宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国編   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国編」です。


白色彗星帝国編24 旅立ち

 イスカンダルでは、激しい津波が収まり、静けさを取り戻していた。サレザー系の太陽が、地平線の少し上に見えており、辺りは美しい夕焼けに照らされていた。

 超巨大戦艦の砲撃の痕跡は、海から海水が流れ込み、急速に姿を消しつつあった。

 しかし、津波によって、美しかったイスカンダルの宮殿のあった街は、激しく破壊されていた。そして、地平線まで続いていたイスカンダル人や、ゆきかぜの乗員の墓も押し流され、そこは海の底に沈んでいた。

 イスカンダルの自動人形イスカンダロイドたちは、元の美しい街並みに復興させるため、休む間もなく黙々と働いていた。

 イスカンダルの宮殿は、破壊されずに今もそこに立っており、夕陽に照らされて煌めいていた。

 破壊された宮殿の傍の港に、ヤマトと、ガミラス艦が数隻と、一隻のガトランティスの船が停泊していた。そのガトランティスの船は、軍艦では無かった。それは、千年前にガトランティス人が故郷を脱出した時に使われた船だった。そして、超巨大戦艦の艦橋部にそれは据えられており、ズォーダーは、超巨大戦艦が破壊された時に、それに乗って脱出していた。

 

 宮殿の広間には、スターシャの姿があった。その横には、ユリーシャも立っていた。そして、雪は、少し後ろに、サーシャを抱いて立っていた。

 その彼女たちの前に、ズォーダー大帝が膝をついて頭を垂れていた。そのすぐ後ろには、サーベラーとゲーニッツ、そしてラーゼラーの姿もあり、同じように膝をついていた。

 少し離れたところで遠巻きに、ガミラス人の代表者であるヒス総統や、ガデル・タラン、そしてローレン・バレルら閣僚が立っていた。その隣には、地球連邦政府の代表と、古代らヤマトを代表する士官たちが立っていた。更にその隣には、宮殿の広間の壁に寄りかかった、傷だらけのデスラーとランハルト、そして、ヴェルテ・タランが、そこで立っていられずに、床に座り込んでいた。ヤマトの船医である佐渡は、彼らを心配して付き添っていた。

 こうして、宮殿の広間には、今回の戦いの代表者たちが一同に会していた。

 

「ズォーダー大帝、頭を上げて下さい」

 スターシャは、慈愛に満ちた表情でズォーダーを見守っていた。

 ズォーダーが顔をあげると、先程までの鬼神のような怒りの表情は消えており、憑き物が落ちたように、穏やかな顔をしていた。

「女王スターシャ。我々は、この場に来るのは相応しく無いのでは?」

 スターシャはゆっくりと、首を振った。

「いいえ。そんな事はありません」

 スターシャは、一歩引いて、ユリーシャを促した。そして、ユリーシャは、少し間を置いてから、語り出した。

「ズォーダー大帝。あなた方は、元々は、望郷の想いを秘めて、いつか故郷を取り戻すと誓って旅立ちました。しかし、千年という長い年月が、あなた方を邪悪な暴力に駆り立て、本来の目的を忘れさせていました。しかし、私が前にあなたに会った時、コスモリバースシステムの話をしたところ、涙を流して自分たちの行いを後悔しているのを見ました。あの時の、あなたやあなたの部下は、本気で悔やんでいるようでした。あなた方は本当は忘れていた訳ではなかったのだと思います」

 そこまで話をしてから、ユリーシャは、後ろに下がり、代わりにスターシャが前に出た。

「あなた方が行った数々の邪悪で冷酷な侵略行為。被害を受けた人々からすれば、到底許されざる行為です。しかし、私たちの祈りによって、既にあなた方は悔い改めており、これ以上、争いや憎しみを生まないように、マゼラン銀河を立ち去り、故郷へ帰って頂きたいと思っています。皆さんも、それでよろしいですか?」

 スターシャは、そこにいた全員を見回していた。マゼラン銀河全体で、既に彼らに蹂躙され、決して許すことが出来ないと思う者も当然いるだろう。それでも、代表者たちから、誰も意見することがなかった為、スターシャは、最後の決断をした。

「ズォーダー大帝。そして、ガトランティスの皆さん。どうぞ聞いてください」

 サーベラー、ゲーニッツ、ラーゼラーの三人も顔を上げた。

「私は、イスカンダルの女王として最後の役割を果たします。私たちは、贖罪の為、あまねく星ぼしに救済を与えてきました。これが最後の救済となります。ズォーダー大帝。あなた方に、惑星を浄化し、再生するシステム、コスモリバースシステムを差し上げます。これを、あなた方にの故郷に持ち帰り、故郷を復活させて下さい。今のあなた方なら、システムを使うことが出来るでしょう」

