「一年を通して狂い咲く藤の花……まさか、ゴルゴムの仕業か!?」BLACK死す!? 砕かれたキングストーン!(タイトル詐欺は(ry))   作:葛城

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よいお年を


狂い咲く藤の花……やはり、ゴルゴムの仕業か!?(タイトル回収)

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………とはいえ、仮面ライダーの力を得たとはいえ、無限に戦い続けられるわけもない。

 

 

 野を駆け、山を駆け、川を渡り、森を抜けて、三日三晩。

 

 

 仮面ライダーBlackが持つ優れた直感によって、この3日間の間に2体の怪人を見つけ出し、撃退してきた。

 

 だが……さすがに、これまでの無理が祟ってきたせいか、無視出来ないレベルの疲労を覚えるまでになっていた。

 

 

(……さすがに、疲れてきたな)

 

 

 アクセルを捻っていた手首を戻し、緩やかに減速する。合わせて、どっどっど、と激しく唸っていたエンジン音が静かになる。そうして、ゆっくりと山中の半ばにて停止した。

 

 ……最後に、バイクのエンジンを切れば……辺りは暗闇に包まれ、穏やかな夜の喧騒が戻ってきた。

 

 切り裂いた風の音も止まり、辺りからは虫の音色が聞こえる。先ほどまでバイクのライトによって照らされていた樹木をチラリと見やった太郎は、バイクを降りて……大きく、伸びをした。

 

 

 ……仮面ライダーとなった影響なのだろう。

 

 

 純粋な肉体の強さ……とりわけ、体力という一点においては、常人をはるかに上回るモノになっているのを、太郎は自覚していた。

 

 でなければ、三日三晩も不休のままバイクを乗り回せるだけでなく、怪人と戦って撃退できるわけがない。

 

 

 しかし、あくまで上回っているというわけであって、無限ではない。

 

 

 特に、精神的な体力……つまり、気力に関しては、以前とそこまで変わらない。なので、そういった疲労感だけは積もってしまうのであった。

 

 ……どっかりと、樹木に背中を預けるようにして座り込む。深々と吐いた溜め息には、疲労感がこもっていた。

 

 

「……風呂に入って、さっぱりしたいな」

 

 

 ポツリと零れたその言葉は、太郎の切実な本心でもあった。

 

 毎日風呂に疲れる現代とは異なり、大正時代ではそう易々と風呂に入れるわけではない。中でも、毎日風呂を利用するのは、それなりに裕福な者に限られていた。

 

 

 ……何せ、この時代。

 

 

 風呂を沸かす燃料は石炭か木炭、あるいは薪ぐらいしかなく、単価が非常に掛かる。特に、都会から遠く離れた田舎ともなれば、湯船に浸かるなんてのは贅沢で、基本的には濡れた手拭いで身体を洗うのが一般的だ。

 

 だから、太郎のように定住せずに村から村へ、町から町へと渡り歩く者たちにとって、ゆっくり湯船に浸かるというのは、ある意味では食事よりも得難い事で……太郎が望むのもまた、当然であった。

 

 

 ……だが、しかし。それでも常人に比べたら、太郎は、かなり恵まれているのは確かだろう。

 

 

 何せ、太郎は、夢の世界にて得たことが現実になるという能力を持っている。何もかもが現実へと反映されるわけではないが……まあ、そこはいい。

 

 重要なのは、夢の世界で食事を摂れば現実でも食事を摂った事と同じであり、夢の世界で風呂に入れば、現実世界でも身体を洗ったのと同じ状態になるという点だ。

 

 世捨て人として暮らし、あの夜に至るまでの間。それまで貯め続けていたお金のおかげで、路銀に困ることは今のところはないが……まあ、だからといって贅沢三昧でいられるほどというわけでもない。

 

 

 そんな太郎が、現実ではないとはいえ、だ。

 

 

 しっかり食事を摂り、シラミや湿疹などに苛まれることなく身綺麗に出来ているのも……単に、その能力のおかげで。そのうえで、現実でもそれを望むのは……まあ、言うては何だが、可愛いワガママであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………しばしの間、太郎は樹木に背中を預けたまま大人しくしていた。

 

 

 寝入っている……というわけではない。いくら太郎とはいえ、雨風がまるで防げないこんな場所で夜は明かさない。一時、身体を休めているだけであった。

 

 

 なので、目を瞑ってはいるが、頭はしっかり起きている。

 

 

 バイクのエンジン音を聞き続けていた耳が、優しくも少々喧しい虫たちの音色を求めているのだろう。重なり合った虫たちの鳴き声に耳を澄ませていた太郎は、何となく腰を上げるタイミングを逃していた。

 

 

「……っ?」

 

 

 だが、それもキッカケさえあれば……という程度の事であった。

 

 

(……何だ?)

