今回は予想以上に文字数が長くなりました!
そして、タイトル通りあの子が大活躍!?
楽しんで頂けたら幸いです。
兼一が来てから数ヶ月。川神市にも初夏の季節がやってきた。
そんな季節の朝、一人の少女、黛由紀江が機嫌よく席に座っていた。
「ふんふん~♪」
『久々の登場でオイラの機嫌上げ上げだぜ~♪』
何故こんなに機嫌良いのかというと今朝、島津寮で由紀江が朝ごはんを作ったのだが、それがとても美味しいと兼一が絶賛してくれた。
それだけではなく、登校中川神学院の制服が夏服に変わった。その夏服姿になった由紀江を兼一が褒めてくれたのだ。
特に意識して言ったのではなく素直にそう思ったから言った兼一なのだが、由紀江はそれでもとても嬉しかった。
由紀江は今日一日良い日であると確信していた。
「では一時限目の授業を始める前に皆が楽しみにしていた席替えを行います」
「・・・・・・えっ?」
『な、なんだって!?』
由紀江の目の前が真っ白になった。
「・・・・・・・・・」
『燃え尽きた。オイラとまゆっちのハートが灰になっちまったぜ』
結果は散々なものであった。前回は兼一と隣の席だったが、今回は兼一とは全く逆方向の席にいた。
しかも、由紀江が前で兼一が後ろと後ろを振り向かなければ見えない場所だった。
「まあ、くじ引きだから仕方ないよ。休み時間とか昼休みには会いに行くから」
「は、はい・・・」
『上げて落とすとか神様は残酷な事をしやがるぜ・・・』
「ははは。それじゃあ」
兼一は自分の席へと戻る。由紀江はその兼一を目で追った。
兼一が隣の席になってからはいつも一緒にいた為、いざ離れると不安が圧し掛かる。
兼一が席に着くと周りにいるクラスメイトが話しかけてくる。
そんな光景に松風が声を上げる。
『ま、まゆっち!お、オイラ重要な事を思い出しちまったぜ!』
「えっ?一体何を思い出したのですか、松風?」
『落ち着いて、今のまゆっちと白浜っちの状況を比べてみるんだ』
松風に言われて状況分析を行う由紀江。
今の由紀江は、兼一と席が離れてしまった為、一人寂しく席に座っている。
変わって兼一は他のクラスメイトと楽しそうにお話をしていた。
「こ、これは!?」
『気づいたか、まゆっち?』
「は、はい・・・。私、考えてみたらこのクラスで兼一さん以外にお友達がいません・・・」
がくりと頭を俯かせる由紀江。由紀江は忘れていたのだ。自分が山を降りてまで川神学園に入学した理由を。友達100人計画の事を。
「黛由紀江、一生の不覚です。これではお父様に会わす顔がありません!」
『まゆっちは現状で満足し、白浜っちに甘えっちまった。・・・でも、今こそ立ち上がる時!』
「は、はい!松風!私やります!」
両拳に力を込めて気合をいれる由紀江だった。
「ま、まずはどうしましょうか、松風?」
『そうだな~。とりあえず前後左右の席はキープしたい。ここはまゆっちの笑顔を振りまこうぜ』
「わ、わかりました!黛由紀江、行きます!」
由紀江は前、後ろ、左とクラスメイトに笑顔で挨拶するが、顔をあらぬ方向に向かれてしまった。
由紀江の笑顔は引きつって今にも襲い掛かりそうな怖い顔をしていた。
「だ、ダメです・・・。もうお終いです」
『諦めるのは早いぞ、まゆっち。まだ右が残ってるがな!』
「は、はい!」
決死の覚悟で右の席を見るとそこには前を向いてぼーっとしている女の子がいた。
「・・・・・・」
「・・・!」
由紀江の視線に気づいた女の子は顔を向けた。
すかさず、由紀江は女の子に笑顔を向けた。
「(に、にごー!)」
「(ニコッ♪)」
「!!」
明らかに質が違う笑顔で返された由紀江は感動を覚えた。
