宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国編   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国編」です。


白色彗星帝国編14 束の間の交流

 ヤマトとガミラス艦隊は、テレザート星系を後にして、一路サレザー系に進路をとっていた。そして、連続ワープにより、到着まであと一息のところまで距離を詰めていた。

 

 ガミラス艦隊の空母ミランガルでは、テレザート星系の調査を行ったヤマトの乗組員と一部の幹部、地球連邦政府からの乗客が招待されていた。

 特に、真田を始めとした技術科の士官らは、初めて入るゲルバデス級戦闘空母の内部に興味津々であった。ミランガルの飛行甲板の下の艦載機の格納庫に降り立った彼らは、辺りを見回していた。

「こちらだ」

 メルダは、先頭に立って、ヤマトの乗員の案内をしていた。

「先生、見てください。内部に砲塔が格納されています。こんな風になっていたんですね」

 新見は、頭上に指差して、真田に話しかけていた。

「ふむ。確かに面白い仕掛けだ。興味深い。……しかし、余りじろじろ見るのは控えた方が良さそうだ」

 ヤマトの乗員の進む先々で、武器を携帯したガミラス兵が立ち止まり、ガミラス式敬礼をしている。彼らは、通りかかるヤマトの乗員を凝視しており、警戒している様子が伺えた。

 古代と山本も、広い格納庫に駐機している艦載機の数に圧倒されていた。どう見ても百機以上は格納されている。二人は、七色星団のドメル将軍との決戦で、このような空母四隻もの猛攻に、ヤマトが耐えたのを感慨深く思い出していた。

 

 ミランガルの艦内食堂となっている場所に関係者が集まって、簡単な立食の宴が開催されていた。地球人とガミラス人らは、飲食を楽しみながら、親交を深めていた。そこでは、ガミラス軍の質素ながらも、地球人には珍しい料理と酒が振る舞われていた。

「これは美味しい。この食べ物は何だい?」

 古代は、すぐ隣にいたメルダに尋ねた。

「ガミラスで庶民が好んで食べる昆虫を調理したものだ。軍艦で提供するものなので、所詮は合成食品で本物ではないが」

 それを聞いた古代は、口の中で咀嚼していたそれの実態に躊躇した。そして、恐る恐るごくりと飲み込んだ。

「ふむ? 余計なことを言ってしまったか? なら、こちらの酒を飲むがいい。オルタリア産の酒だ。もう生産されていないので貴重な一本だ」

「ありがとう」

 メルダが差し出すボトルに、自分のグラスを差し出した。すると、古代の隣にやって来た雪が、そっと脇腹を肘でつついた。

「何?」

「異星のお酒だよ。体に合うかわんないから飲み過ぎちゃ駄目」

 雪が小声で警告していたが、古代はそれを既に口にしていた。

「うまい!」

 その飲み物を気に入った古代は、一息で飲み干していた。

「そうか、それは良かった。もう一杯どうだ?」

 メルダが嬉しそうに、ボトルを差し出した。そのやり取りを見た雪は、呆れて古代の元を離れて行った。

 

