宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国編   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国編」です。


白色彗星帝国編6 マゼラン銀河の混沌

 大マゼラン銀河外縁――。

 

 ガミラス帝国軍のガル・ディッツ提督は、ガミラスの政治家や官僚と共に、ガミラス傘下の星系を巡回していた。各所で平和条約を締結するのが目的である。これにより、ガミラスへの不満や反乱を抑え、ガミラスの民主化を認知させようとする活動である。ガミラス連邦構想も語られ、各国の主権を維持した緩やかな連邦を築く要旨も説明され、将来の加盟も促していた。

 この活動には、イスカンダルの第三皇女ユリーシャ・イスカンダルが同行し、イスカンダルとしての立場から平和を訴えていた。彼女は、ガミラスに利用されるのを承知の上で、それを行っている。

 ディッツ提督の任務は、それだけでなく、大マゼラン銀河外縁で頻発しているガトランティスによる攻撃から、それらの星系を守る目的もあった。既に、ガミラス軍は小マゼラン銀河の守備を十分に行えておらず、かなりの星系がガトランティスの攻撃を受けていた。そして、最近では、大マゼラン銀河へも彼らの進出が認められており、各星系を守るのはガミラス軍がマゼラン銀河を統治する上で必要不可欠なものとなっていた。

 そんな時、偵察挺からの報告により、近傍の星系へのガトランティス艦隊の接近を探知していた。ディッツ提督は、ガトランティスの移動先に存在する星系を特定した後、直ちに艦隊から小隊を編成し、そこへ守備隊として派遣することを決めた。この小隊は、フォムト・バーガーが艦長を務める空母ランベアを小隊の指揮艦として編成されていた。

 

「ガトランティスが来る前に、間に合ってよかった。防衛の方はよろしくお願いしたい」

 スクリーンには、眼下の惑星国家を統治するリーダーの姿が映っている。

 空母ランベアの艦橋で、バーガーは、腕を組んで立ったまま、そのスクリーンを見つめていた。

「ちょっと戦力が乏しいがな。たまたま、近場にいたから来られただけだ」

 その惑星は、以前からガミラスの統治下にあり、現在も友好関係を築いていた。しかし、宇宙艦隊を保持しておらず、放っておけば、ガトランティスに蹂躙されるであろうことは、火を見るより明らかだった。その軌道上には、既にバーガーが乗るガイペロン級の空母一、駆逐艦十四、巡洋艦二隻の艦隊が展開していた。

 

「ワープアウトする船を感知!」

 バーガーが指を鳴らす。

「おいでなすったか!」

 レーダー手が続けて情報を伝える。

「艦種識別……。おや? 変ですね。これは、友軍艦艇のようです」

 バーガーは腕を組み直してがっかりしている。

「なんだよ、ディッツ提督。俺たちだけじゃ役不足とでも思って援軍を送って来たのか?」

「……待って下さい。違うようです。敵味方識別信号は、敵と判断しています」

「なんだと!?」

 

 ワープアウトしてきたのは、青いガミラス駆逐艦五隻からなる小隊だった。それは、バーガーの艦隊に急速に接近していた。この青色の艦は、かつてのデスラー親衛隊が運用していた艦艇だ。

「おい、通信回線を開け!」

 バーガーが通信機のマイクを握る。

「こちらは、フォムト・バーガー少佐。この小隊の指揮官だ。そちらの所属と接近する目的を言え!」

 

「カーゼット大佐。ガミラス艦隊から通信です」

 その艦隊を指揮するルッツ・カーゼット大佐は、かつてギムレーの元で、親衛隊に所属していた人物だ。彼は、艦橋の通信士の報告に冷静に返答した。

「応答する必要はない。我々の艦の色を見れば、我々が何者かわかるはずだ」

 カーゼット大佐は、全艦に指示を発令した。

「諸君、今回の目的は、ガトランティスの連中が来る前に、ガミラス艦隊を少々弱らせてやることだけだ。彼らに、民主化が何をもたらしたか、思い知らせてやろう。全艦、戦闘配置!」

 

