宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国編   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国編」です。


白色彗星帝国編15 デスラーの戦い

 空母ミランガルでの酒宴も終わり、暫くして連続ワープの時間が迫っていた。

 

 西条未来との交替の時間が迫っていた雪は、第一艦橋に向かっていた。艦の中央エレベーターに乗ろうとすると、彼女は、ちょうど古代が艦底部の階から乗ってきて鉢合わせていた。

 二人は、テレザートの一件依頼、任務に忙殺され、中々会う時間もなかった。

「……記憶、ちゃんと戻って本当に良かった」

「ありがとう」

 雪は、笑顔で応えた。

「その後、体の方はどう?」

「大丈夫。私の中にいるユリーシャの記憶は、意識しなければ、思い出すこともないし」

「そうか。良かった。ずっと心配してたんだ。立場上、君のことばかり気にする訳にもいかず、君と話す時間もなかなかとれなくて」

「ごめんね。心配かけて」

 そんな事を話していると、エレベーターは、あっという間に第一艦橋に着いてしまった。

「じゃ、また」

「また、今度ね」

 二人は、何事も無かったように、それぞれの座席に向かって別れていった。

「状況報告!」

 古代は、艦長席に着くと、すぐに報告を求めた。

 最初に報告したのは、島だった。

「現在、連続ワープの準備を終え、ワープ開始の予定時間を待っている」

 古代は、島に頷くと、続けて相原に確認した。

「ガミラス艦隊から連絡は?」

「特にありません」

 最後に、雪に状況を確認した。

「敵影はないか?」

「長距離レーダーに反応はありません」

 古代は、特に何もないのを確認してほっとしていた。

 

 ヤマトとガミラス艦隊は、連続ワープ開始時間になり、一斉に加速していた。

「ワープ五秒前、四、三、二、一、ワープ!」

 彼らは、ワープを開始し、亜空間に突入した。ワープ開始から数分経つと通常空間に戻り、そこから間を置かずに再度ワープを行う。連続ワープは、これを何回も繰り返した後、エンジンを休ませる為に通常空間を数時間航行する。

 

