進撃の世界に鬼が乱入しました 作:創作の巨人
今年もよろしくお願いします。
咄嗟に霧になって駐屯兵達を撒いた私は、気絶したエレンを誘拐した駐屯兵をミカサ達と一緒に追っている。その時本部に残っているライナー達には、他の駐屯兵達が守秘命令を課したらしい。それなら彼らは駐屯兵に何もされない筈なので、一旦頭から離しても良いだろう。
やがてエレンを抱えた兵士は屋根から降りて、大勢の武装した兵士達で囲った中に放り込んだ。
「エレン!!」
ミカサとアルミンも、武装した兵士らの囲いに自ら飛び込む。しかし私はどこかきな臭いものを感じ取り、霧のままで周辺に散らばる。
思った通りだ。壁の上にある固定砲は、兵士で囲われている中のエレンを狙っている。しかも、立体機動で逃げられないよう、壁の上にまで兵を置いている。ミカサ達がエレンを連れて逃げないように、厳重に固めたようだ。
「…イテテテ…」
「良かった、目が覚めてる!」
放り投げられた衝撃で彼は気絶から目覚めた。アルミンは彼の元に駆け寄るが、一方でミカサはブレードを抜いて、自分達を囲んでいる兵を警戒している。
「エレン!ちゃんと体は動くか?知ってることを全部話すんだ、きっと分かってもらえる!!」
「アルミン…何を言って…」
そこまで言いかけ、彼は左腕を凝視する。服が中途半端に切れていて、しかも切れている部分は糸がほつれている。
すると、エレン達を囲う兵の中で唯一武装していないリーダー格の男が声を上げる。
「イェーガー訓練兵!意識が戻ったようだな!!今貴様らがやっている行為は、人類に対する反逆行為だ!今ここに、貴様らの命の処遇を問わせてもらう!下手に誤魔化したり、そこから動こうとした場合は、そこに榴弾をブチ込むッ!!躊躇うつもりも無い!!」
「…は?」
エレンは弱々しく壁を見上げ、何故か自分達に向けられる砲台を見て小さく声を漏らした。依然として状況が飲み込めていないようだ。
そしてそのリーダー格の男の隣から、メガネで金髪の女が声をかける。
「頭に角をつけた女は未だ逃亡中らしく、行方が分かっていません。そもそも兵が向かった瞬間に姿を消したとの事で、下手をすれば今頃ウォール
・シーナに入り込んでいるかもしれません」
「くっ…とんだ厄介者を壁の中に入れてしまったものだな…。ならばこちらは早急に済ませよう」
成程。エレンの処理が終わったら次は壁内中を山狩りするつもりらしい。それも私を探す為に。絶対に捕まらない自信はあるが、その為にエレンへの対処が最悪なものになったら、結局謎は謎のままで、何一つ分からないままだ。
そんな事になるくらいなら、私から姿を見せるのが得策だと言える。その方が時間も兵も資源も無駄にしなくていいというものだ。
「はいはい、お呼びかな~?萃香ちゃんは逃げも隠れもしないよー」
「「うわああああああああぁぁぁっっ!!!」」
霧のまま囲みの中に入り、そこで実体化する。兵士はこの世の終わりかのような表情で驚いて、何人かは腰を抜かしている。同期の間ではあまり
(こんな風に悪い意味では)驚かれなかったが、こんなに驚くものだろうか?
