ヤマトをエスコートするガミラス艦隊の指揮官リッケ大佐から、謎の祈る女性の像の調査の為、テレザート星系への立ち寄りを打診された。既に、艦隊に帯同しているガミラスの政治家や軍の高官らは、同意していると言う。
ガミラスでの同盟条約締結を優先したいと気がはやる芹沢が、この寄り道に反対していた。しかし、ライアン外務長官は、ガミラス側の意向をくみ、科学技術調査の一貫として共同作業を行うことは、将来の国交正常化に向けた交渉の役に立つと見越して同意した。ヤマト側でも技術科を中心に、あの事象の調査に前のめりであり、願ったり叶ったりの状況であった。
そして、ヤマトとガミラス艦隊は、七色星団を迂回するルートで連続ワープを敢行し、遂に大マゼラン銀河に到達したのだった。
テレザート星系――。
テレザート星系には、既にガトランティスの前哨部隊が潜んでいた。ゴーランド提督率いるミサイル艦隊群に所属する小隊である。
「メーザー司令。偵察機からの報告で、レーダーに感あり。ガミラス艦隊の小隊と思われます。空母一、駆逐艦八、戦艦一、テレザート星系に進入してくる模様です。この戦艦は、数年前に一度だけ確認されたテロン船と思われます」
メーザーは、野性的なガトランティス人とは異なり、痩せた背の高い男である。
ガトランティスは、そもそも母星から脱出した時に、様々な民族が共に行動していた。ゴラン・ダガームや、ゴーランドなど、肉体派の戦闘民族や、メーザーのような知性派の民族、双方の民族の特徴を持つ、ズォーダーのような民族など、ガトランティス帝国は、多様な民族で構成されていた。
メーザーは、レーダー手に確認していた。
「我らは探知されているか」
「まだ、レーダーの探知圏外です。このまま、惑星の影に入っていれば簡単に探知されることはありません」
「テロン船とは、数年前に静謐の星を発見したゴラン・ダガームの部族が遭遇したというあれだな? まぁよかろう。こちらの艦隊の方が数で勝っている」
メーザーは、不適な笑みを浮かべている。
「亜空間通信で、ゴーランド提督に報告。ガミラス艦隊と遭遇し、戦闘を行う可能性ありと連絡を入れておけ」
「テレザート星系に入りました」と、太田。
「このまま、テレザート第三惑星の軌道まで星系内航行速度で進入します」
島は、その報告通りに艦の速度を大幅に落とした。その時、レーダー手を担当していた西条も、観測結果を報告した。
「レーダーに敵影はありません」
古代は、西条の座るレーダー席をぼんやりと見ていた。あれから、雪は医務室に行った後、自室に戻って休んだままであった。西条未来と岬百合亜と、船務科から新たな一名による三交替に勤務体制を変更していた。
古代は、雪のことを考えるのを止め、頭を振って気を引き締め直した。そして、艦内通信のマイクを握り、落ち着いた声で話した。
「全艦に通達。これより、テレザート星系の探査をおこなう。技術科、戦術科を中心に船外活動の準備にかかれ」
技術科では、桐生美影が、新米の背後に近寄って、肩を叩いた。
「シンマイくん、これから少し忙しくなるよ。君の腕を見せる時だね!」
新米は、手鏡を出して髪形を整えている最中だったらしく、桐生の話をあまり聞いていないようだった。
「あ、あれ? 桐生先輩? い、今、何か言いましたか?」
そんな様子を見て、桐生は吹き出した。
「いやぁ、気にしないで。身だしなみも大切だよね。あたしも準備しよっと」
艦体の舷側格納庫では、百式空間偵察機の発艦準備が榎本らの手で進められていた。
「おーい、お前ら。気を付けろ。そうだ、そうっとだ、そうっと」
アームに取り付けられた百式空偵が、ゆっくりと発艦位置に動かされていた。
第一艦橋には、それまで臨時で休暇を取っていた雪が現れていた。西条は、心配そうに声をかけている。
「森船務長。もう大丈夫なのか?」
古代は、心配そうに彼女に話しかけた。その雪は、古代に向かって直立して敬礼した。
「はい! もう大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました!」
雪の声が明るいのを確認した古代は、少しほっとしていた。雪は、更に一歩艦長席に近付いて言った。
「艦長代理。私にも、探査任務に協力させていただけませんか?」
古代は、困惑した表情を浮かべていた。
「あの声の主は、私にだけメッセージを送って来ました。私も探査に行くべきだと思います」
雪は、真剣な表情で古代に訴えた。
「古代艦長、私も行かせてもらうぞ」
雪の背後から、メルダも手をあげた。口元を緩めた古代は、すぐに真剣な表情に戻して言った。
「分かった。二人とも許可する」
航空隊の待機所では、航空隊の加藤が艦内通信を受け取っていた。
「こちら加藤。はい、はい。艦長代理、それは、計画になかった話だぞ。はい、はい」
航空隊の待機所にいた面々は、加藤の様子に聞き入っていた。加藤は、不満そうな顔で通信を切ると、山本に向かって言った。
「艦長代理が、探査任務に森船務長を参加させたいと言っている。複座式のコスモタイガーは直ぐに出せるか?」
山本は、予定になかった話だったので、少し驚いていた。
「機体整備の方は問題無いが」
加藤が山本の肩を叩いて言った。
「じゃぁ、お前が乗せて行ってくれ」
ヤマト後方上部カタパルトデッキに山本が向かうと、既に複座式のコスモタイガーが乗機位置に移動されていた。
