宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国編   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国編」です。


白色彗星帝国編23 決戦

 白色彗星は、ガミラス星とイスカンダル星を目前にして停止していた。

 ガミラス本星周辺を取り巻くガミラス艦隊は、一切の攻撃もせず、ただそこにいて、白色彗星と対峙していた。

 白色彗星から、ガミラス星とイスカンダル星に向けた映像通信が入っていた。映像には、バルゼー提督の姿が不気味に映っていた。

「私は、ガトランティス帝国第七機動艦隊のバルゼー提督である。我が全能なるガトランティス大帝ズォーダーの命により、汝らガミラスとイスカンダルの民に告ぐ。降伏か死か、選択する時が来た」

 その映像は、ガミラス艦隊はもちろん、バレラスにも届いており、ガミラス臣民もバルゼーの演説を見ていた。皆、怯えきった様子だった。

 イスカンダルでは、スターシャとユリーシャもその演説を見ていた。

「お姉様……」

 ユリーシャは、不安げな顔をしていたが、スターシャは、無表情で何も答えなかった。

 ディッツ提督は、苦み走った顔で映像を見ていた。

「ヤマトはどうなっている?」

 ディッツに聞かれたゼルグート級の艦長が答えた。

「まだ、乗組員が乗艦中で、発進準備を進めている最中です」

 ガデル・タランは、同じように、その映像を見ていた。彼も、ヤマトが発進するのを固唾を飲んで見守っていた。

「ディッツ提督、ヤマトが発進するまで、時間稼ぎが必要だ」

 ディッツ提督は、口を開けたまま、タランを見つめた。大きくため息をついて、彼は言った。

「……いいでしょう。少々、いやらしい手段となりますが」

 ディッツ提督は、通信用のマイクを掴んだ。

「私は、ガミラス帝国軍総司令官のディッツ提督だ。貴官の選択について、交渉を求めたい」

 バルゼーは、その通信に反応した。

「汝らガミラス人とイスカンダル人は、我が帝国の奴隷となるか、死かを選択出来る。今すぐにその回答をせよ。我々は、交渉はしない」

 ディッツ提督は、困惑してタランを見た。そして、周りのガミラス士官たちを見回した。皆、彼がこれから言うことに怯えているようだった。

「……いいだろう。我々ガミラスは、ここで降伏を宣言する。貴官の艦隊を、我が帝都バレラスに招待し、そこで、申し出を受諾する」

 バルゼーは、それを聞いて高笑いをした。

「良い判断だ。これより我が艦隊を、ガミラス星に差し向ける。そこで、会おう」

 しかし、バルゼーは、もう一つの惑星に目を向けた。

「イスカンダルはどうか。今すぐに答えよ」

 イスカンダルは沈黙したまま、何の反応もない。

 タランは、通信士に怒鳴った。

「スターシャ女王はどうした!? 今すぐに、連絡をとれ!」

「その必要はありません」

 そのスターシャは、ようやく通信に答えた。音声だけの通信だった。

「スターシャ女王に告げる。奴隷か、死かを今すぐに選べ」

「私たちは、奴隷にはなりません。もし、死を選べということでしたら、どうぞお好きな様になさってください」

「なるほど。それがイスカンダルの回答か。わかった。ガミラスにも、イスカンダルにも、我が艦隊を差し向ける。スターシャ女王は死を選択した。これより、我が艦隊が攻撃を加える。それを大人しく受け入れるがいい」

 ディッツ提督は、そこに慌てて口を挟んだ。

「バルゼー提督。イスカンダルは、女王とその妹の二人しかいない星だ。私が、これから女王の説得をし、迎えを差し向けるので、暫し時間を頂けないか」

 バルゼーは、その申し出を考えた。イスカンダルは、出来れば無傷で占領したかった。ガミラス軍さえ邪魔しなければ、少し待つぐらいは、別に問題はないと考えた。

「汝の申し出を受け入れよう。では、貴国に我が艦隊を差し向ける。抵抗せず、大人しくこれを受け入れよ」

 ディッツ提督は、通信を切った。

「タラン大臣。これで、奴等の艦隊がバレラスに降りてくる。少しは時間を稼げたと思うが」

「それで、降伏宣言とはな。もう少し良い案はなかったのかね?」

「さっきの会話、それ以外の選択肢はなかったと思うが? 選択を誤れば、すぐ様攻撃をされただろう。その瞬間に我がガミラスは終わりだ」

 

 その頃、ヤマトは発進準備をほぼ完了していた。土方が、古代の横の艦長席に立ち、艦内通信のマイクを掴んで全員に呼び掛けた。その横にメルダも立っており、土方の話を一緒に聞いていた。

「諸君! これまで、我々は、ガトランティスとの交戦を極力控える方針でやって来た。しかし、ガミラスのクーデターで監禁されている間に事態は急変した。ガトランティスが目前に迫っており、艦の防衛、及び、ガミラス並びにイスカンダルの防衛の為、やむを得ず交戦を余儀なくされた状況となっている。これより、波動砲を含む、全ての兵装を無制限に使用することを許可する! 存分に戦って欲しい! 私からは以上だ」

 メルダは、土方からそのマイクを受け取ると、続けて話した。

「ガミラス帝国軍のメルダ・ディッツ少尉である。私からも、ガミラス人を代表して言わせてくれ。クーデターで、一度は失った信頼だが、我々は、必ず友人となれる。そして、これから、手を取り合って、一緒に歩んで行けると私は信じる。どうか、我々のガミラス星を守るのを手伝って欲しい。以上だ」

 古代は、メルダから最後にマイクを受け取った。

「諸君! これより、ヤマトとガミラス星、そしてイスカンダル星の防衛の為、出撃する! 全力で、この任務を成功させよう! 艦長より以上」

 通信を切った古代は、島を見た。その島は、航海長席で座ったまま、左腕を突き出して、親指を立てた。

「よし、発進させろ!」

「了解。ヤマト、発進します」

 ヤマトは、艦底部のロケットを噴射し、ガミラス港から垂直に上昇し、波動エンジンを咆哮させた。水平翼を展開したヤマトは、艦首を上げ、急角度で上昇し始めた。

「北野、波動砲発射用意!」

「了解、波動砲発射準備プロセスを開始します」

 

 ディッツ提督の降伏宣言を聞いて傷心していたバレラスの人々は、ヤマトが上昇して行くのを目撃した。

「見ろ! テロンの船が行く!」

「ヤマトだ!」

「我々を救ってくれたヤマトが、またやってくれるぞ!」

 バレラスの人々の悲鳴のような歓声が上がった。

 

 その頃、白色彗星の後方にいた、ゴーランド艦隊の一部の艦が、ガミラス星の帝都バレラスに降下するため、前進を始めていた。

 ディッツ提督の座乗する旗艦では、ヤマトの動向を確認していた。

「ヤマトはまだか!」

「来ました! ヤマトがこちらに向かってきます!」

 

