Disruptor   作:てんぞー

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Anger and Hatred - 7

『めっ、だよ』

 

 控室のベンチに座っていると、オリヴィエの声が聞こえてきた。

 

 その姿は見えないが、横に座っているような感覚を覚える。ヤッパリ頭がおかしくなってしまったのだろうか? ついに起きたまま夢を見る様になったのかもしれない。それとも、今まで夢で会えていたこの力が成長したのだろうか? 少しだけ―――本当に少しだけ、自分の中にある()()を感じられる。この力が源となって、自分とオリヴィエを結んでくれている。或いはこれも狂気が生んだ幻覚なのかもしれない。

 

「なにが、かな」

 

『シド、体を大事にしてない』

 

「いや、だって」

 

 だって、と虚空に向かって呟く。そこにクラウスがいないのが幸いしているだろう。彼は今、他の試合の情報収集の為に出ている。その間、控室から出られない自分はただ座っているだけだったが、オリヴィエがその寂しさを紛らわせてくれる。というか、彼女にも先ほどの試合が見えていたらしい。どうやってだろうか?

 

「見えてたんだ」

 

『うん。古代(こっち)では別に寝ている訳じゃなくて、ちょっと詩集を読みながらぼーっとしてただけなんだけどね』

 

「詩集? ウィスタって人の?」

 

『うん。新作をくれたの。最近八股が発覚して5人同時に刺されて入院したんだけど、その時に貰ったんだ』

 

「何度聞いても凄い」

 

 自分とは一生縁のない事だろうなぁ、なんて事を考える。だってそんなにモテる程良い人間ではないし。そのウィスタという人物、今度ベルカの歴史書でも漁って調べたら最終的な女性経歴が出そうで面白そう。

 

 まぁ、それはともあれ、

 

『見れたよ。シド、わざと攻撃受けてたよね』

 

「それが一番強いからね」

 

 自分の肉体のスペックは良く解かっている。どれだけ怪物的なのかも。だから一番強い使い方も解っている。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事だ。攻撃を受けた瞬間、攻撃する側は硬直する。物理的に動くことのできない状態になるのだから、それを耐えながら殴り返すのが一番楽で強い。そしてこの肉体は並みの攻撃では傷すらつかないのだから、あえて受け止めながら一撃を叩き込むのが一番楽だ。だからそういう戦闘スタイルが基本となっている。回避も防御もいらない。ただ単純に正面から受けつつ殴り返す。これで全てに決着がつく。

 

『うん、ダメだよそんな戦い方したら』

 

「えー」

 

『えー、じゃありません! そんな事やってたら事故で体を悪くしても知らないよ!』

 

「そう言われてもなぁ」

 

 これが本当にシンプルに、最適解なのだ。これ以外の戦闘手段はいらないというレベルで。それに精神的にも優位に立てるのだ。相手が繰り出してくる一撃一撃、必殺も含めてそれらを全て受けながら直進して必殺し返す。これで相手の肉体も精神も完全にへし折れる。そうやって制圧するのが最もこのスペックを利用する戦い方なのだ。

 

 なのだが、それがオリヴィエは気に入らなかった様で、

 

『でも、見てる方は辛いし、かっこ良くもないよ』

 

「む」

 

『シド、わざと苦しいやり方選んでない? そういう自罰的なの私はどうかと思うよ』

 

 オリヴィエの言う通りだ。ある程度わざとやっている部分もある。だって、これ以外に自分の武器と言えるものはないのだから。これを押し出すしかないじゃないか。だけど、オリヴィエがそれが嫌だって言うなら俺はそれでいいと思う。

 

「解ったよ、戦い方を変えてみるよ……もうちょっと体を大事にするよ」

 

 ほっとした、安堵の声が聞こえた。自分は、オリヴィエに限っては約束を破らないようにしている。オリヴィエに嫌われたくないのが一つ、そしてもう一つは―――彼女だけは、自分の理解者と共犯者だけには絶対に裏切れなかったから。だからオリヴィエがそう望むのであれば自分は……それで良い、と思っている。

 

『うん、良かった……シドが怪我する所とか、見たくないからね!』

 

「解ったよ、解った」

 

 苦笑しながら呟き、はぁ、とため息を吐いた。

 

「ヴィヴィには勝てないなぁ」

 

『違うよ。君が凄く優しいだけだよ』

 

「どう、だろう。僕の本性はもっと―――」

 