 バーガーは、彼らの返信を待っていたが、この間にも、所属不明の艦隊は接近をやめない。

「センサーが武器システムの稼働を確認!」

 その報告と同時に、間髪いれずに所属不明艦隊が陽電子砲の一斉砲撃を開始した。

「ちっ、ウソだろ。全艦に通達! 回避行動!」

「間に合いません!」

 陽電子砲のビームが、バーガーの艦隊に次々に着弾する。

「被弾!」

 空母ランベアが激しく揺れた。艦橋の中央で立っていたバーガーは、少しよろめいた。

「状況報告!」

「駆逐艦が中破四、巡洋艦、駆逐艦が一隻づつ大破!」

 バーガーは、想像以上の被害の報告に愕然とした。レーダーに映る敵艦隊の光点を睨みつけると、大声で喚いた。

「不意打ちとはやることがきたねぇぞ! 反撃だ!」

 

「カーゼット大佐。全弾命中です」

「よくやった。それでは、この場を離れる」

 バーガーの艦隊は混乱の中、態勢を立て直していたが、所属不明の駆逐艦五隻は、艦を回頭し後退を始めた。そして、そのまますぐにワープして去っていった。

「ジャンプしました。敵艦隊の反応消失!」

 バーガーは呆気にとられていた。

 怒りに任せて、握りしめていた通信機のマイクを叩きつける。

「ふざけやがって!」

 彼は、わなわなと、怒りに震えていた。

「艦の修理を急がせろ。あと、ディッツ提督にも所属不明艦の件を報告だ」

 彼が、床に叩きつけた通信機のマイクを拾っていると、レーダー手が最悪のタイミングで報告する。

「バーガー艦長、レーダーがガトランティス艦隊の接近を感知しました」

 バーガーはがっくりと肩を落とす。

「報告しろ」

「はい。敵艦隊は、駆逐艦四、艦種不明の艦一、小規模の小隊のようです」

 バーガーはため息をついた。

 まだ動ける艦も多い。それなら、増援無しでなんとかやれるか? しかし、惑星侵略に来たにしては、やけに小規模だな?

 バーガーは、少し不安を感じて確認した。

「おい。その艦種不明艦を詳しく調べろ」

 科学士官が、センサーで詳細を調査した。少し間があって、彼が回答をした。

「艦長、不明艦は、直径一キロ程もある巨大な物体です。戦闘艦では無さそうです。熱センサーによれば、表面温度三千度」

 それを聞いたバーガーは、一瞬閉口した。

「何だそりゃ? おい、映像を出せるか?」

「スクリーンに出します。ズームで拡大表示します」

 数秒後に、スクリーンにそれが映った。

 それは、白熱した光球だった。高速で移動しているため、光が、まるで尾のように通過する空間に跡を残している。

「な、な、なんだありゃぁ? まるで彗星みたいじゃねぇか?」

 科学士官が更に調査して補足説明をした。

「内部に、プラズマが充填されているようです。それが、あの物体の表面を白熱した光球に見せています。高熱を発する原因はこれです。内部は恐らくもっと高温で、核融合反応が起きていると思われます。強力な磁場や重力場も周囲の広範囲に観測されています」

「なるほど。だが、あんなもの、一体どうしようっていうんだ?」

 

 光球の周囲を囲んでいたガトランティス艦隊は、徐々に後退し始めた。先頭に光球、その後ろに艦隊を配置した状態で、そのまま接近して来ていた。

 

「仕方ねぇ。ディッツ提督に、この状況を報告しておけ。全艦、戦闘配置!」

 バーガーは、全艦に指示を出した。

「戦闘機隊、雷撃機隊、発艦準備」

 全艦が慌ただしく動き出し、大破した駆逐艦と巡洋艦を後方に配置し、態勢を立て直した。

 空母ランベアからは、続々と戦闘機隊が発艦した。続いて、雷撃機隊も発艦し、艦隊の上方に飛行して行った。

「艦長、ガトランティス艦隊が射程内に間もなく入ります。五、四、三、二、一」

 バーガーが全艦に通達した。

「全艦、砲撃開始!」

 一斉に陽電子砲のビームが発射された。数十本のピンク色の帯が、ガトランティス艦隊に向かった。

 しかし、ビームの帯は、光球の周囲に達すると消失してしまった。また、後方のガトランティス艦を狙ったビームも、ねじ曲げられて光球に吸い込まれて消えてしまう。

「どうなってる!? 着弾を確認しろ!」

「駄目です! 攻撃が全て、あの光球に集約され、消えてしまったようです」

 その頃、ランベアから飛び立った戦闘機隊と雷撃機隊が光球に接近し一斉に攻撃を開始していた。

 雷撃機から、機体と同じサイズの巨大なミサイルが、次々に発射された。そのミサイルは、光球に近づくと突然推進力を失い、宇宙空間を漂い始めた。すると、光球の重力と磁場によって、吸い込まれるように落ちて行き、そのまま炎に包まれると、静かに溶けて消えてしまった。

