進撃の世界に鬼が乱入しました   作:創作の巨人

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#5:初陣

「クソッ、超大型の野郎、また扉を!!クソッ、クソオオオォォォォォッ!!!」

 

 更にガスを蒸かしうなじに向かって加速する。扉は破られてしまったが、超大型巨人は殺せる。ブレードが、うなじを捉える。しかしその瞬間、超大型は熱風を発して、今度は一瞬で消え失せてしまった。

 

「エレン、地面にぶつかるよ!!」

 

「チッ…!」

 

 ブレードを空振りしたエレンは地面にぶつかる寸前で壁にアンカーを射出して、壁の上に戻る。超大型の腕振り攻撃によってボロボロになった、壁の上に。

 

「超大型が消えた!エレン、スイカ、もしかしてお前らが倒しちまったのか!?」

 

「違う…5年前と同じだ…!コイツは突然現れて突然消えた!すまねぇ、逃がしちまった…!」

 

「ごめん皆、もう少しで倒せたのに…」

 

「何謝ってんだ、俺達なんて全く動けなかったんだぜ…?それに比べたら…なぁ…?」

 

 そう言うトーマスの手は少し震えている。大方目の前で超大型巨人を見て、萎縮してしまった…という感じだろう。仕方ない。戦い慣れていない一般人ならそれが普通の反応だ。寧ろ、どうしてエレンがあそこまで動けたのか訝しむべき所だ。

 

「オイ、そんな話してる場合か!もう壁は壊されちまってるんだぞ!早く塞がないとまた巨人達が入ってくるぞ!!」

 

 コニーはそう言うが私達訓練兵に勝手な行動は許されていない。…が、有事の際に備えて緊急の作戦は事前に伝えられている。私がそれを彼らに伝えようとすると、駐屯兵団の男がやってきた。酷く狼狽しているようだ。

 

「何をしてるんだ訓練兵!!超大型巨人出現時の作戦は既に開始している!!ただちに、お前らの持ち場に就け!!そして、“ヤツ”と接触した者が居れば本部に報告しろ!!」

 

「「ハッ!先遣班の健闘を祈ります!」」

 

 エレンとコニーが敬礼を送る。するとエレンと目が合った。何となく、言いたい事がわかった。早く報告しよう、という事だ。

 報告後、私とエレンは皆より少し遅れてガスの補給所に向かい、先程消耗したガスを足した。

 ガスを足すアルミンの手はとても震えていて、金属同士がぶつかりカチャカチャと執拗いほどに音を出している。そして、考え事を整理している途中なのか、やけに独り言が多い。

 

「しかしまずいぞ、現状ではまだ縦8mもの穴をすぐに塞ぐ技術はないんだ!!そもそも、塞いで栓をすると言ってたあの岩だって…掘り返す事もできなかった!もしこのまま穴が塞げないのならこの街は放棄するしかない上に、内門も破られてウォール・ローゼが突破されるのだって、時間の問題なんだ…!!」

 

「アルミン、落ち着きな。焦ったって、良い事は何も無いんだよ」

 

「そうだ、スイカの言う通りだ。らしくないぞ、アルミン…どうしたってんだ、取り乱して」

 

「……!ごめん、大丈夫…」

 

 悔やまれる事に、今日は最も実戦経験の豊富な調査兵団がウォール・マリア内に行っている為、駐屯兵団のみによって、壁の修復と迎撃の準備が進行しているとのことだ。補給を終えたら本部を出て、一旦整列して上の指示を仰ぐ。

 

「では、訓練通りに各班ごと通路にわかれ、駐屯兵団の指揮の下、補給支援・情報伝達・巨人の掃討などを行ってもらう。前衛部を駐屯兵団、中衛部を我々率いる訓練兵団、後衛部を駐屯兵団の精鋭部隊が担当する。住民の避難が完了するまでは、このウォール・ローゼを死守せねばならない」

 

 敵前逃亡は死罪に値する、と付け加えた上官は解散を命じ、私達はそれぞれ持ち場につくことになった。とうとうこの時が来た。普通の巨人と、まともに戦える時が。

 

「エレンは34班だよね?」

 

「ああ。スイカは33班…だったよな。俺の前か」

 

「んふふふ~、エレンの獲物、全部もらっちゃうかもね♪」

 

「言ってくれるぜ!じゃあ、どっちが多く巨人を狩れるか勝負だ!」

 