 

 

 何気なく、これまでとは異なる匂いを嗅ぎ取った。これは……何だ、花か? 

 

 フッと目を開けた太郎は、何処から匂いがするのかと辺りを見回し……森の奥にポツリと姿を見せたソレに、おやっ、と目を瞬かせた。

 

 

 それはまるで、花の境界線であった。

 

 

 今まで気付かなかったが、森の奥に並び立つ樹木の数々。そこで、見渡すほどに花が咲き誇っている。遠目からでも見事な咲き誇りが伺えるぐらいであった。

 

 思わず、草木を掻きわけてそこへ向かう。「……藤の花、か?」改めて間近で確認した太郎は、幻想的としか言いようがない光景に、言葉を失くした。

 

 太郎は、花に詳しくない。そして、興味も薄い。タダで貰えるならば欲しいという程度であり、人並み程度の知識しかない男である。

 

 なので、咲いている花を見ても綺麗だなと思うぐらいであり、三日もすれば忘れてしまうという程度のモノでしかない。

 

 

 そんな太郎ですら、眼前の光景には見惚れた。

 

 

 時間や場所が異なっていたら、さぞ日本中にその名を知らしめる観光名所になって……いや、待て。

 

 

「……おかしい、何故、この時期に藤の花が咲いているんだ?」

 

 

 そこまで思った辺りで、ふと、太郎はその違和感に目を留めた。

 

 記憶が正しければ、藤の花が咲くのは春の時期。今は10月半ば……遅咲きだとしても、あまりに時期が違う。普通に考えれば、有り得ない事だ。

 

 もちろん……それが絶対というわけではないだろう。太郎自身は目にしたことはないが、時期外れに狂い咲く花の事は、耳にした覚えがあった。

 

 

 だが……さすがに、これだけの藤の花が一斉に狂い咲くことが、あるのだろうか? 

 

 

 辺りに咲き誇る藤の花を見やった太郎は、自問する。

 

 一本、二本の樹木が、狂い咲きするのならば話は分かる。だが、それが100本、200本……まるで、山を囲うように藤の花がどこまでも広がっている。

 

 自然に生えた……は、考えにくい。そういう品種ならば、これまでにも幾度となく目撃しているはずだから。

 

 たまたま、ここだけ狂い咲きする……可能性としてはコレが一番高いのかも──そこまで考えた、その瞬間。

 

 

「──まさか、これは!?」

 

 

 太郎の脳裏に、閃光がきらめいた。直後、太郎は──脳裏を過った言葉を、そのまま口走っていた。

 

 

「──間違いない! これはゴルゴムの仕業だ!」

 

 

 疑う理由も、必要も無い。起こりえるはずのない事が、起こりえている。それ、すなわち……暗黒結社ゴルゴムの仕業であるということ。

 

 

 ──本来はこの時期には咲かないはずの、藤の花。

 

 

 それが、いったいどのような悪事となってゴルゴムに利益をもたらすのかは分からないが……そんなことは、どうでもいい! 

 

 重要なのは──眼前に咲く藤の花が、ゴルゴムの手によって生み出されているということ。

 

 そして、悪事ある所にゴルゴムの影が有って……そこに、怯える人々がいるということ! 

 

 

 そう、太郎は結論を出した。

 

 

 客観的に見れば、だ。穴が有るというか、意味が分からないというか、ゴルゴムに責任を押し付け過ぎじゃないのかと思うところだが……と。

 

 

 ──うわぁあああああああ!!!!! 

 

 

 静まり返った山奥、藤の花の向こうより響いて来た、何者かの悲鳴。

 

 まるで図ったかのようなタイミングで飛び込んできたソレに、ギョッと目を見開いた太郎が目にしたのは……必死の形相でこちらに向かって来る、着物姿の男であった。

 

 

 獣か、あるいは何者かに襲われたのだろうか。顔中に冷や汗と鼻水と涙を飛び散らせたその男は、身体の至る所を負傷している。

 

 

 男は、なりふり構わない様子であった。抱えるようにして手に持っている刀は、遠目からでも真剣であるのが分かった。

 

 ……一見した限りでは、まるで太郎へと襲い掛かろうとしているようにも見えたが……当の太郎は、そう思わなかった。

 

 

 何故なら、男の形相に浮かぶ感情が……『恐怖』の二文字であったから。

 

 

 加えて、表情だけではない。まるで身を守るかのように峰を身体に押し当て、少しでも何かからの攻撃を防げるようにしている様は……とてもではないが、狼藉者には見えなかった。

 

 いったい、何から逃げようとしているのか。その事に太郎が思考を巡らせるよりも前に、答えが向こうからやってきた。

 