コスモタイガーは、コスモファルコンとコスモゼロの運用実績から両機体の長所を取り入れて研究開発された次世代戦闘機である。単座式と複座式の二種類が試作機として開発され、ヤマトにはこの二機が搭載されていた。複座式は、小型のパルスレーザー砲座があり、後席の乗員が操作するようになっている。この試作機の今回の運用実績が、正式な機体に反映される予定である。試作機の機体のコードネームは、コスモタイガーだが、正式に量産する機体は、コスモタイガーⅡという名称になる予定である。
カタパルトデッキでは、雪が航空隊の制服を着てヘルメットを手に持ったまま、ぽつんと立っている。山本は、そんな雪を無視して、発艦前の機体チェックを始めた。
「山本さんが、乗せていってくれるんだ。よろしくね!」
雪は、山本に明るく挨拶をした。それに一瞥もせず、山本は無愛想に返事をした。
「そりゃどうも」
その後、準備の整った、百式空偵とコスモシーガルは、ヤマトから続けて発艦した。百式は、技術科の桐生を乗せ、航空隊の沢村が操縦していた。コスモシーガルには、技術科の新米とアナライザー、そして相原を乗せ、操縦は篠原が担当していた。
続いて、山本と雪を乗せたコスモタイガーも発艦し、百式とコスモシーガルをあっという間に追い抜いて行く。少し遅れて、メルダのツヴァルケも発艦し、その後を追って飛び去った。
それを見た篠原がぼやいた。
「ちょっと〜! お嬢、それ先行し過ぎじゃない?」
「そんなゆっくり飛ばしてたら、エンジンが調子悪くなる」
そう山本が応答したのを最後に、コスモタイガーとツヴァルケは、あっという間に肉眼で見えなくなった。
「やれやれ。大丈夫かねぇ、あの三人を一緒にして」
山本機は、第三惑星の軌道を目指して高速で飛行を続けていた。少し後ろにメルダのツヴァルケが続く。
山本と雪は、ここまで無言で会話がなかった。暫くして、山本が、その静寂を破った。
「……どうして、結婚しないんですか?」
雪は、突然の質問に少し驚いた。操縦席の山本は、ヘルメットを被った後頭部しか見えず、どのような表情をしているか、読み取るのは困難だった。質問の意図を考えていた雪は、答えるまで暫く間があった。
「うーん。真面目に答えるね。結婚って形に拘る必要があるのかなって、二人で話し合ったの。私も、彼も今は地球の復興に貢献したいと思っていたから。そうすると、今結婚しても、お互い離れ離れであまり一緒には居られないし、もう少し時間が経ってから考えようかなって。今は数ヵ月に一度会うくらいの頻度だけど、私達、それで十分幸せだから。そんな感じだけど、どうして? 気になる?」
今度は、山本がなかなか反応しなかった。
「……ええ。気になります。むしろ、イライラしています」
雪は、山本が何を考えているのか薄々わかっていた。
「ちょっと、すっきり……いいえ。はっきりしましょうか」
山本は、雪の言葉に反応せず、無言だった。
「あなたは、彼のことが今でも気になっている。だから、私と彼の仲がどうなっているか気にしてる」
山本が間髪入れずに答えた。
「そうです! 悪いですか!? 私は、あの時……イスカンダルから地球に還ってきたあの時、あなたは死の淵にいた。私の心の中の悪魔が囁いた。このまま居なくなってくれないかって!」
山本の声は怒気を含んだ強い口調だった。
「でも、あなたを抱き抱えて古代さんがやって来て……二人は幸せそうでした。あの時、誓ったんです。お二人の幸福を祈ろうって! すっきりと諦めるつもりでした。でも、いつまで経っても結婚するって話も聞こえて来ない。私は、だからイライラしてるんです!」
山本のヘルメットから、荒い息が聞こえてくる。雪は、彼女がこんなにも真剣に、古代のことを想っているのを初めて理解した。彼女はイスカンダルへの旅の初めに、古代との間で絆のようなものを作りかけていた。それを雪は見て、もやもやと不安な日々を過ごしたこともあった。自分と古代が恋人同士としての関係になった後も、彼女が再び古代に近付いてこないか、会うたびに警戒していた。しかし、真摯な想いで自分たちを見ていた彼女に対して、かなり失礼な態度だったと雪は気が付いた。
「ごめんなさい……」
雪は、真剣な気持ちで謝った。
「べ、別に、謝って欲しかった訳じゃない。早くくっついてくれればいいんです。そうしたら、私も気持ちの整理がつくから」
山本の声音は、彼女の葛藤や焦燥を感じさせた。
「……わかった。この旅が終わったら、真剣に考えてみるね。あなたに対して、失礼な態度だったことは謝らせて」
「もういいです! でも、もし、これからあなたがあの人のことを大切にしないようだったら、絶対に許さない。そのつもりで」
その頃、ガトランティス艦隊は、テレザート4の衛星軌道に待機しており、ヤマトとガミラス艦隊が通過するのを見守っていた。
「偵察機からの報告です。ガミラス艦隊は、テレザート第四惑星の軌道を超え、更に内惑星軌道の小惑星帯付近まで移動しました。偵察機らしきものを複数飛ばしているのも確認できたとのことです」
ガトランティス艦隊の司令官メーザーは、その報告を思案した。
「その動きは、我らを探している可能性が高いな。発見される前に先手を取るぞ。背後から奇襲をかける!」
メーザーの小隊は、空母一、巡洋艦二、駆逐艦十、ミサイル艦八隻で、ヤマトとガミラス艦隊の倍以上の規模だった。メーザーは、攻撃部隊を、三方に分けて攻撃する作戦を展開した。
ヤマトとガミラス艦隊は、テレザート第三惑星の成れの果てである小惑星帯付近で停船して、艦のセンサーで周囲を調査していた。
