宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国編   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国編」です。


白色彗星帝国編20 レプタポーダの邂逅

 荒涼とした大地に、時折風が吹いている。男たちは、風が舞い上げる砂を払い除けていた。

 かつての収容所惑星レプタポーダは、今では囚人も看守も、誰もいない寂しい世界だった。そこに、空から何かが降りて来るのが見えた。少しづつ近づくシルエットは、青い円筒形の宇宙船だった。

「来たな」

 フラーケンは、予定通りその船がやって来たことを確認して、周囲の男たちを見回した。

「お出迎えの準備をしておけ」

「了解、隊長」

 そこは、収容所にあった宇宙港だった。フラーケンの他に、副長のハイニと、もう一人、男たちの中に、ヴェルテ・タランの姿もあった。

「総統……。本当に、来てくれた」

 タランは、遠方からでも、近づく船がデウスーラのコアシップであることがすぐに分かった。総統自ら出迎えに来てくれたことに、彼の胸は熱くなった。

 ハイニは、空を指差した。

「隊長、あれ。何か、もう一隻来たみたいだ」

 フラーケンとタランは、ハイニが指差す方角に目を凝らした。確かに、黒い点がもう一つ見えた。

「ふん。まぁいい。降りて来れば分かるだろう」

 

 宇宙港に着陸したのは、予想通りのデウスーラのコアシップと、もう一隻は、非武装の輸送艦だった。側面に、大きくガミラスの紋章が見える。これは、ガミラス政府が所有する船だった。

 タランは、弟のガデルが来てくれたのか、それとも他の政府の人間が来たのか、不安げにその船を見つめた。

 しばらくすると、ようやく船から人が降りて来た。

 デウスーラから降りてきたのは、デスラー総統その人だった。フラーケンとハイニは、ガミラス式の敬礼で出迎えをしていた。

「ガーレ、デスラー!」

「……が……で、デスラー!」

 タランは、本人が現れたことに、感極まっていた。

「総統……」

 目頭が熱くなり、タランは思わずその目を袖で拭った。

「君には、休暇を与えたはずだったんだがね。もう、いいのかね?」

 デスラーは、穏やかな表情で微笑んでいた。タランは、ガミラス政府に追われて助けを求めたことを伝えていたにも関わらず、相変わらず何事にも動ぜず、軽いジョークを口にするデスラーの言動が懐かしかった。

「……はい、総統。少々、休み過ぎたようです。今日から、またお世話になってもよろしいでしょうか?」

 タランも、同じようにジョークで返した。デスラーは、目を閉じて小さく頷いた。

「君を、歓迎するよ」

 表情にこそ出ていないが、デスラー自身も、タランが戻ってくれたことに喜びを感じているようだった。自身の船を降ろし、自ら出迎えに出てきたことが、その証拠だった。

 その時、もう一隻の政府の輸送艦からも、降りてくる人物がいた。デスラーを含めた四人は、それが誰かを確認しようと振り向いた。金髪の若い男が一人、彼らの元に歩いて来た。

「叔父さん。……いいえ、デスラー総統。大変ご無沙汰しております」

 その男は、ローレン・バレルの元で労働省の事務次官をしていたランハルトだった。

 デスラーは、ランハルトの顔をまじまじと眺めていた。そして、そっと微笑みを浮かべた。

「おやおや、随分とまた、懐かしい顔が見れたものだね」

 タランは、その男が、先の晩餐会でバレル労働相が、デスラーの血筋の者と紹介した人物だったのに気がついた。

「あ、あれ? 何か、総統に似てね?」

 フラーケンは、ハイニの方を向いて、彼を睨んだ。それに気づいたハイニは、両手で口を抑えて頷き、もう余計なことを喋らないと訴えた。

「子供の頃にお会いしたのが最後でしょうか。私のことを覚えておいででしたか」

 ランハルトは、かつて慕っていた叔父が元気そうな姿を見て、同じように微笑んだ。

「君も、デスラー家では疎まれていたのは知っていたからね。似た者同士ということで、よく覚えているよ。最後に会ったのは……。確か、一緒にイスカンダルに遊びに出かけた時だったかな。君は、歳が近いサーシャとユリーシャと仲良くしていたようだね」