「ふ…目標が自らやってくるとはな!では改めて問おう!!イブキ訓練兵、イェーガー訓練兵!!貴様らの正体は何だ?人か?巨人か?」
鬼という選択肢が無いとは。私は鬼だとずっと言ってあるのに。名前を知っているということは兵士としてのプロフィールは知っているはずだ。なら、私が鬼だという事も書いてあるのだが…。
「し……質問の意味が分かりません!!」
「どっちでもないし。私、鬼なんだけど」
「シラを切る気か!?化け物め!それをもう一度やってみろ!貴様らを粉々にしてやる!一瞬だ!正体を現す暇など与えん!大勢の者が見たんだ!イェーガー訓練兵が巨人の体から出てくる様を!イブキ訓練兵が巨人となる瞬間を!!我々人類はお前らのような得体の知れない者共をウォール・ローゼに侵入させてしまっているのだ!!」
「己の知らない者を敵だと排除する、か。これぞ老害…ヤダねぇ。これだから思考の凝り固まった人間は大嫌いなんだよ。つまらないしねぇ」
「何だと貴様…!」
「彼女達の反抗的な態度は明らかです。やはり、すぐにでも排除すべきです」
メガネの女は更にそう付け足す。そんなに私やエレンという不安要素を消し去りたいのかと内心嫌になる。昔のように人間を殺し回りたい。人も巨人も関係なく、全てを力のままに蹂躙したい。しかし今の私は兵士。不服だが、奴らも守るべき人間。殺すわけにはいかない。
「もう一度問う!!貴様らの正体は何だ!?その女に至っては、頭の角は何なんだ!?貴様は人間ではないのか!?」
「鬼だって言ってんだろバーカ!!人型の生物が人間や巨人や猿だけだと思うなよ!他にも人型の生物は居るんだからッ!!」
「さ、る…?」
「スイカ、人間と言うんだ!!こんなところで、オニだなんて言っても聞いてくれるはずもない!敵対意思がない事を示さなくちゃダメなんだ!」
「人間だって言っても変わらないよ、アルミン。それに私は、誇り高き鬼なんだ。今更命惜しさに誇りを捨てる訳にはいかない。いつも同期の皆と話してるような状況じゃないからね。……だけど安心しなよ。いざっていう時は守るから。だからエレンも、自分の思う答えを言うんだ」
「………。俺は……人間です!!」
シンと静まる空間に冷たい風だけが吹き渡る。まるで時が止まったかのような空間で、心の中で先程の答えを反芻する。私もエレンも何も答えを間違っちゃいない。自分の思うことを…真実を、ただ正直に言っただけだ。
「…そうか…。悪く思うな…仕方がないことだ…誰も自分が悪魔じゃないことを…証明できないのだから…」
その男は手を上げる。それを見たミカサは目に見えて焦り、ブレード外しエレンを抱え上げる。逃走するつもりらしいが、それは不可能だ。
「エレン、アルミン、スイカ!上から逃げるから準備して!!」
「無駄だよミカサ、さっき見たけど上にも兵士が居るんだ。逃がすつもりは毛頭ないみたいだね」
「上にも…!?そんな…」
その時、ついに男が手を振り下ろした。爆音と共に榴弾が発射される。別にあんなものは、弾を殴ればそれで終わりだ。死にはしないし、怪我もしない。鬼は頑丈だ。
そして私が弾に向かって腕を振りかぶったその瞬間、背後で爆発が起きた。
「うぉうっ!?」
半ば爆風に飛ばされかけながらも、体を大きくすることで何とか踏みとどまった。こういう時は小さい体を不便に感じてしまう。
私の背後の爆心地にあったのは、巨人の骨格…正しくは肋骨から上のみの、巨人の骸骨だった。砲弾の飛んできた左側のみに筋肉があるのは弾を受け止めるためだろう。
「「「うあああああああああああああぁぁぁぁぁッッッ!!!!」」」
駐屯兵達は、恐怖と驚愕が入り交じったような顔と声で悲鳴を上げた。直後、エレンは巨人体のうなじから出てくる。
「熱い……何だこりゃ…?」
エレンが手を外すと、巨人の体は蒸気を上げて消え始めた。煙幕のようになっている。これなら的を絞れないし、駐屯兵も榴弾を撃ち込むことは出来ないだろう。
「スイカは…大丈夫か。おいお前ら無事かっ?」
「あぁ、大丈夫!だけどこれは────」
「わからん!ただこれは巨人の死体と同じでもう蒸発する、少し離れるぞ!」
「皆、私の下に!」
「助かるぜスイカ…」