「見ろ! 大彗星だ! こんな近くにいるぞ!」

太田は、その様子をスクリーンにも出した。肉眼で目撃出来るほど、白色彗星はすぐ傍に漂っていた。

「大彗星の正面に、ガトランティス艦隊! ミサイル艦十、駆逐艦五、空母三!」

 レーダーを確認した雪が、報告した。その間も、北野は、波動砲発射準備を進めていた。

「ターゲットスコープ、オープン。電影クロスゲージ明度二十。目標、敵大彗星。セーフティロック解除」

 北野が見つめるターゲットスコープには、白色彗星が一杯に映っていた。

「エネルギー充填、百二十パーセント」

 山崎の報告と共に、波動砲のエネルギーが充填される音が艦内に大きく響いていた。

「発射十秒前、対ショック、対閃光防御」

 艦橋の全員が、対閃光鏡を装着した。そこにいた、メルダと土方にも対閃光鏡が配られ、彼らも装着した。そして、南部がカウントダウンを始めた。

「十、九、八、七……」

 

 バルゼー提督は、ガミラス艦隊に不穏な動きがあるのに気が付いた。

「あれは、先程のテロンの船ではないか? どうするつもりか、見せて貰おう。我が白色彗星に一発でも攻撃をしてきたら、降伏宣言は嘘だと判断し、ガミラスに進撃を開始しろ!」

 

「……三、二、一、発射!」

 南部の号令で、北野は波動砲のトリガーを引いた。

 その瞬間、ヤマトの波動砲口に光の球が形成され、それが大きく膨れ上がった。そして、瞼を焼く閃光が煌めいた。

 轟音と共に波動砲が発射され、次元の揺らぎが空間を切り裂くように、真っ直ぐに前方に突き進んだ。その通り道に存在したガトランティス艦隊は、一瞬で蒸発し、更に白色彗星に突き進む。

 バルゼーは、その強大なエネルギーが自らに向かって来る様子を、コンマ何秒かの間だけ認識したが、それ以上、何か考える間もなかった。

 波動砲は、白色彗星の中心を貫いた。その中心に向かって白色彗星は崩壊を始め、一瞬の間の後、大爆発を起こした。

 

「やったぞ!」

「やった!」

 タランとディッツ提督は、その光景に驚喜した。そして、それも束の間、ディッツ提督は、全艦隊に通信を送った。

「大彗星の撃破に成功した。あれが無ければ、ガトランティスなど恐れる必要は無い! 全艦、残存艦隊を殲滅するぞ!」

 

 ヤマトでも、白色彗星撃破を確認して、艦内に歓声が上がっていた。艦長席から立ち上がってその様子を見ていた古代に、メルダが抱きついていた。

「古代! 感謝するぞ!」

 古代も嬉しくて、思わずメルダと抱き合った。しかし、その目の前に雪が立っていて、睨んでいるのが見えた。古代は、すぐにメルダを体から引き離すと、大きく咳払いをした。

 

 イスカンダルでも、ユリーシャが、思わずスターシャに抱きついていた。

「お姉様! 波動エネルギーの兵器だけど……今は怒ってはいけないところだよ!」

 スターシャも微笑を浮かべていた。

「わかっています……」

 

 バレラスでも、白色彗星撃破の映像が映っており、市民が歓声を上げていた。

「ヤマトがやったぞ!」

「またやってくれた!」

「テロンは、救世主だ!」

 

 ガミラス艦隊は、目の前のゴーランド提督の艦隊を殲滅すべく、そこに向かって突進していた。しかし、ゴーランド艦隊は、そこから動く様子もなく、全艦隊が停船していた。

 ディッツ提督は、それに気づいて全艦隊に停船命令を出した。喜びのあまり、満面の笑顔になっていたタランは、彼を訝しげに見つめた。

「一体、どうした?」

 ディッツ提督は、険しい表情でガトランティス艦隊を睨んでいた。

「……おかしい。何故奴らは動かんのだ。嫌な予感がする」

 そのディッツ提督の予感は、的中した。

 

 ついさっきまで白色彗星が爆発していた場所に、何か大きなものがワープアウトしようとしていた。

 そこにワープアウトした物体が姿を表した。それは、先程撃破したはずの、白色彗星だった。

 再び、ガミラス艦隊やバレラス、イスカンダルを含む全通信チャンネルに映像通信が送られてきた。

 そこに映る人物から、大きな高笑いが聞こえていた。その笑いは収まらず、暫くの間続いていた。

「……私が、ガトランティス帝国の大帝ズォーダーだ。先程の白色彗星の撃破、よくやったと褒めてやろう」

 それを聞いた市民が、ガミラス艦隊が、ヤマトが、皆、固唾を飲んでその映像を見つめた。

「白色彗星が、一つしか無いと思っていたようだね? 残念だったな。先程の大砲だが、もう一度撃てるのかね?」

 ズォーダーは、再び大きな高笑いをしている。

 

 ヤマトに、ディッツ提督から通信が入っていた。

「古代艦長。波動砲は、すぐにもう一発撃てるか?」

 古代は真っ青な顔をしていた。彼に代わって真田が回答した。

「ディッツ提督。波動砲は、連射することが出来ない。波動エネルギーを、一度全て放出するため、一定時間のチャージが、少なくとも三十分は必要だ」

 ディッツ提督は、衝撃を受けた。

 何だと……。それでは……。

 古代の横にいたメルダも、顔面が蒼白になっていた。

 古代は、歯を食い縛って、その隙間から声を出した。

「……間に合わない」

 

 ズォーダーは、冷酷に指示を出した。

「ガミラス星に進撃しろ! イスカンダルは、ガミラスを滅ぼしてから、占領する」

 白色彗星は、ゆっくりと動き出した。

 

「大彗星が動き出しました!」

 太田が報告した。しかし、第一艦橋は静まり返っていた。

 どうすれば……

 古代は、対策を必死に考えた。しかし、すぐには、何も思い付かなかった。

 真田は、古代の傍にやって来た。いつも冷静な真田が、険しい表情をしている。

「古代。我々は、この星系を今すぐに脱出して、退避すべきだ。バレラスに残して来たライアン外務長官は、気の毒だが、救助に向かう時間がもう無いと思う」

 メルダは、真田に掴みかかった。

「何か! 何か無いのか! あなたはテロンで一番の科学者なんだろう? 頼む、何か方法があると言ってくれ……!」

 メルダは、力無く、その場に崩れ落ちた。

 

「ずいぶんと、手間をかけさせられたな」

 ズォーダーは、傍にいたサーベラーに、酌をさせていた。

「でも、これでやっとガミラスも終わり」

「お前も飲むがいい。祝杯だ」

「ありがとうございます、大帝」

 

 タランは、絶望的な顔で、白色彗星が接近する様を眺めていた。一方、ディッツ提督は、せめて少しでも艦隊を生き残らせる為と、必死に退避の指示を出していた。

 その頃、バレラスでは、市民の悲鳴と泣き声が上がっていた。監禁されていたヒスも、絶望的な表情をしていた。その隣にいたバレルは、その空を睨んで黙って佇んでいた。そんな中でも、ライアンは冷静だった。彼は、諦めの気持ちが強かったのだ。彼は、そっと独り言を呟いた。