 と、言葉を続けようとしたところで足音が聞こえ、気配を感じ取る。馴染みある気配に直ぐにオリヴィエの気配が霧散し、それと入れ替わるように扉を開けて控室にクラウスが戻ってきた。その手の中には包みなどが抱えられており、それをこっちへと向かって投げ渡してくる。零さないように、落とさないようにつかみ取りながら包みを剥いて確かめる。暖かく、甘い匂いが包みを開けると漏れ出してくる。この食欲を刺激する匂いは―――。

 

愚妹(ハイディ)からの差し入れだ。貴様の好きなベリーパイだぞ。感謝しろよ」

 

「終わったらありがとうって伝えなきゃなぁ」

 

 包みのナプキンの中から出てきたのはベリーパイ。特にブルーベリーやクランベリーが混じった所にカスタードも入っている甘いパイが大好物だ。それとは別にレモンパイも好きだ。後ピーチパイも好き。もちろんアップルパイも大好物だ。パイ類は全体的に好きだったりする。ヴィクターは中々作ってくれないのだが、ハイディは割と会うたびに用意してくれるので、普段は作らないヴィクターと良く作ってくれるハイディでバランスが非常に取れていると思う。

 

 つまりパイは美味しい。むしゃり、とほおばるように口の中に入れる。口の中に広がるカスタードとベリーの味に唸りつつ、心がちょっとだけ幸せになる。それをクラウスが苦笑しながら眺めていた。クラウスもクラウスで軽く食べ物と飲み物を取ってきたらしく、コーラを飲んでいるのが見える。横に座りながら他の食べ物を置いておく。

 

「しっかし、本当に幸せそうに食うな貴様は」

 

「美味しいものを食べて幸せを感じない奴は心が壊れてるよ」

 

「良かったな、貴様はまだ正常らしい」

 

「みたいだね。ハイディの作ってくれるパイは美味しいから嬉しいよ」

 

 美味しいものは良い。食べると簡単に幸せになれる。それが一時のものだとはいえ、その瞬間の幸福感は嘘じゃないのだから。だけどこの程度で幸せを感じられる自分も、割と安い奴なのかもしれないなぁ、と、ハイディの差し入れのパイをあっさりと完食し終わってしまう。あっさりと食べ終わってしまうとちょっと勿体ない事をしたと感じる。横に置いてあったドリンクを手に取る。中身を飲んでみれば―――なんてことはない、普通のスポーツドリンクだった。

 

「あぁ、そうだ。ヴィクターは勝ったぞ。アイツも圧勝だったな」

 

「まぁ、ヴィクター倒せるレベルがいたなら相当ヤバイのが混じってる事になるからな」

 

「一応上の年代にはやばめのもいるが、そういうのは既に従士になるか、騎士になるかで就職確定しているからな。マークしなきゃいけない奴はヴィクター以外いなかった。他の連中は適当に何時も通り処理すればどうにでもなるさ」

 

 となると決勝までは雑魚の相手をするだけか、とちょっと残念に思う。同世代で結局、自分を敗北させられそうなのは身内連中だけだった。世界は予想外に狭いのかもしれない。その結果もこのベルカという土地を出れば変わるのだろうか? それともこの外もあんまり変わらないのだろうか? どっちにしろ、どうあがいても自分の将来―――その結末は変わらないような気がする。

 

 父さんと母さんは頑張ってくれた。

 

 だけど、それ以上に回りの圧力や権力が強すぎた。

 

 実質、選択肢は存在しないようなものだと思っている。

 

「まぁ……いいか。どうせ僕が勝つし」

 

 どうせ、勝てる。その言葉の絶望感は有象無象には通じない。理解できるとして、ジークとクラウスぐらいだろう。だからクラウスは何も言わない。勝ててしまう。それが、酷く退屈だった。強く生まれ、そして更に強くなるために鍛錬を欠かさずに続けてきた。どうすれば強くなるか、どうすれば更に飛躍できるのか。何が自分に足りず、何で補えば良いのか。そんな事をずっと考えながら鍛えてきた。カルマギアが武門をやめても、その継承されてきた知識が消えるわけではないのだから。

 

 だから、強くなり続ける。その努力に意味も価値もなくても。蹂躙に蹂躙を重ねて自分の強さを証明する。そして証明した果てにそれが無価値である事を宣告される。

 

 それが、この戦いのすべてだ。

 

 等しく―――無意味。

 

「ま―――俺も色々と言えた義理じゃないが」

 

「うん?」

 

「さっさとベルカ捨てて魔法のない世界にでも行け。たぶん、それがお前が一番幸せになる方法だ―――全部忘れてしまえ」

 