 ズォーダーは、スターシャの言葉に戸惑っていた。

「スターシャ女王。我々がこれまで行ってきた行為は、あなたが先程言ったように許されざること。それを受領する資格は無いのではないでしょうか?」

 スターシャは、首を振った。

「いいえ。あなた方は、自分達が何をやったのか知っており、それを考えながらこれから重要な役割を負ってもらわなければなりません。今度は、私たちに代わってあなた方が救済を行うのです。かつての私たちも、今のあなた方と同じように、自らの存在が許されるのかを悩み、苦しみながら道を見つけました。どうぞ、故郷に戻って、これまでのことを反省し、他の星ぼしの人々の為に、いったい何が出来るかをお考えになって下さい。それがあなた方の贖罪になるでしょう」

 スターシャは、これから、彼らがイスカンダルに代わって長い年月尊い戦いを始めることに思いを馳せ、優しい笑顔でズォーダーを見た。

 ズォーダーは、その言葉を噛み締めた。

「わかりました。それでは、コスモリバースシステムを受領致します。そして、今おっしゃられたことを真剣に、皆で考え続けます」

 スターシャは、そこで少し厳しい表情になった。

「それでは、コスモリバースシステムを使えるようにするために必要なことを最後に説明します。このシステムのコアには、あなた方ガトランティスの故郷を思う命を捧げる必要があります」

 古代ら、ヤマトの士官たちはどよめいた。

 俺たちが来た時にはそんな事は言われなかったぞ……

 そんな言葉がひそひそと聞こえていた。彼らは、スターシャの残酷な一面を見た気がしていた。

 スターシャに彼らの思いが伝わり、それについて説明をした。

「地球の皆さん。これは、救済を受けとるものに必ず課せられた運命なのです。あなた方には話しませんでしたが、それは、既にその命を受け取っていたからです」

古代は、はっと気がついた。

「まさか……」

真田と新見薫は、推測の裏付けが取れた形となり、顔を見合わせていた。

「古代さん。そうです。お気付きのように、ここで亡くなったあなたの兄、守の命があなた方のシステムのコアとなりました。あなた方に、この残酷な話をせずに済んだのはその為です」

 スターシャは、少しだけ振り返って雪が抱くサーシャをちらと見た。

 そして、彼女は再び前を向くと、ズォーダーを見た。

 そのズォーダーは、そのやり取りの間に心を決めていた。

「わかりました。私がその命を捧げましょう。それが最も相応しい。そうですね?」

 スターシャは、ズォーダーを暫し見て、ゆっくりと頷いた。

「はい。恐らく、大帝のあなたの命が最も相応しいでしょう」

 サーベラーが、立ち上がってズォーダーの傍にやって来た。

「大帝。わらわがその役目を致します。故郷を納め、皆を導くのはあなたしかいません。どうか、わらわに行かせて下さい」

 ズォーダーは、優しげな顔でサーベラーに言った。

「ありがとう。サーベラー。今までずっと私の傍に居てくれて。これからは、ゲーニッツとラーゼラーの三人で皆を導いてくれ。頼んだぞ」

 ズォーダーは、サーベラーの肩に手を置いた。サーベラーは、その瞳から涙が溢れていた。

「大帝。わらわは」

 サーベラーは、言葉が詰まっていたが、決意して言った。

「わらわは、ずっと、あなたをお慕い申し上げていました」

 ズォーダーは、口元を緩めた。

「わかっていたよ。お前の気持ち、嬉しく思うぞ。ありがとう。そして、さらばだ」

 泣き崩れるサーベラーをそのままに、ズォーダーは立ち上がった。

「スターシャ女王。私の決意が変わらぬうちに、お願いしたい」

 その時、スターシャの傍にユリーシャがおずおずとやって来て、前に進み出た。

「お姉様。私たちは、既にテレザートの人々、地球人の雪、そしてガトランティスの人々と心が交わりました。命……いいえ。正確には、その人の記憶と心を宿した魂が必要だけど、それは私たちのでもいいはず」

 スターシャは、困惑した。

「いったい何を言っているの?」

 ユリーシャは、雪を呼び寄せた。雪は、前に進み出ると、スターシャに言った。

「命を捧げる儀式が必要だって、ユリーシャからここに集まる前に聞きました」

 ユリーシャは、その後を受けて続けた。

「私は、地球で死に瀕して、記憶と心を雪に与えて、それを残そうとした。結果、私は、死ななかった為、雪は、もう一人の私となる魂を受け取ることになった。そうして、私は二人になってしまったの」