この子なら友達になってくれるかもと思い、再び声をかけようと動き出そうとする。
「っ!もう!なにやってんのよ!!」
「す、すみません!?」
いきなり女の子が席を立って怒声を上げた。
由紀江は反射的に謝ってしまい固まってしまう。
「はっ!・・・す、すみません!トイレ行ってきます!」
女の子は逃げるようにして教室から飛び出してしまった。
その後、帰ってきたは良いが機嫌が悪いのか雰囲気が暗かった。結局、由紀江は女の子に話しかける事が出来ず、友達作りは失敗に終わるのであった。
時は流れ放課後。
兼一と由紀江は一緒に下校していた。
「ううっ・・・。私には友達を作る才能がないのでしょうか?」
「まあまあ、そういう時もあるよ」
落ち込む由紀江を慰める兼一。由紀江は涙目で兼一に質問した。
「どうしたら私は、兼一さんみたいに友達をたくさん出来るのでしょうか?」
「うーん・・・。僕の実体験だけど、自分の気持ちに真っ直ぐでいる事かな?」
「自分の気持ちに真っ直ぐ?」
「自分を偽ってっちゃ本当の友達は出来ないから。自分の気持ちを真っ直ぐに伝えればきっと自然と友達は出来るよ。頑張ってね」
「は、はい!頑張ります!」
「おーい!まゆっちに兼一さん!」
兼一が由紀江を励ましていると大和が声をかけてきた。
「やあ、大和くん。今帰り?」
「はい。2人で何してたんですか?何か話してたみたいですけど?」
「あっ、その・・・」
オドオドと返事がまとまらない由紀江を見て大和はある程度把握できた。
「なるほど。まゆっちの友達作りで悩んでる訳だな」
「あう・・・」
「流石、大和くん。鋭い観察眼だね」
「伊達に軍師を名乗っていませんからね。よし!ここは俺も力を貸すぜ」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ!同じファミリーだからな」
「あ、ありがとうございます!」
こうして、軍師直江大和の力が加わり、由紀江の友達作りが始まった。
翌日の放課後。
兼一たちはとあるファミレスにいた。
そして兼一たちの視線の先には由紀江が昨日好感も持った女の子がいた。
女の子の名前は大和田伊予。
兼一、由紀江と同じ1年C組で、地方転入組みである。
そして大和の独自の情報ネットワークで伊予が良くここのファミレスにいることが分かった。
「ここに何度も通って何度も偶然を装って接近するのはどうかな?同じ店をよく利用することでまず印象付ける」
「な、なるほど」
「まあ、それはさておき・・・」
大和はゆっくりと振り向くそこには兼一がいるのは良しとして___
「なんで君ら全員来てるの?」
風間ファミリー全員が集結していた。
「大和が現れるところ私はどこでも現れる!」(京
「まゆっちが無謀な挑戦をすると聞いて」(モロ
「大和が奢ってくれると聞いて!」(百代
「聞いて!」(翔一
「ドリンクバーって最高の文化よね」(一子
「ぶっちゃけると野次馬だ!」(岳人
「自分は純粋に応援だ。野次馬じゃないぞ。本当だぞ!」(クリス」
「・・・別に良いけど目立たないで。お願い。後、奢りません」
はあ、と溜息を吐く大和。
「えーっ!なあなあ、兼一さんは奢ってくれるだろ?」
「えっ?」
百代がいきなりターゲットを兼一に変えてきた。兼一も流石に予想外で呆けてしまう。
そんな時に事件が起きた。
「おい、ねーちゃん!なにしやがんだこら!」
「ひっ!?」
伊予が不良たちに絡まれている。
兼一は見ていなかったが、伊予が急に両腕を広げながら立ち上がった所を不良にぶつかってしまったようだ。
「あ、あの・・・ごめんなさい」