 それは、太郎の視線の先。必死の形相で逃げ続けている男の背後から、男に襲いかかろうとしている異形の怪物が……否、怪人を、捉えた。

 

 

 そう……そいつは正しく異形であり怪人であった。

 

 

 全体的な輪郭こそ人の形を保ってはいるが、それだけだ。獣のように鋭く伸びた牙に爪、鼻息荒く迫り来るその姿は、人外そのものであった。

 

 

「──やはり、ゴルゴムの怪人だ!」

 

 

 そう判断した時にはもう、太郎はこちらへ向かって来る男と怪人の下へと走り出していた。だが──それでは、それだけでは間に合わない。

 

 

「『バトルホッパー』!」

 

 

 怪物の注意を引くために、わざと大声を出す。『──っ!?』思惑通り、怪人の視線が男から太郎へと向けられた──その時にはもう、爆音を立てて夜の闇から飛び出したバイクが、怪人へと直撃した。

 

 

 ──ぐしゃり、と。

 

 

 不意を突かれたせいで、怪人は悲鳴一つ上げられなかったのだろう。

 

 無言のままに顔面をタイヤで砕かれた怪人は、うごびゅう、と呻き声をあげながら大地を転がって──木々にぶち当たって、止まった。

 

 重さが優に三桁キログラムにも達する、鋼鉄よりも強固なバトルホッパーの体当たり。

 

 しかも、減速せずのフルスロットル……幹部クラスの怪人ですら、直撃すれば吹っ飛ばされるだろう。

 

 そんな一撃をまともに食らった怪人は、おかげで、もう見ただけで察せられるぐらいの即死の大怪我を負っていた。

 

 何せ、折れた首は真横に傾き、手足の関節が一つずつ増えている。飛び出した枝は脇腹を貫通しており、遠目にも致命傷を負ったのが分かる有様であったからだ。

 

 

 ……だが、怪人は生きていた。

 

 

 多少なりダメージは受けてはいるようだが、致命傷には至っていない。「ごあああ、ぐぞったれぇ!」だらだらと鮮血混じりの涎を垂れ流しながら、苦にした様子もなく突き刺さった枝から身体を抜いた。

 

 途端、傷口が瞬く間に塞がり、再生を始めている。以前に戦ったモダンの男と比べたら雲泥の差ではあるが、驚異的と評価して差し支えない生命力だ。

 

 

 さすがは、ゴルゴムの怪人といったところだ。

 

 

 このままだと、もう一分と経たない内に負傷の回復を終えて、襲い掛かってくる。

 

 これまで幾度となく怪人と戦ってきた経験から、この後を予測した太郎は……次いで、駆け寄ってくる男を見やり──瞬間、目を見開いた。

 

 

「──逃げ」

 

 

 そこまでしか、太郎は伝えられなかった。

 

 何故なら、とりあえずの危機を脱して安堵の表情を見せた男の頭上から、音も無く降り立った新たな怪人の手によって……その首を、ぼきりと折られたからであった。

 

 

 ──逃げさせる間も、庇う間も無かった。

 

 

 そう、それは、油断であった。怪人は一体だけという慢心が、太郎の判断を送らせた。あと十数歩、距離にして6,7メートル……たったそれだけが届かない事によって、命が呆気なく終わってしまった。

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………がくり、と。

 

 

 

 呆然とするしかない太郎を他所に、力無くその場に崩れ落ちた男の身体だが、それが地面に倒れるよりも前に……その場から消える。

 

 ハッと、我に返った太郎が目にしたのは……死体という名の獲物を抱えて行こうとする怪人と、それを奪い取ろうとする怪人の姿であった。

 

 

 ぎゃあぎゃあ、と。

 

 

 何かを、怪人たちは言い合っている。俺の獲物だとか、飯を寄越せだとか、聞けば聞く程怒りしか湧いてこない……と。

 

 

 唐突に──死体を抱えていない方の怪人が、太郎へと振り返った。

 

 

 その顔に有ったのは……蔑みであった。これから食らう者に対する礼儀も感謝もない。余計な手間を掛けさせるなよといったような──いや、もういい。

 

 

 もはや、知る必要はない。

 

 

 既に、犠牲者は出てしまった。それも、己の目の前で。そう思った直後、太郎は……構えていた。「へん……しん!」握り締めた拳が、ぎりぎりと軋んだ。

 

 油断した己への不甲斐なさと、守れなかった哀しみとが混ざり合って生まれた怒りが──太郎に、力を与える。怪人を倒す為の力が……体内に宿る『キングストーン』より、生み出される。

 

 

 ──瞬間の、目も眩む輝き。その直後、太郎は……人間ではなくなっていた。

 

 

 代わりに現れたのは……赤い瞳に、黒いボディ。人間と昆虫とが合わさり、腰に輝くライダーベルト……そう、太郎は変身した。仮面ライダーBlackへと、成ったのだ! 

