進撃の世界に鬼が乱入しました 作:創作の巨人
「アルミン!ミカサ!君らが居ながら、どうしてエレンが連れ去られるような事になったのさ!!どこに連れていかれた!?」
アルミンの胸ぐらを掴んで、エレンの行き先を問い詰める。隣のミカサは今にでもどこかに飛び出しそうになっているが、エレンの元に行きたい思いを理性で必死に抑えているようだ。
「落ち着いてくれスイカ!僕らは一介の訓練兵、憲兵達に逆らえる訳が無いんだ!それこそ、懲罰だけで済めば軽い方で…。今回の場合は、下手をすれば人類への反逆罪として死罪になる可能性もあるわけで…」
「はァ!?なんで反逆罪になるんだよ!エレンは人類の為に頑張ったろ!?それを庇っただけで、どうして反逆罪になるんだよ!!…チクショウ、こうなったら連れ戻すか…!」
「待ってくれ!」
「あ゙ぁ!?何だよッ!!」
「確かに君の力ならすぐにエレンを取り返せると思う!だけど、その後エレンはどうなる?無事に調査兵団に入れる訳が無い!そもそも、君だって憲兵に追われてる身なんだ!さっきはここに君が居なかったから、何とか誤魔化せたけど…」
「私も!?何なんだ、巨人共を30体以上は殺して人類に貢献したってのに、まだ外敵扱いなのか?
…それで、どこに連れていかれたんだよ?」
「…エレンは、審議所に連れていくと言われた。多分、君もそうなんだと思う」
エレンの身柄は憲兵が拘束していて、その彼は審議所に居る…。とすれば、審議所には憲兵達が居るかもしれない。何れにせよ、審議所に行けば何とかなる。私も審議所に行けば、万が一の時にエレンを連れ出すことも、私を探す為に憲兵達の手を煩わせることもない。こうなったら、かなり不本意だが自首するのが得策だろう。
「…分かった。私も審議所に行くよ」
「くれぐれも暴れたり連れ出したりしないでね。エレンの事を心配するのなら、特に…」
「分かってる。さっきは少し冷静じゃなかった。余計な事して面倒事を増やしたくないし…来たるべき時が来るまでは大人しくしてるよ。んじゃ、またね」
(…いや…戦闘時以外は大人しくしててくれ…)
立体機動でその場から離れる。この世界に来て既に5年経過しているのだから、主な施設までの道はとうの昔に把握している。
審議所のような比較的重要な施設は、巨人らの脅威に晒されないように、内地の方にある。このトロスト区からは少々離れているが、私ならすぐ行けるだろう。ただ、市街での立体機動は、基本禁止されている。
そこで私は能力を使う事にした。普通に飛んだのでは、事情を知らない者に見られた際に面倒になると考えたからだ。
◆
霧になると移動速度が落ちてしまうので、少し余計に時間が掛かってしまった。
エレンが扉を塞ぎ、連れ去られたのは夕方頃。私が審議所に到着したのはその日の深夜だった。思った通り、審議所の周辺は憲兵達が厳重に警備していて、普通の人間はまず侵入不可能な様相を呈していた。噂ではかなり怠惰と聞いていたが、流石に今回ばかりは、
「おい憲兵!私を連れてけ!!」
「うっ、うわあああああぁぁっ!?」
一人の男の憲兵の目の前で実態化すると、腰を抜かして後ろに座り込んでしまう。そして、その叫び声を聞きつけ、仲間達が大勢やってきた。
「お、おい、あの角のある女って…」
「ああ…手配書の女だ…!」
「…スイカ・イブキ訓練兵…だな?今から貴様を拘束する。手を後ろに組め」
「はいはい」
ヤワな手枷を掛けられて、審議所の中へ連れていかれる。ある一室で女憲兵が私を着替えさせたのだが、その時に、唯一の持ち物である伊吹瓢は没収されてしまった。その後エレンの隣の地下牢へとぶち込まれた。夕飯は、汚い皿で残飯の如き冷めた飯を食わされ、硬いベッドで、お世辞にも満足な暮らしが出来そうな牢とは言えなかった。暇を潰す為にこの世界に来たというのに、またも暇な時間を過ごす事になるとは思わなかった。