 戦闘機隊も、接近して攻撃を加えるものの、雷撃機のミサイルと同様に、推力を失い、同じように吸い込まれて溶けて消えてしまった。

 

 その報告を受け、バーガーは呆然とした。

「ウソだろ……」

「艦長、ガトランティス艦隊が後退しています。あの光球だけが、惑星に突っ込んできます。十分もしたら、ここまで来てしまいます」

 そこでようやく、バーガーも敵の意図に気がついた。あの光球は、ガトランティスの新兵器なのだ。艦隊が酷く小規模だった理由も、その新兵器あればこそだったのだろう。

「あれを止められる方法は無いのか!? 誰でもいい、意見を!」

 即座に科学士官が回答した。

「先程の攻撃の結果から想定すると、現在の戦力では止める方法はありません」

「俺は止める方法を聞いてんだ! じゃぁ、どうすんだ!」

「艦長、意見具申! 惑星間弾道弾を使ってはいかがでしょうか?」

「馬鹿野郎! 今、持ってねぇ!」

 その時、通信士が報告した。

「バーガー艦長。ディッツ提督から亜空間通信です」

「それだ! すぐ繋げ!」

 スクリーンに、ディッツ提督が映る間が惜しかった。

 早く映れ、とバーガーは強く念じていた。

 すると、数秒の間があって、ディッツ提督の姿が映し出された。

「……バーガー、報告は聞いた。一体、何事だ?」

 バーガーは、大急ぎでディッツ提督に要請を伝えた。

「説明している時間がねぇ! 今すぐ、惑星間弾道弾を一発こっちに持ってきてくれ! 頼む!」

 ディッツ提督は、バーガーの剣幕に押されて目を丸くしていた。

「早く! あと、十分でこの星は吹っ飛ぶ!」

 

 バーガーは、イライラと待っていた。

「まだかよ!」

 既に、ガトランティス艦隊は射程圏外で待機しており、接近する様子はない。そして、光球は肉眼ではっきり見えるほど接近していた。

 このままじゃ、もう間に合わない、とバーガーが考えた瞬間、空間跳躍の反応があった。

 瞬間物質移送機により、一発の惑星間弾道弾が、ディッツ提督の艦隊から送られ、目の前に現れた。

「来たぞ!」

 科学士官が、惑星間弾道弾の制御装置への接続を始めた。

「惑星間弾道弾、接続完了。制御可能です」

「今すぐ発射しろ! 発射したら、反転百八十度で全艦回避行動! 大破した艦は、牽引ビームで接続して引っ張ってけ! 急げ!」

 惑星間弾道弾の後部エンジンが始動し、ゆっくりと光球の方へ向かって動き始めた。同時に、バーガーの艦隊は、その場からちりじりに離れ始めた。

 

 惑星間弾道弾は、速度を上げて光球に向かって飛行した。やがて、光球の目前でその重力と熱で、弾頭の表面が溶け始めた。

 

 そして――。

 

 巨大な爆発が起こった。目の覚めるような光が辺りを照らし、一瞬で何も見えなくなった。

 バーガーは、手で光を遮りながら、レーダー手に確認した。

「やったか?」

「少しお待ち下さい……。はい。先程、光球があった場所から、反応が消えました」

 ランベアの乗組員が歓声をあげる。

「や、やった……。良かった……」

 バーガーの手は、ぶるぶると小刻みに震えており、収まりそうもなかった。彼は、その手を無理矢理きつく握りしめるとレーダーを睨んだ。

「よし、残りの奴らを一掃するぞ」

 バーガーが、全艦に再び指示を出そうとすると、レーダー手が報告してきた。

「艦長、たった今、ガトランティス艦隊がジャンプしました。レーダーの探知範囲に敵の反応が消えました」

 バーガーは若干落胆するが、ほっと胸を撫で下ろしていた。

「分かった……。全艦に告ぐ。任務完了だ。ディッツ提督の艦隊に帰還しようぜ」

 

 この一件は、バーガーが名付けた「彗星のような兵器」として、ガミラス軍の内部で情報が共有された。

 また同時に、親衛隊の残党と思われる反乱軍の存在も認知された。その彼等は、どうやらガトランティスに協力している可能性がある、として報告された。

 

 