 

 

「な、なん──っ!?」

 

 

 これには、怪人だって驚いた──だけで、終わった。

 

 

「とぅあ!」

「ぐぼぁ!?」

 

 

 怪人の目を以ってしても追い付けない速さで距離を詰めたBlackのパンチが、その首から上を吹っ飛ばしたからだ。

 

 もちろん、それだけで怪人が倒せるとはBlackも思っていなかった。下っ端怪人たちは耐久力こそ人並みだが、回復力は常人のそれではない。

 

 例え首から上を吹っ飛ばし、両手両足をもぎ取ったとしても、すぐに再生して向かって来る。それを経験から理解していたBlackは、素早く距離を取って構えた。

 

 

「──む?」

 

 

 だが、しかし。ばたん、と仰向けに倒れた怪人を見やったBlackは……首を傾げた。

 

 

「……まさか、死んだのか?」

 

 

 それは、想定外の事態であった。

 

 これまで、少なくとも十数回は頭なり身体なりを破壊しなければ(再生の為に)動きが鈍らなかった怪人たちだが……眼前の怪人は、そうならなかったのだ。

 

 

 一言でいえば……眼前の怪人は、辛うじて即死を免れた状態であった。

 

 

 首より上を失った影響からか、びくびくと手足が痙攣している。だが、それだけだ。何故かは分からないが、傷を再生してこない。死んだふり……のようにも見えない。

 

 もしや、油断を誘っているのか……そう思った直後。痙攣していた手足がピタリと止まり、合わせて、燃え尽きた灰のようにボロボロと肉体が崩れ始め……塵となって、消えてしまった。

 

 後に残されたのは、抜け殻のように放置された……怪人たちの衣服だけであった。

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………初めての事だ。

 

 

 

 地面に放置された衣服を手に取ったBlackは、思わずそう呟いた。と、同時に、Blackは……どうしてこうなったのかということに思考を巡らせた。

 

 

(確かに、こいつは怪人だった。手強さみたいなモノは感じなかったが、紛れもなく怪人だった)

 

 

 たまたま、この怪人がそうなった。あるいは、攻撃に耐えきれず……いや、どちらも違う。Blackは、首を横に振る。

 

 この怪人は、これまで遭遇してきた怪人たちとの、明確な違いはなかった。言うのも何だが、下っ端の怪人であるのは共通している。

 

 となれば、手加減などしていないとはいえ、バイタルチャージ(力を一点に集中させる)も行っていない状態でのパンチで倒せた……今回が、イレギュラーなのだ……いや、待てよ。

 

 そこまで考えた辺りで、Blackの脳裏に違和感が過った。それはいったい何なのか……違和感の正体は、思いの外早くBlackの前に姿を見せた。

 

 

(そうだ……さっきの怪人もそうだけど、どうにも様子がおかしかったような気がする)

 

 

 思い返してみれば、態度というか反応が、これまで見て来た怪人とは異なっていた……ような気がする。

 

 何と言い表せばいいのか……余裕が無いというか、焦っているというか……まるで、何日も絶食した獣が、目の前に置かれた餌を前にしたかのような凶暴さが──あっ。

 

 

「──そうか、空腹だ。こいつら……飢えているんだ。だから、普通の怪人よりも弱っているんだ」

 

 

 明確な証拠は無い。だが、しかし。先ほどのなりふり構わない様子。その前の、同じ怪人同士が獲物を奪い合う光景……再生が行われずに朽ちた、この怪人の事。

 

 

 仮説を裏付けるに足るだけの状況証拠が、揃っていた。

 

 

 だが、しかし……同時に、Blackは無視できない違和感というか、疑問が新たに生み出されたことに気付いていた。

 

 それは、どうしてここの怪人たちが弱っているか、という点である。

 

 経験から、怪人たちが人間を襲って捕食するということはBlack(太郎)も知っていた。

 

 こんな山の中だ、獲物となる人間が見つからないのは想像するまでもないが……ならば、どうしてここに留まっているのだろうか。

 

 

 ……もしかしたら、ここにゴルゴムのアジトが……いや、有り得ない。

 

 

 仮にアジトがあるのだとしても、ならば何故怪人たちが飢えているのだろうか。アジトを守る為に配置されているにしても、これでは……怪人たちが飢えて死んでしまう。

 

 では、どうして怪人たちはこの場所に留まっているのだろうか……分からない。「……止めよう、考えても今は無駄だ」堂々巡りに成り始めた思考を切り上げ、立ち上がった。

 

 

(ここには……いや、ここで、いったい何が起こっているというんだ?)