「言ったな~?数をちょろまかすなよぉ?じゃ、撤退後にまた会おうね。死なないでよっ!よし、33班前進だー!いっけぇぇ~!!とにかく巨人をぶち殺すんだー!」

 

 フロック、ダズ、ユミルやその他数人を率いて前進する。しかし同時に、あることに気付いた。前衛を担当している駐屯兵団の上官方が、かなり食われている。おかげで私達中衛の、しかも30班辺りまでは前衛に駆り出されている。

 

「やっぱダメだ…人間は巨人には勝てねぇんだ…勝てねぇんだよぉ…!!」

 

「ほらフロック、弱気にならない!!駐屯兵団は調査兵団程の経験は無いし、そもそも私達なんてこれが初陣なんだよ?負けるのとか仕方ないよ。何事も経験だしね」

 

「はぁ!?仕方ないだって!?仕方ないの一言でたった一つの命を懸けてられるか!俺は逃げる!誰も止めてくれるなよな!!」

 

「ちょ、敵前逃亡は死罪だって……」

 

「危ないスイカ、前だ!!」

 

「うおっ……うわぁぁあぁああぁっ!?」

 

 逃げたフロックを追おうとするが、真後ろからダズが警告してくる。しかし、完全に前方不注意だった私は、呆気なく巨人の口の中にスッポリとおさまってしまった。

 

「う…嘘だろ…?スイカぁぁぁぁ!!!」

 

 閉ざされた口の向こう側から、ダズの叫ぶ声が聞こえてくる。叫ぶ暇があるならすぐにでもこの巨人のうなじをかっさばいてほしいものだが。

 

「……うーん、口の中はくっさいねぇ…。よし、出るか。…せぇの……ハッッ!!!

 

 不安定な舌の上で構えた私は、右手に力を込め口の中からうなじを狙い、拳を振り抜いた。当然うなじの裏側辺りに当たりはしない。だが、拳を振った空気圧にて巨人のうなじあたりの肉は吹き飛んで、私が通れるだけの風穴ができた。

 倒れゆく巨人の口の中から直接アンカーを発射して、私は風穴をあけたうなじから脱出した。

 

「ふぅっ…あっぶなー…」

 

「あ…す、スイカ……?な、何で…ここに……」

 

「何でって…口の中からぶん殴っただけだよ?」

 

「…………?」

 

「プフッ………アッハハハハハ!やっぱりお前、何か面白いな!ぶっ飛んでやがる!お前がオニ?とかいう種族なのも、案外本当なのかもなっ!」

 

「だから本当なんだってばぁ!!」

 

 ダズの質問に答えると、ユミルが笑いだした。いつもふざけた素振りを見せているユミルだが、まさかこんな時までふざけるとは。まぁ、精神が不安定になっているのを無理に笑って誤魔化そうとしているようにも見えなくはないが……。

 

「なぁスイカ。お前のその力を見込んで、私から提案があるんだが」

 

「ほほぅ?聞かせてよユミル」

 

「私とダズで巨人を引き寄せる。その他の奴は…フロックと共に逃げちまったか。だからお前は、そのオニの力とやらで巨人を殺してくれないか?お前が本当にそのオニってやつなら…巨人くらい楽なもんなんだろ?よく分からんが」

 

「お、俺も引き寄せるのか!?」

 

「当たり前だろうバカ、奇行種でも通常種でも、より多い方が巨人を寄せられるって事にはあまり変わりないんだから。奇行種の方が、より極端な反応を見せるってだけでな」

 

「ちっ…仕方ねぇな!わかったよ、もう!!」

 

「いーね、面白そーじゃん!ノッたよ!!」

 

「決まりだな。じゃあスイカはここで待ってろ、すぐにそこらの……そうだな…ここから近いのは4、5体くらいか。アイツら集めてくるからよ!行くぞダズ、もうビビんなよ!」

 

「わ、分かってるよ!」

 

 あのユミルが、クリスタ関連以外でこんなにもやる気を出すなんて、滅多に無い。彼女もここで死ぬ気はサラサラないと見える。

 

「……と言っても、私だけがボーッとしてるのもあんまり良くないよねぇ……」

 

 撤退にもガスは使う。だからここで余計に消費するのはあんまり得策とは言えない。とはいえ、ユミル達を行かせて私だけ留まるのは鬼としてはやはり不本意なので、この場からできるだけ攻撃しよう。