 スターシャは、ユリーシャの言いたいことが、だんだんとわかってきていた。

「ユリーシャ。私たちイスカンダル人は、そうやって記憶と心を残す行為は、一生の間に一度しか出来ません。それを、ガトランティスの人々の為に、捧げるというのですか?」

 ユリーシャは頷いた。彼女は、すっきりとした表情で、何の後悔もしないという決意をした顔だった。

 雪は、スターシャに言った。

「私は、あの祈りによって、彼らと心を混じらせ、彼らの苦難に満ちた旅の記憶をもらいました。きっとお役に立てると思います」

 それを聞いていたズォーダーとサーベラーは、人の形をしていたが、確かに女神がそこにいるのを見た。

 サーベラーは、唇を震わせて言った。

「あ、あの……」

 雪と、ユリーシャは、そんなサーベラーの傍に近寄り、その手を握った。

「ズォーダーと仲良くね」

「これからきっと、辛いことが沢山あるはず。あなたがこれからも、彼を支えてあげて」

 サーベラーの瞳から、大粒の涙が流れた。そして、強く二人の手を握り返した。

「ありがとう。ありがとう……」

 雪は、にっこりと笑った。

「私たちは、異星人とだって解り合える。って、誰かの受け売りだけど」

 サーベラーとユリーシャは、それを聞いて古代の方を見た。古代は、サーベラーにまで見られて困惑していた。記憶が混じりあっている為、その言葉が、古代のものだと、彼女たちは知っていたのだ。

 サーベラーは、雪に言った。

「あなた方も、ずっと仲良く、幸せになってね」

「ありがとう!」

 

 スターシャは、イスカンダロイドに、人の魂となる記憶と心を保存するための装置を運ばせた。その装置を設置すると、雪と、ユリーシャ、そしてそこにサーベラーも加わって、三人は手を繋いで祈りを捧げた。

 暫くすると、雪の体から、光の粉のような煌めくものが漂い始めた。装置が唸りを上げ、そして暫くすると、その中心に設置された箱に、光の球のようなものが膨らんで、静かに納まった。

 雪と、ユリーシャは見つめ合った。

「これで、もう一人の私じゃなくなった。ちょっと寂しいかな」

「ユリーシャ。とっても楽しい経験だった。あなたのこと、大好きだよ」

「私もだよ、雪!」

 そう言って、二人は固く抱き合っていた。サーベラーは、その二人の友情を、羨みつつも、暖かく見守っていた。

 そうして、ガトランティスの船に、コスモリバースシステムが運ばれ、設置された。ズォーダーらは、雪と、ユリーシャとの別れを惜しんでいた。

 ヒス総統が、そんな彼らに声をかけた。

「早く行った方がいい。ガトランティスを憎む人々も少なくない。民衆が騒ぎだす前に、旅立った方がいい」

 ズォーダーは、手を上げて言った。

「わかりました。それでは、ありがとう!」

 こうして、イスカンダルの港をガトランティスの船は出発した。それは、空高く上っていき、そして、見えなくなった。

 

 そこに集まったガミラス人たちは、これからのことを考えると憂鬱な気持ちになっていた。特に、デスラー総統とヴェルテ・タランをどうするのかは、彼らの新たな悩みであった。デスラーは、一度はガミラス臣民を裏切って失墜した立場だった。しかし、今回の一件で皆が救われており、もとより彼の復活を唱える勢力も存在していることから、彼の動向が、今後のガミラスの運命を握ってしまうことは確かであった。

 デスラーの周りには、自然とその輪が出来ていた。デスラーは、怪我と疲れでその場に座り込んでおり、集まったガミラスの閣僚や一部の士官たちの顔を見上げた。

「久しぶりだね、諸君」

 ヒスは、彼らを代表して、最初に口を開いた。

「デスラー。我々は、落ち着いたら国政選挙を行う予定だ。民主国家に生まれ変わると私が皆に約束したからだ」

 デスラーは、目を閉じて力なく小さく笑って言った。

「なるほど。随分と様変わりするのだね。きっと反対するものも多いだろう。君たちは、これからも苦難が長く続くに違いない。だが、私は遠くから応援しているよ」

 それを聞いたヒスや、ガデル・タランら閣僚は、デスラーがガミラスに戻るつもりが無いことを悟った。

「それでは……」

 そんな時、ランハルトがデスラーに話しかけた。

「これからどうするんだ? デスラー総統」

 デスラーは、少し考えて黙っていた。

「もうガミラスへの未練は無い。本当に、新天地を探しに行くつもりだよ」

「何かあてはあるのか?」

 ランハルトは心配そうに叔父を見つめていた。そこにヴェルテ・タランが割り込んで話をした。

「昔、イスカンダルが平和主義に変わった頃の時代、ガミラス人と、イスカンダル人が何処かへ一緒に旅立ったという伝説がある。何でも天の川銀河に向かったとか。それを確かめに行くつもりだよ。数年前に確かな目撃情報があるから、伝説は本当かも知れない」