「ワープ終了。続けて、次のワーププロセスを開始する」

 島は、山崎と目配せした。山崎も、次のワープの準備にすぐに取り掛かっていた。

「待ってください!」

 雪が、レーダーを凝視しながら報告した。

「長距離レーダーが、何か捉えました。艦艇と思われる物体を複数感知! 距離が遠く、艦種識別出来ません」

「島! ワープをいつでも開始できるよう、そのまま準備。相原! ガミラス艦隊にも連絡して、状況を確認してくれ」

 相原は、古代の指示を受けてガミラス艦隊に連絡を取っていた。

「空母ミランガルに連絡しました。先方が映像通信を希望しています」

「回線を開いてくれ」

 少し間があって、第一艦橋のスクリーンに、ネレディアが映っていた。

「リッケ大佐。こちらの長距離レーダーが、艦艇らしきものを捉えています。そちらの状況は?」

 ネレディアは、大きく頷いた。

「こちらでも感知した。ガミラス軍の艦艇かどうか近傍の基地に問い合わせている。このまま少し待て」

 ネレディアが背後を振り返って、何か会話している様子が伺えた。

「……この辺りを航行する、民間船やガミラス艦隊の予定はないようだ。ガトランティスかも知れん」

「まだ遠いので、任務の目的を考えると、我々は、ワープでこの宙域を離れるべきかと考えます」

 ネレディアは、ガトランティスなら見過ごせないと考えていた。しかし、古代の言うことももっともだと思い、どうするか思案していた。

「ふむ。古代艦長、あなたの言う通りだ。近傍の基地には連絡済みだ。我々は先を急ごう」

「承知しました。それでは……」

 古代が言い終わらないうちに、雪が叫んだ。

「近距離レーダーに感! 周囲に、何か物体が出現しています!」

 スクリーンに映るネレディアも、慌ただしく自艦の乗員と話していた。

「こっちも捉えた! 何だいったい。報告急げ!」

 ヤマトとガミラス艦隊の周囲には、小さな物体が多数出現していた。それは少しづつ数が増え、あっという間に、艦隊の周囲を取り囲んだ。

「急制動をかける!」

 物体の正体が不明な為、島は艦を緊急停止させた。太田は、艦橋の窓の外を指して叫んでいだ。

 「見てください! あれ!」

 目視できる距離に、その物体は浮かんでいた。

「センサーによれば、き、金属製の物体です。何かの動力が稼働している反応があります!」

 第一艦橋で勤務していた新米が報告した。

「これは……。き、機雷の可能性が濃厚です」

 スクリーンに映っているネレディアの表情が険しい。

「……あれは、ガミラス軍の宇宙機雷だ。しかも、瞬間物質移送機で周囲に出現した可能性が高い!」

 彼女は、吐き捨てるように言った。

「何ですって!?」

 古代は、艦長席から立ち上がった。ネレディアは、怒りをあらわにしている。

「噂に聞く、反乱軍に違いない!」

 

 宇宙機雷を散布した艦隊は、ヤマトとガミラス艦隊の様子を見守っていた。それは、デスラーが率いる宇宙艦隊だった。ゲール少将が率いる艦隊、そして、カーゼット大佐が率いる元親衛隊の艦隊、そして、ガトランティス艦隊からなる混成艦隊だった。

「何故、あんな子供騙しを使うのだ!? この艦隊全軍で行けば、あのような小隊、片手で捻り潰せるだろう!」

 デスラーの背後で、ガトランティスが監視役として乗艦させたミルが、大層憤慨していた。そのデスラーは、デウスーラのコアシップの艦橋中央の席に座って、酒の入ったグラスを傾けていた。

「……なに、余興だよ。彼らが、この危機にどう立ち向かうのか、暫し、楽しもうじゃないか」

 そんなデスラーの様子を、ヴェルテ・タランはため息混じりにちらと見ていた。彼は、つい先程デスラーと会話した内容を思い返していた。

 

 デウスーラのデスラーの個室に、ヴェルテ・タランが報告に来た。

「総統。ガトランティスの情報通り、ヤマトを含む我が軍の艦隊がワープで現れました」

 デスラーは、特に表情を変える事なく頷いた。

「では、すぐに作戦を開始してくれたまえ」

 タランは、念押しして確認した。

「本当に、我が軍の艦船に攻撃を加えるおつもりですか?」

「ガトランティスの連中に、私が少しは本気だと思ってもらわなくてはね。ヤマトがここに現れたのは、我々にとっても好都合だよ」

 タランは、ため息をついた。

「承知しました。それでは、予定通り、宇宙機雷を散布する作戦を開始します」

 

「セオリー通りなら、こうして動けなくなったところを襲って、殲滅する作戦を展開する。しかし、奴らは近寄ってこないな」

 ネレディアは、まだヤマトのスクリーンに映っていた。彼女が言う通り、長距離レーダーで捉えた未確認艦隊は、そこから動く様子は見られなかった。

「あの機雷は、周囲の磁気に反応して、そこに向かって少しづつ移動する仕掛けがある。このままじっとしていても、やられるという訳だ」

 古代は、少し考えて提案した。

「ヤマトの波動防壁を使いましょう。機雷原を突破して、開口部を作るので、そこを全艦で抜ければいい」

「既に、それぞれの艦の周囲に機雷が接近しすぎている。ヤマトは抜けられても、我々は動けん。こうなれば、君たちだけでも、ガミラスに向かってもらうべきかも知れん」

「リッケ大佐。我々は、あなた方を見捨てて行くことは出来ない」

 古代の真剣な眼差しに、ネレディアは感銘を受けていた。

「ありがとう。しかし、最悪そうしてもらうしかない。一旦、それぞれで解決法を検討しよう。通信終わり」

 通信が切れると、古代は、新米に指示を出した。

「新米、ガミラス艦隊が機雷原を抜ける為の案を至急検討してくれ。他の者も、よい案が浮かんだら提案して欲しい!」

 新米は驚いていた。名前を正しく呼んでもらえたからだ。そして、嬉しそうに返事をした。

「承知しました!」

 