 空気の流れを感じ、足音に耳を澄ませ、感覚を研ぎ澄ませる。少しでも足音が聞こえたのなら、周囲に人が居ないのを確認次第、岩を投げる。

 私の岩石投擲の威力は砲弾を超える。いける。私は鬼だ。たとえ別な世界に来ても、鬼の誇りは決して捨てない。

 どうせなら、あの土着神…洩矢(もりや)諏訪子(すわこ)の能力が使いたい。こんな状況だと、どうにもあの能力が便利に思えてならない。

(こん)を創造する程度の能力》…。即ち「地」を操る能力に他ならない。簡単に言えばこの能力は地面から壁を生み出せるし、能力者は地下移動ができる、というものだ。この世界において極めて有能な能力ではないだろうか。私の能力と違って守備や移動に長けている。

 …いや。私は戦いに来たのだからそんな余計な事は考えなくて良いだろう。鬼である私にとって暇潰しとは戦闘なのだから。

 

「さて。ユミル達が向かってない方に居るのは…えっと…6m級、10m級、8m級ってとこかな」

 

 大きさはかなり違う巨人だが、弱点の大きさは必ず固定だ。後頭部からうなじにかけての縦1m横10cm。ここを損傷すると、再生せずに死ぬ。

 吸血鬼並の超絶回復力も機能しないのだから、弱点とは素晴らしい。因みに、私の弱点は炒めた大豆や鰯の頭、柊などだ。けれども、この世界にこれらは無いので、実質無敵かもしれない。

 

「いっちょ殺りますか!萃符『戸隠山投げ』!」

 

 先程超大型の腰を吹き飛ばしたスペルの、下位互換のスペルを発動させる。大岩ではないが人間から見たらこれも十分に大岩だろう。

 

「人は…居ないね。そぉ…れっ!!」

 

 ゴオオッと空気を裂くような音を立てながら、岩がトロスト区の空を翔ける。目標の巨人とは、目測でおよそ20m離れている。それでも、正確に6m級巨人のうなじを射抜いて、一撃で殺せた。死んだ巨人は、蒸気を発して消えていく。

 尚、うなじを貫いた岩は巨人の背後の建物をも破壊するが、命のやり取りをしている最中なので許してもらえるだろう。

 

「もう一丁っ!そぉ~……れっ!!」

 

 体重を乗せて岩を投擲する。榴弾より大きく、榴弾より速い岩は、「避ける」という知性すらも持たないタダの巨人を一撃で屠った。被害こそは出てしまうが、巨人は確実に殺せる。

 

「8mのも…消えろぃっ!!」

 

 こちらに気付いて近付いてきた8m級へは、岩ではなく拳の圧をおみまいしてやった。直接拳が当たる前に吹き飛ぶのだから巨人は本当に脆い。

 するとそこに、巨人を引き連れてきたユミルとダズが戻ってきた。

 

「オイオイオイ…すげぇな、こりゃ…どうやって倒したってんだ…?」

 

「3体も倒したのか…!?」

 

「鬼の力でね!ま、見てな!二人が今連れてきた14m級だって秒殺だからね!…ハァァァッ…!!ぅおらああぁあああぁッッ!!!」

 

 一回り大きな岩を投げて、巨人の真正面から首ごとうなじを吹き飛ばした。この光景には流石のユミルでも驚いたらしく、彼女の口元は小刻みにヒクヒクと動いている。

 

「いや…その岩はどこから持ってきたんだよ…?お得意の手品か?」

 

「だーかーらー、これが私の能力なのね?何度も言うよ?これが私の能力なの。大砲なんかよりもずっと威力高いし、殺傷力も上だからね?」

 

 その時、カンカンカンと鐘が鳴り響いた。漸く私達兵士も避難…いや、撤退しても良いらしい。私としてはもう少し戦いたいが仕方ない。

 

「…規格外のバケモンだな、オニってのは…巨人よりも怖ぇよ…」

 

「えへへ、そうでしょそうでしょ~」

 

「なんで恐れられて嬉しがってんだよ…」

 

「ん?やっと信じてくれたからかな?この3年間ずーっと言ってんのに、誰も信じてくれなかったからねぇ。ありがとね、ユミル♪」

 

「…フン。感謝される謂れは無いね。ところで、鐘が鳴るの随分と遅かったな。相当住民の撤退が遅れてたとみえる」

 

 薄らと彼女の頬が染まった…ような気がするが気のせいではないだろう。機嫌を損ねないように余計な事は言わないでおくが、もしや彼女は案外話しやすい人間かもしれない。

 

「そうだねぇ…だけどあっちはミカサが居るから大丈夫でしょ。ミカサは規格外だもんね。先輩方より圧倒的に強いだろうし、しっかりと住民達も守られていたと思うよ」

 