 クラウスの言ったその言葉が凄く、凄く魅力的に聞こえた。

 

 血筋も、魔法も、文化も、全部忘れて魔法の存在しない世界へと引っ越す。きっと、父さんに言えばそれを叶えてくれるだろう。実際、そういう準備をしてそうだなぁ、と思っている。だけど、

 

 ベルカ、だけなのだ。

 

 僕と、彼女の繋がりは。

 

 この地から去る事はまるで彼女とのつながりを断ち切るようで―――それだけは、それだけは出来なかった。依存しているのかもしれない。いや、実際しているのだろう。この苦悩を完全な形で分かち合う事の出来る彼女に対して。だけどそれ以上に、彼女の心を救いたかった。だからこの土地から離れたくはない。離れたらこのか細いつながりが途切れてしまいそうで、

 

 そうしたら、誰も、彼女の本心を知らずに彼女が世を去ってしまうから―――。

 

「できたら、いいのになぁ」

 

「俺は応援するぞ」

 

「そうじゃなくてさ……」

 

「あぁ……心残りがあるのか」

 

「うん。だから離れたくても……ね」

 

「ならそれをどうにかしろ」

 

 それが出来たら、どれだけ楽なのだろうか。彼女を―――オリヴィエ・ゼーゲブレヒトを死の運命から救う事は。その魂に安らぎを与える事は。どれだけ、困難な事なのだろうか。それができるのであれば、

 

 この魂、燃え尽きようとも構わない。

 

 たぶん、そう思えるほど彼女に恋をしている。

 

 

 

 

『―――さあ、ついにやってまいりました第二ラウンド!』

 

 ステージへと再び上がる。ステージの反対側には杖と剣を装備した戦装束姿の少女の姿が見える。少女、と表現しても年齢は自分より上だろう。体格からしておそらく12歳前後、この選抜では年齢が高い方だろう。ここまでくると年齢差からの身長差等も入ってきて、下の年代相手にリーチで有利が取れる。ただ相手は確か純魔導師タイプに近いとクラウスが言っていたのを思い出す。

 

 持ち込んだ槍を一本、片手で回転させてから肩に担ぐ。これ一本で決着をつける。

 

『まさかのまさか、魔法を使えない不具者であるカルマギア選手が一回戦を圧倒! その姿はハンディキャップである事を感じさせない蹂躙! 魔法、そんなものは必要ないと言わんばかりの絶対強者っぷりを証明してくれた! だが対するは一回戦で徹底したアウトレンジからの連射で力の差を見せつけたエレノア選手だ! 連続シュート! バインド! そして流れる様なバスターは防ぎようがない! 魔法耐性を付けられないカルマギア選手はどうする!』

 

『結果は見えているような気もしますけど、ね』

 

 相手を見る―――つまらない闘いになると思った。

 

 顔も、名前も特に覚える価値もない。ステージの上のすべてが灰色に見える。

 

 ステージの反対側、相手が頭を此方へと向けて軽く下げた。

 

「カルマギアさん、こうやって戦える事を光栄に思います」

 

「……やめてください、僕の方が年下ですから」

 

「いえ、ですが貴方には貴い血が流れていますから。貴族の端の端とはいえ、無視はできません」

 

「そっか」

 

 まぁ、そうか。そうだよな。そうなるよなぁ、と呟く。めんどくさい。結局どこに行ってもしがらみだ。血の宿命からは、ベルカにいる限り逃れられない。この大地そのものが呪われているのだろうか。それとも人という種がどうしようもないのだろうか。

 

 まぁ、しゃーないと呟く。

 

 槍を肩に担いだまま、空いている左手を女に向けた。そして指先をくいくい、と曲げる。

 

「先手は譲る。来い」

 

 その言葉に怪訝な表情を女が浮かべた。

 

『おーっと、カルマギア選手挑発したぁ! しかし良いのか? これは良いのか!? アウトレンジ相手に先手を譲って!』

 

『まぁ、何とかなるんでしょうねぇ……』

 

 解説席にいる聖騎士の方はどうやら結末が見えているらしい。力の差がありすぎて、負けるほうが難しいというレベルだ。だから余裕を見せつける。自分の方が格上であると。それを傲慢だとみる人間もいるだろうが、違う。これは()()()()()だ。強さを持つ者は、望まなくてもそれ相応の振舞いを要求される。

 

 強さがあるのに、小心者の様に振舞う奴など恰好が悪すぎる。

 