 ヤマトとガミラス艦隊は、艦の操艦で位置を微調整して機雷を避けていた。しかし、遂に一隻のガミラス駆逐艦に機雷が接触した。その駆逐艦は、接触した箇所が爆発し、更にその揺れで、別の機雷にも接触した。

「駆逐艦一隻が機雷に接触! 今のところ損傷は軽微! しかし、負傷者が数名出ているとの報告がありました」

 ネレディアは、その報告を受けて怒りに震えていた。

「司令。意見具申。艦載機を飛ばして、機雷にぶつけてはいかがしょうか。もちろん、パイロットは脱出させます」

「爆発したら艦の損傷は免れん。却下だ!」

 ネレディアの苛つきは極限に達していた。

 

 デスラーは、グラスを傾けながら偵察機からの映像をスクリーンで眺めていた。

「見たまえ、ミルくん。面白いだろう? こうやって、一杯やっている間に、彼らは自滅する」

「ふむ」

 ミルもその映像を見て、少しは感心しているようだった。

「君も一杯やるかね?」

「いや、結構だ」

 

 新米は、うんうん言いながら、第一艦橋の自席で悩んでいた。既に、技術科にも報告して研究室の真田たちに検討してもらっているが、まだよい案が出ていない。少なくとも、パルスレーザー砲での攻撃などは論外だ。

 ヤマトの兵装で何か使えそうなものは無いか……?

 すると、太田が古代に手をあげた。

「艦長代理、意見具申! 皆で外に出て、こうやってそうっと手で押したらどうです!?」

 太田が両手を前に出して、押す動作をしている。古代も、その意見は想定外で、一理あると考えた。

「新米、どうだ? この案は?」

 新米は、太田の顔色を窺って、恐る恐る回答をした。

「あの機雷は、接触するか、た、対象物が至近距離にあるのを検知して爆発しているようです。そ、その方法では、近づいただけで爆発すると思います」

 古代と太田は大いに落胆していた。

「駄目かぁ……いい案だと思ったのに」

 そう。近寄ったり触らないで動かす方法が必要なのだ。新米は、はっと思い出した。そして、艦内通信で技術科に連絡を入れた。

「新見さん、教えて下さい。イズモ計画でヤマトに積んだ装備のことについて。はい。はい。前にヤマト計画とイズモ計画は学校で勉強しました。はい。そうです! それです。それって、今もヤマトに積んでますか? え、ある? 使えるかどうか、検討してもらえませんか? はい。お願いします!」

 古代は、新米の様子を興味深く見守っていた。

「どうした? 新米」

「いい案が浮かんだと思います! 実現出来るか技術科に検討を依頼しました!」

 

「艦長代理からの命令だ。全員で出るぞ!」

 加藤が航空隊の待機所で指示を出していた。加藤らが艦載機の格納庫に向かうと、既に技術科の面々が装備を運び込んでいた。

「これを、艦から少し離れた場所に散布してください。仮に爆発しても艦隊に影響が出ない一番近い場所がいいです。機雷に接触しないように皆さん、注意してくださいね」

 沢村が首をかしげている。

「これって何なの?」

「イズモ計画で使う予定だった、岩盤制御用の装置です。本来は、ヤマトに設置して、岩盤を引き寄せる磁力を発生させる装置ですが、これを逆に艦外に散布して、機雷を遠ざけるのに使います」

加藤は、皆に声をかけた。

「こいつは、危ない仕事だ。絶対に無茶な操縦はするなよ。出来るだけゆっくり飛ばすんだ」

 坂本は、にやりと笑って回答をした。

「大丈夫ですよ。こんなのよゆーです」

 加藤は坂本に顔を近寄せて、声のトーンを落として言った。

「お前が無茶なことをするのを見つけたら、俺が背後からお前を撃ち落とす。いいな」

 