先行して発艦させた、百式とコスモシーガルは、二手に別れて小惑星帯を探査して回っている。山本とメルダの機は、既に、小惑星帯のかなり離れた宙域を飛んでいた。
「レーダーに感! 後方に複数の艦影を確認!」
突然、西条未来が報告した。その報告に驚いた古代は、大きな声で言った。
「確認急げ!」
「はい! 艦種識別します。……艦長代理、ガトランティス艦隊と思われます! 空母一、駆逐艦四隻を確認!」
古代は、慌てて艦内通信のマイクを掴んだ。
「総員、戦闘配置! これは訓練ではない!」
西条は、更に詳細を報告した。
「更に艦影を感知。艦下方と右舷方向にもガトランティス艦隊! 下方に、巡洋艦一、駆逐艦三、艦種不明五隻を確認。右舷方向も同様の艦隊が接近してきます。あと十分で射程内に入ります!」
「艦長代理! ガミラス艦隊から通信!」
「通信回線を開け!」
メインスクリーンに、空母ミランガルに座乗するネレディアが映った。
「古代艦長。ちょうど、本星に最近のガトランティスの動きを確認したところだ。どうやら、ガトランティスのサレザー系侵攻が早まっているそうだ。ここにいる連中は、恐らく本隊が放った偵察部隊の一つだろう。この星系に潜んで、周囲の偵察を行っていたのに違いない」
「リッケ大佐。ご連絡ありがとうございます。ともかく、この状況を何とかしましょう。我々は、右舷方向の艦隊を叩きます。それ以外の相手をお願いしたい」
ネレディアは、微笑して頷いた。
「いいだろう」
そこへ、第一艦橋に芹沢が勢いよく雪崩込んできた。その芹沢は、大声で怒鳴った。
「貴様ら、何をやっている!」
古代は、当惑して冷静に回答した。
「芹沢宙将、ガトランティス艦隊が接近しています。危険ですので、自室に戻っていて頂けますか」
芹沢は、目を剥いて艦長席の古代ににじり寄った。
「馬鹿者! 貴様、自分が何を言っているのかわかっているのか!? ガトランティスと戦争を始める気か!? 気は確かか? 地球がまた焼け野原になってもいいと言うのか!? お前がその責任を取れるのか? どうなんだ! 答えろ!」
芹沢は、激怒し、真っ赤な顔で激しい口調で古代に詰め寄った。
「芹沢宙将、今はそんなことを言っている場合では……」
そこへ、土方と外務長官のライアンもやって来た。ライアンは、努めて冷静に古代に話をした。
「艦長代理。芹沢軍務長官の言うとおりだ。極力、戦闘を行ってはならない」
古代は、今にもガトランティスが射程圏内に捉えられようとしているこの状況で、焦りの色が隠せなかった。
「しかし……!」
「艦長代理、ガミラスとの軍事同盟もまだ済んでいない状況だ。私は、地球連邦政府の代表としての権限で命令する。今すぐ、非戦闘宙域に退避したまえ」
ライアンは、決然とした態度で、一歩も引かない様子だった。困り果てた古代は、助けを求めて土方の方を向いた。しかし、その土方も同じことを言った。
「古代。命令に従え」
「皆さん、待ってください! 相手の数が多すぎる。リッケ大佐の艦隊が危険です。ヤマトも支援しなければ、やられてしまうかも知れないんですよ!?」
「何度も言わせるな! これは命令だ!」
土方は、大声で古代を一喝した。
土方の命令を聞いた第一艦橋の士官らは、全員静まり返っていた。
そこに、まだ通信が繋がっていたネレディアが口を開いた。
「地球連邦政府の皆さん、そして古代艦長」
一斉にスクリーンに注目が集まった。
「そちらの状況は判った。今すぐ退避してくれ。ここは、私に任せてくれ。以上だ」
その途端、通信が切れた。と、同時に、ガミラス艦隊は一斉に移動を始めた。
西条が、敵艦隊の動きを報告した。
「艦長代理、あと五分で射程内に入ります!」
古代は、歯を食い縛った。
「島! 全速力で敵艦隊のいない、左舷方向へ離脱!」
「了解! とーりかぁーじいっぱい。山崎機関長、波動エンジン、全力航行をお願いします」
「了解。機関室に連絡、波動エンジン出力全開」
「探査任務中の各機に連絡! 敵艦隊接近のため、探知されぬよう、小惑星帯でそのまま待機するように伝えろ! 以降、電波管制し、通信を禁止する!」
古代は、戦術長の座席で、北野が古代を振り返って見つめているのに気づいた。
「北野戦術長、戦闘配置は維持。いつでも迎撃可能な体制をとれ」
「承知しました!」
そうして、ヤマトは、その宙域から離脱し始めた。
小惑星帯では、百式空偵とコスモシーガルが、それぞれ、小惑星の影に潜んでいた。また、山本のコスモタイガーとメルダのツヴァルケも、かなり離れた場所の小惑星の影に隠れていた。
「ガトランティスがこんな所に居るとは、私も予想外だった」
山本機とメルダ機は、傍受される心配のない、近接通信で会話を行っていた。
「もしかして、ガミラスは、ガトランティスに押されているのか?」
「そのようだ。テロン時間で五ヶ月前、テロンへ出発する時点では、ガトランティスは、サレザー系のこんな近くまでは来ていなかった。彼らは時々、大マゼラン銀河外縁から、深く入ってくることあり、サレザー系侵攻の疑いが日に日に強くなっていた。それに加えてマゼラン銀河の反乱など、混乱した状況を一度に抑える為、強力な兵器の必要性が訴えられた。私たちがテロンに向かって同盟を結ぼうとしたのも、その為だ」
「そういえば、イスカンダルとも交渉してるんだろう?」
メルダは、難しい顔をしていた。
「先ほどリッケ大佐が本星に確認した情報では、ほとんど進展が無いようだ。五ヶ月前は、イスカンダルを併合しようと訴えるタラン国防相らを筆頭に、強硬派もいたが、今はどうなっていることやら」
「ねぇ」