 

 

 このまま森の奥へと突き進むべきか、夜が明けるのを待つべきか。

 

 選ばなければならない、二つに一つ。慎重に動くのであれば、己の力……『仮面ライダーBlack』のパワーが最も発揮される昼間の方が、良いところだが──と。

 

 

 ──そこまで考えた辺りで、Blackのセンシティブイヤーが異音を捉えた。

 

 

 Blackは、500メートル先の囁き声を聞き取る事が出来る。それは虫やら木々のざわめきやらが響く山中とて例外ではなく、正確に、それでいてはっきりと異音を……否、悲鳴を捉えていた。

 

 

 ──これは、悲鳴だ! 

 

 

 どうして、こんな山の中に……いや、考えるのは後だ。「来い、バトルホッパー!」そう結論を出したBlackは、指示を受けて走り出した愛車へと飛び乗り……悲鳴の下へと、一気に駆け出した。

 

 

 ……通常、小回りの利くバイクとはいえ、舗装されていない山道を駆け抜けるのは無謀と思って間違いない。

 

 

 だが、それはあくまで普通のバイクの話だ。

 

 Blackの乗るバイクは、ただの乗り物ではない。その実体はバイク型の生体メカであり、むしろ、山道のような悪路であればあるほど、その真価を発揮するバイクである。

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………故に、悲鳴の下へとたどり着くまでに掛かった時間は、おおよそ数分。

 

 

 

 頑強さと馬力に物を言わせた直線突破によって、立ちはだかる枝葉を強引に破り捨てて直進を続けたBlackが目にしたのは……辛うじて人の形をした、巨大な肉の塊であった。

 

 いや、具体的にその姿を言い表すのであれば、巨体に見合う、幾つもの巨大な腕を己に纏うようにして膨れ上がった、肉の塊……としか言いようがない姿であった。

 

 その背丈、おおよそ4メートル強……といったところだろうか。ぶよぶよと膨れに膨れた巨体は鈍く、一歩進むごとにずしんずしんと足音を立てている。

 

 巨体から飛び出した腕の数は、パッと見ただけでも十本を軽く超えている。胴体や手足を構成している腕の数を合わせたら、三十にも達しているであろう……巨大な怪人であった。

 

 その巨体怪人は、片手に掲げた何かを……いや、人間を、まるで稚魚の踊り食いをするかのように、足先から頭までを一口で呑み込み、ばりぼりと音を立てて貪っていた。

 

 

(な、何というおぞましい姿だ……!)

 

 

 これまで戦ってきた怪人たちの中でも、1,2を争うレベルでの醜悪な姿だ……が、しかし、すぐさまBlackは拳を構えた。

 

 例え相手がどんな姿であろうと、Blackは恐れない。あの夜、あの時、Blackは覚悟と決意を固めたのだ。

 

 自らのような者たちをこれ以上増やさないように。Blackとしての力を得た己だからこそ成し得る事を、成す為に……戦うと、自分の意志で決めたのだ! 

 

 

「──トゥア!」

 

 

 先手必勝、その言葉通り、食らう事に夢中になっている巨大怪人の脇腹にBlackの蹴りが食い込む。「──ぐぉ!?」突然の事に目を白黒させる巨大怪人を他所に、そのまま拳の連打を叩き込む。

 

 

 見た目通り、巨大怪人の身体は肉厚であった。

 

 

 並の怪人であれば一撃で四散させる程の威力があるパンチも、Blackの数十倍はある重厚な腹部を破壊するには至らない。

 

 もちろん、ダメージはある。繰り出す拳は内臓へと達し、繰り出した拳を引くたびに、夥しい流血がBlackの足元に散らばって、赤く染まる。

 

 

 ──だが、それでは駄目なのだ。

 

 

 怪人は、普通の攻撃では倒せない。頭を砕こうが、身体を切り裂こうが、すぐに再生して立ち上がり、向かって来る。

 

 怪人たちの厄介さは、そこにある。そこだけは、Blackを上回っている。

 

 故に、怪人をも凌駕するBlackとはいえ、怪人たちの再生能力に関しては、内心舌を巻くぐらいであった。

 

 

(動きこそ遅いが、この巨体は厄介だ。バイタルチャージによる一点集中でなければ……だが、この巨体だ。それで倒せるかは──っ!?)

 

 

 ハッと、驚異的な超感覚によって危機を察知したBlackは、その場を飛び退く。直後、先ほどまでBlackが立っていた場所の地面から……数本もの腕が、槍のように飛び出した。

 

 

 ──気付かなかったら、間違いなく串刺しにされていただろう。

 

 

 その事実に己を戒めながら、Blackは再び攻勢に躍り出る。今度は、地面からの奇襲も踏まえる。

 

 すると、向こうもソレを察したのか……積極的な反撃から、消極的な反撃にパターンを変えて来た。

 

 

 ……どうやら、この怪人は頭が働くようだ。

 

 

 攻撃による手傷を負わせるための反撃ではなく、体力を消耗させることに重点を置いた反撃。そのうえ勘が良いのか、Blackにパワーを集中させる猶予を与えないようにしている。

 

 Blackの頑強な表皮を打ち破る攻撃力こそ巨大怪人にはなかったが、その腕が届く範囲は、Blackの比ではない。戦いを長引かせるだけならば、十分で……あっ! 

