宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国編   作:とも2199

25 / 25
※本作は、この回で完結となります。
宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国編」です。


白色彗星帝国編25 それぞれの未来(最終回)

 ガミラスでは、初となる選挙戦が始まっていた。この選挙によって、ガミラスの国会議員とする政治家と、同時に大統領を選ぶことになる。

 選挙戦には、様々な意見を持つ政党が乱立していた。

究極の平和主義を訴えるもの。デスラー体制復活を唱えるもの。極端な思想を持つ陣営や、現実的な志向をした勢力など、あらゆる勢力が挙党して選挙戦を戦っていた。

 ローレン・バレルは、気がつけば現実路線の保守政党ではあったが、彼の経歴を生かしたマゼラン銀河の交易を充実させる政策が人気を呼び、その党の党首になっていた。

 一方で、総統のヒスは徒党と組むのを止め、既に選挙戦後の引退を宣言していた。そして、自らの代わりに、大統領に推すため、バレルに付き添って選挙戦を戦った。

 クーデターの首謀者として、ガトランティスとの戦いを指揮したガデル・タランは、クーデターの責任をとったつもりなのか、無所属でたった一人で選挙戦を戦っていた。

 選挙は、ヒス総統の意向により、ガミラス星に留まらず、マゼラン銀河でガミラスと平和条約を結んだ星ぼしにも選挙権が与えられていた。これは、マゼラン銀河をまたにかけた、戦争とは別の意味での真の決戦であった。

 地球連邦政府の代表と、彼らをエスコートしたヤマトの乗員も、ガミラスに留まって選挙戦を固唾を飲んで見守っていた。

 

 そして――。

 

 ローレン・バレルは、ガミラス軍事政権下とは異なる、一般人と同じ正装を身につけて、鏡で自らの着こなしを確認していた。

「問題ない。似合っている。バレル大臣……」

 バレルの背後には、選挙戦を手伝ってくれたランハルトがいた。

「……いや。バレル大統領」

 バレルは、鏡でのチェックを終え、満足げにランハルトに言った。

「行こうか」

 

 バレルは、総督府の建物の壇上には上がらず、民衆が立ち並ぶ地上を車を走らせ、その車から現れた。熱狂的な国民の歓声を受けて、バレルは手を振りながら歩いて進んだ。その後を、ランハルトは追って歩いていた。

 この様子は、多くのガミラス国民が見守っており、その映像は、マスメディアを通じてマゼラン銀河中に中継されていた。

 バレルは、総督府の前に設営された壇上に上がると、集まった国民を前に、手振りをして、静粛にするように訴えた。

 静かになったのを確認して、バレルは、ヒス前総統を拍手で招き寄せた。割れんばかりの拍手の中、ヒスは姿を現した。

 二人は、壇上で国民に見えるように握手を交わした。バレルの発案でガミラス式敬礼がこの場に相応しくないと考えて、地球式を真似ることにしたものだ。

 壇上となる舞台袖では、ヒルデとその母が、ヒスの最後の晴れ姿を見守っていた。

「お集まりの皆さん。ガミラス初代大統領のローレン・バレルです。これまでの、デスラー政権までの時代、マゼラン銀河の星ぼしや、ここにいるガミラス国民は、軍事独裁政権下だっとはいえ、様々な権利、そして意見を封殺されて来ました。しかし、それを変えようとしたのが、ここにいるヒス前総統です。皆さん、どうぞ改めて拍手を」

 そこに、雷鳴のような拍手の嵐が巻き起こった。ヒスは、皆にありがとうと感謝を述べた。

 バレルは、改めて民衆に静粛にするように手振りをしていた。

「私は、貿易商を営んでいましたが、ヒス政権下で労働省の大臣に民間から抜擢されました。ヒス総統がいなければ、私は、この場にいなかったでしょう。そのヒス総統が目指したのは、民主化でした。それは、圧政を受けて悩み、苦しんできた全ての人々に、この国をお返しするということです。その壮大な理想があって、遂に、このような選挙が行われました」

 バレルは、一呼吸置いて皆に声を大きくして言った。

「そうです! 皆さん、やっとこの国は、あなた方のものになったのです!」

 再び、雷鳴のような拍手の嵐が巻き起こった。民衆は、バレルの演説に熱狂していた。

「この民主化を象徴する、もう一人のゲストをご紹介したいと思います。我々ガミラスを、二度までも救ってくれた救世主、地球連邦政府代表、ウイリアム・ライアン外務長官です!」