「…そういや、お前より成績上だったんだっけ」

 

「立体機動術で少し抜かされてね。悔しいねぇ。そんでユミル、さっきは4、5体連れてくるって言ってなかったっけ?今の巨人一体だけじゃ少し物足りないよぉ~」

 

「あー…それなんだがな……。なんか変な巨人が暴れてて、迂闊には近付けない状況だったんだ。腕を振って巨人の頭を吹っ飛ばしたり、うなじを踏み付けてトドメを刺したりしていた。ありゃあどう見ても普通じゃない」

 

「巨人を倒す巨人?そんなのは聞いた事ないよ。ともかくそっちに行こう、どこに居るの?」

 

「さっき聞いたんだが、ミカサとコニーが本部の建物に誘導してるみたいだ。本部に群がっている巨人を、その巨人に片付けてもらう算段だとよ」

 

「…アルミンだね」

 

「流石、座学一位は考える事が違うよな。それに気付けるお前も大概だよ、スイカ。…先回りして本部に行こう。本部に近付こうとする奴の為に、少しでも楽にしてやんねーと」

 

 私はそこまで動いていないので、ガスはあまり消費していない。しかし遠くの方では、仲間達がビュンビュン飛び回っているのが見えた。もしや仲間達は、ガス切れを起こしているのだろうか。だから本部に向かおうとしているのか。確かに、逃げるだけではいつかガスは尽きるし、もし仮にそうなれば訓練兵は壊滅状態になる事は必至だ。何なら私が彼らを連れていくという手もあるが、数人ずつ運んでいたら待たせている者が食われるかもしれない。…となれば、やはり全員にガスの補給をさせ、全員で壁を登るのが得策だ。

 

「うおぉ…。見ろスイカ、アイツだ。あのやけに筋肉質な巨人が、ミカサ達が誘導してるヤツだ」

 

「………」

 

 その巨人は15m級。他の巨人は何m級だろうと小太りな中年男性のような体型である事に比べ、やけに若々しい外見をしている。ただし、理性は無いのか、建物への損害などお構い無しに暴れ、巨人を倒している。

 手はボロボロになるが、巨人の再生力ですぐに再生していく。うなじを潰してトドメを刺してるところを見るに、ヤツにも超大型のような知性はあるのかもしれない。

 しかし巨人にも体力はあるのか、次第に動きが鈍くなってきた。先程まではすんなり倒していたのに、14m、13m、10m、5m、4m、3m級の巨人に建物に押し付けられ、共食いが始まった。巨人を殺す巨人も初めて見聞きしたがあんな風に共食いする巨人も初めて見た。

 

「…どうするスイカ?ヤツを本部に誘導したのは成功した…らしいが、今度はヤツが食われてる。巨人さんも疲れたらしいな、ちっこい巨人までも振り払えていないらしい…。一先ずアイツを延命させるってのも手だが…」

 

「延命の必要なんてあるのか!?相手は巨人だ!犠牲にしていいだろ、人間じゃないんだから!」

 

「だからお前はバカなんだよダズ。どうにかしてあの巨人の謎を解明出来りゃあ、この現状を打破する鍵になるかも…そうは思わないか?」

 

「知るかよそんな事っ…巨人がアイツに引き付けられている隙に俺達も本部に入って、ガスを補給したら本部に居るミカサ達と合流して、壁の上に逃げるんだよ!」

 

「ここに居る巨人の他にも、トロスト区の中には巨人が蠢いているんだぞ?無事に逃げられるって保証もねぇ。二手に分かれて、賭けてみるか?」

 

「くっ…!」

 

「考えりゃわかるだろ。スイカを除く私らより、あの巨人の方が巨人を倒せるんだよ。ここは奴の力をトコトン利用してやるんだ。だからその為に一旦はヤツの延命をして、再生すんのを待つ」

 

「…わかったよ、ガスを補給したら延命するよ!だから本部に行こう!」

 

「あぁ、そうしよう。スイカもそれでいいな?」

 

「うん、それでいいよ。私も半分くらいだし少し補給しておきたい。…それにしても、冷静な判断だね。土壇場で意外な一面を見れた気がするよ。もしかして、試験では手を抜いてたりしてた?」

 

「はッ…そいつは違うね。私はただ……折角得た第二の人生を簡単に失いたくない…ただそれだけなんだ。まだ、死ぬ気はサラサラ無いんでね」

 