「どこでボタンをかけ違えたのやら。私は、こんなところにいるはずじゃ無かったんだが……」

 

 皆が絶望的になっていた時、白色彗星の目前にワープアウトする艦隊があった。

 それは、デスラー率いる親衛隊と反乱軍の混成艦隊だった。いつの間にか数が大きく増え、百隻以上の規模の艦隊を引き連れていた。

 ディッツ提督は、それに驚いていた。

「あれは……デスラー総統……?」

 タランは、それを見て絶望感を強めていた。

「何故だ……。滅びる我々を、嘲笑いに来たのか……」

 

 ヤマトでも、デスラー総統の艦隊が現れたことに気が付き、それを固唾を呑んで見守っていた。

 古代の横に立っていたメルダは、その光景を信じられない、といった面持ちで見つめていた。

「デスラー総統……? 我々を、助けに来てくれたのか……?」

 古代も、メルダと顔を見合わせて、不安そうな彼女に言った。

「……きっとそうに違いない。彼らを信じてみよう」

 

 デスラーが乗艦するデウスーラのコアシップの艦橋には、デスラーと、ヴェルテ・タランの姿があった。そして、もう一人、ランハルト・デスラーの姿もあった。

「ランハルト。ちょっとタイミングがぎりぎり過ぎないかね?」

「仕方がありません。しかし、間に合ってよかった」

「……時に、タラン」

「何でしょう」

「どうして、コアシップしか作ってくれなかったのかね? 今こそ、デスラー砲があれば良かったんだが」

「未完成だったとは言え、ガトランティスに波動砲の技術を渡す訳にはいきませんでしたから。これは、以前お話しした通りです」

「そうだったかね?」

 デスラーは、目を閉じて微笑した。そして、目を見開くと、指示を出した。

「デスラー魚雷、発射……!」

 デウスーラの艦首から、一発の魚雷が発射された。

「タラン」

 デスラーは、タランの方を向いて促した。

「はっ!」

 タランは、ガミラス式敬礼で答えると、通信機のマイクを掴んだ。

「間もなく、魚雷がそっちに行く。準備してくれ」

 

「了解」

 フラーケンは、その通信に返答した。彼の乗艦する次元潜航艦は、その時、異次元に潜んでいた。

 副長のハイニは、先程から真っ青な顔をしていた。

「た、隊長、は、早くあれをどっかにやってくれ!」

「そんなに心配するな。タラン閣下が、異次元空間では活動が弱まると言っていただろう」

「そ、そんなこと言ったってよ。心臓に悪りいよ、あれは……」

「わかった、わかった。今、離す」

 次元潜航艦の後方に、特殊な電磁ネットに覆われた、巨大な黒い物体があった。それを、牽引ビームで引いている。

 

 タランは、先程発射した魚雷を、予定の位置で自爆させるよう指示をした。デスラー魚雷は、白色彗星の近くまで航行すると、そこで小さな爆発を起こして分解し、中に収納されていた岩石を粉砕した粉を散布した。

「今だ!」

 タランの連絡で、フラーケンが動いた。

「浮上!」

「お、おう。次元タンクブローだ、こら!」

 次元潜航艦は、ゆっくりと通常空間に浮上した。牽引していた黒い巨大な物体が、通常空間に一緒に現れた。

「電磁ネット離せ! 急速潜航!」

 次元潜航艦は、牽引していた物体を離すと、急速に潜航していった。

 その黒い物体は、電磁ネットから抜け出して、デスラー魚雷が散布した粉に寄り付いて、次元潜航艦を追いかけることはしなかった。しかし、すぐ近くにあった白色彗星の巨大なエネルギーを発見すると、急激に大きさを増して、そちらの方へ向かっていった。

 

「な、何だ? あれは」

 ズォーダーは、目の前の異変に気が付いていた。そこには、白色彗星よりもずっと大きな黒い影があった。それは、デスラーたちが、ミルベリア星系を訪れて採取した、最も大きなガス状生命体だった。

 ガス生命体は、大きく広がると、白色彗星に向かって襲いかかった。強大なエネルギーを求めるガス生命体にとって、白色彗星は最高の獲物だった。

「こんなもので、我が白色彗星をどうにか出来ると思ったのか?」

 ズォーダーは、余裕を持ってこれを見ていた。そして、ガス生命体は、白色彗星に逆に飲み込まれていった。しかし、稲妻のような光を発して、突然サイズが大きくなり、一気に白色彗星全体を覆い尽くした。白色彗星とガス生命体が絡み合い、黒と白の光が当たりを眩しく照らしている。

 

 タランは、その様子を見て言った。

「どうやら、効果があったようです。ミルベリア星系で我々の同士の艦隊が落ち合った時に、ちょうど巨大なあれを発見して、もしかしたら使えるんじゃないかと思いました」

「ところで、さっき魚雷で撒いたのは何だね?」

「ミルベリア星系にありふれた岩石です。大きなエネルギーが無いときは、あれを好んで摂取しているのがわかっています。次元潜航艦から引き離すときに餌が必要と思いましたので」

 

 白色彗星は、徐々に崩壊していき、外殻が分解を始めた。そして、分解した外殻にとりついたガス生命体は、眩い大きな閃光と共に、そのまま一緒に消滅した。

 

 艦外の光りが眩しく輝いて、白色彗星が崩壊している。ガデル・タランは、その光景を信じられないといった顔で眺めていた。

「や、やったのか?」

 ディッツ提督も、それを呆気に取られて見ていた。

「デスラー総統は、我々を助けに来てくれたのか?」

 

 バレラスでは、市民が歓声を上げていた。

「デスラー総統が、あれをやったらしいぞ」

「デスラー総統だと」

「信じられない!」

 今度は、ガーレ・デスラーの大合唱が始まっていた。

 監禁されていたバレルも、ガミラス臣民の歓声を聞き、外を眺めていた。

「ランハルトが、間に合ってくれたか」

 

「お前が知らせてくれたから、間に合った。感謝するよ、ランハルト」

 デスラーは、ランハルトを見て笑みを浮かべていた。ランハルトも、微笑んでいた。

「礼なら、バレル大臣に……」

 

「やった!」

「あんな方法があったとは!」

 ヤマトでも、デスラー総統の艦隊による白色彗星撃破の様子に歓声が上がっていた。

「……よ、良かった。本当に」

 先ほどとは打って変わって、メルダは放心しているようだった。

 しかし、そんな中で、雪はレーダーを凝視していた。

「艦長代理! 白色彗星があった場所に、まだ何かあります!」

 古代は、まさかと思いつつ、雪に確認した。

「もう少し詳細はわかるか?」

「何か……大きな物体があります!」

 

 白色彗星撃破の喜びに湧いていた人々も、姿を現そうとしているその物体を目撃して、静まり返っていた。

 

 そこに現れたのは、巨大な戦艦だった。

 全長が十キロ程もあり、その艦体には、無数の砲台やミサイルが搭載されていた。

 

