その天体は、大マゼラン銀河を猛然と突き進んでいた。
その近くに、ガミラスに反旗を翻し、今、正に武装蜂起を決意した星系があった。宇宙艦隊が百隻程集結し、星系を支配するガミラス軍を蹴散らし、独立を勝ち取ろうとしていた。その艦隊とガミラス艦隊が、その星系内で対峙している最中に、その天体は通りかかった。
「おい、見ろ」
「何だあれは」
「大彗星じゃないか」
長い尾を引くその白い天体が、通りすぎるのを待って、彼らは、戦火を交えようと暫し待っていた。
しかし、その天体は、まるで獲物を狙うように突然進路を変え、対峙する艦隊の中央に突き進んできた。艦隊は後退したが、その天体が発する電磁パルスの影響を受けて航行不能になる艦が数十隻もあった。航行不能になった艦は、そのままその天体の重力に引き込まれ、発する高熱によりひしゃぎ、溶かされ、消滅した。
対峙していた艦隊は反転して退避しようとするが、その天体の近くから宇宙艦隊が現れ、背後から、激しい攻撃を受け、次々に撃沈されていった。
その天体が通りすぎると、辺りは静まり返り、動くものも無かった。
「見てみろ」
フラーケンは、横にいたハイニに、次元潜望鏡を覗かせた。
「ひでぇ。何なんですかい、ありゃぁ」
ハイニが驚いてフラーケンを振り返った。
「さあな。だが、任務はこれで終わりだ」
フラーケンの次元潜航艦は、亜空間に身を潜めて、一部始終を観察していた。ディッツ提督の命により、大マゼラン銀河をサレザー系に進路を向けて迫ってくる謎の天体の調査を行っていた。
「報告に戻るぞ。浮上して、ジャンプ」
次元潜航艦は、ひっそりと浮上して、ワープしてその場から去った。
ディッツ提督は、撤退を決めた三千隻余りの艦隊を率いて、既にサレザー系に戻っていた。ディッツ提督は、国防相のガデル・タランの元に報告に訪れていた。
「タラン参謀長。見ての通りだ。フラーケンに調査に向かわせて撮影した映像だ」
タランは、その映像を食い入るように見ていた。
「これは何だ? 最後に彗星の近くから現れた宇宙艦隊だが……」
「見ての通り、ガトランティスだ」
タランは、口を開けたまま、ディッツ提督の顔を見た。
「この大彗星は、ガトランティスの新兵器だと言うのか?」
ディッツは、目を閉じて腕を組んで立っている。
「これまで報告した、彗星のような兵器と呼んでいたものがあるだろう。我が軍の科学者に調査させたところ、原理は基本的に同じものだそうだ。あれはせいぜい一キロ程の大きさだったが、こいつは、直径三十キロもあるそうだ」
「三十キロだと!? それは、大きいな」
「しかも、これまでのものは、ガトランティスの艦が牽引して引っ張り、慣性により飛ばしていたもので、こんな風に進路を変えたりはしなかった。こいつは、恐らく推進機があって、自由に進路を変えられるらしい」
「新兵器か……。対策を検討する必要があるということか」
タランは頭を抱えていた。そんなタランに、ディッツ提督は追い打ちをかけた。
「今までのやつは、惑星間弾道弾で破壊できていたが、こいつに効果があるかは試してみないとわからん」
「……すぐにやってくれ」
「わかった。指示を出しておく。結果は追って報告する」
ディッツの命を受け、大彗星が目撃された地点から最も近い前哨基地から、惑星間弾道弾十発が、一斉に発射された。惑星間弾道弾は、後部エンジンをふかして飛び去った。
惑星間弾道弾は、大彗星に到達したが、電磁パルスの影響で機器に故障を生じ、推進機が停止した。惑星間弾道弾は、すべて航行不能になって大彗星の周囲を漂い、そして、大爆発を起こした。
しかし、大彗星には何ら影響が無く、進路を変更することもなかった。
ガトランティスの大彗星は、最初に目撃されてから、刻々とサレザー系に迫りつつあった。
ガトランティスは、これまで、様々な星系の科学者を強制的に連行し、科学奴隷にすることで、新しい技術を取り入れていた。長いガトランティスの放浪の旅は、マゼラン銀河以外の科学者をも奴隷とし、異文明の技術を合わせることで、更なる発展を可能にしていた。特に、数百年前にある二重銀河で連行した科学者は、ガトランティスに様々な技術的発展をもたらした。この科学者は、首から上を除いて体のほとんどが機械で出来たサイボーグで、体を修理することで永い年月ガトランティスで生存していた。彼は、感情はあまり示さなかったが、好奇心が非常に旺盛だった。
このサレザー系侵攻作戦でも、その作戦の過程において得られた技術は、彼の協力で最大限活かすようにしていた。そして最近では、ガミラスの科学奴隷と協力し、火焔直撃砲搭載艦、衝撃砲搭載大型戦艦、人工太陽応用兵器などを開発していた。
特にこの人工太陽は、彼の発想によりダイソン球の核としての活用が研究され、兵器への転用だけでなく、居住区画としての応用も検討され、様々なタイプのものが作られた。
ガミラス軍で大彗星と呼ぶものも、彼の研究によって開発された。大彗星は、中心核として、人工太陽が置かれており、周囲に外殻が形成されている。外殻を形成したことにより、エネルギーを内部で循環させることが可能になり、一度点火すると理論上は数十年機能し続けるの可能にした。人工太陽が生成するプラズマは、外殻に抜け、表面を太陽フレアのように覆うことになる。内部から外殻に吹き出したプラズマは、時に強力な電磁パルスを放出し、付近に存在する機器に過電流を引き起こし、作動不良にさせてしまう。表面温度は数万度にも達しており、周囲には強力な磁気や重力も発生していた。
更には、外殻を形成したことによって、内部に居住区画や推進装置などを設けることも可能となった。また、数十隻規模のガトランティス艦隊の収納も可能にしていた。内部の構造は、彼の種族が数百年前にダイソン球を開発した際に使っていた高度な技術が使われており、高熱やプラズマの影響を受けない構造を実現していた。
ガトランティス内部でも、その見た目から白色彗星と名付けられ、かつてない強力な兵器として、サレザー系侵攻に使われることになった。
実際に白色彗星を兵器として使ってみると、如何なる艦船の攻撃も無効にし、無敵の威力を見せていた。
大帝ズォーダーも、この成果に驚いていた。サレザー系侵攻で性能が確認された後、将来的には、白色彗星の内部に都市を築き、帝国の民を移住させることも考えていた。ガトランティス帝国は、つまり、その瞬間から白色彗星帝国となるのだ。ズォーダーは、無敵の白色彗星が宇宙を席巻する様子を想像して、高笑いをしていた。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。