 ネレディアは、ヤマトの技術科の士官らが集まった場所にやって来た。

「ガミラス護衛艦隊の司令官、ネレディア・リッケだ。皆さん、楽しんで頂けているかな?」

 真田は、軽く会釈して言った。

「ヤマト副長の真田です。リッケ大佐。このような機会を頂いて皆、感謝しております」

「お久しぶりです!」

 桐生美影は、元気にネレディアに挨拶した。ネレディアは、桐生を見て目を細めている。

「って、あれっ? あれは、ジレル人が化けてたから……初めまして、ですかね?」

 ネレディアは、目を閉じて静かに笑みを浮かべていた。そして、彼女は桐生に右手を差し出した。

「君たちの星には、握手という文化があると聞いた。よろしければ」

 桐生もそろそろと右手を差し出して、その手に触れた。ネレディアは、その手を強く握ると言った。

「会えて嬉しく思う。フォムト……いや、バーガー少佐から、君のことは聞いている」

 ネレディアは、優しげな笑顔を浮かべていた。名残り惜しそうに手をそっと離すと、彼女は真田の方を向いた。

「テレザートで、テレサに聞いた話だが、ヤマトの科学者としての見解を我々の科学士官に聞かせて頂けないだろうか?」

 ネレディアの横で、二人の士官が会釈をしていた。真田は、組んだ腕の右手で顎を触りながら口を開いた。

「ここにいるヤマトの皆で議論をしているが、結論は出ていません。あくまで仮説の域でよろしければ」

「構わない。こっちも同じような状況のようなので、参考にさせて頂きたい」

「承知しました」

「すまないが、私は他も回らなければならない。お前たち、失礼の無いようにな。後で報告してくれ」

 ネレディアは会釈すると、二人の科学士官を残して去っていった。

「波動砲を開発した優秀な科学者だと聞いている。ぜひご見解をお聞かせ願いたい」

 真田は、ちらと新見を見て、彼女を招き寄せた。

「テレサが語った歴史的な事実に関しては、我々にはあまり情報がないので仮説の立てようがありません。ただし、彼女が言った『心』に関して語ったことで、いくつか興味深い点がありました。心と心を通わせる、心が人に入る、など、我々の現在の科学の常識では非科学的とも言える事柄がありました。しかし、これまでイスカンダルのユリーシャや、我々が出会ったジレル人のミレーネルやレーレライといった人物によって、これに相当する事象を既に見せられており、まだ解明されていないだけで、科学的に証明可能な事実だと考えています。それだけでは無く、我々に供与されたコスモリバースシステムについても、興味深い言及がありました。我々の地球は、貴国の攻撃によって廃墟となりましたが、あの装置によって攻撃前の状態に再生されました。我々はどのようにそれを実現しているのか装置の調査を進めていますが、よい結果が出そうも無い状況でした。今回、『時空を超えて宇宙に存在する心の波動』と、彼女は言っていました。つまり、それに働きかけることで、惑星が再生出来るという話がありました。あの話は、コスモリバースシステムを解明するのに、大きな着眼点を我々に与えてくれたと考えています」

 新見は、自身が気になっていた点を、ガミラス人の科学士官に尋ねた。

「先生、その前に。ガミラスでは、心霊体験に関する噂や都市伝説のようなものがおありですか? 例えば、人は、死ぬと魂と呼ばれる存在になる、といった考え方はあるのでしょうか?」

 ガミラスの科学士官の二人は、顔を見合わせて首をひねっていた。

「ガミラスでもそのような考え方はを持つ人々もいる。しかし、一般的には非科学的な考え方、という認識だ」

 新見は、頷いた。

「私たちの地球でも、そこは同じです。ヤマトでは、コスモリバースシステムを設置した後、艦内で、そのような心霊現象が発生したという噂が立ちました。実は、私もそれを体験した一人です。テレサは、わかりやすくしようと努めていたためだと思いますが、その現象を『心』と表現していました。いわゆる『魂』と私たちが呼ぶものですが、実は、科学的に証明可能な事象なのではないか、と考え始めています」

 真田は、新見の話の内容について、一つの懸念を口にした。

「新見くん。その表現は、非科学的なイメージを伴い、適切では無い。いわば、生命の基となる物質のようなものが、この宇宙には存在する、と我々は考えています。このことを前提にして、テレサの言葉をヒントにすると、我々が余剰次元と呼ぶ、我々の五感で認知出来ない次元に、その存在は広がっていると考えられます。この余剰次元とは、イスカンダル製の波動エンジンや、あなた方のゲシュタム機関が、エンジンを作動させるエネルギーを得るために利用しているものです。恐らく、我々は、その余剰次元に広がる生命の基となる物質によって命を得て、肉体が滅びると、元の余剰次元に還元されるのでは無いでしょうか。その時、我々の知識や経験といった記憶は、どのような状態かはわかりませんが、失われずに余剰次元に残留しており、コスモリバースシステムは、ここに何らかの影響を与える事によって、記憶からの惑星環境の復元を、実現するのでしょう」

 新見は、真田の後を継いで話をした。

「イスカンダル人やジレル人、そしてテレザート人のような人々が、人の心に干渉したり、記憶や感情を移し込んだりするような行為。それから、霊体験も含めて。これらは、魂……いいえ、生命の基となる物質の存在を前提とすれば、全てが繋がって、解明が出来るのではないか、と私たちは考えいています」

 

 地球連邦政府のライアン外務長官らと、ガミラスの政府や軍の高官らも、親睦を深めていた。

「ガミラス本星到着後、しばらくすると民主化宣言後、初めての選挙が行われる予定です。これで完全にデスラー体制からの脱却が行われるでしょう。我々は、真の平和国家として生まれ変わるのです」

「我々とあなた方は、考え方も似ています。今回の軍事同盟条約締結は、とてもよい関係を生むでしょう。今後は、文化、経済交流も可能なように、国交正常化が出来ると良いですね」