「航空隊を発艦させろ。全機発艦!」

 新米は、古代が指示を出すのを見守っていた。古代もそれに気づいて、新米に向かって頷いた。

 ヤマトの艦載機発着口から、続々とコスモファルコンが発艦していた。空母ミランガルでも、ヤマトから連絡を受けて、その様子を見守っていた。

「頼むぞ」

 ネレディアは、祈るような気持ちで呟いた。

 ヤマトの艦載機は、巧みな操縦で機雷を避けながら、次々に装備を散布している。そうしてしばらくすると、艦隊全体をぐるりと飛び回った。

「ヤマトに連絡! 全部散布したぞ!」

 加藤の報告を受けて、古代は指示をした。

「了解。航空隊は全機帰還せよ」

 コスモファルコンは、続々とヤマトに着艦していった。

 

「新米。航空隊は全機着艦した。始めてくれ」

「了解しました!」

 新米は、制御装置に火を入れた。そして、岩盤制御装置に指示を送信した。すると、ヤマトが散布した装置の周囲に強力な磁力が発生した。それが、周囲の機雷を少しづつ引き寄せている。徐々に、ヤマトを始め、空母ミランガルや、ガミラス駆逐艦の周囲からも機雷が離れ始めた。

「成功だ!」

 新米が叫んだ。

「新米。よくやったぞ。ありがとう」

 古代が笑みを浮かべて新米を見ていた。褒められた新米は、少し照れながらも誇らしげだった。

「いえいえ、大したことはしてません」

 

 ネレディアが、ガミラス艦隊に指示を出した。

「機雷は十分な距離まで離れた。この隙に機雷原から脱出する。全艦発進準備!」

 