「ごめんですんだら警察はいらねえんだよこら!それに何イヤホン付けながら話してやがる」
「ああっ!」
不良は伊予からイヤホンを奪い取り、何を聞いているのか気になったのかイヤホンを付けて聞いてみた。
「野球中継?七浜ベイかよ。だっせえ!」
「むっ」
不良の言葉に顔色を変える伊予。
伊予は親の影響で七浜ベイスターズの大ファンなのだ。しかもその結果によって機嫌が変わってしまう程である。
「きゃあ!?」
「っ!!」
伊予の態度が気に障ったのか不良は乱暴に叩き倒した。それを見た由紀江は目を鋭くさせた。
「おいおい!そっちからぶつかったくせになんだその態度は!!屑チームのファンは屑だなおい!」
「わ、私はいいですけど七浜を悪く言わないでください」
自分よりも七浜ベイを優先する伊予はファンの鏡と言えるだろう。しかし、そんなことはどうでもいい不良は伊予の腕を掴んだ。
「ちょっと付き合えや。けっこう好みのタイプなんだぜ?」
「ひいっ!?」
伊予は恐怖で反抗出来ず不良に連れて行かれそうになった次の瞬間だった。
「はっ!」
「っ!?」
「えっ!?」
由紀江が不良に軽い当て身をして伊予を救いだした。
「な、なんだおめぇ?」
「黛さん!?」
「あ、謝ったのに乱暴はダメです。それに・・・ひ、人の大事なものを馬鹿にしたらいけません!」
由紀江は不良達に立ち向かう。不良はいきなり現れた由紀江に睨みをきかせた。
「おうゴルァ!!」
「なんだおめえ!!」
「喧嘩売ってんのか!!」
「なんだはお前達だろ?」
「ああん!・・・って、てめえは川神百代!?」
百代が現れたことで不良達が動揺する。
「あいつら、前にモモ先輩が人間テトリスした奴らじゃねえか?」
「もしかして、モモ先輩にリベンジしにきたのかな?」
「お、臆するな!俺達にはあの人達がいる!」
動揺する不良たちだが何かあるのか自信満々な表情に変えた。
「そ、そうだったな!おい、川神百代!今日がてめえの年貢の納め時だ!」
「・・・ふん。まあ良いだろう。ここでは周りに迷惑がかかる。場所を移動しよう」
百代が歩き出す。それに付いて行く不良たち。そこで兼一はある事に気付く。
「(やばい。この人達僕が介抱した奴らじゃん!と言うことは僕の顔は見られている訳で・・・)」
非常にやばい。これで不良達が慌て出したら百代や風間ファミリーが兼一を怪しむだろう。
「ん?」
「!?・・・ってあれ?」
一人の不良と兼一の目が合う。しかし兼一を無視してそのまま百代の後に付いて行った。
「も、もしかして忘れられてる?」
確かに殆どの不良は気絶していた。しかし、今の不良は兼一と対面している。もしかしたら兼一よりも長老の方がインパクトがありすぎて忘れ去られてしまったのかもしれない。
「助かったけど・・・複雑・・・」
ほっとしたが何とも言えない兼一はみんなの後に付いて行くのであった。
「さてここで始めようか?」
多馬川にやってきた一同。ここで決闘を始めるそうだ。
「へへへ、その余裕もここまでだぜ。橘の姉御!お願いします!」
「おーう出番かい?」
「な!?」
全長2メートル以上で身体が筋肉で覆われている老婆が現れた。風間ファミリーの面々が驚愕の表情をする。
「聞いて驚け!このお人はかの武道四天王の一人、橘天衣!川神百代を倒すべく雇った用心棒よ!」
「ぶ、武道四天王!?」
「あれが日本最強の一人だと言うのか!」
老婆の紹介に驚愕する一子とクリス。しかし、百代と由紀江の反応が違っていた。
「どうしたの姉さん?今にも大笑いしそうな顔をして」
「いやな、おかしな話なんだが実は・・・私は橘天衣と戦った事があるんだ」
「そ、そうよね!あたしの勘違いかと思ったわ!」