 

 

 ──想定外の事態に、Blackは思わず動きを止めた。

 

 

 何が起こったかといえば、それは巨大怪人の後方の陰より飛び出して来た、狐の面を頭に被った、頬に疵を持つ男が原因であった。

 

 狼狽するBlackを他所に、男は大地を蹴って宙を舞う。放物線を描きながら、優に3メートル近く飛んだ男の手には……一振りの、青き刀身。

 

 それは、Blackすらも見惚れる程に美しく、静まり返った水面のように音も無く空気を切り裂き、巨大怪人の首を一閃──。

 

 

「──っ!?」

 

 

 ──するはず、だった。だが、現実はそうならなかった。

 

 端的にいえば、刃が折れたのだ。僅かばかり皮膚を切り裂きはしたが、そこまで。岩を思わせる硬さを前に、水を思わせる青き刃は呆気なく砕け──その代償は、手痛い反撃となって男を襲う。

 

 

 ──ぎょろり、と。

 

 

 巨体に見合う怪人の巨大な目が、背後へと動いた──と、同時に。背中より飛び出した拳が、「──ぐはっ!?」男へと叩き込まれ──ごろごろと、地面を数回転がった。

 

 

「……っ! げっ、げっ、げっ!」

 

 

 直後、身体を起こそうとしたが……無理だった。遠目にも分かるぐらいに顔色を悪くしたその男は、そのまま蹲って……胃液を吐いている。それを見た巨大怪人は……にたりと、気味の悪い笑みを浮かべた。

 

 Blackの反応から、背後で何かが起こった事を察したから故の、咄嗟の防御。思わず笑みを浮かべてしまうぐらいに、巨大怪人にとっては嬉しい結果となった。

 

 

 ──反射的に身を引いて少しでも攻撃を逸らしたのだろうが、しばらくはまともに立ち上がることすら出来ないだろう。

 

 

 そう判断した巨大怪人は、狐の面を頭に被ったその男にトドメを刺そうと、ずしんと足音を立てて振り返った。そこまでは、巨大怪人の思惑通りであった。

 

 

 ……だが、巨大怪人は浮かれるあまり、選択を誤った。

 

 

 今倒さなくてもいい相手を優先し、最も優先しなければならない相手から注意を外してしまった。その代償は……自らの命でもって、支払わなければならない結果となった。

 

 

「『バイタルチャージ』!」

 

 

 時間にして、わずか数秒。しかし、そのたった数秒が……勝敗を決定づけた。

 

 

「ライダー……!」

 

 

 ハッと、巨大怪人がソレを思い出した時にはもう、遅かった。

 

 

「──キック!」

 

 

 一点に集中した太陽の力を、驚異的な身体能力を上乗せして放つ必殺の飛び蹴り。

 

 数多の怪人を一撃で葬ってきた、その一撃必殺が……この日も例外なく、怪人を葬ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………巨体が、ぼろぼろに朽ち果ててゆく。

 

 

 その様は、燃え尽きた灰の如くあっさりとしたもので、その場には欠片はおろか、その痕跡すら残らない。

 

 頭を砕かれ手足を切り落とされようともすぐさま傷を再生して復活する怪人たちとて、不死身ではない。

 

 死ぬときは死ぬ、死は、怪人たちとて避けられない。そして、死を迎えた怪人たちは……一人の例外もなく、身体が朽ちる。

 

 時間にして一分と掛からず塵となって、最後はその塵すら消える。身に纏っていた衣服こそしばらく残るが、それも半日と断たない内に塵となる。

 

 それが、怪人たちの末路だ。それが、怪人たちの最後なのだ。そこに至るまでに、いったいどれほどの命を、人間を殺めてきたのか。

 

 

 それは、Blackの知る所ではない。

 

 

 だが、それでも……こうして怪人たちと戦い、打ち倒し、塵となって朽ちてゆく怪人たちの亡骸を目にするたび……思う事はある。

 

 

 ──とても憐れな生き物だ、と。

 

 

 生物として土に還る事も出来ず、他者(他の生き物)の糧に成る事もなく、生きた証すら残る事もなく、始めから存在していなかったかのように……全てが、消えてしまう。

 

 ……犯した所業は、確かに許せない。

 

 だから、怪人を打ち倒すことに迷いはない。だが、それとは別に……何一つ残せないまま終わる定めを背負った怪人たちを、Blackは心の底から憐れに思っていた……と。

 