「見てみろ! デスラー総統。奴らは脱出しようとしている!」

 ミルが、偵察機の映像を指して叫んでいる。

 デスラーは、その一部始終をぼんやりと眺めていたが、突然静かに笑い出した。

「ふふふふ、さすがはヤマト。あの時から何も変わっていないようだ」

 ミルは、険しい表情で銃を構えた。

「デスラー総統。今すぐ奴等を沈めるんだ!」

 デスラーは、銃を向けられても、微動だにしなかった。

「どうした! やはり、ガミラス軍を攻撃出来ないんだな!? 大帝に報告させてもらうぞ!」

 デスラーは、前髪を弄りながら、何も答えなかった。しかし、突然、持っていたグラスを背後に放り投げた。グラスは、ミルの足元で粉々になり、ガラスの破片が散らばった。

「な、何を……!」

 ミルは、一瞬怯んだが、すぐにデスラーを撃とうとした。しかし、その一瞬の間に、艦橋内で控えていたガミラス兵士が集まり、彼を一斉に押さえつけた。

 デスラーは、立ち上がって、ミルの方を向いた。そして、床に這いつくばされている彼に向けて、銃を構えた。

「き、貴様!? 裏切るのか!?」

 デスラーは、氷のように冷たい瞳で、ミルをじっと見つめた。

「私はね。余興を楽しんでいたのだよ。私の楽しい時間を、君のような下品な人間に邪魔されたくはない」

 タランが、ミルを押さえつけるガミラス兵に命令した。

「この男を拘束して、監禁しておけ!」

「こ、こんなことをして、どうなるかわかっているのか!? 我がガトランティスを敵にまわすと言うのか?」

 デスラーは、目を閉じて僅かに笑みを浮かべた。

「ガトランティスなど、私にとってはどうでもいい。目障りだ。タラン、ここから連れて行かせたまえ」

 ガミラス兵にミルが連れていかれ、デウスーラの艦橋から姿を消した。

「総統。てっきり私は処刑すると思っていました」

 タランの表情を、デスラーは怪訝な顔で確認した。

「そんなに残忍な人間に見えるかね?」

 デスラーは、銃を腰のホルスターにおさめた。

「ええ。以前の総統でしたら、そうしていたでしょう。違いますか?」

「そんな風に思われていたとは、少々、心外だね」

 タランは、デスラーの様子が以前と少し違っているのに、戸惑っていた。タランは、気を取り直して、次の作戦について確認した。

「さて。総統、打ち合わせ通りガトランティスの本隊から遠く離れ、ミルも拘束しました。次は、ここにいるガトランティス艦隊の取り扱いです」

「予定通り、狼の群れに放り込んでやれ」

「はっ! 後衛の戦闘空母に通達! 作戦実行!」

 艦隊の後方に控えていた、二隻の戦闘空母が、ガトランティス艦隊の背後にゆっくりとつけた。その二隻の瞬間物質移送機が、一斉に唸りをあげ、ワープウェーブが、ガトランティス艦隊を包んだ。八隻いたガトランティスの駆逐艦は、無理やりワープさせられていた。

 

「レーダーに感! ガトランティス艦隊が、今抜け出した機雷原に出現しました!」

 ネレディアは、少し驚いていたが、舌舐めずりをした。

「そっちから檻に入ってくれるとはな。全艦! ガトランティスを殲滅する! 一斉砲撃開始!」

 ネレディア率いるガミラス駆逐艦が、機雷原のガトランティス艦隊を取り囲み、陽電子砲の一斉砲撃を行った。ガトランティス艦隊は、身動きが出来ないまま、次々に被弾し爆発した。

「司令! ガトランティス艦隊の全艦撃沈を確認しました」

 ネレディアは、すっきりとした表情をしていた。

「これで、少しは気が晴れたな。ヤマトに連絡を入れろ!」

 

「艦長代理、ガミラス艦隊から通信!」

「繋いでくれ」

 ヤマトの第一艦橋の大スクリーンに、ネレディアが映った。

「古代艦長。我々は、やはり反乱軍を見過ごすことは出来ない。その為、これより残存艦隊の殲滅作戦を開始する。すまないが、少々そこで待っていてくれ」

 古代は焦ってネレディアに言った。

「リッケ大佐、ちょっと待ってくれ。ガミラス人同士で戦うなどあってはならないことだ。ここは、ワープしてこの場を離れるべきだ!」

 ネレディアは、暗く冷たい表情をしている。

「ガトランティスと手を組むような輩を、私は許すことは出来ない。通信終わり」

「通信、一方的に切れました!」

「ガミラス艦隊、全速力で移動を始めました!」

 古代は、唖然としてガミラス艦隊の動きを見守っていた。しかし、すぐに気を取り直して指示を出した。

「我々も後を追う! ヤマト発進!」

 

「総統。ガトランティス艦隊は、全艦撃沈されました」

 デスラーは、頷いて、新しいグラスに口をつけた。

「後は、親衛隊の扱いだけですが、まずは一旦、この場を離れますか?」

 前方のガミラス艦隊がこちらに向かう様子が、偵察機からの映像に映っている。

「いや、ちょうどいい。挨拶させて頂こうじゃないか」

 

 カーゼット大佐率いる旧親衛隊の艦隊は、混乱していた。

「デスラー総統が、ガトランティス艦隊を葬ってしまっただと……」

 カーゼットは、何が起こっているのか理解できずにいた。

「カーゼット大佐。我々はいったいどうすれば……」

「私にもわからん……」

 

「反乱軍め。ガトランティスなどと手を組む奴等を、私は決して許さない。残りを殲滅するぞ。全艦突撃! 前方の反乱軍を殲滅する!」

 ネレディア率いるガミラス艦隊が、高速でデスラーらの艦隊に迫っていた。

「司令! ヤマトから通信が入っています!」

「放っておけ! 目の前の敵に集中!」

 