 それぞれが、これからの二国間の交流を期待して、和やかなムードだった。

「しかし、テレザートで聞いた、イスカンダル侵攻の話ですが、ガトランティスとの関係も難しい状況ですね。私たちの友好関係が、何かお役に立てば良いですが」

 ガミラスの軍の高官が、暫し考えている。

「状況が状況です。条約を締結したら、早速ヤマトをお借りできるとよいのですが」

 ライアン外務長官の笑顔は、ひきつっていた。

「我々の防衛の要の艦ですから、それは難しいですね。しかし、条約を締結したら、技術供与が可能になりますから」

 その話題に、芹沢が話に割り込んだ。

「我々も、早く貴国から技術供与を得て、波動コアの製造が出来るようになるのが悲願でもあります。製造出来るようになった暁には、私には構想があります。波動エンジンを積んだ波動砲搭載艦を量産しようと思っています。これを波動砲艦隊構想と名付け、地球に戻ったら推進しようと考えています」

 これには、ガミラスの高官の表情がひきつった。

「なるほど。しかし、我が軍も同じことを考えると思いますが?」

「ふむ。しかし、互いに波動砲を使えば、同じ武器で報復を受けるわけですから、どちらにせよ、私たちの間で使うことは無いのではありませんか?」

 芹沢とガミラスの高官は、大きな声で笑いあった。

 ライアンは、慌ててそれを否定した。

「その話は、地球連邦政府の公式見解ではありません。酒宴の席でのジョークと受け取って頂ければ……」

 

 ネレディアは、土方の元にグラスを持ってやって来た。

「この艦隊の指揮官のネレディア・リッケです」

 土方は、ネレディアの方を向いて会釈した。

「地球連邦防衛軍、極東管区総司令官の土方竜です」

 二人は互いにグラスを傾け合った。

「土方総司令。少々ご相談が。このムードを壊したくないので、まずはあなただけに知らせたかった」

「どんなことでしょう?」

 ネレディアは、声のトーンを落とした。

「ガトランティスのことだ。本星からの情報で、一ヶ月もかからずに、ガトランティスの本隊がサレザー系に侵攻する可能性があることがわかった」

 土方は、訝しげな表情でネレディアを見つめた。

「それは不味い状況ですな」

 彼女は、怪訝な表情をしている土方の様子を眺めた。

「あまり驚いていないようだ。誰かが、この情報を伝えましたか?」

「いいえ。テレザート星系は、サレザー系にそれほど遠い場所ではないようです。そこに、ガトランティスの前哨部隊がいたことからの推測です」

 ネレディアは頷いた。

「我が軍の、様々な方面から集めた情報では、数万隻ものガトランティス艦隊が接近しているらしい。我が軍の多くは大マゼラン銀河各地に散っていたが、現在、本星防衛の為、サレザー系に帰還させている最中だ。もちろん、最低限の部隊はマゼラン銀河の各所に残しているが、かなりの数を本星に戻すだろう。ガトランティスに対して、我が軍の艦艇の数は圧倒的に多い。数の上では十分に勝っている。しかし、奴らは新兵器を戦線に投入してきたことが、最新の情報で判明した。この新兵器は、我々の数の優勢を覆すかも知れない」

 土方の眼光が鋭くなった。

「新兵器……?」

 ネレディアは、グラスを傾けて飲み物を少し飲んだ。そして、一層低い声で土方に耳打ちした。

「大彗星、とのことだ」

 土方は、それが意味することが、すぐにピンとこなかった。

「ふむ? うちの科学士官の真田を呼んで聞かせた方がいいかね?」

「彼には、後で私からも話すつもりだ。それよりも、先日のテレザートでの一件。あなた方は、ガトランティスへの攻撃を控える方針だった」

 土方は頷いた。

「その通り。すまないが、我々は進んで戦争の火種になる行為を、今は控えねばならない。その理由も、君も知っての通り、特に機密事項ではない」

 ネレディアは、苦渋に満ちた表情で土方に言った。

「だがもし、この新兵器を我が軍が撃破出来ない場合、ヤマトに協力してもらう必要が出てくるだろう」

「あなたは、波動砲でなければ破壊出来ない、と考えているわけですな」

「今、私が得ている情報では、その可能性が高い」

 ネレディアと土方は、互いに睨み合った。

「我々が決めることではなさそうですな。ここには、双方の政治屋が集まっている。彼らに議論させた方がいいでしょうな」

 ネレディアは、鼻をならした。

「遠いマゼラン銀河の話で、あなた方には関係がないのはわかっている。だが、同じ軍人として話をしておきたかった」

「軍人としてなら、尚更勝手には判断出来んのでは?」

「ならば、同じメンタリティを持つ民族同士として。どうか、覚えておいて欲しい」

 土方は、母星の命運を懸命に想う彼女の姿を見て、口元を緩めた。

「それは当然のことだ」

 民族の運命に憂いを持つ気持ちは、地球人もガミラス人も変わらない。土方は、ネレディアの気持ちが、痛いほどよくわかっていた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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