「そんな話、俺は聞いたことがない」

「ゲール少将が、実際にその人たちの姿を見たことがあるらしい。彼に、案内をさせるつもりだ。そこで新たなガミラスを作るという総統の考えは、案外可能なんじゃないかと思っている」

 ガデル・タランは、兄ヴェルテ言葉に、不安げな表情をしていた。

「ガデル。私は、デスラー総統と共に行くことにした。大変だろうが、頑張ってくれよ」

「兄さん……」

 ガデルは、涙を堪えていた。

「本当にすまなかった。どうか元気で……」

 デスラーは、タランに微笑んで言った。

「おやおや、君には休暇を与えたはずだったんだがね。本当に、もういいのかね?」

 ヴェルテ・タランは、柔らかい表情でデスラーに言い返した。

「あなたには、私が必要だ。そうでしょう?」

 確信を持って、タランはそう言った。デスラーは、タランの顔をまじまじと見た。

「やれやれ。君には、もう私の威厳は通用しないらしいね」

 デスラーは、そう言って笑いだした。その後、彼は、ランハルトの方を見た。

「そうそう、ランハルト。後のことは、頼んだよ」

 ランハルトは、戸惑っていたが、ここは素直に返事をするべきだと考えた。

「ああ。任せておけ」

 政権の移譲とも取れる会話の内容に、周りにいた閣僚たちの間で、ざわめきが広がった。

 ランハルトは、慌てて否定した。

「勘違いをしてもらっては困る。俺はまだ、そんな役目を負うほど立派な人間じゃない。これはそういう意味じゃない。これからの俺たちの決意の問題だ。偉大なアベルト・デスラーがいなくてもやっていける、という」

 ローレン・バレルが、それを聞いて笑っていた。

「デスラー総統。きっといつの日か、ランハルトが国を納める時が来るでしょう。その時、あなたの新しいガミラスとはぜひ、交易を結ばせて頂きたいものですね」

 デスラーは、新顔の閣僚を見て同じように笑った。

「君が、バレルくんか。その日を、楽しみにさせてもらうよ」

 

 ガミラスの閣僚たちや士官たち、そしてランハルトは、スターシャに挨拶を済ませると、ガミラス艦に乗り込み、イスカンダルを後にした。彼らは、これからガトランティスによってもたらされた問題の後始末と、約束していた選挙の準備が待っていた。

 ガミラス艦の艦内では、バレルはヒスと話をしていた。

「これからが、大変だ。頑張りましょう、総統」

 ヒスは、疲れきった表情で言った。

「君を連れてきたのは正解だった。後はよろしく頼むよ」

 バレルは、ヒスには何か考えがあるのに気がついていた。

 

 デスラーたちも、出発の準備をしていた。そこに、スターシャが、デスラーの元に近づいて来た。ランハルトがいないので、タランが彼を支えて立っていた。

「アベルト。もう行くのね」

 デスラーは、スターシャを寂しそうに見ていた。スターシャも同じように、寂しそうな顔をしていた。二人は、離れ離れになるのを恐れるように、しばらくの間見つめ合った。

「ああ。君には、今まで辛い思いをさせてしまったね。これからは、遠くから君の幸福を祈ることにするよ」

 スターシャの傍には、まだ足もともおぼつかない小さな少女が手を繋いでいた。

「その子は……」

 デスラーは、その子が誰の子か、と問いただそうとしたが、無粋な質問だと思い、思い留まった。

 誰の子でもいい。

 彼女が誰かと幸せに暮らし、幸福であることを祈ると決めたのだから。

 しかし、スターシャ自身がそれを語りだした。

「この子は、数年前に出会って、もう亡くなった地球人との子です。サーシャと言います」

 サーシャは、拙い言葉で、デスラーに挨拶をした。

「こんにちは。おじさんは、誰?」

 デスラーは、タランに大丈夫、と言って下がらせ、その子の目線まで腰を落とした。

「私はね。君のお母さんの……」

 デスラーは、そう言いかけて、自分は彼女の何だったのかを考えた。一度は、結婚も考えた程の仲だったこともあった。だが今は……?