「艦長代理、だめです。ガミラス艦隊は通信を無視しています!」

 相原が、古代に報告した。

 ヤマトは、ガミラス艦隊の後方につけ、その後を追っていた。

「くそっ」

 古代は、酷く困惑していた。ネレディアは、ガトランティスに個人的な恨みでもあるのか、感情的になって周りが見えなくなっているようだった。

 

「司令! 前方の反乱軍より通信が入っています」

 ネレディアは、怒りに顔を歪めていたが、その報告で少し冷静さを取り戻した。

「繋げ!」

 

「艦長代理。前方の反乱軍から通信が入っています」

「相原、繋いでくれ!」

 

 そうして、ヤマトとガミラス艦隊へと、反乱軍からの映像通信が繋がった。

 各艦の通信用映像スクリーンに、その姿が映った。ヤマトでも、ガミラス艦隊でも、それを目撃した人々は、言葉を失った。

「……諸君。久しぶりだね。私の顔を忘れてしまっていないか心配だよ」

 スクリーンに映ったデスラーは、その場の全員に挨拶をした。

「で、デスラー総統……!?」

 ネレディアは、驚きのあまり、それ以上の言葉が出なかった。

「覚えていてくれて、何よりだ。君は確か……リッケ大佐だったかな?」

「……そうです。ネレディア・リッケです」

「先程の勇猛な戦いぶり、見させてもらったよ」

 ネレディアは、傍にいたミランガルの艦長に艦隊の停船を指示した。

「それから、ヤマトの諸君。久しぶりだね」

 古代ら、第一艦橋の全員が、信じられない人物の登場に固まっていた。

「デスラー総統……。生きていたのか」

 古代は、苦渋に満ちた表情で呟いた。

「先程の機雷原の突破、見事だった。私の期待を君たちは、本当に裏切らないでくれて嬉しいよ。リッケ大佐の艦隊を助けてくれたこと、礼を言わせてもらおう」

 誰も言葉を発せず、静まり返っていた。その静寂を、ネレディアが破った。

「いったいどういうことか教えて欲しい。あなたは、亡くなったと伝わっていた。しかし、生きていて、しかも、反乱軍の指揮をしているというのか?」

 デスラーが低く笑い出した。

「ふふふ。この通り私は生きている。反乱軍の指揮というのは、何のことかね? 皆、私を慕ってついてきてくれてた者たちだ」

 これを聞いたカーゼットら、旧親衛隊の面々は、梯子を外されたような気持ちになり、呆気に取られていた。

「諸君に少々お願いがある」

 デスラーが手招きして、タランは、少し困惑しながらも、デスラーの横に現れた。

「ヴェルテ・タラン国防相……」

 ガミラス艦隊の人々は、タランの登場にも驚きを隠せなかった。

「諸君。このタランを本星に連れていって欲しい。これは、彼の望みだ」

 タランは仰天していた。

「いいんですか?」

 デスラーは頷いた。

「タラン。これまで私についてきてくれたこと、本当に感謝している」

 デスラーがタランの肩を叩く。タランは、驚きの余り、デスラーと見つめ合った。

 あれから、この人は本当に変わったのだと、タランは理解した。

「それから、もう一人。イスカンダルにエスコートしてもらいたい人物がいる。この二人を君たちに預けたい」

 雪は、イスカンダルに連れていくもう一人、と聞いて胸騒ぎがしていた。

 そこで、一呼吸置いたデスラーが、カーゼットら旧親衛隊に語りかけた。

「親衛隊の諸君。諸君は、現在のガミラス政府に虐げられ、やむを得ず反乱軍などというものに身を落としたと聞いている。私も、もはや本星に戻るのは叶わぬ身。しかし、私は、ガトランティスなどの言いなりになってまでガミラスに拘るつもりは無い。これから私は、私を慕ってくれるゲール君と共に、新天地に旅立つつもりだ。良ければ、諸君らも一緒についてきて欲しい。そうだ。私と、もう一度、新しいガミラスを作ろうではないか!」