巨大化して四つん這いになった私の下に三人を入れ、一時的に安全を確保する。これなら榴弾を撃ち込まれても何をされても大丈夫だ。
「オレはここを離れる。こんなものを見せた後でアイツらと会話できる自信はオレには無いしな」
「待ってエレン、離れるったってどこに行くの?ここはもう囲まれてる、逃げられやしない…!」
「それなんだが、今思い出したことがあるんだ。地下室だ。オレん家の地下室、そこに行けば全てわかるって親父が言ってたんだ…!きっとオレがこうなっちまったのも親父のせいだ…。だから、もう一度巨人になって壁を越えたら地下室に…」
「ダメ。危険すぎる!」
「最後まで聞けミカサ。俺だって現実的じゃねぇことくらいわかってるんだよ。この力は、兵団の元で利用した方が……いや、オレ達の、か」
「えっ?」
「スイカだ。あの会話を聞くにオレだけじゃなくスイカもオレと同じ扱いを受けてんだろ?なら、オレの力とスイカの力は兵団の元で利用した方が有効なはずなんだ。だが、ヤツらを説得する事はオレには無理だ。…アルミン。ヤツらへの説得…頼めるか?」
「な……なんで僕に……?」
「地下室に向かうことが現実性を欠きすぎてる。何か鼻血まで出てきたし、呼吸も落ち着かねぇ。こんな状態で不確定要素の大きいこの力を使ったところで、途中で力尽きるかもしれねぇって事が自分でも分かるんだ…何となくな。だがお前なら正解を導ける。あの時みたいにな」
「あの時…?」
「壁を破られた時…お前がハンネスさんを呼んでこなければ、俺もミカサもあの時に死んでたよ。多分お前はやべぇ時ほど正解を導き出せるんだ。だからそれに頼りたいと思ったんだ。もし考えが浮かばないのなら、さっき言った通りの現実性を欠きまくってる考えを実行する」
「……!」
「次の弾が飛んでくるまであと10秒ってとこか…それまでに決めてくれ。どっちでもお前の考えを尊重する」
確かに、私の力も兵団の元で使った方が有効であることに変わりない。…ただ、元より私はそのつもりだったので、こんな扱いをされるのは少し心外だった。人間とは扱いにくい生き物だ。
同期の皆とは考え方も受け取り方も何もかもが違いすぎる。皆の考え方がこの世界の常識か、と考えていたあの頃が既に懐かしい。
「くっ、もう一発だ!もう一発撃ち込め!巨人の体ごと吹き飛ばせ!!…ついに正体を現したな、この化け物め!!」
「アルミン、早く!」
「…っ……わかっ」
「撃てーーーーーっ!!!」
アルミンが何かを言いかけると、再び固定砲が火を噴く。奇しくもそちらは、私の自慢の石頭がある方向だった。
「ンなモン、私に効くかァァッ!!」
頭で榴弾を受け止めると凄まじい爆発を起こし榴弾が破裂する。少し痛いが死ぬほどではない。何故って、これが鬼だからだ。
「っ…すげぇな、こりゃスイカがオニ?とかいう種族だってのも認めなきゃなんねーかもな……。ともかくアルミン、どうする?」
「わかった、僕に任せてくれ!スイカ、君の事についても僕が話してみる!それでいいかい!?」
「もっちろん!任せたよ、アルミン!」
「任されたよ!!じゃあ三人共、敵意が無い事を最大限アピールしていてくれ!!スイカは、もう小さくなって!」
「オッケー!」
巨人の死骸、二発目の榴弾による煙が晴れて、見晴らしが良くなった。あの男は依然として手を上げていて、すぐに三発目を放とうとしている。
そんな所に、立体機動装置を外したアルミンが彼らに近付いたのだから、兵士がザワついたのは言うまでもない。
「貴様!そこで止まれ!!」
「彼は人類の敵ではありません!私達は知り得た全ての情報を開示する意思があります!!」
「命乞いに貸す耳は無い!目の前で正体を現しておきながら、今更何を言う!!」
巨人ではないのなら証拠を出せ、と男は言う。アルミンが言っているのは「敵ではない」ということなのに、話を聞かない男だ。論点がズレズレである。巨人であるか否かは関係ない。ここでは
「敵であるか否か」を話しているのだから。
「証拠は必要ありません!そもそも我々が彼らをどう認識するかは問題ではないのです!!」
「何だと!?」
「大勢の者が見たと聞きました!ならば、彼らと巨人が戦っている姿も見たはずです!巨人達が、彼らを捕食しようと群がる様も!つまり巨人は、彼らのことを我々人類と同じ捕食対象として認識しました!我々がいくら知恵を絞ろうとも、この事実は揺るぎないものです!!」