 イスカンダル――。

 

「スターシャ女王。何度も失礼致します」

 その時間は、以前取り決めをしたガミラス星との会議の時間だった。民主化したというガミラスの新しい指導者ヒスが会議室の中央に像として現れている。

「何度も、というのでしたら、わたくしの答えはわかっているのでしょう? ヒス総統」

 像として映るヒスは、恐縮していたが、引くことは出来ないという決意があった。

「ガトランティスの侵略行為がマゼラン銀河の各所で発生しており、多くの人々が争いに巻き込まれています。これは、以前からご報告している通りです」

「あなた方、ガミラスがデスラー総統の元で行っていたことと、何が違うのですか」

 ヒスは、困惑した。

「我々は、以前のような独裁国家ではなくなったのです。スターシャ女王。今は、暫定として私が統治していますが、間もなく選挙によって、政治家や新しいリーダーを選ぼうとしています」

「それで?」

 スターシャの声音が更に冷え込んだ。

「スターシャ女王。このままでは、マゼラン銀河中がガトランティスに荒らされてしまいます。最新の情報では、ガトランティスは、このサレザー系に侵攻しようとしている疑いがあります。双子星の我々にとって、これは他人事ではないはずです」

「ヒス総統。イスカンダルは間もなく滅びます。イスカンダルは、私とユリーシャが将来亡くなり、誰もこの星にはいなくなります。何故、このようなことになったのかご存知ですよね」

 ヒスは居心地が悪そうだった。

「イスカンダルが帝国主義をとっていた時代の数々の侵略行為。その贖罪のため、私たちは救済をおこない、それが原因で同胞を失ってきました。もし、ガトランティスがイスカンダルを滅ぼすというのなら、それもまた運命です。私たちは、その時やっとこの罪から解放されるでしょう」

 スターシャは、強い口調で続けた。

「ヒス総統のお話は、いつもと同じことと理解しています。私たちが帝国主義時代に作り出した兵器など、何の役にも立ちません。それを使うということは、これまでイスカンダルの償いのために命を落とした全ての同胞、この何百年という時間を否定することです」

 

 数時間後――。

 

「お姉様。お久しぶりです」

 ヒスとの会見の後、スターシャが居室で休んでいると、突然妹からの通信が入ってきた。

 まるで目の前に立っているかのように、部屋の中央に若い女の像が映し出されていた。

「ユリーシャ。久しぶりね」

 像として浮かび上がった妹、ユリーシャ・イスカンダルは、笑顔で応えた。

「お姉様。今、私はサレザー系から遠く離れた場所から亜空間通信で連絡しています。ここは、かつてガミラスの支配下にあった惑星がありました」

 ユリーシャは後ろを振り返って、腕をゆっくりと大きく振った。すると、ユリーシャの姿がうっすらと消え、その背後に宇宙に浮かぶ惑星が映し出された。その惑星の表面は赤茶けており、所々まるで火をつけて焦がしたような跡があった。

「ご覧の通り、この惑星の生命は既に死に絶えています」

 惑星が消え、再びユリーシャの姿がゆっくりと浮かび上がった。

「お姉様。ガトランティスは、マゼラン銀河の至るところでこのようなことを繰り返しています。また、救済が必要になりそうです」

 スターシャはうつ向いたまま返事をせず、互いに無言のままとなった。

「ユリーシャ。よく聞いて」

 スターシャが顔をあげると、険しい顔をしていた。

「前にあなたに救済をお願いした時のことを覚えていて?」

「地球に行った時のことは、もちろん覚えています」

 スターシャは、深い溜め息を吐き出し、辛そうな表情をしている。

「まさかあのような事件にあうとは思いもしなかった。それが原因で、あなたは意識不明となり、こちらへの連絡が途絶えてしまった。わたくしは、あんな遠い星に行かすべきではなかったと、ずっと後悔をしていました。あなたは、意識を失う前の最後の通信で言ってたわね。使命を果たせなくてごめんなさい、って」

 ユリーシャも、その時のことを思い出して頷いた。

「はい。私が持っていった波動コアが、その時に壊れてしまって、もう使命が果たせないと思いました」

「それを聞いたサーシャは、私の静止を振り切って、あなたを助ける為に地球に行き、そして亡くなってしまった」

 スターシャは、涙声で続ける。

「この宇宙のあまねく星ぼしの知的生命体の救済。それがイスカンダルの歩む道。でも、それで多くの同胞が旅立って亡くなった。何百年もの間、私たちは過去の過ちを反省し続け、その結果がこれよ、ユリーシャ。もう、イスカンダルには救済を行える人がいないの。あなたと私しかいないの」