 

「……無理に立ち上がらない方が良い」

 

 

 首筋に走る、ちりちりとした感覚。振り返れば、折れた刃を手にして立ち上がった男がいた。顔色こそ相変わらず悪いが、こちらを見据えるその目には……欠片の怯えすら、無かった。

 

 

「あいにく、俺に医術の知識はない。それでも、無理に動かない方が良いぐらいの事は分かる……無理をするな」

「……鬼の戯言に付き合う道理は、ない」

「鬼? ちょっと待て、お前はいったい何を──っ、危ない!」

 

 

 そう吐き捨てるように呟いた男は、折れた刀を構えた。それを見て、どうにも誤解があるようだとBlackが思った瞬間……男の背後より迫る別の怪人を見て、余計な事は吹き飛んだ。

 

 

 反射的……そう、身体が勝手に動いた。

 

 ただ、この男を助けねば。ただ、その一心で──己へと振るわれた刃を受けて飛び散る火花も顧みず、Blackは……男へと抱き着き、強引に位置を入れ替えた。

 

 

「くっ!」

 

 

 瞬間、ばちん、と。Blackの背中から火花が散った。「──お前!?」驚く男を他所に、Blackは男を庇ったまま……攻撃してきた怪人の顎を蹴り砕いた。

 

 ……結果的に、それだけで十分であった。

 

 どうやら、この怪人は先ほどの巨体怪人とは違い、飢えて弱っていたようだ。『バイタルチャージ』による一点集中を行わずとも、首から上を失った怪人は……瞬く間に散り散りになって、消えてしまった。

 

 

「……っと」

 

 

 そのまま、幾しばらく。塵となって消えた怪人の跡を見ていたBlackは、どんと突き飛ばされて、それを中断した。

 

 突き飛ばしたのは、今しがたBlackが庇った男であった。額に脂汗を浮かべながらも、素早くBlackから距離を取った男は、油断なく折れた刃を構え……構え……そして。

 

 

 ……緩やかに、下ろした。

 

 

 それを見て、Blackは……傍目には分からないだろうが、内心ではとても驚いていた。何故なら、これまで己の姿を目撃した人々(怪人も同様に)は、例外なくBlackの姿に恐れおののいたからだ。

 

 怖がって逃げ出すのなんて、マシな方だ。命乞いしてきた人だっていたし、中には……クワや鎌を片手に、決死の形相で襲い掛かって来た事もあった。

 

 だから……武器を下ろしてくれるという現実を前に、Blackは……どうしていいか、分からなかった……と。

 

 

「あっ」

 

 

 そう、思った直後……ぐらりと、男の身体が揺らいだ。「──危ない!」先ほどと同じく飛び出したBlackは……寸でのところで、地面に頭をぶつける前に男を抱き留めることが出来た。

 

 そのまま、身体を横たえてやる。前髪を払って見やれば……呼吸は安定している。冷や汗が滲んではいるが、顔色も、先ほどよりは良くなっているように見えた。

 

 

「おい、しっかりしろ、大丈夫か?」

 

 

 軽く揺さぶってみるが、目を開ける気配はない……だが、僅かではあるが返事をされた。どうやら、少なからず意識が混濁しているようだ。

 

 とりあえずの危機が去った事と、気が抜けた事、そして攻撃を受けた痛みが合わさった事が原因だろう。

 

 

 もしかしたら、先ほど地面を転がった時に脳震盪を起こしたのかもしれない。具合の程度は、よく分からない。

 

 

 殴られた位置を軽く摩ってみるが……外部への出血は見られない。内部の傷は分からないが……いますぐどうこうなってしまう事はなさそうだ。

 

 だが、この後どうなるか分からない。頭の傷だ、心配して損はないだろう。

 

 それに、ここには怪人が多数潜んでいる。今は無事だとしても、このまま放置しておけば、間違いなくこの男は襲われるだろう……ん? 

 

 

 ──何か、呟いている。

 

 

 常人ではまず気付かないぐらいではあったが、Blackなら別だ。気になったBlackは、そっと男の口元に耳のあたりを近づけた。

 

 

(……連れて行ってくれ? 案内するから?)