 バレルが拍手し民衆が歓声を上げた。壇上にライアンが手を振りながら上がってきた。壇上で、バレルとライアン、そしてヒスの三人で手を重ねあった。民衆が大きな拍手で彼を歓迎をしていた。

「今、ここで皆さんに宣言致します。我々ガミラスは、これから地球との正式な国交を結びます。初の対等な関係のパートナーとして、これから一緒に歩み始めます。手始めに、軍事同盟の条約に調印しますが、それだけではありません。国家間の交易や、双方の国民が自由に互いの国を行き来出来るよう、国交正常化交渉に臨み、平和条約の締結にもすぐに着手したいと思います」

 バレルは、民衆が大きな歓声を上げる様子を見て、ライアンと一緒に手を振った。

「マゼラン銀河の皆さん。見てください。これが、民主化の成果なのです。これから、皆さんとも、同じように新たな関係を築いて行きたいと思います。私は、ヒス総統の意思を受け継ぎ、初代大統領として、マゼラン銀河全体の平和に、この身を捧げるつもりです!」

 ガミラス星だけでなく、マゼラン銀河中のこの演説を見た星々で、同じように、バレルを歓迎する熱狂が起きていた。

 

 数日後、バレルとライアンは、マスコミを前にして軍事同盟の条約に調印した。

 そして、真田を中心とした科学者らが、ガミラス軍の科学士官と共に、双方が求めていた技術の交換を行った。

 こうして、今回のヤマトの旅の目的が終わりを告げ、それぞれが、新たな旅立ちの時を迎えていた。

 

 バレル大統領は、組閣人事に着手し、ガデル・タランを引き続き国防大臣の座につくよう指名した。タランは、無所属で選挙を戦ったことが認められ、この人事に反対する者は少なかった。何より、バレル自身が、あのガトランティスとの戦いに勝利出来たのは、彼のお陰と持ち上げていたからだ。

 

 ヒス前総統は、政界を引退する道を選んだ。そして、今はヒルデの故郷ザルツ星を訪れて、穏やかな日々を過ごしていた。

 

 ランハルト・デスラーはというと、地球との国交正常化の準備として、地球の大使に任命され、その準備にいそしんでいた。

 

 ディッツ提督は、今まで通りガミラス軍のまとめ役として、ガトランティス戦役の後始末で忙しい日々を送っていた。

 

 バーガー少佐は、あの戦いの後、エピドラ周辺を捜索し、ネレディアの空母ミランガルの残骸を発見し、生存者の救助を行った。そして、酷い怪我を負っていたものの、ネレディアも救助され、彼は彼女の暫くの入院生活を付き添って支えた。

 

 次元潜航艦のフラーケン以下、その部下たちは、あの戦いの後、行方不明となっていた。一説によれば、デスラー総統の旅についていったのではないか、と噂されていた。

 

 そして――。

 

 ヤマトは、地球に帰還する準備をおこなっていた。ガミラスの軍港で艦の修理も完了し、間もなく出発の時を迎えようとしていた。

 宇宙港では、古代は、雪と山本と一緒に、ユリーシャやメルダとのとの別れを惜しんでいた。

「古代、それから雪。私たちは、ランハルトと一緒に、少し後で地球に行くつもり。ちょっとだけお別れだね」

 ユリーシャが、これからの予定を話していた。

「そうか。じゃぁ、二人ともすぐに会えるんだな」

 そう言った古代に、メルダが頷いた。

「私は、ランハルト……いや、デスラー大使と、ユリーシャ殿を連れていくガミラス艦隊のうち一隻の駆逐艦の指揮するように言われている」

 雪が驚いていた。

「それって、昇進したってこと?」

 メルダが少し照れていた。

「中尉になった。本来は艦や艦隊の指揮は少佐以上の士官が行うことになっているが、父が無理矢理決めてしまってな。私は、地球人との間の縁が深く、私に行かせるのが相応しいと言っているらしい」