「は、はい。そんなことまで、よく覚えておいでで……」

 二人のデスラーは、再会を懐かしんで、そんなやり取りを、ほんの少しだけ交わした。

 

 話がひと区切りついたランハルトは、ここを訪れた一番重要な話をし始めた。

「実は、ガミラスで、軍がクーデターを起こした」

 デスラーたちは、その話に驚いていた。

「ほう……。すると、君の弟が、首謀者ということかな」

 タランは、弟ガデルが、そんな大それたことを仕出かしたのに、焦っていた。タランは、何故弟が、そのようなことをしなければならなかったのか、思案した。

「……恐らく、そうでしょう。軍は、大彗星と呼ばれるガトランティスの新兵器への対抗策が無く、かなり焦っていたのは確かです。恐らく、テロンとの同盟交渉が上手く行かず、強引にヤマトを接収するのが目的だと思います。ヤマトの波動砲が、唯一の対抗策と、弟は考えていましたから」

「なるほどね」

 デスラーは、あまり感情を表さず、冷静だった。ランハルトは、それまでの口調を崩して、ことの経緯を話しだした。

「バレル労働相は、過去に、いろいろなことがあって、デスラー家から逃げ出した俺を、本星に連れ戻してくれた恩人だ。その彼は、今回のクーデターを事前に察知して、俺に、デスラー総統の所へ行くように促した。彼は、先を見越して、考えがあったんだろう。デスラー総統が、この本星の危機に対抗する術を見つけてくれると信じていたようだった。何故か、このレプタポーダへ行けば会える、という情報も知っていた」

 タランは、その情報源に思い当たることがあった。恐らく、ドメル夫人のエリーサだろうと、彼は考えていたが、それを口にするのはやめた。

「ふむ……。今更、私が本星の為に何かすると、そのバレルという男は言っていたのかね?」

「勘だ、と言っていた。確信があったわけではないと思う。俺は、彼に急げと促されて本星を出発しようとしている最中に、クーデターの報を聞いた。その混乱の間隙をぬって、すぐに船を出したので、見つからずにここまで辿り着けたという訳だ」

 デスラーは、空を見上げた。あの空の彼方で、サレザー系にガトランティスの軍勢が攻め込む様子を、彼は想像してみた。イスカンダルのスターシャの宮殿が炎に包まれる可能性は否定出来ない。それを思うと、デスラーの胸の奥に、忘れようとした感情がさざめいていた。

 しかし、ディッツ提督率いるガミラス軍が、ガトランティスごときに敗北するとは到底思えなかった。そうすると、先程タランが言った新兵器の存在が気になった。

「タラン。その、大彗星とやらは、どのようなものなのかね?」

「はっ。それは……」

 タランは、自身が本星を逃げ出すことになった原因に言い淀んだ。しかし、彼は決意して正確な情報を話した。

「我々がガトランティスに捕らえられている間に、時間稼ぎで私が指揮を取って、ガミラス人の科学者に開発させた人工太陽の技術が元になっています。ガトランティスには、様々な星系から連行された、多数の科学者が囚われていました。恐らくは、その者たちが、兵器への転用を考えたのでしょう」

 デスラーは、ガトランティスの大要塞で目撃した人工太陽の輝きを思い浮かべた。

「なるほどね。あんなものに、何故対抗策がないのだね?」

「当初は、あの人工太陽をそのまま利用した兵器が使われていました。その時は恐らく、試作品だったのだと思います。現在、ガミラス軍で大彗星と呼ぶものは、直径三十キロもあるかなり大きな物体です。プラズマの光をなびかせて移動する様から、大彗星と名付けられたようです。サイズが大きくなったことで、その周囲には、数千度の高温と、強力な磁気や重力、そして、電子機器を無効にする電磁パルスを発生させています。これが、ビーム兵器や、惑星間弾道弾のようなミサイルなど、あらゆる攻撃が通用しない原因になっています」

 デスラーは、少し眉をひそめた。

 兵器の概要を聞く限り、このまま放っておけば、ガミラスはおろか、イスカンダルもただでは済まないかも知れない。

 デスラーの心はかき乱されていた。

 ガミラスは、既に自分が捨てた星。

 だが、スターシャは?