雪が、急に話に割り込んだ。
「……ヤマト、大丈夫だよね?」
雪の声は、恐れを滲ませている。山本は、後席を少しだけ振り返って言った。
「さっきのヤマトからの連絡。戦闘を控えろとの命令だけど。私も心配してる」
メルダも、それについては、少し憂慮していた。
「ヤマトなしでは、形勢は不利な状況だと思う。しかし、あのリッケ大佐はとても優秀な軍人だ。何とかしてくれると、私は信じる」
ガミラス艦隊は、全速で前進をかけていた。挟み撃ちを可能な限り回避する為である。
「戦闘機隊と攻撃機隊を、緊急発艦! 右舷方向から接近する敵艦隊を攻撃させろ」
ネレディアは、大声で指示を出していた。その命令を受け、空母ミランガルの飛行甲板から、続々と戦闘機と攻撃機が発艦し、右舷方向のガトランティス艦隊に向かって飛び去った。
「我々は、このまま前進! 続いて、雷撃機隊を発艦させ、艦隊前方に飛ばせ!」
ネレディアは、休む間もなく次々に指示を出していた。
ヤマトは、敵艦隊の手薄な左舷方向へ全速で離脱していた。しかし、下方から迫っていたガトランティス艦隊が転進して、ヤマトを追跡し始めた。
レーダーで敵艦隊の動きを察知した西条が報告した。
「下方のガトランティス艦隊に追跡されています! 間もなく射程圏内に入ります!」
「艦長代理!」
北野が、古代に向かって叫んだ。古代も、土方の方を見た。その土方が、大きく頷くのを確認し、古代は急いで北野に指示を出した。
「北野、艦の防衛の為、火器の使用を許可する」
それを受けて、北野は艦内通信で指示を出した。
「全艦、対空戦闘用意!」
ヤマトのパルスレーザー砲台が一斉に動きだし、艦底部と艦尾のミサイル発射口も一斉に開口した。
「ガトランティス艦隊の射程圏内に入りました!」
ヤマトの下方から迫ってきていたガトランティス艦隊のミサイル艦の一隻から、前部の巨大なミサイルが発射された。続いて、残り二隻からもミサイルが発射された。
ミサイルは、真っ直ぐにヤマトに迫って来た。
「敵ミサイル、六基接近! あと三十秒で被弾します!」
「艦底部ミサイル一斉発射!」
北野の指示で、艦底部のミサイルが一斉に発射された。ミサイルは、弧を描きながらガトランティスの巨大なミサイルに向かって飛び去った。
西条がレーダーを凝視している。
「ヤマトのミサイル、敵巨大ミサイルに接近! 間もなく接触します!」
「当たれ!」
北野が叫んだ。
ヤマトのミサイルは、次々に巨大ミサイルに着弾し、大きな爆発が起こった。
「よし!」
北野が拳を握り締めた。
「レーダーに反応あり。撃ち漏らしたミサイルが一発接近してきます!」
それを聞いた北野がすぐに指示を出した。
「後部ミサイル、撃て!」
ヤマトの後部ミサイル発射菅からミサイルが一斉に発射される。ヤマトのかなり近くで残ったミサイルに着弾し、大爆発が起きた。
「レーダーに感! まだ来ます。ミサイル更に四基接近! 近い! 着弾します!」西条が悲鳴のような声をあげる。
「お前ら、波動防壁はどうした!」
芹沢が青くなって叫んだ。
「もう間に合いません!島!回避しろ!」
古代も叫んだ。
「了解!」
島は、落ち着いて舵を右に切った。ヤマトの左舷を巨大ミサイルが通過する。続いて、島が舵を左に切ると、ミサイルが右舷方向を通過して行った。下方からも二基のミサイルが接近するが、島は、艦の速度を急激に落として、前方に通過させる。続けて、島は右舷方向に艦を回頭させた。
「北野!」
島が叫んだ。
「パルスレーザー砲一斉掃射!」
北野が指示を出すと、パルスレーザー砲台が、ミサイルを追尾しながら一斉に砲撃を開始した。ミサイルは、次々に爆発を起こし、そして消滅した。
「艦このまま、テレザート4方向へに向けて全速で離脱する!」
ヤマトは、島の判断により、波動エンジンを咆哮させて、テレザート4に向けて突進した。
ガトランティス艦隊のミサイル艦一隻と駆逐艦二隻が更にヤマトを追尾していた。残りの艦は、ヤマトの追跡を止め、回頭してネレディアのガミラス艦隊の方へ向かって飛び去った。
一方、ガミラス艦隊から発艦した戦闘機隊と攻撃機隊が右舷方向から接近していたガトランティス艦隊に襲いかかっていた。攻撃機隊が、次々にミサイルを発射し、ガトランティス艦隊は、炎に包まれた。ガトランティスも応戦し、ガミラスの艦載機が次々に撃ち落とされていく。
一方、ネレディアの座乗する空母ミランガルは、発艦させた雷撃機隊の後方で速度を合わせて航行していた。
「瞬間物質移送機を使う! 雷撃機隊を、敵空母後方に出現させろ!」
ミランガルの艦首に取り付けられた瞬間物質移送機が唸りをあげた。ワープウェーブが、雷撃機隊を包み込み、次々にワープして消えて行った。
「メーザー司令、状況報告。右から行かせた艦隊が、ガミラス艦載機の攻撃で足止めされています。テロン船を追わせた艦隊は、攻撃を回避され、一部を残してこちらに戻そうとしています。前方のガミラス艦隊は、全速で前進を続けおり、陽電子砲の攻撃がなかなか当たりません」
メーザーのガトランティス艦隊は、ガミラス艦隊の倍以上の数の艦があり、圧倒的に有利な状況だったが、思いの外、ネレディアらは善戦していた。
「よし、艦載機を発艦させ、敵艦隊を攻撃させろ」
メーザーは、艦載機発艦の指示を出した。その時、メーザーの座乗する空母のすぐ背後に、ミランガルが放った雷撃機隊が、次々に出現していた。
「メーザー司令! レーダーが後方に敵艦載機を感知!」
メーザーは、信じられない事態に驚愕していた。
