宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国編   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国編」です。




白色彗星帝国編1 ガミラスの危機

 輸送船団の護衛任務で、古代は護衛艦隊旗艦アサギリの艦長として勤務していたが、三ヶ月ぶりに地球に帰還することになった。

 帰還途中、日本上空から帰還する度に大きく復興していく東京の街並みを見つめた。これは、彼らヤマト乗組員が勝ち取った平和であり、古代はそれを誇りに思っていた。

 その時、土方総司令率いるヤマトを旗艦とする太陽系外縁パトロール艦隊も、クルーの交代で一時地球に帰還していた。パトロール艦隊に所属する雪を含む一部の元ヤマト乗組員にも、久々に再会できる見込みだ。

 

「相原、防衛軍司令部に、アサギリ以下護衛艦隊が間もなく到着することを伝えてくれ」

 アサギリの艦橋の前方で立っていた古代は、窓の外を眺めたまま、穏やかな表情で指示した。

 通信士官の座席にいた相原は、古代の方をちらと見ながら、古代に軽口をきいた。

「連絡するのは、司令部だけですか?」

 古代は、彼が何の事を言っているか分からず、当惑していた。結局思い当たらなかった古代は、相原の方を振り返って言った。

「他に連絡するところなんてあったか?」

「先に帰還したヤマトの船務長に、ご連絡した方がいいのではないかと思いまして」

 相原は、にこりと笑っている。

 古代は、苦笑いしてから、握った右手を口元に寄せ、小さく咳払いをした。

「それは必要ない」

 どうせすぐに会うから。

 古代は、続く言葉を飲み込んだ。 

 折しもガミラスから一年ぶりに特使が訪れており、地球連邦政府――国連は解体され、地球連邦となった――との会合が行われる予定でもあった。一部の元ヤマト乗組員が帰還するのには、この会合への参加をガミラス側から要請された為である。ガミラスからは政府、および軍の高官数名が訪れた。

 会合の議題は、軍事同盟に関するものだった。

 

 つまり双方の国家が外敵から攻撃された場合に、必要に応じて軍事的な支援をおこなえるようにしようというものである。物資だけでなく、兵員や兵器、宇宙艦隊の相互支援を含んでいた。

 地球連邦政府には、かつての敵国を憎んでいるもの、信用しないものもいるが、復興途中の脆弱な地球連邦防衛軍の状況を鑑みて、条約を締結する運びで合意しようとしていた。しかし、逆に地球連邦政府としては、このような地球側の状況を把握した上で、一体何を期待しているのかを、最後にガミラス側に正したところ、波動砲搭載艦、つまりヤマトの貸与を持ちかけられた。これには地球連邦政府の高官らは難色を示し、議論が紛糾することとなった。

 

 軍の士官として、会議にオブザーバーとして招かれていた土方、真田、古代の三名に対して、ここで初めてガミラス側から発言を求められた。

「あなた方のうち、お二人は、元ヤマト乗組員と聞いている。そして、一人は波動砲の開発責任者だとか」

 そう言ったガミラスの軍の高官の一人が真田を鋭い目で見つめていた。

「艦船の貸与が難しいのであれば、技術供与という形でもかまわない。波動砲の技術者をぜひガミラスに招待したい。いかがかね? 真田一佐」

 そう言われた真田は、なるほど、とぽつりと発したが、眉ひとつ動かさなかった。

「冗談ではない! 波動砲は、我が地球艦隊の切り札。それを貸与など、ましてや技術そのものを渡してしまって、再び戦争を仕掛けられたら誰が責任を取ると言うのか。到底、受けられる話ではない!」