「あ……あんな馬鹿でかいものが中に入ってたっていうのかよ!」

 南部が、大きな声で叫んでいた。スクリーンに映る巨大な戦艦を見て、ヤマトの第一艦橋は騒然となった。

 古代も、それを見て唖然としていた。

「……いったい、どうやったら彼らを倒せるんだ。これじゃ、きりがない」

 雪は、古代の言っていることに、ふと、何か思い当たることがあった。しかし、レーダーに注意する必要があり、すぐには考えがまとまらなかった。

 

 再び、映像通信回線を通じて、ズォーダーの高笑いが響いた。

「ここまでやるとは思わなかったぞ。本当によくやった。デスラー総統。君は、ガミラスには未練が無いのだと思っていたが」

 デスラーは、その通信に直接答えた。

「何、ちょっとした気紛れだよ。大帝。残念ながら、私にも故郷を思う気持ちが、少しは残っていたようだ。あなたには、それが微塵も無いようだったがね」

 ズォーダーは、それに答えた。

「心外だな。そんなことはないぞ。ただ、ちょっと長い船旅で気持ちが薄れてしまっただけだ」

 デスラーは、首のところで手を動かし、通信を切るように指示をした。

「すぐにディッツ提督に連絡を入れたまえ。協力してあれを片付ける」

「はっ」

 タランは、即座にディッツ提督に通信で呼び掛けた。

 

 通信を受けたガミラス旗艦では、ディッツ提督が驚きと共に要請を受け入れた。

 本当に、デスラー総統が助けに来てくれたとは……。

 ディッツ提督は、複雑な思いであったが、これ以上無い援軍だと考えていた。そして、逆にガデル・タランは、通信でデスラーの艦に呼び掛けた。

「兄さん。そこにいるのか?」

 少し間があって回答があった。

「ああ。もうそちらには、私を信用してくれる者はいなくなったみたいだからね」

「違うんだ、兄さん」

「別にお前を恨んでいる訳じゃない。お前の立場では仕方がなかったんだろう? わかっているさ」

「すまない……」

「そんな事より、お前は全軍の指揮官だろう? しっかりやれよ」

 ガデル・タランは、兄の言葉に、胸がつまっていた。

 

 ヤマトとガミラス正規軍、そしてデスラー艦隊が、攻撃準備を整える中、先にガトランティス艦隊が動いた。超巨大戦艦の周囲を、ゴーランド艦隊が取り囲んでいた。

 超巨大戦艦は、艦体の下部に格納されていた、巨大な砲塔をゆっくりと出して、それをガミラスに向けた。そして、その超巨大戦艦の主砲は、特に警告を発することなく、すぐさま砲撃を開始した。ガミラス星には、砲から放たれた強力なエネルギーが地表に到達し、そこに大きな火の玉が生まれた。主砲は、続々と連射を始め、ガミラスの地表が宇宙空間から見ても、はっきりとした黒とオレンジの跡が徐々に覆っていった。かろうじて帝都バレラスは被害を免れていたが、砲撃が命中するのも、時間の問題だった。

 その砲撃は、一旦止むと、今度はサーベラーが映像通信で呼びかけた。

「これは、我が全能なるガトランティスのズォーダー大帝の神罰である! 降伏宣言を反故にしたことを、後悔するがいい!」

 その言葉が続く最中、その砲門は、今度はイスカンダルに向いた。

 イスカンダルへの砲撃が開始されると、そのほとんどが海に覆われたイスカンダルの地表に、黒とオレンジの跡がどんどん覆っていった。そして、イスカンダルでは、その攻撃の影響で巨大な津波が発生していた。

 ユリーシャは、津波が迫ってくるのを確認した。

「お姉様! 見て、海が荒れ狂ってる!」

 スターシャは、娘のサーシャを抱き締めてうずくまっていた。サーシャは、拙い言葉で「ママ、あれはなあに」と無邪気に聞いてくる。

「ごめんなさい。サーシャ。あれはとても危ないのよ」

 この子だけは、何とかしなければ……。

 スターシャは、とうとう、宮殿に備えられている脱出挺に向かうことを決意した。

 

 デスラーは、イスカンダルの地表が焼かれていく様子を見て、冷静でいられなくなっていた。

 このままでは……スターシャが……

 デスラーは、大声でタランに怒鳴り付けた。

「タラン! 全艦隊を持って、あの攻撃を止めさせろ!」

 その号令で、ゲールが率いるガミラス艦隊と、カーゼット率いる親衛隊艦隊が、超巨大戦艦に向けて突撃を開始した。

 しかし、その前には、ゴーランド艦隊が立ちはだかった。デスラーの艦隊は、ゴーランド艦隊と激しい戦闘を行っていたが、超巨大戦艦に近づくことも出来なかった。

 デスラー艦隊の様子を見たディッツ提督も、全軍に指令を出した。

「全艦隊に告ぐ! 今度こそ、これが最後の戦いだ! ガトランティスを殲滅しろ!」

 そうして、残存していたガミラス軍の全艦隊が突撃した。ガミラス軍の一部の艦は、ゴーランド艦隊を突破して、超巨大戦艦に近づいた。しかし、超巨大戦艦の火力は凄まじく、射程圏内に近付いただけで蜂の巣になって撃沈されていた。

 バーガーも、その戦いに加わっていたが、超巨大戦艦に砲撃される艦の悲劇を見て言った。

「無理だろ、あんなの」

 白色彗星を撃破したとは言え、とてつもない火力を前に、ガミラス軍全体に、絶望感が広がっていた。

 その間も超巨大戦艦は、主砲で砲撃を続けており、イスカンダルの首都が被害を受けるのは、もう時間の問題だった。

 

 ユリーシャは、津波より先に、空から降ってくる攻撃が、次第に近づいて来ているのに気が付いた。

「お姉様、もう時間がない! 今すぐ脱出しましょう!」

 スターシャも、脱出挺の中で空を見上げていた。

「ユリーシャ、この子をお願い。脱出挺の発進準備をします」

 

 デスラーは、スターシャが住む宮殿に攻撃が迫っているのを見て心の中で叫んだ。

 ……スターシャが、やられる!

