「ここが川神院・・・・・・」
兼一と長老は目的地である「川神院」へと到着していた。兼一が最初に思ったことはまずでかい、だ。
2人がいるところは入り口である門なのだがそこからもう見上げるぐらいでかいのだ。梁山泊でも結構でかいし、敷地も広いのだが川神院はその比ではない。
「相変わらず盛んなところじゃのう。元気な声聞こえてくる」
「そ、そうですね」
兼一もわずかであったが聞き取れた。「せいっ!やあっ!」と掛け声がかけられ修行をしている者たちの声である。門下生の数もどうやら比較にならないようだ。ちなみに梁山泊の門下生は1人(兼一)である。
「さて、そろそろ依頼人が来るはずなのじゃが…・・・」
「お待たせしたのう、風林寺殿」
ごごごっ、と門が開くと1人の老人が現れる。白い袴を着て長老以上の立派なひげを生やしている。
「ほっほっ、いや今来たところじゃ川神殿久しぶりじゃのう」
「そうですな。まあ、立ち話もなんじゃ。中でお茶をしながら話そう・・・・・・依頼についての」
「・・・・・・はい」
2人は老人の案内により川神院へと入るのであった。
「さっそくで悪いのじゃが依頼についてを・・・・・・」
「おっと、川神殿。悪いがまずは自己紹介じゃ。兼ちゃん、この方が今回の依頼人でワシの友人『川神鉄心』殿じゃ」
「これは失礼したの。わしがこの川神院の総代で依頼人の川神鉄心じゃ。よろしくの」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「元気がよい青年じゃ。してこの者は何者じゃ?」
さっきから鉄心は気になっていた。無敵超人が連れてきた男は一体何者なのかと
「申し遅れました。僕は白浜兼一。梁山泊の一番弟子です!」
「なんと!?」
鉄心は思わず目を見開いて驚いてしまう。風の噂で梁山泊に弟子がいることは聞いていたがこのような青年だとは思っていなかったようだ。
「そして今回の依頼もこの一番弟子が受け持つ」
「なっ!?本気で言っておるのか、風林寺殿!?」
ばんと机を叩きつける鉄心。その顔は信じられないと言った表情をしている。
「本気じゃよ。何か不満があるかの?」
「当たり前じゃ!孫娘の命がかかっているというのに、それを梁山泊の一番弟子とはいえこんな若者では不満に決まっておる!それに弟子の命も危ういのじゃぞ!」
「勿論、それも承知の上。わしらの弟子は快く引き受けてくれたわい」
「ほぼ強制的でしたけどね。それに気になるものもありますし……」
「気になるもの?なんじゃそれは?」
「彼女の目に宿る闇です」
兼一の言葉に鉄心はその立派な髭を撫でながら兼一をみる
「刺客に襲われる襲われない以前に彼女は危険な物を宿しています。このままでは彼女は自分で自分の身を滅ぼす、そんな気がします」
「……確かに百代は最近ヤバい目をする時がある。それは自分と同等に闘える者が現れないための欲求不満が原因じゃろう。じゃが、阿奴は知らん。自分より強い者なとごまんといるとな。まあ、それも当然じゃ。わしがそのようにしたのじゃから」
「?どう言うことですか?」
「百代が産まれるちょっと前くらいかの。わしは『闇』と名乗る奴らと戦ったことがある」
「!?」
鉄心の言葉に顔色を変える兼一。
「闇」とは世界の裏社会に暗躍する悪の武闘組織である。
「そのときわしは全く相手にもならなかった。たまたま通りかかった風林寺殿に助けられなかったらこうして孫娘の顔を拝むことはなかったじゃろう」
「そんなことが・・・・・・」
「百代には闇と戦ってほしくない。孫娘が殺される所など見たくないのじゃ。だからこそ風鈴寺殿に依頼を頼んだんじゃ」
「ふむ、わしも孫娘がいるから気持ちはわからなくもないのじゃが・・・・・・本当にそれだけかのう?」
「なに?」
長老の言葉に鉄心は目を向ける
「えっと、どういう意味ですか長老?」
「うむ、孫娘に戦って欲しくないのなら武術を習わせないなり遠ざけるなりすればよい。そうしなかったのは恐らく川神殿には逆の考えだったのではないか?」
「逆の考え?」
「闇の奴らを倒せるほどの強さを身につけてほしかった、そう考えたのではないかのう?」
長老の話に鉄心はただ黙って聞くだけだった。そのまま長老の話が続く。
「でも孫娘には恐らくサボり癖があった。修行も真面目に行わなかった。その結果が表世界最強の称号、じゃがその力では闇には勝てない。そして闇を知られたくないもう一つの理由が生まれ出したのじゃ」
「戦いへの欲求不満・・・・・・」
「そうじゃ。兼ちゃんも感じたじゃろう?彼女の心の闇を」
「はい・・・・・・。それに百代さんの一発一発の攻撃に殺意がありました。そしてそれを楽しんでいるかのようにも・・・・・・」
「うむ。その感情や行動は限りなく闇の者たちと近い・・・・・・。川神殿、お主が本当に恐れているのは孫娘が殺されることではなく、孫娘が闇へと堕ちてちまうことじゃないかのう?」
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