 そう言うと、ユミルは立体機動に移り、本部へ急行する。私よりも動いているので、ダズ達の残りガスは4分の1からそれ以下かもしれない。ユミルの言葉の意味は分からなかったが、いつか話してくれるだろう。今は任務に集中しなければならない。

 

「…やっぱり私は補給しなくていい。私は二人を本部まで送り届けるよ」

 

「はぁ?お前そんなんで壁登れるのかよ?」

 

「さっきユミルが『ここで待ってろ』って言ってくれたおかげで、半分くらいは残ってるよ。壁は登れるから大丈夫」

 

「だが、本部の建物にはまだ数体の巨人が居る。さっきみたいにあんな岩を投げたら…。まさか、本部ごと吹き飛ばすつもりじゃないよな?」

 

「そんな事はしないよ、皆が本部の上に居るのは分かってるんだから。まぁ、任せてよ。今度は、二人が待ってて。そこに居る巨人を倒したらガス補給しに突っ込んで」

 

「…わかったよ。任せたぞスイカ」

 

「でもどうやって巨人を倒すんだ…?岩もダメ、補給無しで壁を登るなら立体機動での攻撃もダメなんだろ…?」

 

「黙ってろダズ、オニの力とやらを他にも見せてくれるんだろ」

 

「そのとーり!鬼符『ミッシングパワー』!!」

 

 建物から飛び降りながら一枚のスペルを発動。また能力を使って、今度は身体を巨大化させた。サイズとしては10m級くらいだろう。

 

「ダハハハハッ!スイカッ…お前すげぇなっ!!大きくもなれるのかよ!オニの力ってのは何でもアリなのか!?」

 

「何でもって訳じゃないけど大抵の事ならね!」

 

 本部の建物に群がる一体の巨人に、頭から真っ二つに切り分ける様なチョップをおみまいする。余波で本部の建物に亀裂が走るが、今すぐに崩れそうな気配は無い。

 

「あと2体か。頭から潰してやる!」

 

 やっと私の存在に気付いた巨人達は、両側から走りながら襲いかかってくる。そこで私は両腕を振り下ろして、腕に着けた鎖付きの重りを奴らの頭に叩き付ける。

 地面にぶつかると深いクレーターができるが、そんな事は気にしていられない。そもそも巨人の足跡自体が、足型のクレーターなのだから。

 

「大丈夫だよユミル、ダズ!本部でガス補給して上と合流しよう!」

 

「ナイスだスイカ、どう見ても訓練兵の働きじゃねぇぞこりゃ!」

 

「ほんとだよ、2番の実力は伊達じゃなかったんだな…!」

 

 割れたガラス窓から本部に入っていくダズ達を見送り、先程6体程の巨人に囲まれていた15m級巨人の延命へと向かう。

 

「まずいぞミカサ、また巨人が……ってオイ!?なっ…何だよありゃ!?巨人じゃねぇ…!スイカなのか!?」

 

 本部の屋根でジャンが叫ぶ声が聞こえたきた。そこにはジャンの他にミカサ、アルミン、アニ、ライナー、ベルトルトの6人が居た。あの6人もあの巨人を延命させようとしているのか、他の皆とは違って避難していなかった。

 ただ、私を見るアニ、ライナー、ベルトルトの3人の視線がやけにキツイ。まるで、理解不能な怪物を見るかのような目だ。

 

「そーだよ!とりあえずあの巨人を延命させる!そうでしょ、アルミン!」

 

「あ、ああ!その通りだ!手伝ってくれる!?」

 

「手伝うも何も、私がやってやるよ!あんな雑魚6体くらい!」

 

「……!待てスイカ、もう1体来た!あいつは…トーマスを食った奇行種だッ!!」

 

「と……トーマスが……!?」

 

 確かトーマスは34班…エレンと同じだった筈。そういえば、この場にエレンが居ない。ミカサやアルミンのそばに居ると踏んでいたのだが……。

 

「ねぇ、エレンはどこ!?」

 

「ッ……う…うっ……」

 

「アルミン、答えて!!」

 

「スイカ、今はそれより掃討に集中して!」

 

「…ちっ…。さっさと消えろッッ!!!」

 

 ミカサに促され、トーマスを食ったというその奇行種を踏み潰そうと脚に力を溜めた、その時。あの筋肉質な巨人が、雄叫びを上げた。

 

「アアアァアアアァァァァアアアアァァッッ!!!」

 

「──────ッ!?」

 