 イスカンダルの地に並ぶ無数の墓標。それは、救済に旅立って二度と戻ってこなかった人々の証だった。イスカンダルは、緩慢な終焉を迎えようとしていた。

 ユリーシャは、そんな姉を優しく見つめ、口調を変えた。

「サーシャお姉様には、私もずっと感謝してるよ。でもお姉様。イスカンダルは、私とお姉様だけじゃない。そこにいるじゃない。もう一人」

 スターシャは、すぐそばの椅子でまどろむ幼女を見た。まだ幼い娘のサーシャである。

 スターシャは、優しくその頭をそっと撫でた。

「ユリーシャ。この子には地球人の血が流れている。いつの日か、地球に行ってもらいたいと思っています。そして、イスカンダル人としてではなく、普通の女性として生きていってもらいたい……。イスカンダルとしての救済は、もう私たちで終わりにしましょう」

 ユリーシャは、困ったような顔で首を傾げた。

「サーシャが生まれてから、お姉様は変わってしまった。前は、イスカンダルの使命があらゆることに優先してた。私が地球に行くときも、当たり前のことのように振る舞ってた。ちょっと冷たいな、と思ったこともあった。本当は、そんな風に思っててくれたんだね」

「ユリーシャ……ごめんなさい」

 ユリーシャは、満面の笑みでスターシャを見つめていた。

「お姉様、私ね、ガミラスの人達と一緒に行動するようになって、やるべきことが出来たの。だからお姉様が救済を終わりにしたいのなら、それでも構わない。私は私のやるべきことをやって、人々を救いたいの。でも、それは今までのイスカンダルの救済じゃない。それでもいいよね?」

 イスカンダルを出て、自分の足で歩くようになったユリーシャは、スターシャの知っている可愛い妹から、強い女性へと変わっていこうとしていた。

 

 何も変わってないのはわたくしだけね――。

 アベルト。

 あなたと過ごした時間が懐かしい。

 もう一度あの頃に戻れたら――。

 

 

 ガミラス――。

 

 ディッツ提督から報告された親衛隊残党と、デスラー体制復活派による反乱軍のガトランティスと手を組んだ暗躍は、ガミラスに暗い影を落としていた。彼らの活動は目立ち始め、各地でガトランティスでは無く、ガミラス正規軍の仕業と誤解されるような行為も報告され始めていた。

 一方、ガトランティスは、当初、占領した惑星で奴隷労働をさせるなどして、資源を採掘していたようだが、彗星のような新兵器が登場して以来、問答無用で惑星に落下させ、住民を抹殺する、という報告もされるようになった。この事実は、最早、資源採掘が不要になったのではないかと推測される。しかも、徐々に勢力をサレザー系に伸ばしていると思われる。

 ガミラス軍は、ガトランティスに奪われた星系勢力圏で戦闘をおこない、これを押し戻そうとしていた。しかし、神出鬼没な反乱軍とガトランティスの対応に追われ、戦力を分散され、徐々に押され始めていた。

 

 ガデル・タランの執務室――。

 

 ガデル・タランは、兄のヴェルテ・タランが行方不明になり、死亡したものとみなされてから、彼に変わって国防相兼、ガミラス軍の参謀長官として、この事態に対処する作戦立案に追われていた。

「タラン国防相、ディッツ艦隊司令長官が亜空間通信に応じています」

「繋いでくれ」

 立体映像で、そこにいるかのようにディッツ提督が浮かび上がった。

「タラン国防相、どのようなご用件か?」

「ディッツ提督。どうかね。各地の状況は」

 ディッツは、ふんと鼻を鳴らした。

「あまり思わしくはないな。民主化を訴える平和活動をするはずが、武装蜂起や、反乱軍とガトランティスを相手にした戦闘を行うのが、日課になっている。平和条約の話はあまりすすんでいないのが現状だ。ガトランティスが、サレザー系への進攻作戦を進めているのも、間違いがないだろう」