 デスラーは、咄嗟に思い付いた指示を叫んだ。

「タラン! 今すぐジャンプしてあの砲門へ突っ込め!」

「そ、総統、それは自殺行為です!」

 デスラーは、血走った目でタランを見つめた。

「頼む、タラン……」

 デスラーは、言い淀んだ。しかし、決意してそれを言った。

「私は、スターシャを愛しているのだよ」

 タランは躊躇したが、その彼の告白は、タランの心を揺るがした。これまでも、彼の本当の気持ちを聞かされ、一度は離れたのに、迷いながらも再びここに戻って来てしまった。

 何を迷う必要があるのか。

 最早、ガミラスにも居場所は無く、デスラーが彼の全てだった。

 タランは、そこで決断した。

「緊急ジャンプを敢行する! 目標、敵超巨大戦艦主砲塔!」

「待て、デスラー総統!」

 ランハルトは、それを止めようと叫んだ。しかし、その声も虚しく、命令は実行された。

 デウスーラは、ワープで超巨大戦艦の砲口の目前に出現し、そのまま激突した。砲は大破し、デウスーラも大破して、砲門から抜けないほど食い込んでいた。

 デウスーラ艦内の乗員も、その激突の衝撃で、軒並み重症を負うか意識を失っていた。デスラーや、タラン、ランハルトも血まみれになって倒れていた。デウスーラの艦橋は、炎と煙が充満し、あちこちの設備が崩壊していた。

 デスラーは、倒れたまま、頭だけを動かしてタランに言った。

「タラン……ヤマトに連絡して、この砲塔の破損箇所に攻撃を加えるように伝えてくれ……あの船なら、ここに無傷で近づくことができるはずだ……」

 かろうじて動けたタランとランハルトが起き上がった。ランハルトは、デスラーの肩を支えて立ち上がらせた。

「皆、退艦するぞ!」

 タランは、それを無視して、火花が散る破損した通信機を操作していた。

「何をやっている」

 タランは、手を止めずに答えた。

「デスラー総統の最後の命令を実行する」

 ランハルトは、唖然としていた。

 なぜそんなにもこの叔父の言うことを皆が聞くのか、理解が出来なかった。

 そうしているうちに、タランは、破損した通信機で、ヤマトとの通信に成功していた。

「ヤマトに告ぐ。デスラー総統からの依頼だ。どうか聞き入れて欲しい。我々は、超巨大戦艦の砲塔に艦をぶつけて破壊した。今すぐ、この砲塔の破損箇所に砲撃を加えて欲しい。内部からこの艦を破壊出来るかも知れない」

 

 スターシャは、脱出挺の発進準備をしていた手を止めた。ふと、攻撃が止んだことに気が付いた。

「アベルト……?」

 彼女の脳裏に、デスラーが血まみれになっている姿が浮かんだ。スターシャは、急いで宇宙空間を観測する衛星を起動し、超巨大戦艦の方向を撮影した。

 その映像には、デスラーの乗艦デウスーラが、超巨大戦艦の砲塔に突っ込んでいるのが映っていた。スターシャは、驚きのあまり、口元を押さえた。

「あ、あれは、アベルトの船……。アベルトが、あれをやったと言うの?」

 スターシャは、はっと気が付いた。

「まさか……私の為に……」

 

 ヤマトでは、目の前の宙域でガトランティス軍とガミラス軍の凄まじい激戦が繰り広げられているのを眺めていた。彼らは、出鼻を挫かれたまま、ただ、その場に漂っていた。

 そんな中、相原が、タランからの連絡を古代に伝えた。

「艦長代理。デスラー総統の艦が、超巨大戦艦の砲に突っ込んだそうです。その破損した開口部にヤマトで砲撃して欲しいと要請されました。内部から破壊して欲しいとのことです」

 古代は、砲撃が止んだ原因に衝撃を受けた。

 デスラーは、いったい何故そこまでしたのか……?

 古代には、デスラーがそこまでする理由が分からなかった。しかし、要請があった通り、確かにそこは、あの超巨大戦艦のウィークポイントに違いなかった。

「真田さん、デスラー総統の要請を受諾します。伝えられた攻撃箇所に、砲撃を加えに行きましょう!」

 真田が、頷いた。

「わかった。いつでも波動防壁を展開できるよう、準備する」

「島! 全速発進! 超巨大戦艦の艦底部に向かう!」

「了解!」

 ヤマトは、波動エンジンを咆哮させ、全速力で超巨大戦艦へ突進した。

 

 ズォーダーは、デスラーがその様な無謀なことをするのは予想外だった。

「ええい、あの船を切り離せ。主砲ごと投棄しろ!」

 超巨大戦艦は、主砲を切り離し、デウスーラは砲塔と共に、ゆっくりと離れ始めた。

「十分に距離が離れたら、あの船に攻撃を加えて撃沈しろ」

「ズォーダー大帝、ここに接近する艦がいます! テロンの船です!」

 ズォーダーは、ヤマトが全速力で接近する様子を捉えたスクリーンを凝視した。自艦からの総攻撃を行っているにも関わらず、全く速度を落とすことなく接近するのを目撃した。

 ……いったい、あの小さな船はなんなのだ。

 我が白色彗星を一撃で撃破する強力な砲。

 超巨大戦艦の火力をもってしても止められない防御。

 あの艦は、非常に危険だ……。

「まだ、あの大砲は使えないはずだったな? このまま砲撃をテロン船に集中させろ!」

 

 ヤマトは、全速力で超巨大戦艦の艦底部までやって来た。そして、すぐ近くに、デスラーが大破させた砲塔と、デウスーラが切り離されて漂っているのを確認した。

 超巨大戦艦からは、引き続き激しい攻撃を受けていたが、波動防壁がヤマトをここまで守っていた。

「北野、南部! これ以上は波動防壁が持たない。すぐに攻撃を開始しろ!」

「了解、精密射撃であの破損した開口部に集中砲撃を加える。自動追尾設定完了。北野! いつでもいいぞ!」

「了解! 全砲門開け!」

ヤマトの全砲門が、右舷上方に回頭し、その開口部に狙いをつけた。

「撃ちー方始め!」

 ヤマトの全砲門、そして、煙突ミサイルが全弾斉射を開始した。

 艦底部には、主砲が放ったビームが命中するのを手始めに、ヤマトが放ったすべての攻撃が、そこに集中して次々に命中していった。超巨大戦艦は、艦底部から大爆発を起こした。ヤマトの砲撃は、それでも止まずに続いていた。

 

「何としたことか!」

 サーベラーは、超巨大戦艦が大きな揺れを起こした為、その場に倒れ込んでいた。ズォーダーもまた、その場で膝をついていた。

「デスラーと、あのテロンの船がやってくれたな」

 ズォーダーは、怒り心頭に達していた。

「艦底部の隔壁を閉鎖しろ! それでもダメなら、艦体を分離しろ! この超巨大戦艦は、この程度で沈む船ではない!」

 

 艦底部の大爆発で、デウスーラは、吹き飛ばされ、超巨大戦艦から少し離れて宇宙を漂っていた。ヤマトも、もう波動防壁が限界を迎えていた。

 しかし、ヤマトの攻撃によって、超巨大戦艦からの攻撃が一時的に止んでいた。そこで、ヤマトもそこから離れ、コスモシーガルを飛ばしてデウスーラから生存者を救助し始めた。

 そして、デスラーとタラン、ランハルトら、デウスーラの乗組員の生存者が救助され、ヤマトに移乗していた。しかし、デスラーの怪我は酷く、息も絶え絶えの状態だった。

 完全に波動防壁が機能しなくなったヤマトは、全速力で超巨大戦艦から離れて行った。

 

 デスラーは、ランハルトに連れられてヤマトに乗り込むと、佐渡に簡単な応急処置を受け、ベッドで休むことも無く、ヤマトの第一艦橋にやって来た。ランハルトは比較的軽症で、そのデスラーの肩を支えていた。タランは、体のあちこちに傷を負っていたが、気丈に二人の後を追い、付き添っていた。