「ばかな!? 後方に敵艦などいないぞ! 一体、どこから現れたんだ!?」
雷撃機隊は、至近距離から腹に抱えるミサイルを次々に放った。メーザーの座乗する空母の飛行甲板に一斉に着弾し、大爆発を起こした。
メーザーらは、大きな揺れで、艦橋内で倒れ込んだ。
「被弾! 飛行甲板大破! 艦載機の発艦出来ません!」
「何だと……」
メーザーは、膝をついて立ち上がろうとしていたが、頭から血を流してふらついていた。
「リッケ大佐。雷撃機隊が奇襲攻撃に成功。敵空母は、艦載機の発艦が不可能になった模様です」
ネレディアは、にやりと笑った。
「飛行甲板に砲台を出せ! 決着をつけるぞ!」
一方、ヤマトは、波動エンジンの出力を全開にして、真っ直ぐテレザート4を目指していた。後方から、ガトランティス艦隊の駆逐艦二隻と、ミサイル艦一隻がまだ追っていた。
「艦長、テロン船は攻撃してきません」
ガトランティスのミサイル艦の艦長が、この三隻の小隊の指示を出していた。
「撃沈しろとの命令だ。構わん。このまま追跡を続ける」
「ガトランティス艦隊、まだ追ってきます」
レーダー席の西条が報告した。
ガトランティスの駆逐艦から、陽電子砲のビームが散発的に発射され、ヤマトの艦体のすぐ近くを通過していた。
「島、振り切れないか?」
「駄目だ! 長くは持たない。このまま、前方の惑星テレザート4を利用して回避行動を続けるつもりだが、何か策を考えてくれ!」
島は、苦しそうな表情で、ヤマトの舵を操作している。陽電子砲の攻撃を回避するため、艦を蛇行させているのだ。
「艦長代理!ヤマトの主砲なら、あの程度の艦、一撃で沈められるだろ!」
南部が、苛立って古代の方を向いて言う。言われた古代も、戦闘禁止の命令を苦々しく思っていた。
「土方提督、攻撃の許可はどうしても頂けませんか? このままでは、いずれ追い付かれてしまいます」
古代は、土方に再度確認した。
土方は、ちらと古代を見るが、黙っていた。その土方の横にいた芹沢が、憤慨して言った。
「それより、波動防壁を何故使わんのだ! あれを使えば、こんな攻撃屁でもないだろう!」
真田が、その芹沢の問いに冷静に回答した。
「波動防壁は、最大稼働時間が二十分程度と制限があります。再び波動防壁を使うには、三時間以上のチャージが必要です。その為、最大限有効と判断するタイミングで使用する必要があります」
黙っていた土方が、隣のライアン外務長官に話しかけた。
「彼らの懸念に私も同意します。皆が判るように、戦闘を禁じる政府の見解について、確認させて頂けますか」
ライアンは頷いて、第一艦橋の全員に聞こえるように、土方に返答した。
「ガトランティスとの交戦は、地球侵攻の口実を与えてしまうのを避ける為、可能な限り控えなければならない。この方針は、地球を出る前に政府で議論した決定事項だ」
「なるほど。しかし、数年前にヤマトは一度ガトランティスと交戦しています。あれについてはどのような解釈を?」
ライアンが頷いて回答した。
「あの件は先制攻撃を受けており、やむを得ぬ防衛行動だったと政府は解釈している」
土方は、続けて質問した。
「つまり、相手の攻撃により明確な被害があった場合、反撃もやむなし、ということでよろしいですか?」
「その通りだ。しかし、それでも、相手の人命が損なわれるような行為は、可能な限り控えるべきだ。それがきっかけで、星間紛争になった場合、今の我々には、地球防衛の為の戦力が乏しく、甚大な被害を被る可能性が高い、ということを念頭に置いて行動して欲しい」
土方は、腕組みをして考えていたが、古代と真田の方を振り返って言った。
「古代、真田。政府の方針についての話、わかったか?」
古代は、困惑していた。
「はい。話は理解しましたが……」
「この方針を踏まえて、艦の運用を考えてくれ」
「承知しました」
古代は、一旦そう返事をしたが、どうすればよいか思案した。
「ライアン外務長官、芹沢長官、各員に方針は理解してもらえたようなので、一旦彼らに任せましょう。ここは危険ですので、自室に戻って待機しましょう」
土方が声をかけて、彼らを第一艦橋から退去させた。
ヤマトは、テレザート4の衛星軌道に到達して、惑星の周囲を回り始めた。ガトランティス艦隊は、そのままヤマトの背後について追って来ていた。
「太田、真田さん。この惑星についての情報を」
最初に、太田が報告を始めた。
「この星は、テレザート星系第四惑星です。特殊な楕円軌道を描いています。これは、テレザート第三惑星が消滅した影響を受けた結果と推測しています。非常にゆっくりした速度でこの星系の恒星を周回しており、現在、最も恒星に近い位置にあります」
続けて真田が、調査結果を報告した。
「センサーによる調査結果によれば、金星に似た大気組成の岩石惑星だ。太田の報告にあった通り、現在恒星に最も近い位置にあるためか、地表付近の温度は場所にもよるが二百度近くあり、火山活動も確認できる。この大気の成分と火山活動の影響で、二酸化硫黄の雲から硫酸の雨が降っている。また、海もあり惑星の広範囲に広がっている。高温の為、蒸発と降雨を繰り返し風速三十メートル程度の風が吹き荒れている」
古代は、その情報から策が無いか考えていた。
「真田さん、惑星の大気圏内にヤマトが侵入した場合の影響はどうですか?」
「艦の操艦が多少難しくなるだろうが、特に問題は無いと思う」
「それでは、ヤマトを大気圏内に降ろして、ガトランティス艦隊が追ってくるか様子を見たいと思います」
太田が、不安そうに、懸念事項を話していた。