 デスラーは、自問自答を繰り返した。

 それにしても……。

 デスラーは、突然低く笑い出した。

「ふふふふふ……」

 タランやランハルトを含めて、そこにいた男たちは、彼の様子の変化に呆気に取られていた。

「その、バレルという男だが、どうやら、私のことをよく調べていたようだ。それに、行方不明になっていたランハルトを連れ戻したという話だが、本当に偶然だったのか、怪しいものだね」

 ランハルトは、そう言われてみて初めて、今回の自分がここへ来る顛末を含めて、彼が、デスラー家にまつわる身内しか知らない事実を、よく知っていた可能性に気がついた。

「デスラー総統。バレル労働相は、決して悪意を持って我々に近づくような人物ではない」

 デスラーは、小さく頷いた。

「ああ。お前が信頼する人物のことだ。私もそうだと思うよ。だが、相当な切れ者だ、ということは確かなようだ」

 デスラーは、見ず知らずの男に操られる不快な感覚も覚えたが、ここは素直に踊らされることに決めた。

「ならば、タラン。君ならば、対抗策を思いつくのではないかね? 君が関わって作られたものならば、弱点も知っているんじゃないのかね?」

 タランは、デスラーが本星を救いに戻る決意をしたことに気づいた。その理由も、これまでに聞いた話からも容易に想像がついた。しかし、それを指摘するのは、それこそ野暮と言うもの、と彼は微笑んだ。

「少なくとも、私の知る弱点は、当初の課題だったエネルギー効率の悪さです。しかし、それは既に克服したようです」

 タランは、しばらく黙って、様々な角度から、考えを巡らせた。

「大彗星の内部には、ガトランティスの中隊規模の艦船を格納出来る構造になっているようです。この艦隊が出撃する際に、その部分は艦隊への影響が出ないような制御がされていると思います。つまり、その瞬間、そこがウィークポイントになる可能性があります」

 それまで黙っていたフラーケンが口を挟んだ。

「それで、どうやって攻撃する? 通常兵器で攻撃するのか? 内部に何か侵入させるのか?」

 タランは、その指摘について、考えてみた。確かに、ガトランティスの艦隊が出撃中に、攻撃が上手くいくとは思えなかった。

「それなら……。瞬間物質移送器で、内部にミサイルを飛び込ませたら上手く行くかもしれない」

 フラーケンも、それには納得していた。

「ふん。それは良さそうだな」

 ランハルトは、そのやり取りを聞いていて、決定的な欠点を指摘した。

「二人とも。俺たちが見ている目の前で、艦隊を出す瞬間があるならな。おまけに、その瞬間を逃さずにそれが出来るならな」

 タランとフラーケンは、その指摘にはっとしていた。

 それにしても……。

 タランは、彼が、慇懃無礼な態度なことに呆れていた。もとより、誰に対しても、そうなのだろう、と彼は思っていた。

 デスラーは、そのやり取りを黙って眺めていた。

 タランなら、そのうち、何か方策を思いつくだろう……。

 デスラーはマントを翻した。

「諸君。まずは、仲間と共にサレザー系に行ってみようじゃないか。サレザー系近傍の星系で、我々の同士に集結するように連絡してくれ。それから、タラン。済まないが、良い案がないか、引き続き検討して欲しい」

「はっ!」

「行こう。我々の母なる星、ガミラスへ」

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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