 奴は、両腕を失いながらも、その奇行種の首に噛み付いて振り回した。ムチのように振るわれる奇行種の肉体は他の巨人を薙ぎ払って、その内の1体は私の方に飛んできた。

 

「うおぉおっっ!?」

 

 飛んできた巨人の身体を殴って粉砕し、まずは私自身の安全は確保した。そのまま、件の巨人の援護に行こうとしたが、ついにその巨人は倒れてしまった。

 

「流石に力尽きたみてぇだな…。もういいだろ?さっさとズラかるぞ!あんな化け物が味方なわけねぇよ。巨人は巨人なんだ」

 

 ジャンは背を向けてその場から去ろうとする。しかし、私やミカサ達は、倒れたその巨人を未だ注視している。いや、先程よりも注目していると言っていい。

 巨人のうなじ…弱点部分から、人間が出てきたのだから。

 

「……!」

 

 その人間を見て、誰よりも真っ先に動き出したのはミカサだった。そこから出てきたのは、あのエレンだったのだから。

 

「つまり…どういう事だ?あの巨人はエレンで…これをエレンが……やったってことか…?」

 

「そーなんだろうねぇ。…いやはや、まさか私の他にも能力持ちが居たなんてねぇ」

 

 普段のサイズに戻った私は、ミカサ達と合流。その瞬間ライナー達3人はギョッとしていたが、すぐに真顔に戻った。

 

「能力云々については俺には分からんが、恐らくそうなるんだろうな…まさかエレンが巨人になるなんて夢にも思ってなかったよ…。一体、どこでそんな力を得たってんだ…」

 

「ライナーの言う通りだ。よく分からないけど、エレンは巨人になれる力を持っている…って事になる。そうでもなきゃ、説明がつかない…」

 

「ライナー、ベルトルト…。エレンの方ばっかり気にしてるけど、スイカの方はスルーするワケ?スイカも大きくなってるじゃん。まぁ、巨人の姿ではないけど…」

 

「いつも言ってるだろ?私は能力を持ってるの!私特有の!」

 

「ハッ…。こりゃ、お前が『オニ』とかいう種族だって話を信じるしかねぇな……」

 

 ライナーがそう言うと、ベルトルトをはじめ、他の皆も頷いて肯定してくれた。私としては漸く認めてもらった感じがして、満足だった。そこに丁度ガスの補給を終えたユミルとダズも合流し、全員で壁を登ろうとした……が、駐屯兵団が多数現れて、気絶していたエレンは、あっという間に連れ去られてしまった。咄嗟にそれを追えたのはミカサとアルミンの二人のみだった……。




現在公開可能な情報
ユミル:性は不明。よくクリスタに絡む。たまに不謹慎な発言をすることもあるそうだが、悪意は無かったりする。彼女なりに自由を謳歌しているのかもしれない。
誰もが「冗談」だと受け取っていた萃香の話を、初めて心の底から信じた。およそ彼女らしくないことだが、何か思うところがあるのだろうか…。
ダズ:ビビりだが悪い奴ではない。。
萃香:他にも力を隠しているようだ。
ライナー:巨人の体から出てきたエレンをやけに気にしている。(ライナー)の近くにいるベルトルトは、いつもビクビクしているようだ。
フロック達:敵前逃亡ではなく戦略的撤退だ、と言い逃れて現在避難中。



内容的には、1巻最終話~2巻最終話までという長丁場になりました。萃香がどうなったのかは、次で書くつもりですので気長にお待ち下さい。
感想とかも待ってます(笑)

原作では、ミカサに回収されたエレンがどうしてあそこ(壁の隅っこ)に行ったのかが不明だったので、あそこを囲んでいた駐屯兵に連れ去られたという形にしました。
キッツは(小鹿)駐屯兵なので。

誤字報告、本当にありがとうございます…!
まだ5話目なのに既に3ヶ所もあったとか自分にガッカリしました。気を付けます。またあったら教えてください…。
尚、低速(通信制限)が来てしまいましたので、更新は1、2日に1回くらいになると思います。低速じゃなくても、他との兼ね合いもあるので、把握よろしくです。

本作を読んでる方は、進撃の巨人と東方Projectをどの程度ご存じですか?折角のクロスオーバーなので、それぞれのネタなどを使うにあたって参考にさせて頂きます。

  • 進撃は知ってる/東方は知らない
  • 進撃は知らない/東方は知ってる
  • どちらも知ってる(ある程度原作履修済み)
  • どちらも知らない(聞いた事がある程度)
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