………が、そんな暇な生活は数日で終わった。
私が牢に入ってから4日目。エレンや私に接触する許可が降りたと言って、調査兵団のトップのエルヴィン・スミス、兵士長のリヴァイが、この地下牢にやってきた。
まずはお隣さんのエレンに接触を試みた。中々良い返事が貰えたらしく、地下牢に来た時よりも幾分か堅さが抜けた面持ちで、牢屋の前の椅子に腰を下ろした。なおリヴァイは壁に寄りかかって立っている。その視線は、私に対する疑念などを隠そうともしていない。逆に清々しい。…対してエルヴィンは、一見人の良さそうな表情を湛えているが、内心では私の力を利用するつもりなのが見え透いている。隣のリヴァイ程ではないにせよ彼もその考えを隠すつもりは無いらしい。
「初めまして。私は、調査兵団団長エルヴィン・スミスだ。君は訓練兵団所属の…スイカ・イブキ訓練兵…で、合ってるかな?」
「合ってるよ」
「口の利き方を考えろクソガキ」
いつも通りに答えると、間髪入れずリヴァイが咎める。しかしエルヴィンは彼を手で制止して、言葉を続ける。
「突然悪いが、君の事は調べさせてもらったよ。同期の者達、教官、目撃者などに話を聞いてね。君は自称・人間ではない種族…オニで、南方訓練兵団ではそれで通っていた……。そうだね?」
「そうだよ」
「先日のトロスト区奪還作戦では素晴らしい働きだったと聞いている。巨人討伐数は驚異の36体…その上、食われかけた兵士を何人も救った、とも報告書に記されていたよ」
「いちいち数えてたんだねぇ。ご苦労なこった。んで、エルヴィンは何が言いたいのかな?余計なお喋りで私を探ろうとしたって無駄だよ」
「ハハハ…思ったより手厳しいな。同期の者から聞いた通り、取り繕いを見破るのは得意らしい」
「私は鬼だからねェ。嘘や取り繕いを見破るのはそう難しい事じゃあないんだよ。尤もらしい事を言えば言うほど、逆に怪しく見えちまうもんさ」
「成程…今後の参考にさせてもらおう。…では、単刀直入に言う。君の持つ『オニの力』だが……それを我々調査兵団…いや、人類の為に役立ててほしい」
「良いよ?元々、私はそうするつもりで訓練兵になったんだし。団長直々からの勧誘なら、少しは楽に調査兵団に入れそうかな?」
「…私も、そうできるのならそうしたい所だ…。だが、事態はそう楽観視していいものでもない。君とエレンは…」
「これから審議にかけられる上に、下手をすれば人間に殺される事になる………でしょ?」
エルヴィンの言おうとしていた事を、そっくりそのまま言ってやった。当然、エルヴィンは口を半開きにしたまま硬直し、苦笑を漏らす。更に、これには流石のリヴァイでも目を丸くするほどに驚いたようで、細い目をパッと見開いている。
「………驚いたな。嘘を見破るだけに留まらず、言いたい事も分かるとは。これも『オニの力』…なのかな?」
「こんなのは鬼の力に入らないよ。これくらい、言いたい事を予想すればバカにだってわかるさ。まぁ、私なんかは自分からここに来たんだしさ、これからどうなるかくらい検討つくよ。だから、私が調査兵団に入るには、これから始まる審議で権力者を調査兵団側に頷かせれば良い訳でしょ」
「話が早くて助かるよ。概ねそんな解釈でいい。君のその『オニの力』、是非人類の為…ひいてはウォール・マリアの奪還の為に役立ててほしい」
人類の為に。ウォール・マリアの奪還の為に。この男、私に本音がバレていると気付きながらもなお、そのような方便を並べるとは。ある意味、詐欺師の才能があると思う。あんまり褒められたことではないだろうが。
「…おいガキ。お前に聞きたいことがある」
「何?」
「お前がしたい事はなんだ?」
「…調査兵団に入って、巨人を殺しまくりたい。ただただ、アイツらと戦いたい」
「ほぅ…悪くない…」