「つまり何が言いたいかというと、おまえのような天衣がいるか!第一、天衣は四天王以外の誰かにやられてもう四天王ではない」
百代の明かされた事実に不良達が唖然となる。そして偽天衣に視線を向けた。
「ちょ、ちょっと聞いてないっすよ!」
「あんたニセモンかヨ!?」
「ええい黙れ!強さは本物じゃい!こいつを倒せばいいんじゃろ!」
「ふん、まあいいだろう。相手してやろう」
「ま、待って下さいモモ先輩」
偽天衣の相手をしようとするが由紀江がそれを止める。
「最初に私のお友達(候補)が絡まれたので・・・その・・・この勝負・・・私にやらせてくださいっ!」
「・・・良いだろう。だが条件がある。力を見せろ。『お前が倒した強敵』を騙り侮辱した返礼も含めてぶちのめせ」
「モモ先輩・・・わかりました。ありがとうございます!そういうわけですので」
由紀江はいつも所持している刀を取り出して不良達の前に立った。
「川神学園1年C組黛由紀江。お相手します!」
「はあ!?俺らは川神百代に用があるんだよ!邪魔すんな!」
「で、ですよね・・・」
「ああ、そっちはご不満か。じゃあ、こうしよう。このまゆまゆに勝てれば私に勝ったとしてかまわない」
「な、なんだと?」
百代の言葉に不良達が円になって集まった。そして不良達は好条件に手を出さない訳はなかった。
「上等だ!あの女に勝てば最強の看板はこちらのもんだ!」
「ふっ・・・。では立ち会いは私自ら務めよう。それでは・・・尋常に・・・・・・はじめ!!」
百代の掛け声で由紀江対偽天衣の戦いが始まった。最初に動き出したのは偽天衣であった
「死ねえ!!」
偽天衣は懐に仕込んでいた暗器を由紀江に投げつけた。
「いきなり暗器!?」
「見た目に反してセコイ!」
「威力は十分ですが・・・」
「!?」
偽天衣の暗器はすべて叩き落とされていた。刀を抜刀した由紀江によって
「暗器を使うときは殺気を隠さなければ無意味ですよ」
「ぐっ!だが暗器だけが実力じゃないよ!喰らえ!」
偽天衣は拳を由紀江に繰り出す。だが、簡単に避けられ由紀江はそのまま懐に潜り込んだ。
「せいっ!!」
「へげっ!?」
「懐に潜り込んだ由紀江はそのまま刀を一閃。偽天衣は吹き飛ばされてしまう。そのダメージは強大で偽天衣が立ち上がることはなかった。
「すげえ!一撃だ!」
「あの巨体を・・・やるわね、まゆっち!」
「やれやれ。さあ、お前達の用心棒は倒された訳だが・・・ん?」
盛り上がる風間ファミリー達だが何故が不良たちにはまだ余裕が
あった。
「・・・武道四天王の橘が偽物だったのは驚いたが俺達にはまだ切り札がある!!」
「なに?」
「その切り札はな。俺ら不良の世界で史上最強と言われ、数年前には最大の不良グループを壊滅させた男だ!」
「『白浜』兄貴!お願いしやす!」
「お前達、待たせたな」
不良達に呼ばれて現れたのは巨大な男。さっきの偽天衣よりは小柄だがその体つきはその場にいる人たちよりも大きかった。
そして次に不良の言った言葉に兼一達は驚愕した。
「このお方は史上最強の不良『白浜兼一』さんだ!!」
「!?」
まさかの自分の偽者が現れた事に戸惑う兼一。
兼一は自分の名を騙る男をもう一度確認してみた。
その男は身長2メートル近くあり、腕や足はまるで丸太のように太い筋肉、顔はかなり厳つい。
「(僕とは正反対の人物じゃないか!?)」
自分の姿がどう間違えたらこのように伝わってしまうのだろうと思い絶望する兼一
「兼一さんと同姓同名ですね?」
「え!あっ、うん・・・凄い偶然もあったもんだね?」
「どうしたの、兼一さん?凄い汗だけど?」
「き、気にしないで」