 メルダは、第一艦橋にやって来たデスラー達の姿を見て衝撃を受けていた。

「デスラー総統……酷い怪我だ。一体どうしてあんなことを……?」

 タランは、メルダに告げた。

「申し訳ないが、そっとしておいて欲しい。私からのお願いだ」

 メルダは、タランの優しげな表情を見て、何か大切なことだと悟り、それ以上は口にしなかった。

 デスラーは、艦長席の古代を見つけて、かすれた声で言った。

「……この艦の艦長は、確か君だったね」

「はい。私が、宇宙戦艦ヤマト艦長代理の古代進です」

 古代は、イスカンダルへの攻撃を止めさせたデスラーに敬意を持って対応すべきと思い、敬礼をした。デスラーは、目を閉じて、古代に語りかけた。

「先程は、助かったよ。私の要望に答えてくれて」

 古代は、そんなデスラーに状況を話した。

「デスラー総統。超巨大戦艦は、先程の攻撃で、艦底部に大きな損傷を負ったようだが、あの程度では、撃沈出来そうも無い。ヤマトも、波動防壁がしばらく使えなくなってしまったので、このままでは近づくことも難しい」

 デスラーは、それを黙って聞いていたが、少し間があってから、何か思い付いたようだった。

「古代艦長、済まないが、ディッツ提督に繋いでくれないか?」

 古代は、素直に頷いて相原に指示をした。すぐにスクリーンにディッツ提督の姿が映る。

「久しぶりだね。ディッツ提督」

「デスラー総統……酷い傷だ。休まれた方がよいのでは?」

 デスラーは、少し辛そうにしていたが、すぐに話を続けた。

「一つ、作戦を思い付いてね。昔のよしみで少し手伝ってくれないかね?」

 ディッツ提督は、一瞬躊躇したが、先程もデスラーに助けられたことを考え、少し期待をしてしまっていた。

「我々は、ガトランティス艦隊との決戦で忙しい。しかし、簡単なことであれば」

 彼も、デスラー総統の久しぶりの指示で、少し高揚していたのかも知れなかった。デスラーは、不適な笑みを浮かべた。

「なあに。本当に簡単なことだ」

 

「発艦準備急げ!」

 ディッツ直属の艦隊の戦闘空母の飛行甲板に、それが駐機していた。甲板作業員が、大急ぎで発艦準備をしていた。

「数年前に、ドメル将軍にこれを持っていくと言われた時には、どうするんだろうと思ったよ。使い方を後で聞いて、凄い発想だと思ったものだ」

 そこにあったのは、特殊削岩弾を積んだ航宙機だった。

 

「発艦!」

 特殊削岩弾を積んだ大きな航宙機は、ゆっくりと飛行甲板から飛び立った。そして、ディッツ提督のゼルグート級の艦の前まで飛行すると、そこに制止した。

 すぐに瞬間物質移送機が唸りを上げ、ワープウェーブが、それを包み込んだ。

 航宙機がワープアウトしたのは、超巨大戦艦の艦底部の先ほどの破損箇所だった。航宙機は、すぐに特殊削岩弾を撃ち出すと、反転してその場を離れた。しかし、超巨大戦艦はすぐに反応し、航宙機に攻撃が行われた。それは、跡形が無くなるほどの激しい砲火だった。

 しかし、特殊削岩弾は、ロケットに点火すると、高速で回転しながら、超巨大戦艦の艦底部の破損箇所に飛び込んで行った。

 

 超巨大戦艦の内部では、小さな衝撃があった。

「報告しろ!」

 ズォーダーが叫んだ。

「艦底部に、不発弾が飛び込んで来たようです!」

「不発弾だと?」

「はい。爆発せず、艦底部の破損箇所に突き刺さっています」

 ズォーダーは、何か嫌な予感がした。

「誰か、急いで確認に行かせろ!」

 

 その頃、特殊削岩弾は、ドリルを高速に回転させて、隔壁を押し広げて、徐々に内部に進入していった。

 

 その頃、ヤマトでは――。

 

「古代艦長。何か飲み物はないかね?」

 デスラーは、酒が飲みたい気分だった。

「食堂行けばありますが」

 古代は怪訝な顔で答えた。

 デスラーは、怪我で苦しそうにしながらも、いつもの調子を崩そうとしなかった。

「タラン。テロンの船には、祝杯をあげる習慣が無いらしい」

「総統、申し訳ありません。次は、準備しておくように言っておきます」

 タランも、デスラーに冗談を返すのが最近は楽しくなっていた。

「さっきのディッツ提督への指示は、いったい何だったんだ?」

 ランハルトは、デスラーに尋ねた。

「なぁに、私の忠実で優秀だった部下の真似をしただけだ」

 

 超巨大戦艦では、それが艦の内部を突き進んでいるのが判明して、慌ててズォーダーに報告が上がった。

「何だと!? まさか、不発弾ではなかったというのか!?」

「そのようです。中心部の動力炉にこのままだと到達してしまいます。すぐに退艦した方がよいと思います!」

「そ、そんな馬鹿な……。あんなもので、この超巨大戦艦が沈む訳は……」

 その時、超巨大戦艦は、内部で特殊削岩弾が爆発を起こしていた。その影響で艦の動力炉が大きな爆発を起こし、艦内を走るエネルギー供給管を通じて、全体に炎が広がり、艦体のあちこちで炎が吹き出した。

 そして、艦全体が分解し始め、大爆発を起こした。

 

「やった!」

「今度こそ、やったぞ!」

 超巨大戦艦が爆発している様子を目撃した人々は、喜びを爆発させていた。

 デスラーも、安堵して口元を緩ませた。

「どうやら、本当に祝杯をあげるべきじゃないかね?」

 

 ディッツ提督は、特殊削岩弾による攻撃が成功したとの知らせに、それまで緊張をし続けていた疲れが吹き飛んだ。

「デスラー総統の作戦は成功だ!」

 ディッツ提督は、思わず笑いだしていた。

 デスラー総統が二度までもガミラスを救ってくれた。

 彼は、何ということだ、と思いつつも、彼への忠誠を誓っていた頃の気持ちが甦って来ていた。

 ガデル・タランは、その場で座り込んだ。

「や、やっと終わったのか……」

 ディッツ提督は、気を引き締め直した。

「タラン大臣。まだガトランティス艦隊が多数残っている。しかし、これでようやく、普通に戦うことが出来る」

 

 その時ズォーダーは、超巨大戦艦から、艦橋の一部を切り離して脱出に成功していた。この様な屈辱を受けるのは、長いガトランティスの旅の中でも初めての経験だった。

「このままで、済むと思うなよ」

 ズォーダーの目は、怒りに燃えていた。

 

 イスカンダルでは、激しい津波で、宮殿が揺れていた。

「お姉様、攻撃は止んだけど、やはり津波が収まるまで脱出しましょう。ヤマトに連絡したので、近くに来てもらったら、収容してもらいましょう」

 スターシャは、デスラーに会って話をしなければと思い、素直に言うことを聞くことにした。

「わかったわ」

 