アルミンの説得力は凄まじい。流石、エレンが全てを委ねただけある。酷く焦ったり怯えたりはするが、ここ一番では大活躍するとみえる。
それに加えて、その説得に動かされた駐屯兵の何人かは、殆どの恐怖心を払拭されてアルミンの意見に傾きつつあるようである。………しかし、その男は頑なに認めようとしなかった。
「迎撃態勢をとれ!!ヤツらの巧妙な罠に惑わされるな!ヤツらの行動は常に我々の理解を超えてくる!」
行動ではなく現実が理解を超えてくるのだが、まだそれがわかっていないようだ。…いや違う。理解する気がない、または自分の知らないことを考えるということを恐れているように見える。
図体の割に気が小さい男だ。
「私はとうに、人類復興の為なら心臓を捧げると誓った兵士!その信念に従った末に命が果てるのなら本望!!彼の持つ『巨人の力』と彼女の持つ
『オニの力』と残存する兵力が組み合わされば、巨人に占領されてしまったトロスト区、ひいてはウォール・マリア奪還も不可能ではありません!人類の栄光を願い!これから死にゆくせめてもの間に、彼と彼女の戦術価値を説きます!!」
懇願する様に叫びながら敬礼をするアルミン。
…まさか、ここまでのセリフが出てくるとは。正直、アルミンを見くびっていた。これでもまだ耳を貸さないのなら、人間に失望する。しかし、トロスト区奪還だけだったら、私一人でも十分にできるのだが…。
「…っ……」
すると、男の横に一人の男性が現れて、今にも手を振り下ろしそうな男の腕を掴み、優しく声をかける。
「よさんか、キッツ。…相変わらず、図体の割に小鹿のように繊細な男じゃ。お前には、あの者の見事な敬礼が見えんのか」
「……!ピクシス司令…!」
髪の毛が全く無いその老人は、ピクシスというらしい。「司令」という肩書きがあるという事はあの男よりかは立場が上のようだ。
「…今着いたところだが、こちらの状況は早馬で伝わっておる。お前は増援の指揮に就け。ワシはあの者らの話を聞いた方がええ気がするのぅ…」
これにより私達の身は一時的にこのピクシスが受け持つことになり、一旦壁の上で話し合う事になった。彼ならこちらの話を聞いてくれそうで、私は心底安心した。
現在公開可能な情報
萃香の持つ「鬼の力」を信じているのは、ダズ、ユミル、エレン、ミカサ、アルミン。ライナーをはじめとする本部の上で巨大化萃香を見た者は、理解していないor出来ていない。
小鹿隊長:キッツ・ヴェールマン
(ファンからは小鹿隊長の愛称で親しまれてる)
クズっぽく見えるが彼の指揮能力は本物である。隊長になれたのも、そのウデを買われてのこと。彼は、あくまでも繊細すぎる、規律に厳しすぎるというだけで、彼自身は悪くない。
司令:ドット・ピクシス
生来の変人。超絶美女の巨人になら食べられても構わない、と言っている。本気かは不明である。酒は飲む方なので萃香とは気が合うかも。
司令のお付き:アンカ・ラインベルガー
司令からの信頼も厚く、重宝されている。多分、酒は飲まないタイプの人。まだ出てないけど。
正直、ここが一番書くの難しかったです。多分、王政編の方がまだすんなり書ける気がしてます。というよりも、3巻の内容は、全体的に
レベリオ襲撃までの超絶大まかなプロットは完成してるんですが、後はどう肉付けするかですね。肉付けがとても下手で苦手ですので、ゲスミンのような目で見守ってください。
早くシガンシナ決戦まで書きたい…w
それと、本作では原作よりライナーを「幸せ」にしたいと思っています。(ニッコリ)
あまりにも原作が完璧すぎて、アレンジしようがなさすぎて困ります…セリフ回しも何もかも完璧すぎじゃないですかね?
進撃の巨人が一億部を突破するのも納得ですよ。
本作を読んでる方は、進撃の巨人と東方Projectをどの程度ご存じですか?折角のクロスオーバーなので、それぞれのネタなどを使うにあたって参考にさせて頂きます。
-
進撃は知ってる/東方は知らない
-
進撃は知らない/東方は知ってる
-
どちらも知ってる(ある程度原作履修済み)
-
どちらも知らない(聞いた事がある程度)