「さっき、硫酸の雨が降っているって言ってましたよね? ヤマトが溶けてしまうんじゃないですか?」
「この程度でヤマトが溶けることは無い。もちろん、多少は影響があると思うが、あらゆる状況を踏まえてこの船は設計されている。特に問題は無い」
古代は、それを聞いて決断した。
「よし、各員に通達。これより、テレザート4の大気圏内に降下して様子を見る」
ミサイル艦では、ヤマトがテレザート4に降下していくのを確認していた。
「艦長、我々も降下しますか?」
ミサイル艦の艦長は、少し考えている。
「いや。目的がわからん。少し様子を見る。このまま軌道上から追跡を続けろ」
ヤマトは、主翼を展開してテレザート4に降下していった。そのまま、惑星上空を周回している。
激しい硫酸の雨がヤマトの艦体を濡らしている。眼下では、海が荒波でうねっている様子が見てとれる。
「西条くん。敵艦隊の様子を報告してくれ」
「はい。敵艦隊は惑星軌道上に留まっています。しかし、本艦の移動に合わせて、ついてきているようです」
「わかった。そのまま観測を続けてくれ」
一旦、敵の攻撃が止んだことで、第一艦橋の士官らは、しばし安堵していた。
「このまま、敵が去ってくれればいいが」
南部が、今だにいらいらとして言った。
「古代、ここからでも、主砲で攻撃すれば、命中させることは可能だぞ」
「主砲で攻撃したら撃沈できると、さっき自分で言ってたじゃないか。先程の方針に従えば、撃沈させることは出来ない」
真田は、彼らの様子を見て考えていた。
「艦長代理、意見具申」
真田がかしこまって古代に話しかけてきた。古代は苦笑いをしている。
「真田さん、何でしょう?」
「海に潜るんだ」
古代は怪訝な表情で返事をした。
「海に?」
真田は、ゆっくりと頷いた。
「現在、惑星上を高速で移動する本艦は、容易に彼らのレーダーで捕捉出来るだろう。しかし、この気象状況から、海に潜ってエンジンを停止すれば、我々の発見が困難になるはずだ。恐らくヤマト程度の大きさの物体なら、他の物体と見分けがつかなくなる」
「なるほど。それで彼らが諦めて立ち去るのを待つ、ということですね?」
「そうだ。攻撃をせずに対処するには、最善の策だと思うがね」
「わかりました。やってみましょう」
古代は、艦内通信のマイクを掴んだ。
「総員、これより本艦は潜水艦行動に移行する。各員は配置について準備せよ」
古代はマイクを切って島に声をかけた。
「島、頼むぞ」
島は古代の方を見てにやりと笑って返事をする。
「了解」
ミサイル艦では、ヤマトが海に潜航する様子を捉えていた。
「テロン船、完全に海に潜ったようです。レーダーによる探知が出来なくなりました」
「何だと?」
「これを、探知するには、我々も惑星に降下すべきだと思います」
艦長は、罠では無いかと疑いを持っていた。しかし、撃沈命令が出ている状況であり、このままでは見失う可能性もあった。
「よし、全艦に通達。これより我々も惑星に降下する」
島は、海に潜航したヤマトのエンジンを停止し、海水の流れに身を任せていた。
「海流が速い。自動姿勢制御のみ、維持する」
古代はレーダー手の西条に確認した。
「ガトランティス艦隊に動きは?」
「本艦が降下した海面の真上の軌道に留まっています……。いえ、たった今、降下を始めました。こっちに降りて来るようです」
その後、上空をガトランティス艦隊が弧を描きながら飛行していた。
「追ってきたガトランティス艦隊が三隻とも、海上を周回しています。本艦を探しているようです」
真田が腕を組んで思案している。
「そう簡単には諦めてくれないか……」
「艦長、テロン船の潜航した場所を中心に捜索を行っていますが、発見出来ません。エンジンを停止して海中に隠れていると思われます」
「発見する方法は無いか?」
「科学士官より、案が出されています。磁気センサーをミサイルに装填して海に投下してはいかがでしょうか?センサーが艦体の磁気に反応すれば位置が特定できると思います」
艦長は頷いた。
「実行しろ。発見次第、ミサイルで攻撃」
「承知しました」
「レーダーに感! 先程のミサイル攻撃をして来た艦が海上で空中に静止し、なにか放ちました」と、西条。
真田も、状況を確認していた。
「放たれた物体は海面に浮かんでいる。恐らく、何らかのセンサーだろう」
「磁気センサーに反応ありました! テロン船、発見しました!」
「よし、直ぐに発見した位置にミサイルを投下しろ!」
「またミサイル艦から、何か放たれたました。ミサイルです! 十基確認。着水して、本艦に向かって来ます!」
「見つかった! 島、回避行動!」
「山崎さん、補助エンジン全開!」
「機関部! 補助エンジン出力全開急げ!」
山崎は、大急ぎで、艦内通信で機関室に指示を出した。
そして、ヤマトは、補助エンジンの動力で海中を移動し始めた。ミサイル艦が放ったミサイルは、海中を航行し、ヤマトが居た位置に殺到して、艦尾付近を通過してそのまま海底に消えた。
「山崎さん、波動エンジンも始動急いでください!」
「了解。波動エンジン始動プロセスを開始する」
ヤマトは、海中を縦横に蛇行して航行し、ガトランティスのミサイル艦が次々に放つミサイルの回避を続けていた。
「至近弾来ます!」
西条が叫んだ。
すると、ヤマト直上でミサイル同士がぶつかり合い、爆発した。
土方は、艦長室からその様子を見守っていた。艦の周囲で次々に爆発がおこり、ヤマトは危険な状況に追い込まれていた。土方は、艦内通信のマイクを掴み、古代を呼び出した。