 だから威圧するのだ、言葉と態度で。自分が圧倒者である、と。

 

「……参ります」

 

 やはり若い―――容易く挑発に乗る。これがジークやヴィクターだったら一撃で殺しに来るために溜め始めるし、クラウスだったら姿を隠して罠をハメる為の準備に入るだろう。そこで素直にシュートバレットを相手は浮かべ、

 

 合計五つ、それを同時に放ってきた。

 

 流石魔法、理不尽な速度を持って一気に接近し、直撃する為の軌道を描く。避けなければ確実に命中するだろうし、避けたとしても誘導によって背後から襲い掛かってくるだろう。だが避ける必要はない。魔法のダメージなんてもの、天然の抵抗力を備えるカルマギアの肉体であれば、防御なんてしなくても勝手に軽減されて耐えられる。

 

 そもそも、魔法の非殺傷ダメージなんてほとんどが()()()()()()()()()()()()()()()()が大半なのだ。それが変換資質によって属性を帯びる事で破壊力の高い現象に変化したり、バスターやスラッシュなどの形を得る事で肉体へのダメージを生み出せるようになる。シュート単体だと破壊力は低く、牽制として意識を削るのがせいぜいだ。

 

 だから避ける必要はない。

 

 だが、

 

「ヴィヴィに……受けるなって言われてるからな。理不尽と暴力って言葉の意味を刻め」

 

 正面から素直に飛んでくるシュートバレットを見て、槍を下ろしながら一回転させる。迫ってくるバレットにくるくると回転させた槍を合わせる。触れ、弾けないようにそのまま槍の刃先、柄、そのすべてにバレットを乗せて、回転させるように誘導して乗せる。使うのは覇王流の奥義の一つ、クラウスから教わった旋衝破、バレットシェルを壊さずにつけとめてそのまま相手に返すもの。それを()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

()()()()()

 

 槍に張り付くような状態でバレットが弾ける。魔力リソースとなったそれは引きずられるように捕獲され、()()()()()()()()()()()()()()。纏う様に、流し込むように得物に受け止めて流す攻撃を注ぎ込み、相手の使った魔力リソースをそのまま奪って自分の武器の強化へと流し込んだ。それによって魔力を持たなかったディザイア産の使い捨て槍デバイスが魔力を纏った。

 

「―――えっ?」

 

 その様子を、信じられないものを見る様に相手が見た。

 

 明確な隙を逃すほど甘くはない。槍をそのまま引きずるように前へと向かって突き進み、正面にいる姿を空間を破壊するように振るう。

 

「よっと」

 

「っ、うっ、くっ……!」

 

 ぎりぎり、という様子で横に姿が弾ける。フラッシュムーヴによる瞬間的加速離脱は肉体への負担が強く、キャスタータイプには辛い手段だ。それを切ってきたという事実は純粋に相手にとってこの接近は予想外であり、対処する手段が他になかったという事実である。だが流石ここに出てくるだけあり、

 

 離脱するのと同時にバインドが発動している。体をバインドが二つ繋ぐ。両足を止めるバインドを、

 

 そのまま力任せに引きちぎる。

 

「ならっ!」

 

 バインドが追加される。首、両手、両足に追加される。空間に対して固定するようなアンカー型マルチロックバインド。それが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。一歩、一歩、踏み出すように前へと向かって、空間に固定されているはずのバインドを空間もろとも引きずるように前に進む。

 

「嘘、でしょ……?」

 

「魔法が使えればもっとスマートなやり方もあるんだろうけどな」

 

 あいにくと、これが自分のやり方だ。

 

 身体能力の暴力で正面から圧殺する。

 

 これが、カルマギアの流儀だ。

 

「さあ―――その生に幕を引こうか」

 

 バインドを全て引きちぎる。正面へと向かって一気に飛び込み、破壊された鎖が周囲に漂う。それを察していた少女がシールドを張るも、接近と同時に放つ蹴りでそれが粉砕される。飛び込むように来た正面、右手で槍を振り上げる。

 

「砕け散ろッ!」

 

 上から下へのシンプルな振り下ろし。それがステージを粉砕し、その破片を弾丸の様に上へと向かって吹き上げながら周辺を汚す。二度目の加速で脱出する姿を視界で常に捉えている。ステージへと振り下ろしたままの槍を軸に、体を持ち上げて、

 

 空間を、ステージの破片を弾丸として蹴り飛ばす。

 

「ははっ、どうした逃げ回るだけか!」

 