焦る兼一に頭を傾げる大和と一子。そんな事は気にせず不良が偽兼一の凄さを自慢し始めた。
「このお方はな!ボクシング・レスリング・少林寺拳法・剣道と様々な武術を学んでおり、当時最強の不良集団『ラグナレク』を暇つぶしという理由で壊滅させた伝説の男なんだよ!」
「(ちょっと待って!その情報全然違うんだけど!?)」
兼一の習っている武術が一つもかすっておらず、ラグナレクを壊滅させたのだってそんなくだらない理由ではない
「へえ。あの『ラグナレク』か」
「姉さん、知ってるの?」
「ああ。なかなかの武闘派集団と聞いた事がある。だが、所詮不良に毛が生えた程度だろうと思って気にしてなかったな」
そういう百代だったが少し興味を持ったのか少し笑みを浮かべている。
「いいだろう。お前の相手はこの私がしてやろう」
「へっ、八つ裂きにしてやるよ!」
百代と偽兼一が互いに睨み合って構えをとった。
「待ってください」
「むっ?」
しかし、またもや由紀江に止められてしまう。
百代からでは俯いている由紀江の表情はわからなかったが恐らく偽天衣のように変わってほしいと言いにきたのだろうと予測した。
「まゆまゆ。流石に二度も譲る気はないぞ。これ以上お預けされたら___うっ!?」
「姉さん?どうした・・・っ!?」
喋っている途中で止まってしまう百代。しかも何歩か後ずさり顔が青ざめていた。
その様子を見て大和が百代の後ろから覗き込むように由紀江を見た。
その時、何故百代がそうなったのかを瞬時に理解した。
「なになに?どうしたの?___あわわわっ!?」(一子
「どうしたんだよ?___うおっ!?」(岳人
「皆、まゆっちが___ひっ!?」(クリス
「・・・・・・・・・」(京
「・・・・・・・・・」(モロ
「大和田さん。ちょっとごめんね?」
「えっ?白浜さん?」
兼一は伊予の目を手で覆って由紀江を見えないようにした。なぜならば今の由紀江の顔は般若であった。
いつも怖がられていた引きついた笑顔などまだ可愛いものだと思える程である。
そんな由紀江の顔を伊予に見せたら大変な事になる。そう思った兼一は目隠しを実行したのだ。
由紀江は今までにないほどの怒りを感じていたのだ。
初めての友達である兼一の名を騙り、ましてや偉そうにこちらを見下している。
そんな本来の兼一と正反対な事をしている男に我慢が出来なかったのだ。
「わ、わかった。奴もまゆまゆに任せよう・・・」
「ありがとうございます・・・」
誰もが怖がる由紀江の顔は百代の許可を得たと同時になくなった。その代わり、無表情で目にハイライトが消えている。
「お待たせ致しました。引き続き私がお相手致します」
「別にいいぜ。どっちみちお前ら全員潰すつもりだったからな」
「ちっ、この下衆が・・・」
「大和田さん。耳を塞いでもらってもいいかな?」
「あ、はい」
完全に怒りに性格が変わってるなと思った兼一は伊予に何も聞こえないように耳を塞いでもらうように頼んだ。
「いつでもどうぞ・・・」
「んじゃ、遠慮なく」
偽兼一はステップを踏んで見た目にそぐわない華麗なフットワークを見せる。
「や、奴はどうやらボクシング主体のようだな」
「そ、そうみたいね。あっ、タックルを仕掛けてきたわ!」
まだ由紀江の顔の事で動揺していたが、決闘が開始されたことでなんとか意識をそちらに移動させた。
偽兼一は低い姿勢からのタックルで由紀江を転ばせに行くが由紀江はそれをかわす。
「よく避けたな!なら、これでどうだ!」
タックルの勢いを殺さず、そのまま蹴りを繰り出してくる。しかし、由紀江は冷静だった。
「遅い!」
「ちっ!ぬおっ!?」
由紀江は蹴りをいなして懐に潜り込む。