「土方提督、古代です」
「入れ」
古代が、艦長室に入ってきて立ち尽くしており、疲れの色があった。古代は、どうしてよいか分からなくなっていたのだ。
「だいぶ、難儀しているようだな」
土方は落ち着いた声で言った。その背後でまた爆発があり、艦が揺れていた。
「提督、申し訳ありません。真田副長とも話し合っていますが、敵艦隊を撃沈せずに対処する良い打開策が見つかりません。この状況がこれ以上続くなら、ヤマトは浮上して、ガトランティス艦隊を撃沈します」
土方が腕組みをして、思案している。
「わかった。全部任せるつもりだったが、少し口出しさせてくれ」
古代が、艦長室から降りて来ると、真田が古代の方を見ていた。古代も真剣な表情で目を合わせて頷いた。それから、第一艦橋の全員に向かって声を張り上げた。
「これより、土方提督の作戦を決行する!」
操艦に忙しい島を除く、第一艦橋の全員が注目した。
古代は、南部の方を向いて言った。
「南部、第一、第二主砲、第一副砲すべてに三式弾を装填。連続砲撃の準備をしろ」
南部が嬉しそうに返事をした。
「了解!」
古代は、南部と北野の間まで来て話した。
「北野、南部、これからヤマトは浮上して、敵艦隊を攻撃する。ただし撃沈はしない。その為、精密射撃が必要となる。やれるか?」
南部は、文句がありそうな顔をして言った。
「俺を誰だと思ってるんだ。俺に任せろ! 正確に撃ってやる」
古代は、笑顔で南部の肩を叩いた。
「北野、南部との連携が重要になる。浮上したら、島から操艦を代わってくれ」
北野も嬉しそうに返事をした。
「わかりました! 任せてください!」
「よし、では準備出来次第、作戦を開始する!」
その頃、ミサイル艦では、なかなかヤマトを撃沈出来ず、小隊を指揮する艦長もいらつき始めていた。
「まだ沈められんのか!? 撃沈に失敗して、メーザー司令に責任を問われるのはこの私だ!」
「艦長、テロン船の操舵手の操艦が見事としか言いようがありません」
「敵を褒めてどうする! 手ぬるいぞ! 撃って撃って撃ちまくれ!」
その時、レーダー手が報告してきた。
「艦長、レーダーに反応あり。テロン船が浮上してきます!」
「どこだ!?」
艦長は、レーダーを覗き込む。
「本艦の真下です」
ヤマトが、荒れた海面から艦橋を覗かせた。艦首と主砲が現れ、一気に艦全体が露になり、海上に舞い上がった。ヤマトの甲板から、海水がこぼれ落ちている。主翼が展開され、ミサイル艦のやや後方から、その艦底に向けて上昇を始めた。
「戦術長に操舵を渡す」
島が、にやりと笑って、操縦桿から手を離し、北野の方を見た。
「北野、受けとりました。主砲、副砲、連続砲撃用意!」
それを受けて、南部が復唱した。
「主砲、副砲、照準よろし! 自動追尾設定よし!」
「砲撃開始!」
北野の号令と共に、ヤマトの第一主砲が火を吹き、続けて第二主砲、第一副砲も火を吹いた。轟音と共に、三式弾が発射され、ミサイル艦の艦底部に砲弾が飛んでいく。砲弾は、ミサイル艦の艦底部の陽電子砲台とミサイル発射管を次々に破壊していった。
「全弾命中!」
南部は、嬉々として報告した。
「艦このまま上昇」
北野が、ミサイル艦のすぐ下にヤマトを上昇させ、そのままミサイル艦の速度に合わせて真下につけたまま一緒に飛行して行った。
ミサイル艦では、ヤマトからの攻撃により、艦体が揺らいでいた。
「何が起こった!」
ミサイル艦の艦長が状況を確認しようとしていた。
「テロン船に、艦底部の兵装をすべて破壊されました。テロン船は本艦の真下にいて、攻撃出来ません!」
「何だと……! 何とか振り切れ! 上方で待機する駆逐艦に連絡! テロン船を攻撃させろ」
「艦長、駆逐艦に確認しました。本艦に当たるため攻撃不可能だと言っています」
「ふざけた真似を……!」
ミサイル艦の艦長は、はらわたが煮えくり返っていた。
ヤマトでは、島が、北野に指示を出して操艦を支援していた。
「北野、右だ。次は左。少し上昇させろ」
北野は、必死に操艦を行い、ミサイル艦の真下の位置を維持していた。
「北野、他の艦の捕捉も完了した。いつでも撃てるぞ!」と、南部。
「了解! まずは、右舷上方の敵艦を狙う」
北野が舵を右に切りヤマトの艦体がミサイル艦の右舷方向に向く。ヤマトの主砲がミサイル艦の艦底からずれて砲撃可能位置についた。
その瞬間、北野が号令をかけた。
「撃ちー方始め!」
ヤマトの主砲が再び火を吹き、轟音と共に、砲弾が右舷上方のガトランティス駆逐艦に飛来した。砲弾は、次々に駆逐艦の艦底部後方に着弾した。砲弾が命中した箇所から、炎と黒煙が噴き出した。ガトランティスの駆逐艦は、機関部の一部に損傷を受け、ふらふらとしながら飛行して海面に降下を始めた。そして、そのまま海面に着水した。
ヤマトは、砲撃後、すぐに舵を左に切って再びミサイル艦の艦底部に隠れた。
しかし、上空にいた、もう一隻の駆逐艦が大きくターンして、ヤマトの左舷方向に回り込んできた。
「北野! 自動追尾中だ。いけるぞ!」
ヤマトの主砲が左舷に回転して、駆逐艦の方向に砲門を合わせていた。
「撃て!」
ヤマトの主砲が火を吹いた。三式弾は、左舷の駆逐艦目掛けて飛び、一斉に艦体後部に着弾した。こちらも、先程の艦と同じように、火を噴いてふらふらとしながら海面に着水した。
ミサイル艦の艦長は、一瞬の出来事に、唖然としていた。更なる怒りが込み上げて来て、拳を握り締めていた。
「テロン船は、まだ本艦の真下か?」
「はい。振り切れません」