 タランは、ため息をついて話し始めた。

「ディッツ提督。いろいろ私も検討した。結果、今の任務を全て諦め、帝都防衛に徹すべきと考えている」

 ディッツは、考え込む様子を見せた。

「私が今やっている任務は、ヒス総統の命令で、デスラー前総統がいなくなった混乱をおさめるために始めたことだ。特にデスラーが徴用した二等ガミラス人の兵の士気も下がっている。最近では、旧デスラー体制の支持を標榜し、反乱軍に参加する者たちもあとをたたない。確かに戦線を縮小して、ガトランティス進攻に備えるべきだと私も思い始めていた。そうすると、ガトランティスに、我々の支配下の星系が襲われるのを止められなくなるぞ」

 タランが頭を振って答えた。

「仕方があるまい。ここ、ガミラス本星のガミラス臣民を守るのが最優先だ。どうだね。帝都防衛に徹したら、この国を守れるかね?」

 ディッツは、視線を外して後ろを見ている。

「帝都防衛で撤退するのは、私も賛成だが……。ユリーシャ姫には何と伝える?」

「そっちに、政治家や官僚がいるだろう。彼らに説得してもらったらどうだ。軍人が話すよりずっといい。こっちは、ヒス総統を説得するよ。あれ以来、本気で民主化が上手くいくと信じているようだからな」

 

 ヒス総統の執務室――。

 

「ヒス総統。本日のお帰りは、遅くになりますか?」

 部屋の中央に、ヒルデ・シュルツの像が現れている。今は亡き、二等ガミラス人シュルツの娘ヒルデとその母は、あの一件以降、ヒス家の家政婦として雇われている。ヤマトがやってきた帝都防衛戦から数年が経過しており、ヒルデももう大人になりかけていた。

 ヒスは、にこやかにこれに答えた。

「あぁ、今日は早く帰れそうだよ」

 ヒルデは、ぱっと花が咲いたような笑顔を浮かべた。

「承知しました。夕食のご用意をしてお待ちしていますね」

「失礼します!」

 ガデル・タランが、ヒルデの像の背後のドアから、無遠慮に入ってきた。

 タランは、目の前に映るヒルデの後ろ姿を、険しい顔で睨みながら立ち尽くしていた。

「それでは、失礼します」

 来客があったことを察した、ヒルデが通信を切った為、その像が消えた。

「ノックぐらいしたらどうかね」

 ヒスが不快感をあらわにして言った。

「何度もしましたが、お出にならないので開けさせてもらいました」

 タランは、憮然とした表情で答えた。

「あの娘、確か二等ガミラス人でしたよね?」

「違う。名誉ガミラス人だ」

 ヒスは、強く反論した。

「それは、デスラー前総統が、自分の言うことを聞く二等ガミラス人を優遇するために作られた身分です。今の体制下では見直すべきではありませんか?」

「どっちでもよい。あの娘は、父親が戦死しており、不幸な身の上だった。縁があって私が面倒を見ることになった。それだけだ。君がどう思おうが、勝手だが」

 タランは、ため息をついた。

「そういう問題ではありません。二等ガミラス人の反乱軍への参加が相次ぎ、今問題になっているのはご存じでしょう。あなたの安全面を考えれば、処遇を検討すべき事案です。ある日、ご自宅に反乱軍のメンバーが引き込まれる可能性だってあるんです」

「な、何を馬鹿なことを」

 ヒスは真っ青な顔をしていた。

「その事は、後日話しましょう」

 タランは喫緊の課題を話す為、話題を変えた。

「スターシャ女王との交渉の状況はいかがですか?」

 ヒスは、残念そうな表情をしている。

「いや。なしのつぶてだ。やはり、テロンとの交渉を進める方が現実的だろう」

「ふむ。やはり難しいようですね。しかし、このテロンとの交渉が間に合うかどうかも疑問です。現状を踏まえて、間に合わない場合を想定して、この状況を打開する作戦を検討しました。会議にかける必要がありますが、まずは案を聞いて頂きたい」

 ヒスは憂鬱な表情を浮かべている。

「まさか、前に言っていたイスカンダルの併合の話ではあるまいな」

「そうしても良いのであれば、すぐにでも軍をイスカンダルに派遣しますが。その方が手っ取り早いですからな」

「そ、それだけは駄目だ。少なくとも、私が総統でいる間は、絶対に許さん」

「そうですか。私としては、残念です。しかし、今回のお話は、そのことではありません」

 一呼吸おいてから、タランは強い口調で言った。

「平和条約締結などの一切の活動を中断し、軍をサレザー系に戻し、帝都防衛のため軍を再編しましょう。このままでは、ガトランティスにガミラスは蹂躙されてしまいます」

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
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