 戦うとどうしても地が出てくる。闘争本能が顔を出し始める。忌むべきこの性が溢れ出てくる。必死にそれを抑え込みながらどうしても、獰猛な笑みが顔に浮かぶのを自覚してしまう。

 

「ならいっそ踏みつぶしちまうか」

 

 シールドによって破片がガードされ、ショートバスターが放たれる。それを発射と同時に横へと体を投げる事で回避しつつ、ショートバスターに槍を突っ込んで引きずり、バスターを削るように魔力リソースをむさぼる。槍が悲鳴を上げる。この程度でぶっ壊れそうになるとか軟弱な得物だ。やはり、ディザイアが失敗作だと評価するのも理解できる。ぴきり、と音を鳴らして槍に罅が入るのを無視しながら連射されるバスターを右へ、左へと体をスライドさせながら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()粉砕する。

 

『め、滅茶苦茶だ……!』

 

『これが古代ベルカから続く武門の一つです。いえ、元ですが。この世代で言えばカルマギア、ダールグリュン、エレミアが同ランクの武門の血筋ですね。ひたすら戦い、戦乱を生き延びた乱世の武人の血筋。それが現代にシステムとノウハウを継承して今も残っているんです―――ぽっと出の天才程度ただの餌ですよ』

 

 突破する。シールドを片手で掴み、そのまま圧壊させながら真正面、顔を合わせる。

 

「がおー」

 

「―――」

 

 顔面蒼白の姿を見て、そのまま頭突きを叩き込む。額が割れて血があふれ出す。後ろへと向かって倒れる姿、その顔面に蹴りを叩き込もうとして―――姿が消えた。

 

 いや、下へと下がった。バインドで無理矢理体を引きずったのが見える。お、意外と楽しい。そう思いながらゼロ距離から放たれる、弱めの収束砲撃を杖型デバイスを踏み砕く事であらぬ方向へと攻撃を捻じ曲げる。すかさず剣が首を狙ってくるが、

 

「……っ!」

 

「残念、見えてる」

 

 左手の()()()()()()()()()()()()()()()

 

 理不尽、蹂躙、圧殺、暴力、素質と才能というものからくる絶対的な力の差と絶望。

 

 だがこれだけ強くても、まるで意味はない。

 

「何もかも、無価値だ。俺も、お前もな」

 

 そのまま剣をへし折る。顔面にへし折った状態で拳を叩き込む。後頭部がステージにワンバウンドしてから―――その姿を上へと向かって蹴り上げた。女だから容赦? そんなクソみたいなフェミニズムは戦いでは役立たないので習ったことがない。だから軽く打ち上げる様に蹴り上げて、

 

 そのまま天井に叩きつけてから落下し始める姿を見る。

 

「じゃ、全部返すぜ」

 

 食らった魔力を全て貯蔵している槍が、その暴力的すぎるやり口に耐えきれるはずもなく、毎秒少しずつ崩壊を始めている。だがどうせ使い捨てる前提で使っているのだから、壊れる事に興味なんてない。その代わりに握っている柄に力を更に込め、音を立てて握り砕く。だがまだ霧散しないように力技で握りしめ、

 

 女を飛び越えた所で下へと向かって蹴り落とすように足場にして、ステージへと向かって叩き落とす。

 

 その姿へと向かって空中で力を練り上げて、全力で投擲する。手を離れる瞬間には槍が完全に崩壊する。だがそれに蓄えられたエネルギーは純粋な槍の形状を生み出して、ただの破壊としてその役割を全うする。

 

「Auf Wiedersehen」

 

 降り注ぐように叩きつけられた破壊が貫通しながらステージをその中央から粉砕し、体力も精神も魔力も戦意も、すべてを食い殺すように破壊する。

 

 埃の中へと落下して行き、着地の衝撃で舞い上がった埃を一気に散らす。

 

 そうやって露出するのはぼろ雑巾の様に転がる少女の姿であり、動くことのないその姿に興味を失う。

 

「脆い」

 

 それだけ呟き、背を向ける。

 

 勝負は、続く言葉を聞く必要もなく決まっていた。




 戦闘中の作業用BGMはPrison Laborでしたね……やっぱ戦闘はロックなBGM聞きながら書くのが一番捗る。捗った結果尊厳が破壊されてるんですがそれは。

 シド君の本性は破壊魔。戦うと楽しくて楽しくて無性に壊したくなる。だけどそれが嫌だから普段はそれを隠すように言葉遣いも一人称も変えている。だけどテンションが上がると全部吹っ飛ぶ。
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