「艦を降下させろ! 奴を踏み潰せ!」
ガトランティスのミサイル艦が下降を始め、ヤマトもそれに追従して下降する。徐々に海面が近づいて来ており、このままでは、海面に接触してしまう。
古代はそれを確認して、冷静に指示を出した。
「波動防壁を艦上方に展開」
真田が、それを復唱した。
「了解。波動防壁を展開する」
波動防壁の青い光が、ヤマトの上方に展開された。ミサイル艦が、波動防壁に接触して火花が散っている。暫くすると、ミサイル艦は弾き飛ばされて、バランスを崩して、きりもみ状態で逆さまに海面に落下した。
ミサイル艦の内部では、艦が急激に逆さまになった影響で、全員が天井に投げ出されていた。艦長を含め、全員が全身を強打して動くことも出来なかった。
「こ、こんなことが……」
ミサイル艦の艦長は、そのまま気を失った。
「艦長代理、三隻共に、航行不能と思われます!」
北野と南部が、艦長席の前までやって来て報告した。古代は、笑顔で席を立って北野と南部と握手した。
「よくやってくれた! 作戦は成功だ」
土方は、艦長室から顛末を見守っていた。
「やれやれ。どうなることかと思ったが、なる様になったようだな」
土方は、コーヒーを入れたカップを口にして、荒れた海を見つめていた。
そしてヤマトは、航行不能になって海面に浮かぶ、ガトランティスの駆逐艦から内火挺が出て、ミサイル艦の救助に向かっているのを確認し、テレザート4を後にしたのだった。
ネレディア率いるガミラス艦隊は、百八十度反転し、後方のガトランティス空母のいる艦隊に向かって突進した。
そのガトランティスの駆逐艦四隻の砲門から一斉にビームが連射されていたが、ガミラス駆逐艦八隻は、二手に別れて隊列を組み、流れるような動きで攻撃をかわしながら高速で接近していた。この動きに翻弄され、中央から真っ直ぐにミランガルが飛行甲板に砲台を露出させて接近するのを止められなかった。
ネレディアは、前方を指差し、命令を下した。
「全艦に通達! 前方の敵艦隊を殲滅する! 砲撃用意!」
その時、レーダー手が報告した。
「レーダーに右舷方向より別のガトランティス艦隊を感知。ヤマトを追っていた艦隊の一部が戻ってきています!」
「怯むな!全砲門、前方の敵艦隊に集中砲撃!」
ミランガルの全砲門から一斉に陽電子砲が発射された。同時に、先行するガミラス駆逐艦八隻も、一斉に陽電子砲を発射した。
ガトランティスの四隻の駆逐艦は、次々に被弾し、大爆発を起こした。メーザーが座乗していた空母も、ミランガルの一斉砲撃が着弾し、艦体が真っ二つに裂けて撃沈した。
「そんな……!」
メーザーは衝撃と恐怖を感じていたが、それも束の間、艦体の裂け目から大爆発を起こし、艦全体が分解し、爆発四散した。
右舷方向から迫っていたガトランティス艦隊は、メーザーが乗る空母撃沈を確認し、攻撃が一時止まっていた。
「敵は旗艦が撃沈され混乱している! この隙を逃すな! 全艦右舷の敵に一斉砲撃!」
先行するガミラス駆逐艦八隻が、大きくターンして編隊を組みながら、敵艦隊右舷に回り込み、高速で移動しながら砲撃を開始した。陽電子砲のビームがガトランティス艦隊に次々に命中し、一瞬で全ての艦が爆発して消滅した。
空母ミランガルの艦長は、ネレディアが目を細めてにたりと笑っているの見て、悪寒が走った。今回の戦いぶりを見て、まるでドメル将軍が蘇ったかのようだった。
「よし。残りを始末する! 艦載機に攻撃させた敵艦隊はどうなっているか」
「半数が大破。残りは逃げ出したようです」
「なんだ、もう終わりか?」
ネレディアは、少し残念そうな表情を見せた。
「はっ。そのようです。逃げたガトランティス艦を追跡しますか?」
「そんな雑魚はどうでもいい。放っておけ。それより、離脱したヤマトがどうなったか確認急げ!」
「たった今、ミランガルから連絡があった。ガトランティス艦隊を撃退したそうだ。どうやら我々の艦隊は無傷だったらしい」
メルダが、安堵して山本に連絡していた。
「ヤマトは?」
雪が、心配そうにしている。
「ガトランティス艦に追われて、テレザート4の方向へ向かったようだが、まだ連絡がついていないようだ」
雪の話し声を聞いた山本が、ため息をついた。
「もう少し、彼のことを信頼したらどうですか? 絶対に無事ですよ。賭けてもいい」
「そうだな。古代は優秀だ。私も無事な方に賭けるぞ」
雪は、メルダにまで言われて驚いていた。そういえば、ここにいる三人とも、彼に好意を持っていた……というのを雪は思い出した。そうして、一人で心配する自分が可笑しくなり、彼女は突然笑いだした。
「ごめんなさい。何だか私たち、ちょっとおかしいかも。ヤマトには彼一人が乗ってる訳じゃないのに」
言われて、山本もメルダも気がついた。
「確かに」
「忘れていた」
三人とも、くすくすと笑いだした。
その後、山本は、百式空偵とコスモシーガルにも、ガトランティスの脅威が去ったことを連絡した。
「そんじゃ、探査活動、再開しちゃう?」
篠原がおどけて言った。
「しちゃおう!」
桐生美影が、明るく通信を返してきた。
「や、ヤマトが無事かどうかもわからないのに、み、皆よく平気ですね?」
新米は、一人だけ、不安そうな声を出していた。
相原が、少し考えている。
「こんな修羅場を何度もくぐってるとね、すごく信頼感があるんだ。絶対に大丈夫ってね」
相原は、新米の肩を叩いて言った。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。