 デスラーの力強い宣言に、カーゼットら親衛隊は衝撃を隠せず、中には涙を流す者もいた。

 ガミラス巡洋艦に乗っていたゲールも、嗚咽を堪えるので必死だった。

「ガーレ、デスラー……!」

 誰かが叫ぶ。

 すると、一斉に反乱軍の面々が同じ言葉を唱えて叫んだ。

「ガーレ! デスラー!」

「ガーレ! デスラー!」

「総統……」

 冷静なタランまでもが、感極まっていた。

「君には、帰る家がある。暫し休暇を楽しんでくれたまえ」

 これを聞いた、ネレディアらの艦隊でも、涙ぐんでいる者がいた。

「ええい、皆泣くんじゃない!」

 ネレディアは、一喝した。

 デスラーは、更に話を続けた。

「どうやら、話は決まったようだ。これから、我々は、反乱軍として活動している者たちを訪ねて周り、多くの同士を募る為、しばらくマゼラン銀河に留まるだろう。時が来たら、我々は、この銀河に別れを告げる。それまで、また会うこともあるだろう。さらばだ」

 その言葉を最後に、デスラーからの通信が切れた。

 

 デスラー生存の情報は、ガミラス本星に伝わると、あっという間にマゼラン銀河中を駆け巡った。デスラーの政権復帰を期待するもの、逮捕や死刑を望むものなど、意見は様々ではあったが、多くの人々に衝撃を与えていた。

 

 ヴェルテ・タランは、ネレディアの座乗する空母ミランガルに乗艦し、一通り挨拶を済ますと、一人で宇宙を眺めながら、デスラーと最後に交わした会話を思い出していた。

 それは、ヤマトとガミラス艦隊接近の情報を得て、ミルを油断させて拘束する段取りを決めた後だった。

 

 デスラーが無表情でタランをぼんやりと見ている。

「どうされました?」

「タラン。私には、帰るところがあると思うかね?」

 タランは、言葉を失った。デスラーがそのことをどう考えているかは、ずっと気にしていた。

 デスラーは、目を閉じて微笑している。

「君は、本当に正直だね。そこが君のいいところだが」

「……申し訳ありません」

「第二バレラスの一件から、ガトランティスの捕虜生活まで。君にはとても迷惑をかけたね。私は、君が居てくれたことに、とても感謝している」

 デスラーは立ち上がって、後ろにあった窓の外の宇宙を眺めていた。

「私は昔、スターシャと約束した。この宇宙に平和をもたらし、もう一度、イスカンダルと一つになって星ぼしの民を導こうと」

 タランは、少し意外に思っていた。恐怖で人を支配してきた彼が、平和、という言葉を使ったことに違和感があった。

「私は、デスラーの血筋では半端者でね。家族からの不当な扱いに苦しんで育った。小さい頃から時々、家を離れてイスカンダルに遊びに行った時は、辛いことを忘れられて、本当に楽しかったよ。そして、いつしか、不平等な扱いを受けて苦しんでいる者を助けたいと本気で思ったものだ。その頃、私の叔父がガミラスの統一を果たしていたが、亡くなるとすぐ、ガミラスは再び権力闘争に明け暮れた。貴族の連中はやれ純血だ、などと下らぬものに拘り、他者を劣等人種と蔑み、政争に明け暮れ、腐敗しきっていた。そんな世の中を正そうと立ち上がると、私の血筋を利用しようという輩が後から後から湧いてきてね。私もそんな連中を利用して、武器を取って戦った。そうやって、この手を血に染めて勝ち取った政権だったが、結局何も変わらなかった。他の星からは、気を許せば反抗され、身内からは、寝首を掻こうとするものが後を絶たず、最初は仕方なくだった。親衛隊や秘密警察などに頼って政権を守り、他の星の秩序をも守るのに必死だった。いつの間にか、私は恐怖で人を支配する、誰もが恐れる存在になっていた。こんなはずではなかったんだがね。本当に、最初は、宇宙に平和をもたらしたいと思っていたんだよ」