 

 

 いったい、何処に……疑問は抱いたが、返事はない。兎にも角にも、連れて行って欲しいと繰り返すばかりで……まだ、頭がしっかり動いてはいないようだ。

 

 

 ……仕方がない、乗りかかった船だ。

 

 

 放って置くわけにはいかないと判断したBlackは、男を背負って立ち上がる。その際、意地でも刀を手放そうとしない男に、Blackは内心にて苦笑した。

 

 

「で、どっちに行けばいいんだ?」

 

 

 そう尋ねれば……男は、Blackだからこそ分かる程度の声で囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、男に案内された先。

 

 藤の花を咲かせている、とある樹木の根元にて、隠れるようにして横たわる男がいた。男は怪我をしているようで、顔の半分を覆った布の一部が赤く染まっていた。

 

 

「──鬼!?」

 

 

 その男は、Blackを目にした直後、驚愕に目を見開いて身体を起こす。だが、すぐにぐらりと体勢を崩し、手にしている刀を杖代わりにしていた。

 

 

 ……おそらく、この男も怪人の手によって負傷したのだろう。

 

 

 目には、ただ単純にBlackを前にしただけでは説明出来ない、恐怖が宿っている。

 

 しかし、その恐怖が続いたのは……Blackが背負っている狐面を被った男を認識する、その時までであった。

 

 

「──錆兎(さびと)。 お前、錆兎に何をした」

 

 

 今しがたまで怯えていたのが、嘘のよう。目に闘志を滾らせ、手足の震えを止めて刀を抜いたその姿は……先ほどとは、まるで別人であった。

 

 

「……錆兎とは、この男……いや、少年の名前か?」

「だとしたら、何だ、鬼め」

 

 

 今にも躍りかかって来そうな男を前に、「この男に当たる、無暗に刀を振るうな」Blackは冷静な態度のまま、その男の傍へと歩み寄った。

 

 

「近寄るな、寄らば切る」

「刀は抜いていて構わないし、切りつけてもいい。だが、この男をそこへ下ろすまでは何もするな」

 

 

 当然、その男は強い警戒心を見せた。

 

 

 ……まあ、無理もないとBlackは思った。

 

 

 仮に己が逆の立場だったなら、間違いなく刀を向けているからだ。

 

 いや、むしろ、激情に駆られて切りつけて来ないだけ、この男は冷静だとすら思っていた。

 

 実際、男は冷静であった。激情を堪えつつも、平静を保とうと意識するぐらいには、冷静であった。そう、Blackには見えた。

 

 あるいは、Blackが背負う男……錆兎を気にして攻撃出来なかったかもしれないが……何にせよ、刀を構えはしても攻撃してこないのは、Blackにとっては有り難い事であった。

 

 

「……何をした?」

 

 

 藤の木へもたれ掛らせるようにして、錆兎を降ろしてやる。

 

 それを見て、男は信じ難いモノを前にしたかのように目をまん丸に見開いた後……ポツリと、尋ねてきた。

 

 

「何もしていない。デカい怪人を倒す時に、この人が手助けしてくれた……放っておけなかったから、連れてきたんだ」

「……怪人?」

「お前たちが戦っていたやつだ。人間を食らう怪物だ……違うのか?」

「……お前は、食わないのか?」

「あいにく、人肉を食らう趣味はない。俺の好物は鰤大根だからな」

「……鮭大根ではないのか?」

「いや、俺は鰤が好きだから……じゃなくて、もっと他に聞くべきことがあるんじゃないのか?」

「…………?」

「俺が何者なのかとか、気にならないのか」

 

 

 

 ……少しばかり、間が空いた。けれども、無視をしているようには見えない。

 

 

 

 考えているのか、少しばかり虚空を見つめていた瞳が……Blackを捉えた。

 

 

「(気にはなるが、錆兎を助けてくれたみたいなのは事実だし、そもそも俺は何一つ関与していないし、今の今まで足手まといでしかない。そんな俺が知った所で出来ることなど何もないから)必要ない」

「え?」

「(それに、俺は錆兎を信用している。その錆兎がお前を連れてきた以上は、お前は害をもたらす相手ではないのが分かる。それに、何者かどうかは錆兎が起きてから一緒に聞いた方が良いから、今のところは)お前から教えて貰うことなど、ない」

「……いや、まあ、教えるとは?」

 

 

 思わず、Blackは頭を掻いた。さすがのBlackも、ぎゅうぎゅうに凝縮された、男の声なき中身を知る術は、無かった。

 

 

「(だいたい、錆兎が倒せない相手を、俺が倒せるわけがない。錆兎は俺なんかよりずっと強いし優しいし、錆兎は将来、もっともっと強い剣士になる。なんていったって、俺とはモノが違う。俺は駄目だ、錆兎と比べて)俺は、格が違うからな」

「……何だ、どうした?」

「(そういえば、名を名乗っていなかったな。既にお前は錆兎の名は分かっているようだから説明は省くが、俺と錆兎とは弟弟子みたいなもので、俺の名は)富岡義勇だ」

「……? か、仮面ライダーBlackだ」

 

 

 

 もしかしたら、初めてかもしれない。

 

 Blackをここまで混乱させた相手は……状況を理解出来なかったBlackは、キョトンと首を傾げる他なかった。

 

 

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