 地球連邦側の軍の高官の一人が声を荒げた。

 それもそのはず、地球連邦軍の艦隊構想自体が、対ガミラス戦争の教訓を元に想定したものだった。

 経緯を見守っていた古代が、見かねて口を開いた。

「議長、発言の許可を」

「君はオブザーバーだろう。発言は慎みたまえ」とは先の地球連邦軍の高官。

「いいえ。ぜひ意見を伺いたいので、言ってみたまえ」

 真田に声を掛けたガミラス軍の高官が、興味深そうに発言を促した。

「それでは、失礼して発言させて頂きます」

 古代は立ち上がって周囲を見回すと、政府や軍の高官がずらりと並んで座っていて、彼は少し緊張していた。彼は、息を整えると、力強く話し始めた。

「私は、元宇宙戦艦ヤマト戦術長の古代進です。沖田艦長の指揮下で、地球とガミラス間において和平条約の素案となるものに双方で調印するところまでをこの目で見てきました。この時から、地球とガミラスは、先の戦争の反省をしつつ、一緒に歩み始めることを選択しました。私自身も、イスカンダルへの旅でガミラスの方々と交流を持ち、同じメンタリティを持つ、同じ人間であることを実感しました。あの戦争は、本来であればわかりあえたはずの双方の民族を引き裂いた、不幸な過去だと思います」

 ここで一呼吸おいて、古代は、自分に注目が集まっていることを確認した上で、話を続けた。

「そこで、私はガミラスの方々に伺いたい。もはや、私達と戦う理由が無いあなた方が、なぜ今、波動砲の技術を求めるのでしょうか。私としては、ガミラスに何かしらの危機が迫っているのではないか、と考えました。例えば、あなた方と敵対していたガトランティスという勢力の存在を、私は知っています」

 議場がひそひそと隣の人間と話し、静かにざわめいた。これには、ガミラスの高官たちも、呆気にとられた表情で古代を見つめた。

「そんなことがあるはずがなかろう。君たちと同様、純粋に防衛力の整備のためで、進行中の問題があるわけではない」

 議場が一段と騒がしくなったところで、議長が発言して、会議は一時休憩を挟むことになった。

「古代、私も同じことを考えていた」

 議場の外の小さな休憩スペースで、真田が古代に話しかけた。

「俺もだ」

 土方も、そこへ後からやって来て、二人に声を掛けた。

 三人は議場でのやり取りを振り返って、議論を始めた。そんなところへ、一人のガミラス特使の同行者と思われる人物が一人訪れて来た。

「古代、久しぶりだな」

 話しかけてきたのは青い肌を持つ、ガミラス人の若い女性であった。白いフードを頭と口元に着けていた。

「君は……?」

「失礼」そう言ってその人物は、フードを払い除けた。

「私だ。メルダ・ディッツ少尉」

「メルダじゃないか! 地球に来ていたのか!」

 古代は、右手を差し出した。ゆっくりとメルダも手を伸ばして、二人は再会の握手を交わした。

「君は確かディッツ提督の?」

「初めまして。土方総司令。お目にかかれて光栄です」

 メルダは土方と真田ともにこやかに握手した。

 メルダは小さくため息をついて話を始めた。

「先程は、大変失礼しました。同盟を結ぼうというのに、あなた方に隠し事をする必要は無いと思うのですが、政治的にも弱味を見せたくなかった、ということでしょうか。申し訳ありません」

「と、言うと?」

 土方は鋭い眼差しでメルダを見つめた。

「あなた方の懸念通り。我がガミラスに危機が迫って来ています。ご想像通り、敵はガトランティスです」

 土方らは、やはり、という顔で頷き合った。

「ヤマトとの戦い後、ガミラスの状況は一変しました。デスラー体制が崩壊して、我々はヒス総統のもとで、民主国家へと生まれ変わろうとしています。しかし、この体制の変化は、マゼラン銀河の支配下にあった星々の住民の反乱を引き起こしました。我々が、民主国家へと舵を切ったことや、各々の国家の主権を尊重することを説明しても、過去の親衛隊による圧制の歴史があるため、なかなか信じてもらうことが難しい状況です。そういった反乱の鎮圧などを、広い銀河のあちこちでやらねばならず、もとより、勢力を拡大しすぎた我々の軍は崩壊寸前の状況となっています」