少しだけ、リヴァイの表情が緩和した。尤も、睨み付けるような顔から真顔になっただけだが。しかしそれでも、彼らと私との関係性から言えば大きな譲歩だと考えるべきだろう。
そして、その「譲歩」を態度でも示そうとしてくれているのか、リヴァイは牢屋へと歩み寄り、格子を掴む。
「…エルヴィン。コイツの世話は、エレン同様に俺が責任持つ。上にはそう言っておけ。勿論俺はオニとかいうこのガキを信用したワケじゃない。コイツが裏切ったり暴れたりすれば、すぐに俺が殺す。誰にも文句は言わせん。適役が居ない以上そうするしかないしな…。認めてやるよ。お前の調査兵団入団を…」
「………。殺せるといいけどね、この私を」
「あ?」
「リヴァイ、報告書は読んだ?榴弾を食らってもこのとーり、ピンピンしてるけど?」
枷のついた手をヒラヒラと動かし、元気ですとアピールする。しかしリヴァイはそれが気に食わなかったらしく、格子を離して、元のように壁にもたれかかる。
「はっ…。そんなのは、たまたま外れただけかもしれねぇだろうが。エレンの巨人の体の蒸気で、狙いが定まらなかったらしいしな…」
「当たってたんだよなぁ、頭に。同期からも話を聞いているなら分かるよね?私の頑丈さのコト」
「………」
「…ああ。当然その事も聞いている。立体機動で何度か事故に遭ったが、何れも無傷、擦り傷程度だったとね。その頑丈さも、人間ではなく、オニだからなのかな?」
エルヴィンは鬼に興味津々だ。きっと私の話をかなり信じているだろう。この角について敢えて突っ込まないのも、鬼故の身体的特徴だろう、と既に割り切っているからなのかもしれない。
「そうだよ。立体機動の事故で無傷のこの私を、あんなブレードで殺せるのかなぁ。…まぁ、安心しなよ。絶対裏切りはしないからさ」
「……今の我々は、君を盲信するしかない。その言葉が真実であると、信じているよ。ではまた、近いうちに」
エルヴィンはそう言い残して、二人は地下牢を去っていった。看守の憲兵が居るので、エレンと会話することは叶わない。酒も無く、大した飯も無く、恐怖と忌避の視線ばかり向けられる日々に逆戻りだ。
しかし、憲兵は知らない。その恐怖心こそが、妖怪たる私の力を、更に強めているという事に。
やがて、エルヴィンとの邂逅から何日か経ったある日。ついに、調査兵団の団員によるお迎えがやってきた。とうとう、審議本番らしい。
現在公開可能な情報
エルヴィン・スミス:ピクシス並……もしくは彼以上に柔軟な考え方の持ち主。この世界に関して様々な仮説を立てている。実はエルヴィンが調査兵団をやっているのは、人類を救う為ではなく、己の仮説を証明したいという強い思いがあるからとかなんとか。歴代の中でも極めて有能な団長。
あの審議所がどの区にあるとかそこら辺の設定が見当たらなかったので、とりあえず、ウォール・
ローゼの内地の方という事にしました。
ああいう施設は、区にあるとは思えないですし。
本作を読んでる方は、進撃の巨人と東方Projectをどの程度ご存じですか?折角のクロスオーバーなので、それぞれのネタなどを使うにあたって参考にさせて頂きます。
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進撃は知ってる/東方は知らない
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進撃は知らない/東方は知ってる
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どちらも知ってる(ある程度原作履修済み)
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どちらも知らない(聞いた事がある程度)