 デスラーは、サーシャに言った。

「私は、君のお母さんの古い友人だよ」

「おともだち? ママと仲良し?」

 デスラーは、それを聞いて、言葉がすぐに出なかった。

「ああ。昔は、とても仲良しだった」

 スターシャは、寂しそうに言うデスラーの言葉を聞いて、彼にかける言葉が出なかった。しかし、彼女は決意した表情で言った。

「アベルト。あなたに、相談があるの」

 デスラーは、スターシャが何を言い出すのか、わからなかった。

「私に出来ることであれば。話を聞かせてもらえるかね?」

 スターシャは、言い淀んでいた。口を開きかけて、また閉じて、また顔を上げてと繰り返し、迷っているようだった。そんなスターシャの姿を、デスラーは初めて見た。デスラーは、暖かく微笑んで、優しく彼女を見つめた。

「君が、何を言おうと、私は、何でも受け止めるつもりだよ」

 スターシャは、デスラーをもう一度見て、話し始めた。

「私は、イスカンダルの贖罪と救済をこれで終わりにすると先程宣言しました。もうここに留まる理由がありません。あなたが先ほど話していた、天の川銀河に行くという話、イスカンダルにも同じ記録が残っています。かつて、この地をイスカンダル人とガミラス人が共に旅立ったと」

 デスラーは、スターシャが言わんとしていることに気がついた。

「君は……」

 スターシャは、頷いた。

「アベルト。どうか私も連れていって下さいませんか? 私も、同胞がまだこの宇宙にいるのならば、会いたいと思っています。この星は、寂しすぎるから……」

 デスラーは、信じられないと思っていた。

 スターシャが、私についてきてくれる……?

 別に、彼女は、彼と一緒にいたいと言ったわけではない。それでも、彼女も彼も、かつての立場が失われ、その重責からそれぞれが自由になったのは確かであった。

 デスラーは、その喜びに天を仰いだ。

 そして、スターシャの前に跪き、彼女の手を取った。そして、その手にそっと口づけをした。

 

 しばらくして、デスラーたちの出発の準備が整った。デスラーの傍に立っていたスターシャの元に、ユリーシャが駆け寄って来た。

「お姉様!」

 スターシャは、ユリーシャの元に歩み寄った。

「ユリーシャ。勝手にこのようなことを決めてしまって、ごめんなさい」

 ユリーシャは、駆け寄ってそのまま姉の胸に飛び込んだ。そして、顔を上げて笑顔で話をした。

「ううん。お姉様が自分で決めたこと。私は反対なんかしないよ」

「……ありがとう。ユリーシャ」

 ユリーシャは、デスラーの方を見た。

「デスラー総統。お姉様と仲良くしてくれなきゃ、私が許さないよ?」

 デスラーは、優しい笑顔で言った。

「これは参ったな。善処しよう」

 スターシャは、ユリーシャの今後について心配をしていた。

「あなたは、これからどうするの?」

 ユリーシャは、スターシャから離れると、はっきりと自信を持って話をした。

「私は、これからもガミラスの人たちと、それから地球の人たちと一緒に、争いの無い世の中にする為に、出来ることをやっていく。全然心配はいらないよ。天の川銀河にお姉様が行くなら、いつか必ず会いに行くから、住むところが決まったら知らせてね。そして、サーシャが大きくなったら、迎えに行って、一緒に地球で暮らすのもいいかもしれない」

 ユリーシャは、生き生きと未来の夢を語り、それを聞いたスターシャは目を細めた。

「安心したわ。お互いに頑張ろうね。ユリーシャ」

 ユリーシャは、眩しい笑顔で大きく頷いた。

 そうして、デスラーとヴェルテ・タラン、そしてスターシャの乗ったガミラス艦が去っていった。

 

 後に残されたのは、ユリーシャと、古代らヤマトの乗組員だけだった。

 古代は、ユリーシャに、気になっていたスターシャの子供について、そっと尋ねてみた。ユリーシャは、古代守との子だと、あっさりと打ち明けた。スターシャは、いつかサーシャを地球に連れて行き、そこで地球人として暮らしてもらいたいと言っていたと、古代に伝えた。

「その時は、私と一緒にお迎えに行こうね。古代!」

 古代は、ユリーシャの笑顔につられてしまう。

 そんな未来が、待ち遠しい、と彼も考えていた。

 いつか、雪との間に生まれた子と、サーシャが会う日まで、その楽しみは取っておこう――。

 古代は、少しの間、その事を胸にしまっておくことにした。

 

続く…

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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