 山本が腕組みをして鼻を鳴らした。

「それじゃぁ、戦闘機乗りなどやっている場合じゃないな」

「そんな事は無い。ちゃんと私の愛機も艦隊旗艦の空母で運ぶ手筈をしている。地球に着いたら、お前に付き合ってもらうぞ」

 山本は、右腕を伸ばしてメルダに拳を突きつけた。メルダも、同じように握りしめた拳を突き出し、互いの拳に軽く当てた。

「わかった。待ってるよ」

 山本は、少し口元を緩めてそう言った。

 古代は、携帯端末を取り出して、時間を確認した。

「済まないが二人とも、出発の時間だ。じゃぁまた、地球で会おう」

 そして、全員で握手を交わした。

 ユリーシャは、握手した自分の手を、じっと見て考え込んでいた。それに気がついた雪が尋ねた。

「どうかした?」

 ユリーシャは、全員を見回してから、最後にぽつりと言った。

「古代って凄いね。皆が古代のこと好きなんだね」

 それを聞いた山本とメルダが赤面して、少し後退りした。雪も一緒に赤面して、苦笑いしながら言った。

「そうだった……。イスカンダル人って、特に、手を触るといろいろ伝わっちゃうんだよね……私が言うのもなんだけど、ごめんなさい……」

 古代だけが、何のことかわからないと言った顔をしていた。ユリーシャは、古代の顔を覗き込んで更に追い打ちをかけた。

「古代は、知らないふりをして誤魔化している」

 今度は、古代が赤面して慌てた。

「こ、心を読むのは、やめて欲しい」

 ユリーシャは、いたずらっ子のように、笑いながら、皆の側から離れた。

 そして、右腕を空に向かって突き出して叫んだ。

「地球に向けて、しゅっぱーつ!」

 

 ヤマトは、ユリーシャとメルダが見送る中、ガミラス宇宙港を飛び立ち、ガミラスの軌道上に移動した。

 そこには、ネレディアの代わりに、バーガーが指揮するガミラス艦隊が集結していた。

「帰り道は、ネレディアが入院中だから、俺たちがエスコートする。迷子にならないように、ちゃんと着いてこいよ」

 バーガーは、ヤマトの第一艦橋のスクリーンに映っていた。古代は、落ち着いた声で、敬礼をして答えた。

「バーガー少佐。よろしく頼みます」

 古代は、通信を切ると、艦内通信のマイクを掴んだ。

「諸君! これよりヤマトは、地球に向けて帰還の途につく。最後まで気を緩めずに、任務を果たして欲しい。以上だ」

 古代は、艦内通信を切ると、島に向かって言った。

「島、発進させてくれ」

「了解。ヤマト、発進します」

 ヤマトは、波動エンジンを咆哮させて、ガミラス星に別れを告げた。その後から、バーガーのガミラス艦隊が続いた。

 

 ヤマトの艦長室には、土方と芹沢の姿があった。

 土方は、古代が予想を遥かに上回る成長を見せたことに、喜びを感じていた。

 沖田の子供たち――。

 土方は、藤堂が常々言っていた言葉を思い出した。沖田に恥ずかしくない人員が着実に育っており、地球に戻ったら沖田の墓前に報告にいかねば、と考えていた。

 土方が考えを巡らせている最中に、芹沢が話を始めた。

「今、南部重工業で作らせているアンドロメダだが、君が旗艦として使うかね? あの船は、ヤマトに代わって艦隊旗艦にしようと思っている」

 土方は少し考えてから言った。

「あれは、山南に使わせましょう。私は、今回ガミラス艦隊と旅をして、空母の重要性を感じています。空母型の艦船を用意してもらえませんか? 完成したら、私はそっちを使わせてもらいたい」

 芹沢は頷いた。

「わかった。戻ったら、すぐに開発をすすめよう」

「ヤマトはどうします? 今回の条約で、記念艦にする必要は無くなった」

 芹沢は、少し考えていた。

「古代を昇進させて、正式な艦長に推したいと思うが、どうかね?」

 土方は驚いていた。

「それは、私からもお願いしようと思っていたところです」

「じゃぁ、決まりだな」

 芹沢と土方は、戻ったらすぐに、銀河系の二大星間国家の対策を迫られることになる。ガトランティスの脅威が無くなっても、まだまだ彼らの苦難は続く。

 

 

 テレザート星系――。

 

 テレサは、今もそこにいた。

 地球でも、イスカンダルでも、ガミラスでも、デスラーたちも、故郷へ向かったガトランティスも、それぞれが新たな未来に向かって旅を始めたが、彼女は人の営みは、苦難の連続で、永遠の安らぎなど簡単には訪れないと、知っていた。

 

 それでも――。

 

 いつの日か、皆の心に平穏が訪れることを信じ、彼女は祈り続ける。

 

 

宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国編

 

完――。

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。