 ディッツ提督率いるガミラス艦隊は、着実にゴーランド艦隊を撃破しており、戦いが間もなく終わろうとしていた。

「決着をつけるぞ! あの艦隊旗艦のミサイル艦を撃沈しろ!」

 ガミラス艦隊は、ゴーランドの座乗するミサイル艦を取り囲み、一斉砲撃で撃沈した。

 

「終わったか」

 空母ランベアに乗っていたバーガーも、艦体に大きな損傷を受けながらも、この激戦を生き残っていた。

「なぁ、皆……。俺は、ネレディアの無事を確かめに行きたいんだが……行ってもいいか?」

 艦の士官たちは、バーガーに向かって皆、笑顔で答えた。

「了解! エピドラの軌道方面に向かって発進します!」

 バーガーは、戦いが終わってほっとしつつも、ネレディアが生きているかが心配で堪らなかった。

 

 ヤマトは、ユリーシャからの通信を受けて、イスカンダルの軌道上に移動していた。イスカンダルは、荒れた海が収まる様子がまだ見られず、危険な状態だった。イスカンダルから飛び立った脱出挺が飛来すると、これをヤマトは無事収容した。

 ヤマトの艦橋に、スターシャとユリーシャ、そしてスターシャに抱き抱えられたサーシャが上がってきた。そのサーシャは、スターシャから雪が預かって抱いていた。

 スターシャは、ランハルトが支えてやっとのことで立っているデスラーの元へ歩み寄った。

「アベルト」

 スターシャは、デスラーの姿を見て、とても心配そうな表情をしていた。デスラーはと言えば、ランハルトの肩に掴まって、どうにか一人で立とうとしていた。

「久しぶりに君に会えたと言うのに、無様なところを見せることになって、すまないね」

「もう、あんな無茶なことはしないで」

「君の為に、つい、やってしまったのだよ」

 スターシャは、デスラーの顔に手を差し出して触れようとしたが、躊躇して、結局その手を元に戻した。

 スターシャは、横にいるランハルトの姿を見て、何か気が付いたようだった。

「あら。あなたもしや」

「アベルトの甥のランハルトです。覚えてらしたんですね」

「会ったのは、あなたがまだ小さかった時ね。面影があるわ。さすが家族ね。アベルトによく似ている」

 ユリーシャがランハルトに気が付いた。

「そういえば、前に一緒に遊んだことがあったね」

「ユリーシャ様。その節はご無礼をしました。幼い時のことなのでお許しを」

 ユリーシャは、自身の記憶を辿った。

「そうね。確かに無礼な言い方をする子供だったね。今でも、そうなんじゃないの?」

 ユリーシャは、首を傾げてランハルトを見つめた。

「これはこれは、大変失礼をしたようだ」

 雪は、ランハルトを見て、何か思い出していた。それに気づいたユリーシャは、雪と顔を見合わせた。

「初めて会った時に言われたの」

「「ガキめ。仕方ない。俺が遊んでやろう」」

 雪とユリーシャは、二人で声を合わせて言った。そして、二人は揃って笑いだした。

 ランハルトは、そう言われて、赤面していた。

「雪。もしかして、記憶、戻ったの?」

「ええ。あなたの記憶と一緒に」

「そうか。良かった。雪、これで本当にもう一人の私だね」

「そうみたい」

 古代は、スターシャに近づいて言った。

「スターシャさん。大変お久しぶりです。古代です」

 スターシャは、古代の名を聞いて、彼の兄、守のことを思い出していた。

「お久しぶりです。お元気そうで良かった」

 スターシャは、サーシャが誰の子かを古代に言うべきか迷ったが、言い淀んだ末、結局言うのを止めてしまった。

「スターシャさん。私たちは、あなたに謝らなければならないことが」

 スターシャは、すぐに何の事を言っているのかわかったが、古代が自分で話すのを待った。

「沖田艦長が、あなたとお約束して封印した波動砲、結局使うことになってしまいました」

 スターシャは、目を閉じて暫く間をおいた。

「古代さん。ガミラスの人々も、あなた方地球の人々も、平和に暮らす権利があります。その平和や、幸せと言うものは、自らの手で勝ち取るしかありません。あなた方が、あれの使い方を慎重に考えているのは、よく知っています。どうか、これからも、皆が幸せになるために使うように、心から祈っています」

 古代は、地球人、そしてヤマトでイスカンダルに旅した者が抱えて悩み続けた矛盾に答えを示され、万感の思いでスターシャに感謝した。

 

 バレラスでは、民衆がお祭り騒ぎをしていた。そんな中で、彼らはこの戦いのヒーローたちが誰なのかを見直し、そして祝福していた。

「テロンのヤマトは、やはり俺たちの救世主だ」

「デスラー総統って、本当はいい人だったんじゃないのか?」

「タラン国防相が、クーデターを起こさなかったら、俺たちは、おしまいだったかも知れない」

「でも、ヒス総統がいなかったら、私たちは、自由にものを言うことも出来なかったのよ」

 ヒスや閣僚たち、そしてライアンも、皆、ガデル・タランの指示で解放されることになり、皆で、遠巻きに民衆の騒ぎを見守っていた。ヒスは、バレルや他の閣僚と共に、ライアンと改めて握手を交わした。

「地球連邦政府の尽力に心から感謝します」

「こちらこそ。ガミラス軍の皆さんの活躍のお陰ですよ」

 ライアンは、ヒスを見つめて、本音を漏らした。

「ここだけの話、さっきは、来なきゃ良かった、と少し後悔しました。でも、今はとてもいい気分です。どうです? 皆で一杯やりませんか?」

 ライアンは、手の形でグラスに口をつける仕草をした。ヒスの側にいたバレルは、笑顔でそれに答えた。

「ぜひとも。私も同じ気分です」

 ライアンとバレルは笑いあった。ヒスは、少しだけ、一緒に笑っていたが、今回のことで、思うところがあり、バレルのように素直になれなかった。

 

 しかし、その影で、大団円を迎えたかに見えたその時、再び悪夢が訪れていた。

 

 ヤマトでは、雪が、サーシャを抱いていたため、西条未来がレーダー席についていた。楽しそうにイスカンダル人とガミラス人と地球人が触れ合う様子を見て、彼女もその輪に入りたかったが、任務を放棄する訳にもいかず、ちらちらと様子を見つつも、レーダーによる観測を続けていた。そして西条は、信じられないものがレーダーに映るのを確認した。

「艦長代理……」

 古代は、西条を振り返った。西条の顔が真っ青になっている。

「どうした?」

 西条は、もう一度レーダーを確認して、その報告をした。

「大彗星と思われる巨大な物体が現れました。レーダーには、反応が二つあります……」

 

 誰もが想像もしない事態が起こっていた。

 そこにいた全員が、戦いは終わったと思っていた。

 ガミラス星とイスカンダル星の近くに、白色彗星がワープアウトしていた。今度は、一度に二つの大彗星がそこにいた。

 再び、そこにいた全員が受け取れる全チャンネルに向けた映像通信が入ってきた。映っていたのは、ズォーダー大帝だった。先程のような余裕の高笑いは無く、ズォーダーは、鬼神のような怒りの表情だった。