 デスラーは、そこまで言うと、タランの方を振り返った。

「私は、あの時。バレラスに巣食う、そういう腐った連中を葬り、私の理想を取り戻そうとした。普通に暮らすガミラスの民が巻き添えになることもわかっていた。それらの犠牲を払ってでも、やらねばならないと、あの時本気で思っていた。しかし、それも失敗に終わり、何もかも失ってしまった」

「総統……」

 タランは、デスラーの告白に驚きを隠せなかった。独裁者として君臨し、皆が恐れていた彼の苦悩を、今、ここで初めて知ったのだ。

「今、私に残っているのは、スターシャへの思い。最初に私が戦い始めた時に、彼女に誓った純粋だった時の気持ち。今はそれだけが、私のすべてだよ」

 

 タランは、戸惑いの中にいた。あの時のデスラーの告白に胸をうつものを感じたのは確かだった。そして、自分への感謝を何度も言っていたことを思いだし、これまで誰も信頼できず孤独だった彼の信頼を得て、その凍った心を溶かすのに一役買ったのではないかと思うようになっていた。

 彼の変化は自惚れではなく、確かにそのようなものだったのではないか? タランは、宇宙を眺めたまま、じっと立ち尽くしていた。

 

 一方、ユリーシャは、本人の希望によりヤマトに乗艦してきた。再会の挨拶もそこそこに、ユリーシャは、皆に謝罪して部屋で一人にさせてもらっていた。デスラーの艦でも、部屋に閉じ籠り、ずっと自分のしたことを悔やんでいた。

 勝手な行動で、ガミラスの大勢の人が亡くなったこと。ズォーダーには、必死に思いを伝えるものの、理解し合うに程遠い結果だったこと。結局、一人では何も出来ない自らの幼さを、彼女はずっと呪っていた。

 暫くすると、雪がユリーシャの元を訪れた。そもそも、ここは士官用の個室で雪の部屋だった。

「何だかずっと元気が無いけど、どうしたの? よかったら、話を聞かせて貰えないかな?」

 ユリーシャは、ベッドの端に座ってぼんやりしていた。雪は、その隣に腰かけた。

 ユリーシャが黙っているので、雪も無言のまま時が過ぎた。暫くすると、ユリーシャの頬を、はらりと涙がこぼれ落ちた。そして、堰を切ったように、後から後から涙が零れ、ユリーシャは苦しそうに嗚咽を漏らしていた。

 雪は、そんな彼女をそっと抱き締めて、暫くそのまま泣かせることにした。

 ユリーシャは、ようやくそれまであったことを話してくれたので、雪も何があって泣いているのか理解した。ユリーシャを慰め、少し落ち着いたところで、気分を変える為に外に連れ出すことにした。

 艦内食堂に行くと、山本や百合亜、メルダなど、彼女に関わった女性陣が心配して集まって来た。懐かしい話に花が咲き、そうしているうちにユリーシャにも笑顔が戻ってきていた。

 ユリーシャは、再び一人になって考えていた。確かに一人じゃ何も出来ないが、自分を思ってくれる人たちと一緒なら、きっと頑張れる、と思っていた。そうして、彼女は挫けずに、もう一度、やれることをやろうと誓うのだった。

 

 同じ頃、ネレディアも、もの思いにふけっていた。

妹を亡くしたことがあって、ガトランティスはもちろん、彼らと手を組んだ反乱軍も許せなかった。しかし、デスラーなら、彼らをガトランティスから手を引かせ、まとめあげてくれるに違いない、とも思っていた。

 デスラーが去っていくのを、何もせず見逃したネレディアだったが、あの不思議なカリスマ性に、本当は彼女も魅せられていた。一部の兵が、感極まってしまったのも頷ける。本当はこのような混乱の中でこそ、彼のような人物が必要なのだろう。

 彼女は、ガミラスや、デスラーの行く末を思いつつも、気持ちを切り替えた。ヤマトをガミラスに送り届けた後は、本格的にガトランティスとの決戦に備える必要がある。

 

続く…

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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