう、何も言うまい。来い、お前が入る部屋を案内する」

 

「はいはーい!」

 

「それから、さっき笑った者は昼食後教官室に」

 

「「「……………」」」

 

「返事は?」

 

「「「はっ!!!」」」

 

「…おっかないねぇ」

 

「………」

 

 基地の中を歩きながら話しかけるが、真面目そのものな顔になっていた。どうやら、もう仕事モードに切り替えたらしい。そっけないにも程があるだろう。

 

「キース、さっきの人達に説教でもするの~?」

 

「教官と呼べ。それから奴らに話す内容はお前に関係の無い事だ」

 

「ちぇー、つまんないのー」

 

「ゴタゴタ抜かすなら追い出すが?」

 

「そいつは困るね。私はいつか、この手で巨人をぶっ倒すんだ!だから、知らなきゃいけない事が多いんだ!」

 

「…そうか。貴様の活躍、楽しみにしている」

 

「へへへっ♪」

 

「…ところで…その、なんだ。貴様のその角は。ここは兵舎なのだぞ、飾りはすぐに外せ」

 

「私は鬼だぞー?これは生まれつきだいっ!」

 

「オニ……?何だそれは」

 

「知らないの!?いやこの世界に居ないの!?」

 

「何を訳の分からん事を。貴様まさか、巨人ではないだろうな?」

 

「訳の分からん事を言ってるのはどっちだよー?私のどこが巨人だってぇ?そもそも、巨人に角は無いだろー」

 

「フン……どうだかな。とりあえず、最低限でも服装は我々に合わせてもらう。女子寮に案内したあとで、兵服に着替えろ」

 

「女子寮か、いいね。郷に入っては郷に従えって言うし、兵服は着ようかな」

 

「………」

 

 「貴様」という呼び方には苛立ったが、教官に逆らえば面倒だと確信した私は、そこについてはスルーすることにした。

 こうして私は、104期訓練兵団に加入した。




現在公開可能な情報
萃香は自称「オニ」という人間ではない種族で、訓練兵達はそれを冗談と笑い飛ばしている。角は常に着けている飾りという認識。
(実際に鬼であるが周囲からそう思われている)
中には、警戒心を向ける者も数人居る。
彼女の「伊吹瓢」とは、端的に言えば無限に酒が湧いてくる瓢箪のこと。武器にもなるし水筒にもなる。水筒というより酒筒。
萃香は、妖怪の山(富士山より少し大きな山で、昔の八ヶ岳とも言われている)をたったの一撃で吹き飛ばせるほどの超絶怪力の持ち主。その他、多少の呪術は扱う事ができる。

密と疎を操る程度の能力:簡単に言えば、密度を操るような能力。霧状になれるし、小さな自分の分身も出せるし、岩を創る事もできる。他にも、応用の幅はとても広い能力。
訓練兵達や教官からは、手品だと思われている。

本作を読んでる方は、進撃の巨人と東方Projectをどの程度ご存じですか?折角のクロスオーバーなので、それぞれのネタなどを使うにあたって参考にさせて頂きます。

  • 進撃は知ってる/東方は知らない
  • 進撃は知らない/東方は知ってる
  • どちらも知ってる(ある程度原作履修済み)
  • どちらも知らない(聞いた事がある程度)
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