「我がガトランティスに、これ程の屈辱を与えた汝らに告ぐ。ガミラス、イスカンダルは、この私がこの宇宙に存在する価値が無くなったと判断した。今ここで、その存在を終わらせる。お前たちが、後悔し、反省する時間を少しだけ与えよう」

 ズォーダーは、傍にいたサーベラーとゲーニッツに、指示をしたらイスカンダルに進撃するように言った。そして、もう一つの白色彗星に乗るラーゼラーにも同じように合図を待つように指示した。

 

 古代は、絶望感に打ちひしがれていたが、気を取り直して指示をした。

「北野、今ならもう波動砲が撃てるはずだ」

 北野は、我に返って返事をした。

「はい。波動砲発射準備を行います……」

 そして古代は、ちらとデスラーを見た。そのデスラーは、疲れた表情で言った。

「残念だが、もう手品の箱には何も入ってない」

 古代は、ゆっくりと頷いた。

 それはそうだろう。

 あのような奇跡は、そう何度も起こせるものじゃない。

「皆、聞いてくれ。まずは、一方の白色彗星を撃破する。もう一つは、今は良いアイデアが無い。それでも、僕たちはまだ諦めない。諦めちゃいけない。良い案があったら遠慮無く提案してくれ」

 そう言って、古代は艦長席に着いた。艦内では、誰も一言も発せず、静まり返っていた。

 すると、雪が、古代をじっと見つめていた。とても思い詰めた表情だった。そんな雪が、何か言おうとしている。古代は、敗北感で沈んでおり、彼女にかける言葉が無かった。

 その雪が、口を開いた。

「艦長代理。いいえ、古代くん」

 古代は、皆の前だったが、優しく返事をした。

「何だい、雪」

 雪は、何か決意をしたようだった。

「わかったの。私たちには、まだ使っていない武器が残っている」

 古代は、困惑した。雪は何を言おうとしているのか、見当もつかなかった。

「僕たちにはもう、波動砲しか残されていない」

 雪は首を振った。

「そうじゃない」

 古代は、理解できず、困り果てた。

「心よ」

「心?」

 雪が、続けた。

「心だけが、邪悪な暴力に立ち向かえる最後の武器。波動砲は、撃ってはいけない」

 古代は、雪に問いただそうとしたが、古代に背を向けてスターシャの傍に行った。

「スターシャさん、それに、ユリーシャも」

 スターシャも、ユリーシャも、雪が何を言おうとしているのかわからずにいた。二人を前に、雪は自分の考えを説明した。

「あの邪悪な暴力に支配されたガトランティス人は、武器でいくら攻撃しても、何度も甦って倒すことは出来ませんでした。戦う方法が間違っていたんです。それは、イスカンダル人のあなた方にしか出来ないやり方です」

 スターシャとユリーシャは、雪が、次に何を言うのか、まだ理解出来なかった。

「私たちは、ここへ来る途中に、テレザート星系に立ち寄りました。そこで、私たちは、テレサに会いました」

 スターシャが、目を見開いた。

「テレサに……、会った?」

 ユリーシャは、まだ何のことかわからないようだった。雪は、小さく頷いた。

「テレサは、心だけの存在になってそこにいました。私たちは、テレサにイスカンダル人の過去の秘密を教えてもらいました。約千年前まで、恐ろしい侵略者だったイスカンダル人が、何故ある日突然、それをやめたのか。それは、テレザートを滅ぼした時に、テレザート人の祈りによって、その心がイスカンダル人に入って交わり、一つになって、邪悪な心を変えられた為です」

 スターシャは、驚きを隠せなかった。

「それは、イスカンダル人でも、女王の資格を持った者にしか伝承されていないことです。ユリーシャでも、それは知りません」

 ユリーシャは、姉と雪を交互に見た。

「はてな?」

 ユリーシャは、首を傾げた。

「イスカンダル人には、テレザートの人々の記憶と心が混じっている。だから、テレザートの人々と同じように心の中に入って交わる術をお持ちなんです」

 雪は、ユリーシャを見た。

「私は、地球人だけど、私の中にはイスカンダル人のあなたの記憶と心が混じっている。つまり、私にもテレザートの人々の心が混じっているということ。私は、これを手伝うことが出来ると思う」

 雪は、サーシャを抱いたまま、片手を伸ばしてユリーシャの手に触れた。その繋がりを通じて、ユリーシャに雪の心の思いと、その確信が伝わった。ユリーシャは、目を閉じて、そのまま雪の心と触れ合った。そして、その言葉を二人は口にした。

「秘めた命」

「秘めた想い」

 ユリーシャは、スターシャに手を伸ばして、その手を握り締めた。

「お姉様。雪の言っていることがわかった。一緒にガトランティス人の心に祈りを捧げましょう。今度は、私たちが最善を尽くす時。自分がすべきことを。自分にしかできないことを」

 スターシャにも、ユリーシャに握られた手を通じて、その思いが伝わった。

「分かったわ。そうね、ユリーシャ。やってみましょう」

 スターシャ、ユリーシャ、雪、そしてサーシャも一緒に、イスカンダル人の心を持つ四人が祈りを捧げて、思いを一つにした。

 その祈りによって、ガトランティス人の心に安らぎが訪れるように。

 

 ヤマトの眼前に、あのテレサの姿が浮かび上がった。テレサは、優しい微笑でヤマトにいるイスカンダル人を見守った。

「私は、あなた方が、ガトランティスを止める方法に気付く、この時を待っていました」

 スターシャたちは、祈りを続けながら、テレサが出現したのを見守っていた。

「テレザートを滅ぼしたイスカンダル人の最後の役割。あなた方の贖罪はこれでやっと終わりを告げるのです。それは、ガトランティス人を倒すのではなく変えること。かつてのあなた方がそうだったように」

 テレサは、手を白色彗星に伸ばした。

「さぁ、皆さん、私と一緒に参りましょう」

 テレサは、宇宙を泳いで、ズォーダーの乗る白色彗星に迫って行った。

 

 ズォーダーは、目の前に巨大な少女の姿をした者が迫ってくるのを目撃した。

「あれは……いったい何だ?」

 ズォーダーは、心の中に、何かが入って来るのを感じた。

 心地良い。

 長い間忘れていた安らぎの気持ちが沸き上がってくる。

 隣にいたサーベラーにも、ゲーニッツにも、それが入ってきていた。

 テレサは、更にもう一つの白色彗星にも向かっていき、同じようにラーゼラーの心にも入っていった。

 

 ズォーダーの心は、一方でこれが一種の精神攻撃だと認識して、無理やり白色彗星の進撃の指示を出そうとした。しかし、既に部下の大半が自分と同じように、何者かが心に進入し、指示を聞くものはいなかった。

 俺は、こんなものに負けるのか――。

 ズォーダーの心の中では、元の自分の心と、安らぎの心とが戦っていた。

 

 そして――。

 

 白色彗星は、そのプラズマの塊から、光が消え、ただの鋼鉄で出来た丸い物体に変化していた。

 

続く…

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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