「さて、ここが川神市じゃ」
「ここが・・・・・・」
長老と出発した兼一は目的地である場所へと到着していた。
「どうした兼ちゃん?疲れているようじゃが?」
「そ、そりゃ梁山泊からここまで全部走ってきましたからね・・・・・・」
膝に手をつきながら言う兼一。なんと2人は約100kmはあるであろう道のりを走ってきたのだ。そのかかった時間は一時間半ちょっと。
「まだまだ修行が足りんのう。まあ、昔に比べたら大した進歩かのう。ほっほっほっ」
「は、ははは」
貶して褒める長老の言葉に失笑で返す兼一。
「さて、兼ちゃんやまずは依頼人に会う前に護衛対象を見てもらおうかの」
「えっ?」
長老が指さす方向へと目を向けるとそこは河川敷で人が集まっている。そしてその中央に集まった原因であろう人を確認した。
「「「ぎゃあああああああああ!!??」」」
「あははははっ!」
約50人はいるであるだろう不良たちをまるでゲームでありそうな感じでぶっ飛ばしていく。しかも確実に急所へと打ち込み不良たちを撃退していく。そして
「よしっ!人間テトリス完成!!」
満面の笑みで言う彼女だが、その足元は美少女の足元にはあってはいけない肉の塊がそこにはあるのであった。
「もしかして、表世界最強の……」
「そう、あの子が護衛対象の『川神百代』じゃ」
「えええっ……」
兼一は再び彼女の方へと向く。彼女は友達であろう人たちと話していた。さすがの兼一も人間テトリスを作り上げる所業に戸惑いを隠せなかった。
「さすがに表世界最強ですね。あの数を一瞬で・・・・・・」
「うむ。まあ、兼ちゃんでもあのくらいはできるじゃろう。それよりも落ち着きなさい」
「は、はい」
ぶるぶると震える手をゆっくりと緩める兼一。
「あの人間テトリスとやらになった者たち助けたいのはわかるがしばしの我慢じゃ」
「わ、わかっています。今は姿を見せてはいけないんでしたよね?」
「うむ。依頼人の頼みでのう。まあ、あの者たちの自業自得ではあるし、少し反省してもらうとしよう。それと兼ちゃん、少し気を収めなさい。じゃないとあの子が気づいてしまうぞい」
「は、はい。すみません」
「ん?」
「?どうしたの、姉さん?」
「いや、なんでもない・・・・・・」
百代はいつもの仲間たちと供に学校へと歩き出す。
(今、何か強い気を感じたような気がしたんだが気のせいか?)
「す、凄いですね。あの距離で些細な気を感じ取れるんですね。」
「うむ。どうやら彼女は気の運用は兼ちゃん以上のようじゃ」
「ま、まじですか・・・・・・」
仮にもマスタークラスになった兼一。気の運用も一般人より上である。だが、百代はそれ以上だった。長老が言うのであるならばまず間違いではないだろう。
「じゃが、それ以外は兼ちゃん以下じゃ。安心せい。」
「は、はあ・・・・・・」
「さっさとこやつらを手当てして依頼人の所へ向かうとするかのう」
兼一と長老は話しながら人間テトリスとなった不良たちを解放し、手当てしていた。もちろん、百代や大勢の人たちに気づかれないように。
「はい!・・・ん?」
急にバイクの音が聞こえ振り向くとそこには百代にやられた不良の1人がバイクに座っていた。兼一はもちろんその男に声をかけた。
「おい!何をしているんだ!?」
「うっせえバカヤロウ!このまま女に負けて引き下がれるか!」
「いや、あなたも体験したでしょ?あなた達じゃあの人には敵わないって」
「うっせえうっせえ!あいつに敵わなくてもあの周りにいる奴らを利用すれば!!」
「!!」
不良はバイクを発進させる。だが、何故か途中でピタッと止まってしまう。
「あ、あれ?なんで動かねえ?壊れたか?」
「おい、あんた」
「ああ?なっ、なにいいい!?」
困惑しながら振り向いた不良はその光景を見て驚愕した。
「そんなことは僕が許さないぞ!」
それはバイクの後輪を片手で持ち上げて進行を止めた兼一の姿だった。
「あ、ありえねえ!?仮にも今40キロは出してたんだぞ!それを片手で!?」
しかも先ほどからアクセルを全開で回しているのだがビクともしない。
「不良さん。僕はこれ以上皆さんに無駄な争いを起こしてほしくない。それに他に関係ない人たちまで巻き込もうとするならば僕は容赦しないぞ」
「ぐっ・・・・・・!?」
「ほっほっほっ。どうやら少し痛い目を見んとわからんようじゃのう」
「ひいぃぃぃぃ!?」
兼一の背後から現れた長老にびっくりする不良。2mもある巨人の老人が急に現れれば仕方ないと言えば仕方ない。
「兼ちゃん」
「はい!」
長老の声とともにパンと大きな音が鳴り響く。不良はその音がなんなのかわかっていたが信じられずにいる
「た、タイヤが破裂した!!??」
人間がリンゴを片手でつぶすには握力が約60キロは必要らしい。だが、タイヤをつぶすなど一体どれほどの握力が必要なのか不良には全く理解できない。
唯ひとつ理解したのはこの2人には敵いっこないということであった。
「さて、若いの。せっかく拾った命じゃ。無駄に散らす必要もないと思うのじゃが?」
「は、はい!おっしゃる通りです!申し訳ございませんでした!!」
不良はすぐにバイクから降りて土下座をしながら謝った。
「兼ちゃんや。不良の手当ては済んだからそろそろ依頼人の所へと向かうとしようかのう」
「あ、はい。わかりました。不良さん、もうこんなことしては駄目ですよ?」
「はい!すみませんでした!!」
兼一と長老は依頼人が待つ場所へと向かうのであった。
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