偽兼一は先程の偽天衣のように刀で同じところにぶつけてくると踏み、ガードを固める
しかし由紀江は足払いを行って偽兼一を転ばせた。
そして、偽兼一の首筋に刀を突きつけた。
「な、なかなかやるじゃねえか。この史上最強の不良、白浜兼一様相手n___」
「黙りなさい!この偽者!!」
今までに聞いた事のない大声で偽兼一を叱咤する由紀江。偽兼一はその由紀江の怒気に飲まれ何も言い返せないでいる。
「私は一度だけ本物の白浜兼一さんと出会い、共に修行をした事もあります!」
さりげなく一度だけとすぐ後ろにいる兼一の事ではないと主張している辺り由紀江はまだ冷静である事がわかる。
由紀江の言葉に周りがざわめき出すがそんな事関係なしに由紀江は言葉を続けた。
「それに兼一さんが習っている武術は、空手、柔術、中国拳法、ムエタイ、武器術。ラグナレクを壊滅させたのは友を救う為と言っておりました。兼一さんはあなたみたいな下衆ではなく、心優しいお人なのです!!」
由紀江の熱弁に不良たちがざわめき出した。
「おいおい。あの人も偽者なのか?」
「いや、そんな筈は・・・」
「でもあの女が言ってる事も本当っぽいし・・・」
「認めて謝罪して下さい!この偽物!」
「・・・わ、分かった。認めるだから___」
由紀江の気迫に偽兼一は自分が偽物だと認め、土下座の姿勢に入ろうとしたその時だった。
「これでも喰らえ!」
「あっ!あいつ砂利を投げつけた!」
「どこまで往生際が悪い奴なんだ!」
「はあっ!!」
しかし、偽兼一の投げた砂利は由紀江の気合いによって吹き飛ばされる。
由紀江はすかさず攻撃を仕掛けた。
「十二斬!」
「ぎゃああああぁぁぁぁ!!?」
由紀江の十二もの斬撃が偽兼一に襲いかかり全てが直撃した。
偽兼一は耐えられる筈もなく、吹き飛ばされて意識を失った。
「け、兼一の兄貴!?」
「あいつは本物だと思ってたのに!」
「お、お前ら!に、逃げ___」
「そんなこと言うなよ。私と遊ぼうじゃないか?」
「「「!!??」」」
偽兼一がやられた事で退散しようとする不良たちだったがそれを百代が許さなかった。
「今日は2度もお預けされてムシャクシャしてるから覚悟しておけよ?」
「「「ぎゃああああぁぁぁぁ!!??」」」
「・・・・・・・・・」
未だに怖い顔をしていて誰も話しかけられない状態の由紀江に兼一が動いた。
「まゆっち」
「!け、兼一さ___はゔっ!?」
由紀江は視線を向けると兼一に両手で顏を挟まれた。
「顔が怖いよ。でも、僕の代わりに偽物を倒してくれたことは嬉しかった。ありがとう」
周りには聞こえないように小さな声でお礼をする兼一に由紀江は顔を赤らめる
「それにその顔じゃ今から行う事に失敗しちゃうからね」
「あっ・・・」
もう大丈夫だろうと兼一は両手を話すと由紀江にある方向を見させる。
そこには伊予が心配そうにこちらを見ている
由紀江は兼一の目を見ると、兼一は黙って頷く。由紀江はそれを見て覚悟を決め歩き出した。
「大和田伊予さん!わ、わわわわ私とお友達になって下さい!」
「・・・・・・」
覚悟を決めて告白した由紀江。少し唖然とした伊予であったは笑顔で答えた
「うん!宜しくね、黛さん!」
川神学園に入学して数ヶ月。風間ファミリーと兼一以外に初めての友達が出来た瞬間であった。
如何でしょうか?
漫画の流れで書いてみました。
まあ、漫画の流れだと体育祭が先なんですが私の都合でこっちを先にした次第です!
次はどうしようかな?
まだ考え中ですが早く更新出来るように頑張ります!
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