 三人は、黙ったまま、彼女の話を興味深そうに聞いていた。

「その状況を、ガトランティスは観察していたのでしょう。混乱に乗じて、我々の支配下の星々を襲撃し、勢力を拡大し始めています。例えば、我々を裏切って、ガトランティスに寝返った、ということであれば、現在の体制下では仕方なしとすることも出来るのですが、ガトランティスの今のやり方は、占領しようとする惑星に対して、奴隷か死かを要求し、断れば惑星ごと破壊、屈服すれば奴隷労働を強いるという状況です。反乱を起こした星々は、結果我々に助けを求めてくることになりますが、十分な戦力が我々にはありません。数少ない戦力でこの状況を打開するには、波動砲のような強力な兵器が必要と考えるようになったのです」

 ここでメルダは一呼吸ついて、少し間をおいて話が浸透するのを待ってから、続きを話した。

「以前、デスラー体制で開発中だった波動砲は、デスラー前総統と一緒に行方不明になったヴェルテ・タラン国防相が、第二バレラスの兵器開発局で極秘に開発をすすめていたものです。しかし、その第二バレラスが喪われた今となっては、研究資料すらも存在しない状況です。そのため、ヒス総統は、イスカンダルに今も存在するという古代兵器、つまり波動砲搭載の兵器の貸与を求めて、スターシャ女王との会談を何度か行っています。今のところ、ことごとく拒否されていますが。困り果てた我々は、そこでヤマトの存在を思い出した……という訳です」

「なるほど。それで、ヤマトを貸与してほしいということですか。貸与したヤマトの技術を基にして、波動砲搭載艦を量産し、ガトランティスを排除すると?」

 土方の眼光はますます鋭くなり、メルダを射殺すかのような視線を向けた。

「そして、その後は? 波動砲の威力を見てしまった新政府や軍は、その後どうなるかは想像してみましたか? もともと、反乱でずいぶんお困りのようだ」

 土方の辛辣な皮肉に、メルダは苦々しい思いで言い返した。

「言われずともわかっている。それでも、現状は、我がガミラス本星の命運がかかっており、自体は急を要する状況になりつつある。そのような問題があることは、わかっているが、まずは、現状の危機を打開することが最優先だ」

「たしかに、メルダ少尉の言う通りの現状とすれば、いくら強大なガミラス軍といえど、マゼラン銀河全体にまで広がった星域全体をカバーするのは困難です。むしろ、今までがよくやっていたと言えるでしょう。ガミラス側が、少しでも友好な国家と同盟を結ぶのは理にかなっています。また、波動砲が、彼らの困難の打開に一役買うのは、容易に想像ができます」

 真田が冷静に土方に意見する。

「メルダ。僕は、スターシャさんが語った、イスカンダルの過去の忌まわしい侵略の歴史について忘れることができない。我々も、本来であれば、波動砲搭載艦を量産したいところだが、彼女と交わした約束とコスモリバースによる救済の恩との間で、揺れ動いている。圧倒的な技術を持つイスカンダルを裏切る行為が、いったい我々にどのように返ってくるのか、想像もできないからだ」

「古代。地球側の思いがいろいろとあるのは、私も理解しているつもりだ。しかし、それほど状況はひっ迫していると受け取ってもらえると助かる。我々が、神と崇めるイスカンダルに泣きつく程にな。今回の地球側との交渉がうまくいかない場合、最悪、ガミラス政府は、イスカンダルを強制的に併合するかもしれない」

「そんな……!」

「それは、デスラー総統がやっていたことと、同じではないかね?」

メルダは、少し間を空けて、重々しく言った。

「そのとおりだ。今、ガミラス政府は、デスラー総統のやり方を見直す動きがある」

続く…

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
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